(答申第80号)
答申
第1 審査会の結論
岐阜県知事( 以下「実施機関」という。)が行った公文書部分公開決定は、妥当である。
第2 諮問事案の概要
1 公文書の公開請求
請求者は、岐阜県情報公開条例(平成12年岐阜県条例第56号。以下「条例」という。)第11条第1項の規定に基づき、平成19年11月19日付けで、実施機関に対し、「特定法人が○○市△△町内に設置している最終処分場の設置届に関する書類、同上施設に対する行政指導の記録(平成16、17、18年度)」の公開を請求した。
2 実施機関の決定
実施機関は、これに対し、東濃振興局が保有する産業廃棄物処理施設設置届、平成18年3月14日付け報告書、平成18年7月13日付け報告書及び産業廃棄物立入検査チェック表(以下「本件対象公文書」という。)を特定した上で、平成19年11月29日付け東振第1169号の2により、特定法人に対して本件対象公文書の公開について条例第14条第2項の規定による意見聴取を行ったところ、同年12月7日付けで、特定法人から、「請求された公文書すべて」について、「公開されると支障を生じる」との回答を得た。
実施機関は、本件対象公文書中、従業員の氏名及び印影並びに個人の電話番号については条例第6 条第1号に、特定法人の印影及び協定書については条例第6 条第3号に該当するとして非公開としたものの、その他の部分については公開することとする公文書部分公開決定( 以下「本件処分」という。)を行い、平成19年12月28日付け東振第1169号の3により、請求者に通知するとともに、特定法人に対しては、平成19年12月28日付け東振第1169号の4により、当該法人から「公開されると支障を生じる」と回答された情報を公開することとする旨の通知及び本件処分に対し不服申立てをすることができる旨等の教示を行った(本件対象公文書名及び公開する部分は、別表のとおり)。
3 異議申立て
特定法人( 以下、「異議申立人」という。)は、本件処分を不服として、平成20年1月11日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、実施機関に対して異議申立てを行った。
実施機関は、平成20年1月15日付けで、その職権により、本件異議申立てに係る決定をするまでの間、公開の実施を停止することとし、異議申立人および請求者に通知した。
また、請求者( 以下「参加人」という。) より平成20年2月5日付けで、本件異議申立ての利害関係人として審理手続に参加したい旨の申請があったため、実施機関は、平成20年2月12日付け廃対第415号で参加することを許可した。
第3 異議申立人の主張
1 異議申立ての趣旨
本件処分を取り消すとの決定を求めるものである。
2 異議申立ての理由
異議申立人が、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
条例第6条第3号(事業活動情報)該当性について
本件情報公開の対象となっている産業廃棄物処理施設については、これまでに当該施設を誹謗中傷する内容がホームページに掲載されており、ホームページを閲覧した異議申立人の顧客から搬入の解約が相次ぎ経営的に圧迫を受けている。( 異議申立人が推測する)請求者は、公開請求によって得た情報を不適正に使用しようとしており、本件公開請求の対象となっている情報が開示されると、その情報を基にさらに悪質なねつ造文書が作成され、ホームページに掲載されることによって、異議申立人の社会的評価・信用がますます損なわれ、事業活動に支障を及ぼすことは明らかである。
また、個別的には、対象公文書中の行政指導の記録には事実と異なる内容が記載されており、当該文書が公開されることにより、異議申立人の信用は悪化し、最悪の場合には廃業に追い込まれるおそれがある。
以上のとおり、本件公開請求の対象となる情報は、条例第6条第3号に該当し、非公開とされるべきである。
なお、施設の近隣住民に対しては、健康上の利益等の保護を最優先に考えなければならないが、異議申立人は定期的に情報開示等を行っており、利益保護への対応は既に図られており、条例第6条第3号ただし書には該当しない。
第4 実施機関の主張
実施機関が公開決定等理由説明書及び口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
1 本件対象公文書について
対象公文書は、異議申立人が昭和59年に当時の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃掃法」という。)第15条第1項の規定により実施機関に提出した産業廃棄物処理施設設置届出書及び実施機関が平成16年から平成18年の間に異議申立人の施設に対して立入調査を行った際の行政指導の記録である。
2 本件処分について
実施機関が本件処分を行った理由は、次のとおりである。
条例第6条第3号(事業活動情報)該当性について
公開を受けた者が公開によって得た情報を不適正に使用し、第三者の権利利益を侵害してはならないことは当然のことであるが、情報を公開するか否かの判断は、公開請求の理由や利用の目的等の個別の事情により左右されるものではない。
異議申立人から申立てのあった行政指導の記録に記載された内容は、法令違反の事実を指摘したものではなく、継続して適正処理を実施させるためのものであり、その情報を公開することにより、法人の正当な利益等を損なうおそれがある情報であるとはいえないので、条例第6条第3号の事業活動情報には該当しない。
本件公開請求の対象となっている情報には産業廃棄物処理施設にかかる排水処理設計図や排水処理フローシートといった技術的なノウハウが含まれており、法人の事業活動に関する情報が含まれているといえるが、当該施設は周辺の環境に影響を与える危険性のある物質を取り扱う施設であり、周辺住民の健康等生活上の利益保護の観点から、これらの情報は、条例第6 条第3号ただし書に該当し、公開されるべきものである。
異議申立人は、本件施設の近隣住民に対し、一定範囲での情報提供や立入検査を実施しているが、施設の処理過程等を個別に説明しているわけではなく、情報の提供先も地元自治会等一部の者に限られているところ、当該施設の影響を受けるおそれのある周辺住民は地元自治会に限らず、広範に及ぶことが考えられることから、異議申立人の情報開示により周辺住民の健康等生活上の利益保護が十分に図られているとはいえない。
第5 参加人の主張
参加人が口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
当該施設周辺においては、過去において汚水が流出し、藻の大量繁殖、川魚の大量死、悪臭があった。その後施設は改善されてはいるものの、過去の経緯を考えると危険な施設に変わりはない。
今回の情報公開請求は、定期的に行われる周辺住民への説明会の際に示された資料の中の数値異常の原因究明、住民の不安を除去するために行ったものである。
施設の設置許可や構造に関する情報は、どこの都道府県においても公開とされているものであり、公開されてしかるべきである。
第6 審査会の判断
当審査会は、本件諮問事案について審査した結果、次のように判断する。
1 本件対象公文書について
本件対象公文書は、異議申立人が廃掃法第15条第1項の規定により実施機関に提出した産業廃棄物処理施設設置届出書及び実施機関が平成16年から平成18年の間に異議申立人の施設に対して立入調査を行った際の行政指導の記録である。
産業廃棄物処理施設設置届出書の内容は、処理施設設置に関する施設の処理工程、数量及び構造等に関する情報であり、行政指導の記録の内容は、立入調査を行って異議申立人に指導した内容や現地の写真である。
2 本件処分に係る具体的な判断について
異議申立人は、条例第6条第3号に規定する非公開情報に該当し、同号ただし書には該当しない旨の主張をしていると考えられるので、本件対象公文書における条例第6条第3号の該当性について以下のとおり判断する。
条例第6条第3号該当性について
ア 条例第6条第3号の趣旨について
条例第6条第3号本文は、法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する趣旨から、法人等又は事業を営む個人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められる情報については公開しないことを定めたものである。
当該規定の解釈及び運用について、岐阜県情報公開条例解釈運用基準は、「競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」とは、単に周知性のない誰もが容易に知ることができない情報、不特定の無関係の者に知られたくない情報というだけでは足りず、公開することにより正当な利益が損なわれる可能性が具体的、客観的かつ現実的なものでなければならないとしている。
また、条例第6 条第3号ただし書は、法人等又は事業を営む個人の事業活動により、現に発生しているか、又は将来発生するおそれがある危害等から人の生命、健康、生活又は財産を保護するために、非公開とすることにより保護される法人等の事業活動上の利益より、公開することにより保護されるこれらの公共の利益が優越すると認められる場合には、公文書を公開しなければならないとするものである。
イ 条例第6条第3号該当性について
本件対象公文書には、異議申立人の施設の処理工程や構造、実施機関から受けた行政指導の内容等が記載されており、これらは異議申立人の事業活動に関する情報といえることから、当該情報を公開することにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるかどうかについて判断する必要がある。
この点、異議申立人は、本件対象公文書全体について、(異議申立人が推測する)請求者が、公開された情報を基に悪質なねつ造文書を作成し、異議申立人を攻撃するおそれがあり、それによって異議申立人の事業活動に支障を及ぼすこととなるので、本件公開請求の対象となっている情報は、条例第6条第3号に該当し、すべてを非公開とすべきであると主張する。
しかし、条例第6条第3号にいう「法人等又は当該事業を営む個人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれる」かどうかの判断は、公開及び非公開の対象となる情報自体について判断されるものであり、異議申立人が主張するように「特定の者が公開された情報を悪用することによって、事業活動に支障が生じる」という事情により、公開されるべき情報が非公開とされる情報になるということではない。
また、条例第5条に規定されているように、条例に基づく情報公開制度は、何人に対しても等しく公開請求権を認めるものであり、公開請求者に対し、公開請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく、またそれらの事情によって当該公文書の公開決定等の結論に影響を及ぼすものではない。よって、異議申立人の主張は認められない( もっとも、公文書の公開を受けた者は公開によって得た情報を適正に使用しなければならない責務を負っている(条例第4条)。)。
次に、異議申立人が個別的に非公開を求めている情報について判断する。
まず、異議申立人は、平成18年7月13日付け報告書中の記載内容について、事実と異なる内容が記載されており、当該文書を公開することにより、異議申立人の信用は悪化し、最悪の場合廃業に追い込まれてしまうおそれがあるので非公開とすべきであると主張する。
しかし、当審査会において対象公文書を見分し、実施機関及び異議申立人の口頭意見陳述を実施した結果、記載内容が事実と明らかに異なるとまではいえず、また記載内容を公開することにより異議申立人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるものとは認められず、条例第6条第3号に該当すると認めることはできない。
次に、異議申立人は、実施機関が条例第6条第3号ただし書を適用して公開とした産業廃棄物処理施設設置届添付の排水処理設計図及び排水処理フローシートについて、健康上の利益等の保護を最優先に考えなければならない本件施設の近隣住民に対しては定期的に施設の情報開示を行っており、条例6条第3号ただし書の利益保護は既に図られていると主張する。
しかし、異議申立人が実施する近隣住民に対する情報開示は、一定の情報を一部の地元自治会に提供しているにすぎず、当該施設で処理を行う物質が、水であるということを鑑みると、生活環境への影響は地元自治会に限らず、施設下流域まで広域に及ぶものと考えられ、異議申立人による自主的な情報開示によって、必要十分な範囲の住民等の健康等生活上の利益保護が図られているとは必ずしもいえず、なお公開の必要性は高いと考えられ、条例第6 条第3号ただし書に該当すると認められる。
3 結論
以上により、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第7 審査会の処理経過
審査会は、本件諮問について、以下のように審査を行った。
(参考) 岐阜県情報公開審査会委員
(五十音順)
別表
1 東振第1169号の3(部分公開)
第1 審査会の結論
岐阜県知事( 以下「実施機関」という。)が行った公文書部分公開決定は、妥当である。
第2 諮問事案の概要
1 公文書の公開請求
請求者は、岐阜県情報公開条例(平成12年岐阜県条例第56号。以下「条例」という。)第11条第1項の規定に基づき、平成19年11月19日付けで、実施機関に対し、「特定法人が○○市△△町内に設置している最終処分場の設置届に関する書類、同上施設に対する行政指導の記録(平成16、17、18年度)」の公開を請求した。
2 実施機関の決定
実施機関は、これに対し、東濃振興局が保有する産業廃棄物処理施設設置届、平成18年3月14日付け報告書、平成18年7月13日付け報告書及び産業廃棄物立入検査チェック表(以下「本件対象公文書」という。)を特定した上で、平成19年11月29日付け東振第1169号の2により、特定法人に対して本件対象公文書の公開について条例第14条第2項の規定による意見聴取を行ったところ、同年12月7日付けで、特定法人から、「請求された公文書すべて」について、「公開されると支障を生じる」との回答を得た。
実施機関は、本件対象公文書中、従業員の氏名及び印影並びに個人の電話番号については条例第6 条第1号に、特定法人の印影及び協定書については条例第6 条第3号に該当するとして非公開としたものの、その他の部分については公開することとする公文書部分公開決定( 以下「本件処分」という。)を行い、平成19年12月28日付け東振第1169号の3により、請求者に通知するとともに、特定法人に対しては、平成19年12月28日付け東振第1169号の4により、当該法人から「公開されると支障を生じる」と回答された情報を公開することとする旨の通知及び本件処分に対し不服申立てをすることができる旨等の教示を行った(本件対象公文書名及び公開する部分は、別表のとおり)。
3 異議申立て
特定法人( 以下、「異議申立人」という。)は、本件処分を不服として、平成20年1月11日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づき、実施機関に対して異議申立てを行った。
実施機関は、平成20年1月15日付けで、その職権により、本件異議申立てに係る決定をするまでの間、公開の実施を停止することとし、異議申立人および請求者に通知した。
また、請求者( 以下「参加人」という。) より平成20年2月5日付けで、本件異議申立ての利害関係人として審理手続に参加したい旨の申請があったため、実施機関は、平成20年2月12日付け廃対第415号で参加することを許可した。
第3 異議申立人の主張
1 異議申立ての趣旨
本件処分を取り消すとの決定を求めるものである。
2 異議申立ての理由
異議申立人が、異議申立書、意見書及び口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
条例第6条第3号(事業活動情報)該当性について
本件情報公開の対象となっている産業廃棄物処理施設については、これまでに当該施設を誹謗中傷する内容がホームページに掲載されており、ホームページを閲覧した異議申立人の顧客から搬入の解約が相次ぎ経営的に圧迫を受けている。( 異議申立人が推測する)請求者は、公開請求によって得た情報を不適正に使用しようとしており、本件公開請求の対象となっている情報が開示されると、その情報を基にさらに悪質なねつ造文書が作成され、ホームページに掲載されることによって、異議申立人の社会的評価・信用がますます損なわれ、事業活動に支障を及ぼすことは明らかである。
また、個別的には、対象公文書中の行政指導の記録には事実と異なる内容が記載されており、当該文書が公開されることにより、異議申立人の信用は悪化し、最悪の場合には廃業に追い込まれるおそれがある。
以上のとおり、本件公開請求の対象となる情報は、条例第6条第3号に該当し、非公開とされるべきである。
なお、施設の近隣住民に対しては、健康上の利益等の保護を最優先に考えなければならないが、異議申立人は定期的に情報開示等を行っており、利益保護への対応は既に図られており、条例第6条第3号ただし書には該当しない。
第4 実施機関の主張
実施機関が公開決定等理由説明書及び口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
1 本件対象公文書について
対象公文書は、異議申立人が昭和59年に当時の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃掃法」という。)第15条第1項の規定により実施機関に提出した産業廃棄物処理施設設置届出書及び実施機関が平成16年から平成18年の間に異議申立人の施設に対して立入調査を行った際の行政指導の記録である。
2 本件処分について
実施機関が本件処分を行った理由は、次のとおりである。
条例第6条第3号(事業活動情報)該当性について
公開を受けた者が公開によって得た情報を不適正に使用し、第三者の権利利益を侵害してはならないことは当然のことであるが、情報を公開するか否かの判断は、公開請求の理由や利用の目的等の個別の事情により左右されるものではない。
異議申立人から申立てのあった行政指導の記録に記載された内容は、法令違反の事実を指摘したものではなく、継続して適正処理を実施させるためのものであり、その情報を公開することにより、法人の正当な利益等を損なうおそれがある情報であるとはいえないので、条例第6条第3号の事業活動情報には該当しない。
本件公開請求の対象となっている情報には産業廃棄物処理施設にかかる排水処理設計図や排水処理フローシートといった技術的なノウハウが含まれており、法人の事業活動に関する情報が含まれているといえるが、当該施設は周辺の環境に影響を与える危険性のある物質を取り扱う施設であり、周辺住民の健康等生活上の利益保護の観点から、これらの情報は、条例第6 条第3号ただし書に該当し、公開されるべきものである。
異議申立人は、本件施設の近隣住民に対し、一定範囲での情報提供や立入検査を実施しているが、施設の処理過程等を個別に説明しているわけではなく、情報の提供先も地元自治会等一部の者に限られているところ、当該施設の影響を受けるおそれのある周辺住民は地元自治会に限らず、広範に及ぶことが考えられることから、異議申立人の情報開示により周辺住民の健康等生活上の利益保護が十分に図られているとはいえない。
第5 参加人の主張
参加人が口頭意見陳述において主張しているところは、おおむね次のとおりである。
当該施設周辺においては、過去において汚水が流出し、藻の大量繁殖、川魚の大量死、悪臭があった。その後施設は改善されてはいるものの、過去の経緯を考えると危険な施設に変わりはない。
今回の情報公開請求は、定期的に行われる周辺住民への説明会の際に示された資料の中の数値異常の原因究明、住民の不安を除去するために行ったものである。
施設の設置許可や構造に関する情報は、どこの都道府県においても公開とされているものであり、公開されてしかるべきである。
第6 審査会の判断
当審査会は、本件諮問事案について審査した結果、次のように判断する。
1 本件対象公文書について
本件対象公文書は、異議申立人が廃掃法第15条第1項の規定により実施機関に提出した産業廃棄物処理施設設置届出書及び実施機関が平成16年から平成18年の間に異議申立人の施設に対して立入調査を行った際の行政指導の記録である。
産業廃棄物処理施設設置届出書の内容は、処理施設設置に関する施設の処理工程、数量及び構造等に関する情報であり、行政指導の記録の内容は、立入調査を行って異議申立人に指導した内容や現地の写真である。
2 本件処分に係る具体的な判断について
異議申立人は、条例第6条第3号に規定する非公開情報に該当し、同号ただし書には該当しない旨の主張をしていると考えられるので、本件対象公文書における条例第6条第3号の該当性について以下のとおり判断する。
条例第6条第3号該当性について
ア 条例第6条第3号の趣旨について
条例第6条第3号本文は、法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する趣旨から、法人等又は事業を営む個人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められる情報については公開しないことを定めたものである。
当該規定の解釈及び運用について、岐阜県情報公開条例解釈運用基準は、「競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」とは、単に周知性のない誰もが容易に知ることができない情報、不特定の無関係の者に知られたくない情報というだけでは足りず、公開することにより正当な利益が損なわれる可能性が具体的、客観的かつ現実的なものでなければならないとしている。
また、条例第6 条第3号ただし書は、法人等又は事業を営む個人の事業活動により、現に発生しているか、又は将来発生するおそれがある危害等から人の生命、健康、生活又は財産を保護するために、非公開とすることにより保護される法人等の事業活動上の利益より、公開することにより保護されるこれらの公共の利益が優越すると認められる場合には、公文書を公開しなければならないとするものである。
イ 条例第6条第3号該当性について
本件対象公文書には、異議申立人の施設の処理工程や構造、実施機関から受けた行政指導の内容等が記載されており、これらは異議申立人の事業活動に関する情報といえることから、当該情報を公開することにより、異議申立人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるかどうかについて判断する必要がある。
この点、異議申立人は、本件対象公文書全体について、(異議申立人が推測する)請求者が、公開された情報を基に悪質なねつ造文書を作成し、異議申立人を攻撃するおそれがあり、それによって異議申立人の事業活動に支障を及ぼすこととなるので、本件公開請求の対象となっている情報は、条例第6条第3号に該当し、すべてを非公開とすべきであると主張する。
しかし、条例第6条第3号にいう「法人等又は当該事業を営む個人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれる」かどうかの判断は、公開及び非公開の対象となる情報自体について判断されるものであり、異議申立人が主張するように「特定の者が公開された情報を悪用することによって、事業活動に支障が生じる」という事情により、公開されるべき情報が非公開とされる情報になるということではない。
また、条例第5条に規定されているように、条例に基づく情報公開制度は、何人に対しても等しく公開請求権を認めるものであり、公開請求者に対し、公開請求の理由や利用の目的等の個別的事情を問うものではなく、またそれらの事情によって当該公文書の公開決定等の結論に影響を及ぼすものではない。よって、異議申立人の主張は認められない( もっとも、公文書の公開を受けた者は公開によって得た情報を適正に使用しなければならない責務を負っている(条例第4条)。)。
次に、異議申立人が個別的に非公開を求めている情報について判断する。
まず、異議申立人は、平成18年7月13日付け報告書中の記載内容について、事実と異なる内容が記載されており、当該文書を公開することにより、異議申立人の信用は悪化し、最悪の場合廃業に追い込まれてしまうおそれがあるので非公開とすべきであると主張する。
しかし、当審査会において対象公文書を見分し、実施機関及び異議申立人の口頭意見陳述を実施した結果、記載内容が事実と明らかに異なるとまではいえず、また記載内容を公開することにより異議申立人の競争上の地位その他正当な利益が損なわれるものとは認められず、条例第6条第3号に該当すると認めることはできない。
次に、異議申立人は、実施機関が条例第6条第3号ただし書を適用して公開とした産業廃棄物処理施設設置届添付の排水処理設計図及び排水処理フローシートについて、健康上の利益等の保護を最優先に考えなければならない本件施設の近隣住民に対しては定期的に施設の情報開示を行っており、条例6条第3号ただし書の利益保護は既に図られていると主張する。
しかし、異議申立人が実施する近隣住民に対する情報開示は、一定の情報を一部の地元自治会に提供しているにすぎず、当該施設で処理を行う物質が、水であるということを鑑みると、生活環境への影響は地元自治会に限らず、施設下流域まで広域に及ぶものと考えられ、異議申立人による自主的な情報開示によって、必要十分な範囲の住民等の健康等生活上の利益保護が図られているとは必ずしもいえず、なお公開の必要性は高いと考えられ、条例第6 条第3号ただし書に該当すると認められる。
3 結論
以上により、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
第7 審査会の処理経過
審査会は、本件諮問について、以下のように審査を行った。
審査の経過 | |
平成20年1月25日 | ・諮問を受けた。 |
平成20年2月13日 | ・実施機関から公開決定等理由説明書を受領した。 |
平成20年2月19日 | ・異議申立人、参加人に公開決定等理由説明書を送付した。 |
平成20年3月24日 (第76回審査会) | ・諮問事案の審議を行った。 |
平成20年3月25日 | ・異議申立人から意見書を受領した。 |
平成20年3月26日 | ・実施機関に異議申立人からの意見書を送付した。 |
平成20年5月19日 (第77回審査会) | ・参加人から口頭意見陳述を受けた。 ・諮問事案の審議を行った。 |
平成20年5月21日 (第78回審査会) | ・実施機関、異議申立人から口頭意見陳述を受けた。 ・諮問事案の審議を行った。 |
平成20年6月16日 (第79回審査会) | ・諮問事案の審議を行った。 |
(参考) 岐阜県情報公開審査会委員
役職名 | 氏名 | 職業等 | 備考 |
粟津明博 | 朝日大学法学部教授 | ||
小森正悟 | 弁護士 | ||
羽田野晴雄 | 税理士 | ||
会長 | 森川幸江 | 弁護士 | |
山田洋一 | 岐阜県商工会議所連合会専務理事 |
(五十音順)
別表
1 東振第1169号の3(部分公開)
年月日 | 公文書名 | 公開する部分 | |
1 | S59. 9.27 | 産業廃棄物処理施設(最終処分場)設置届出書 | ・設置場所及び品目 ・地質調査平面図、断面線図、柱状図 ・地質調査地質柱状図のうち技術者名を除いた部分 ・洪水調整必要容量計算書、流域面積図、流出土砂計算書、沈砂地流入面積図、沈砂地容量計算書、水通し断面計算、えん堤の安定計算 ・排水流量計算書、排水施設数値表、集水区域図、排水施設計画流量計算書、浸出液量の算定、日平均降雨量の計算 ・暗渠排水管係数計算書、排水施設数値表、排水施設計画流量計算書、暗渠排水(地下浸透水)計算、暗渠排水管係数計算書、排水施設数値表、排水施 設計画流量計算書(地下浸透水) ・土積計算書、汚水処理装置設計計算書、汚水処理装置仕様書 ・埋立工事管理組織票のうち個人の氏名を除いた部分 ・緊急時の体制のうち個人の電話番号を除いた部分 ・事故処理要領のうち個人の電話番号を除いた部分 ・登記簿謄本、副申書 ・利害関係者同意書のうち印影を除いた部分 ・隣地土地所有者承諾書のうち印影を除いた部分 ・土地所有者等関係権利者同意書のうち印影を除いた部分 ・誓約書のうち印影を除いた部分 ・添付図面 |
2 | H18. 3.14 | 報告書(H18.3.14) | ・個人の氏名を除いた部分 |
3 | H18. 7.13 | 報告書 (H18.7.13) | ・個人の氏名を除いた部分 |
4 | H18. 9. 7 | 産業廃棄物立入検査チェック票 | ・立会者氏名及び顔部分の像を除いた部分 |