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神奈川県情報公開審査会 答申第374号~第382号 特定の県立高校に係る文書一部非公開の件及び…

2008年08月21日 | 法人等に関する情報
答申第374号~第382号
平成20年8月21日

神奈川県教育委員会
委員長 平 出 彦 仁 殿

神奈川県情報公開審査会
会 長 堀 部 政 男

行政文書公開請求拒否処分に関する不服申立てについて(答申)


平成19年11月28日付けで諮問された特定の県立高校に係る文書一部非公開の件(諮問第419号)及び特定の県立高校に係る文書不存在の件(諮問第418号)並びに11月30日付けで諮問された特定の県立高校に係る文書一部非公開の件(諮問第422号)及び特定の県立高校に係る文書不存在の件(諮問第420号、第421号及び第423号~第426号)について、次のとおり答申します。

1 審査会の結論
(1)別表1の対象文書欄に記載の行政文書のうち、特定の県立高校の新聞購読代に係る執行伺票、支出命令票及び請求書に記載された、特定の法人に係る振込先口座の金融機関名、支店名、預金種別、口座番号及び口座名義人の名称は、公開すべきである。

(2)実施機関が、別表2の対象文書欄に記載の行政文書は存在しないとして、公開を拒んだことは、妥当である。

2 不服申立人の主張要旨
(1)不服申立ての趣旨
不服申立ての趣旨は、神奈川県教育委員会( 以下「教育委員会」という。)が、別表1の決定年月日欄に記載の各日付けで、同表の対象文書欄に記載の各行政文書(以下「本件非公開文書」という。)を一部非公開とした処分(以下「本件非公開処分」という。)及び別表2の決定年月日欄に記載の各日付けで、同表の対象文書欄に記載の各行政文書(以下「本件請求対象文書」という。)は存在しないとして、公開を拒んだ処分(以下「本件不存在処分」という。)の取消しを求める、というものである。

(2)不服申立ての理由
不服申立人の主張を総合すると、次のとおりである。

ア 本件非公開処分について
(ア)諮問第419号については、特定の県立高校(以下「本件高校」という。)の新聞購読代に係る文書のみ公開されたが、書籍購入に係る文書の公開を求める。

(イ)諮問第422号については、公開された文書では不十分であり、本件高校の校長(以下「本件校長」という。)が出張を命じた者の人数が明確になる文書の公開を求める。

イ 本件不存在処分について
(ア)各諮問案件に係る特定の状況(以下「本件状況」という。)は、職員の懲戒又は分限に係る重要な事故であり、明文化された行政文書が作成されなければならない。

(イ)本件請求対象文書が存在しないことは、不合理である。

(ウ)本件不存在処分後に作成したものでもよいので、公開を求める。

3 実施機関(県立高等学校)の説明要旨
実施機関の説明を総合すると、次のとおりである。

(1)本件非公開文書について
ア 諮問第419号に係る本件非公開文書(以下「419号文書」という。)について
419号文書のうち、本件高校の新聞購読代に係る執行伺票、支出命令票及び請求書に記載された、特定の法人(以下「本件法人」という。)に係る振込先口座の金融機関名、支店名、預金種別、口座番号及び口座名義人の名称(以下「本件振込先情報」と総称する。)については、神奈川県情報公開条例(以下「条例」という。)第5条第2号該当により、非公開とした。
また、不服申立人は、書籍購入に係る文書の公開を求める旨主張しているが、書籍購入に係る文書は、別表1の非公開理由欄に記載の理由により存在しない。

イ 諮問第422号に係る本件非公開文書(以下「422号文書」という。)について
422号文書のうち、本件高校の吹奏楽部が行った演奏会(以下「本件演奏会」という。)の開催要項に記載された生徒の氏名並びに本件演奏会の招待者名簿に記載された来賓者の氏名及び役職(以下「本件氏名等」と総称する。)については、条例第5条第1号該当により、非公開とした。

(2)本件請求対象文書の存否について
実施機関は、本件請求対象文書について、別表2の非公開理由欄に記載の理由により、文書不存在による公開拒否決定を行った。

4 審査会の判断理由
(1)審査会における審査方法
当審査会は、本答申に係る別表1及び2に記載の9件の諮問案件について、本件非公開文書及び本件請求対象文書の内容、本件非公開処分及び本件不存在処分の内容並びに不服申立ての理由等の類似性を踏まえ、併合して調査審議した。

(2)本件非公開文書について
ア 条例第5条第1号該当性について
条例第5条第1号は、情報公開請求権の尊重と個人に関する情報の保護という二つの異なった側面からの要請を調整しながら、個人を尊重する観点から、個人に関する情報を原則的に非公開とすることを規定している。

(ア)条例第5条第1号本文該当性について
条例第5条第1号本文は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが、公開することにより、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」(以下「個人情報」という。)を非公開とすることができると規定している。
したがって、同号本文は、明白にプライバシーと思われる個人情報はもとより、プライバシーであるかどうか不明確であるものも含めて非公開とすることを明文をもって定めたものと解される。

(イ)422号文書のうち、実施機関が非公開とした本件氏名等は、個人に関する情報であり、特定の個人が識別される情報であると認められることから、条例第5条第1号本文に該当すると判断する。

イ 条例第5条第1号ただし書該当性について
(ア)条例第5条第1号ただし書は、個人情報であっても、同号ただし書アからエまでに該当するものは公開すると規定している。

(イ)本件氏名等は、「法令又は条例の規定により何人にも閲覧、縦覧等又は謄本、抄本等の交付が認められている情報」、「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」、「公務員等の職務の遂行に関する情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る情報」又は「人の生命、身体、健康、生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報」とは認められないので、条例第5条第1号ただし書アからエまでのいずれにも該当しないと判断する。

ウ 条例第5条第2号該当性について
(ア)条例第5条第2号本文は、「法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」は非公開とすることができると規定している。

(イ)419号文書のうち、実施機関が非公開とした本件振込先情報は、本件法人の取引先金融機関における口座に関する情報であることから、法人に関する情報であると認められる。
しかしながら、法人の取引先金融機関における口座に関する情報は、知らせるべき相手を限定して管理をしていると認められない場合には、これを公開することにより、当該法人の正当な利益を害するおそれはないものと考えられる。

(ウ)本件法人は、新聞販売を行う業者であることから、不特定多数の者が新規にその顧客となり得るのが通例であり、また、本件法人が、本件振込先情報を知らせるべき相手を限定して管理をしているといった特段の事情は認められない。
したがって、本件振込先情報は、条例第5条第2号に該当しないと判断する。

エ 本件非公開文書に係る不服申立人の主張について
(ア)不服申立人は、諮問第419号については、本件高校の新聞購読代に係る文書のみ公開されたが、書籍購入に係る文書の公開を求める旨主張している。
一方、実施機関は、書籍購入に係る文書は別表1の非公開理由欄に記載の理由により存在しないと説明しており、この説明に反する特段の事情は認められないことから、書籍購入に係る文書は存在しないとの実施機関の説明は、納得できる。

(イ)不服申立人は、諮問第422号については、422号文書では不十分であり、本件演奏会に際し本件校長が出張を命じた者の人数が明確になる文書の公開を求める旨主張している。
当審査会が確認したところ、諮問第422号に係る行政文書公開請求書の「公開請求に係る行政文書の内容」欄には、本件演奏会に際して出張を命じた職員の名簿という趣旨の記載がされており、また、422号文書には、本件演奏会に参加した職員の氏名が記載されている。
したがって、実施機関が、諮問第422号に係る公開請求の対象文書として422号文書を特定したことは、納得できる。

(3)本件請求対象文書の存否について
ア 本件請求対象文書は多岐にわたるが、本件不存在処分に係る不服申立人の主張は、本件状況は職員の懲戒又は分限に係る重要な事故であり、明文化された行政文書が作成されなければならないという点又は本件請求対象文書が存在しないことは不合理であるという点で共通している。
一方、実施機関は、別表2の非公開理由欄に記載の理由により、本件請求対象文書は存在しないと説明している。

イ 何らかの特定の状況を事故と認定するか否かは、教育委員会が判断するものであると考える。本件状況については、事故と認定していないことから、本件請求対象文書を作成していないとの実施機関の説明に不合理な点は認められない。
また、実施機関は、本件請求対象文書は別表2の非公開理由欄に記載の理由により存在しないと説明しており、この説明に反する特段の事情は認められないことから、本件請求対象文書は存在しないとの実施機関の説明は、納得できる。

(4)その他
不服申立人は、本件不存在処分後に作成したものでもよいので公開を求める旨主張している。しかし、情報公開制度の趣旨にかんがみると、行政文書が存在するか否かは公開請求された時点で判断すべきであり、また、本件請求対象文書については、公開請求された時点で対象文書が存在しなかったことに関する実施機関の説明は納得できることから、前記2(2)イ(ウ)の不服申立人の主張は採ることができない。

5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

別表
(略)


別紙
審査会の処理経過
年 月 日処 理 内 容
平成19年12月4日○ 諮問受理
12月12日○ 実施機関に非公開等理由説明書の提出を要求
平成20年1月15日
(第71回部会)
○ 審議
1月16日○ 実施機関から非公開等理由説明書を受理
1月22日○ 不服申立人に非公開等理由説明書を送付
2月5日
(第72回部会)
○ 審議
6月5日
(第76回部会)
○ 審議
7月17日
(第77回部会)
○ 審議


神奈川県情報公開審査会委員名簿
氏 名現 職備 考
金 子 正 史同志社大学教授会長職務代理者
沢 藤 達 夫弁護士(横浜弁護士会)
鈴 木 敏 子横浜国立大学教授部 会 員
玉 巻 弘 光東海大学教授部 会 員
辻 山 栄 子早稲田大学教授
東 玲 子弁護士(横浜弁護士会)部 会 員
堀 部 政 男一橋大学名誉教授会 長
(部会長を兼ねる)

(平成20年8月21日現在)(五十音順)


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