情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

情報公開・個人情報保護審査会 平成20年度(行情)答申第165号 特定会社に係る予約前受金残高等…

2008年07月22日 | 第三者不服申立て
諮問庁 : 経済産業大臣
諮問日 : 平成20年 5月14日(平成20年(行情)諮問第265号)
答申日 : 平成20年 7月22日(平成20年度(行情)答申第165号)
事件名 : 特定会社に係る予約前受金残高等報告書の一部開示決定に関する件(第三者不服申立て)

答 申 書


第1  審査会の結論
 特定会社に係る予約前受金残高等報告書(平成19年9月30日基準日)(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を開示するとした決定は,妥当である。

第2  審査請求人の主張の要旨
(略)


第3  諮問庁の説明の要旨
1  本件対象文書について
 予約前受金残高等報告書は,割賦販売法40条2項,同法施行令14条4項及び同法施行規則24条の表1号の規定に基づき,前払式特定取引業者が,毎年,各期間における最後の月の末日から起算して50日以内に主たる営業所の所在地を所管する経済産業局長を経由して経済産業大臣に提出することが義務付けられているものである。
 本件対象文書は,前払式特定取引業者である審査請求人が,割賦販売法の規定に基づき,処分庁を通じて経済産業大臣に提出したもので,平成19年4月から同年9月までの期間に係るものである。

2  原処分の理由
 原処分においては,法人の印影部分は,法人に関する情報であり,公にすることより,法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イに該当することから不開示とし,その余の部分は,同条各号のいずれにも該当しないことから,開示するものとした。

3  審査請求人の主張について
 審査請求人は,原処分は,法5条2号イの適用を誤ったものであって取り消されるべきであると主張する。
 しかしながら,審査請求人は,割賦販売法で規定されている前払式特定取引業の許可事業者である。当該事業は,不特定多数の一般消費者から,役務の提供に先立って分割によりその代金の全部又は一部を受領するものである。そのため,不特定多数の一般消費者が債権者になり得るような事業であり,加えて会員に対しては将来相当の役務を確実に提供するという債務を負っているという事業の性格を考えると,許可事業者に関する情報については積極的に提供すべき性格のものである。
 以下において,審査請求人の主張について具体的に検討する。

(1)  開示によって審査請求人が被る不利益について
 ア「予約前受金残高」欄について

(ア)  「予約前受金残高」欄(備考欄を除く。)について
 予約前受金は,あくまでも将来の冠婚葬祭サービスの施行のための対価として会員から預かっている金銭であり,その2分の1に相当する額から営業保証金の額を差し引いた額に相当する額は,一定の保全措置を講じるよう割賦販売法35条の3の3で準用する同法18条の3で規定されているという点から見ても,一般の資金調達とは性格が異なるものである。
 また,前払式特定取引契約件数については,全体の会員数は新規募集,施行状況等により常に変動するものであり,ある一時点での会員数が判明したとしても,それが将来の施行件数につながるものではなく,また,施行の時期は予測不可能である。
 したがって,「予約前受金残高」欄に記載された情報は,審査請求人が主張する「資金調達状況その他の通常一般に入手できない財務に関する情報」に該当するとは言えず,当該情報を公にしたとしても,直ちに審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるとは言えないことから,法5条2号イに規定する不開示情報には該当しない。
(イ)  備考欄について
 備考欄の記載から月掛金の支払が中断している会員(以下「中断会員」という。)がどれだけ存在するかが判明したとしても,その中断会員数は過去の一時点での会員数の内数であって,全体の会員数は新規募集,施行状況等により常に変動するものであり,ある一時点での会員数が判明したとしても,全体の会員数から中断会員数を差し引いた会員数が将来の施行件数につながるものではなく,しかも,施行の時期は予測不可能であり,現段階での中断会員数を除いた会員数が事業展開の見通しにつながるとまでは言えない。
 したがって,当該情報は,公にすることによって中断会員の数が判明しただけでは,審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるとは言えないことから,法5条2号イに規定する不開示情報に該当しない。
(ウ)  「契約コース別前受金残高」欄について
 当該情報は契約コース別の契約件数及び前受金残高についてのものであるから,審査請求人の事業活動の内容をある程度明らかにするものであることは否定できないが,これを公にしたとしても,同業他社等が当該情報を利用して何らかの利益を得るという事態は想定し難いから,審査請求人にそれほどの損害をもたらすものとは言えない。したがって,当該情報は,下記(エ)で述べる「営業所・代理店別予約前受金残高」欄と同様に,当該情報が公にされることをもって直ちに審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるものと言えず,法5条2号イに掲げる不開示情報に該当しない。
(エ)  「営業所・代理店別予約前受金残高(契約件数及び前受金残高)」欄について
 当該欄に記載された情報の開示により,審査請求人の同業他社等に,審査請求人がどの地域でどのくらいの契約件数があるかを把握されたとしても,それは新規開拓の検討の際の一要因にしかなり得ず,新規に事業を行おうとする際には,人口や交通の利便性等々のビジネス環境を総合的に考慮した上で決定していくことになるものと考えられる。したがって,営業所別・代理店別の契約件数及び前受金残高のみを内容とする当該情報の開示により,同業他社の経営方針を左右し,その結果,審査請求人が重大な損害を受けるとは言えない。
 また,会員の勧誘活動は,当該情報の開示とは関係なく,同業他社との会員獲得競争の中で日常的に行われていることであり,当該情報が同業他社に知られたからといって,それが会員の引き抜きに直接つながるものとは言えず,また,仮に,当該情報が会員の勧誘活動等に利用されたとしても,審査請求人には,他の同業者と同様に,消費者に対し業務規模や経営状況について説明する機会が与えられているのであり,特に既契約者に対しては,新規契約者の場合に比べてより確実に説明する機会を有しているものである。
 したがって,当該情報は,公にすることにより,審査請求人の正当な利益を害する蓋然性があると言えず,法5条2号イに規定する不開示情報に該当しない。
(オ)  許可番号等について
 許可番号については,許可事業者ごとに付けられている登録番号にすぎず,また,「審査請求人の名称及び住所並びに代表者名(押印を除く。)」の部分については,旧商法(会社法整備法制定前)及び現行会社法に基づく株式会社登記簿等により,何人でも一定の手数料を支払うことで入手できる一般的な情報であって,法5条各号に掲げるいずれの不開示情報にも該当しない。
(2)  開示請求のあった文書の提出が義務付けられている趣旨について
 法3条に基づく開示請求は,何人に対しても認められている開示請求権に基づくものであり,その目的は,法1条に「この法律は,国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする」と明示されているとおりである。
 したがって,法3条に基づく開示請求に係る開示・不開示の判断にあたっては,個別法(本件では割賦販売法)の趣旨等とは別に,法5条に基づいて判断すべきものであり,審査請求人の主張は誤りである。

(3)  権利の濫用等について
 法3条に規定されているように,開示請求権制度は,何人に対しても等しく開示請求権を認めるものであり,開示請求者に対し,開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく,それらの利害関係によって当該行政文書の開示決定等の結論に影響を及ぼすものではないため,審査請求人の権利の濫用等の主張は誤りである。

4  結論
 以上のとおり,審査請求人の主張は,原処分の正当性を覆すものではない。


第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成20年5月14日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年7月17日  本件対象文書の見分及び審議

第5  審査会の判断の理由
1  前払式特定取引及び冠婚葬祭互助会について
(1)  前払式特定取引とは,商品の購入者又は指定役務の提供を受ける者から,商品の提供又は役務の提供に先立って,当該商品の代金又は当該指定役務の対価の全部又は一部を2月以上の期間にわたり,かつ,3回以上に分割して受領するものをいい(割賦販売法2条5項及び同法施行令1条4項),前払式特定取引業には冠婚葬祭互助会及び百貨店等を親会社とする友の会がある。

(2)  冠婚葬祭互助会とは,前払いの分割方式で会員から掛金を預かり,通常よりも安い価格で婚礼・葬式等の指定役務の施行を行うシステムであり,割賦販売法上の前払式特定取引業に該当する経済産業大臣の許可事業である(割賦販売法35条の3の2)。

2  本件対象文書の性質等
 予約前受金残高等報告書は,割賦販売法40条2項,同法施行令14条4項及び同法施行規則24条の表1号の規定に基づき,前払式特定取引業者が,毎年,4月から9月までの期間及び10月から3月までの期間における最後の月の末日から起算して50日以内に主たる営業所の所在地を所管する経済産業局長を経由して経済産業大臣に提出することが義務付けられているものである。
 本件対象文書は,前払式特定取引業者であり互助会事業者である審査請求人が,割賦販売法の規定に基づき,処分庁を通じて経済産業大臣に提出した予約前受金残高等報告書である。
 本件対象文書には,平成19年4月1日から同年9月30日までの期間について,①予約前受金並びに前払式特定取引契約件数に係る各前半期末の残高,当半期の増減及び当半期末の残高,②契約コース別の契約件数及び前受金残高,③営業所・代理店別の契約件数及び前受金残高等が記載されており,これらの情報は,法5条2号の法人に関する情報に該当するものと認められる。
 審査請求人は,本件対象文書に記載されている情報は,審査請求人にとって,正に「生命線」,「企業秘密」とも言うべき情報であって,審査基準に示す「資金調達状況その他の通常一般に入手できない財務に関する情報」に該当するのであるから,「公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」ものとして,法5条2号イに該当する旨主張しているので,開示することとされた部分の不開示情報該当性について,本件対象文書を見分した結果を踏まえ,以下検討する。

3  不開示情報該当性について
(1)  法5条2号イ該当性について

ア  「予約前受金残高」欄について
 審査請求人は,この欄には,基準日(平成19年9月30日現在)の期末残高,前期末残高及び基準期間(平成19年4月1日から同年9月30日まで)内の予約前受金の増減が記載されており,当該情報が公にされることにより,資金調達状況が一見して明らかとなってしまう旨主張している。
 しかしながら,予約前受金は,あくまでも将来の冠婚葬祭サービスの施行のための対価として会員から預かっている金銭であり,その2分の1に相当する額から営業保証金の額を差し引いた額に相当する額は,保全措置を講じるよう割賦販売法18条の3で規定されているという点からみても,一般の資金調達とは性格が異なるものと認められる。
 また,予約前受金の合計額は,貸借対照表にも記載されているところ,株式会社の貸借対照表については,会社法440条1項の規定により公告するものと定められている。また,冠婚葬祭互助会事業者の顧客である互助会の会員は,婚礼又は葬式のための便益の提供等割賦販売法施行令別表第二に定める指定役務の提供に先立って,その対価の全部又は一部を支払っていることから,会社法442条3項の「債権者」に該当し,同項の規定により,冠婚葬祭互助会事業者に対して,貸借対照表,損益計算書の謄本等の交付を請求することができ,かつ,冠婚葬祭互助会事業者はこれら債権者が当該貸借対照表及び損益計算書を第三者に交付することを防止する権利を有していないことからすれば,本件のような多数の会員を相手にする冠婚葬祭互助会事業者の貸借対照表及び損益計算書に記載されている内容は,公にすることが予定されているものと言うべきである。
 なお,審査請求人は,前払式特定取引契約件数について特に主張していないが,全体の会員数は新規募集,施行状況等により常に変動するものであり,ある一時点での会員数が判明したとしても,それが将来の施行件数につながるものではなく,また,施行の時期は予測不可能であることから,直ちに審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるとは認め難い。
 したがって,「予約前受金残高」欄に記載された情報(ただし,備考欄については次のイで述べる。)は,審査請求人が主張する「資金調達状況その他の通常一般に入手できない財務に関する情報」に該当するとは認められず,当該情報を公にしたとしても,直ちに審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるとは認められないことから,法5条2号イに規定する不開示情報に該当するものとは認められない。

イ  「予約前受金残高」欄の備考欄について
 審査請求人は,この欄には,予約前受金当期末残高のうち,雑収入として経理処理された金額の累計額が記載されており,当該情報は,処分庁の指示により,すべての互助会事業者に対して記載を求められているものであり,同業他社が見れば,備考欄の記載の意味は一見して明らかとなるところ,このような情報が同業他社に流出すれば,不良会員の割合が明らかとなるのみならず,将来の葬儀や結婚披露宴の施行につながる会員が推測されてしまうことになるのであって,審査請求人の利益は著しく侵害されてしまう旨主張している。
 当該備考欄には,雑収入に計上した前受金の残高及び契約件数を記入することになっており,冠婚葬祭互助会の会員の月掛金が所定の支払期日より正当な理由なく4か月以上遅延しているものについて,支払催告を行い,会員から契約の解除の申出があって互助会事業者が契約を解除した場合及び会員と互助会事業者との間で保留扱いの合意が成立した場合を除いた場合には,月掛金中断後5年を経過した時点で既払掛金(前受金)を雑収入に計上すること,いったん雑収入に計上した後であっても,契約の解除が行われていない場合には,会員より申出があれば互助会事業者は施行を行うこととされていること,以上の取扱いは,それまで転居等で所在不明となった会員の既払掛金の経理処理が統一的に行われていない状況であったことから,昭和55年11月20日付け通商産業省産業政策局長通達により指示されたものであることが認められる。したがって,審査請求人の備考欄の記載内容に関する主張は,誤りではない。
 しかしながら,審査請求人は,中断会員は不良会員であるとし,備考欄の記載によって不良会員の割合が明らかになると主張するが,そのことによって,なぜ審査請求人の利益が害されるのか何ら具体的な主張はないところ,中断会員が生ずる原因には様々なものが想定し得るのであって,その数が多いことが直ちに当該互助会事業者の経営上の弱点であるとは言い切れない。
 また,中断会員がどれだけ存在するかが判明したとしても,中断会員に対して施行をすることもあり得るのであって,中断会員については,互助会事業者が施行による利益を得ることは全くないと直ちに言うことはできない。さらに,その中断会員数は過去の一時点での会員数の内数であって,全体の会員数は新規募集,施行状況等により常に変動するものであり,ある一時点での会員数が判明したとしても,全体の会員数から中断会員数を差し引いた会員数が将来の施行件数につながるものではなく,しかも,施行の時期は予測不可能であり,現段階での中断会員数を除いた会員数が事業展開の見通しにつながるとまでは言えない。
 したがって,当該情報を公にすることによって中断会員の数等が判明しただけでは,本件審査請求人の正当な利益を害するおそれがあるとは認められないことから,法5条2号イに規定する不開示情報に該当するものとは認められない。

ウ  「契約コース別予約前受金残高」欄について
 審査請求人は,この欄に記載されている情報が開示されてしまえば,審査請求人の会員勧誘の強い契約コース,あるいは弱い契約コースが一見して明らかとなり,同業他社による審査請求人の会員の引き抜き又は新店舗展開の計画立案における価格選択の決定的要因となり得るのであって,現に,審査請求人は,複数の同業他社から会員引き抜き攻撃を受けている旨主張している。
 審査請求人は会員引き抜きの危険性を危ぐしているが,仮に,競争相手がどの契約コースでどのくらいの契約件数及び予約前受金残高があるかを承知したとしても,それは新店舗展開の計画立案の検討の際の一要因にしかなり得ず,これらの情報が同業他社の経営方針を左右し,その結果,審査請求人が重大な損害を受けるほどのものとは言えない。
 また,一般に,消費者が互助会事業者と契約する際には,当該互助会事業者の施行内容,価格,施行施設の設備,施設の所在地,地域の慣習及び趣味趣向等様々な要因を総合的に勘案して契約するのであり,ただ価格のみを判断基準として契約先を選択しているのではないと考えられる。
 さらに,会員の勧誘活動は,当該欄に記載された情報の開示とは関係なく,同業他社との会員獲得競争の中で日常的に行われていることであり,当該情報が同業他社に知られたからといって,それが会員の引き抜きに直接つながるものとは認められず,また,仮に,当該情報の数値が会員の勧誘活動等に利用されたとしても,審査請求人には,他の同業者と同様に,消費者に対し業務規模や経営状況について説明する機会が与えられているのであり,特に既契約者に対しては,新規契約者の場合に比べてより確実に説明する機会を有しているものである。
 したがって,当該情報が公にされることをもって直ちに審査請求人の正当な利益を害するものと認めることはできず,法5条2号イに規定する不開示情報に該当するものとは認められない。

エ  「営業所・代理店別予約前受金残高」欄について
 審査請求人は,当該情報についての具体的な主張は行っていないが,当該情報が開示されることにより,同業他社による審査請求人の会員引き抜き又は新店舗展開の計画立案における価格選択の決定的要因となり得る旨主張していると解されるところ,仮に競争相手がどの地域でどのくらいの契約件数があるかを承知したとしても,それは新規開拓の検討の際の一要因にしかなり得ず,新規に事業を行おうとする際には,人口,交通の利便性等々のビジネス環境を考慮した上で決定していくことになるものと考えられ,開示するとされた情報が同業他社の経営方針を左右し,その結果,審査請求人が重大な損害を受けるほどのものとは言えない。
 また,会員の勧誘活動は,当該欄に記載された情報の開示とは関係なく,同業他社との会員獲得競争の中で日常的に行われていること,当該情報が同業他社に知られたからといって,それが会員の引き抜きに直接つながるものとは認められないこと,また,仮に,当該情報の数値が会員の勧誘活動等に利用されたとしても,審査請求人には,消費者に対し業務規模や経営状況について説明する機会が与えられていることは,上記ウで述べたとおりである。
 したがって,当該情報が公にされることをもって直ちに審査請求人の正当な利益を害するものと認めることはできず,法5条2号イに規定する不開示情報に該当するものとは認められない。

オ  許可番号等について
 審査請求人は,許可番号,審査請求人の名称及び住所並びに代表者の氏名について特に主張していないが,許可番号については,互助会事業者ごとに付けられている登録番号にすぎないし,審査請求人の名称については,これを公にしても,割賦販売法で提出することが義務付けられている予約前受金残高等報告書を当該審査請求人が提出したということが分かるだけである。また,審査請求人の住所及び代表者の氏名については,審査請求人の名称が分かれば,商業登記法に基づく株式会社登記簿により,何人でも一定の手数料を納付することで入手できる一般的な情報である。
 したがって,以上の各記載は,法5条各号に掲げるいずれの不開示情報にも該当しない。

(2)  開示請求のあった文書の提出が義務付けられている趣旨について
 審査請求人は,割賦販売法によって予約前受金残高等報告書の提出が義務付けられている趣旨は,前受金保全措置に関する規制を的確に行うことにあり,この趣旨が全うされるためには,当該情報は行政機関が把握するのみで必要十分であって,同業他社を始めとする第三者にまで当該情報が開示されることは,審査請求人の競争上の地位を害するだけである旨主張しているが,法3条に基づく開示請求に係る開示・不開示の判断に当たっては,割賦販売法の趣旨等とは別に,法5条の規定に基づいて判断すべきものであり,審査請求人の主張は認められない。

(3)  権利の濫用について
 審査請求人は,本件開示請求は,同業他社によるものと推測され,そうであれば,正に本件開示請求は,競業者の情報を取得するためという不正な目的に基づくものであるから,権利の濫用として排除すべきたぐいのものである旨主張しているが,法3条に規定されているように,開示請求権制度は,何人に対しても等しく開示請求権を認めるものであり,開示請求者に対し,開示請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく,また,それらの事情によって当該行政文書の開示決定等の結論に影響を及ぼすものではないため,審査請求人の主張は認められない。

(4)  審査請求人のその他の主張について
 審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

4  本件一部開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その一部を開示するとした決定については,開示することとされた部分の記載内容は法5条2号イに該当しないと認められるので,妥当であると判断した。

(第1部会)
委員 大喜多啓光,委員 村上裕章,委員 吉岡睦子


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。