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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

滋賀県情報公開審査会 答申第27号 意見交換会録音テープ関係

2006年03月06日 | 事務・事業に関する情報
答申第27号
(諮問第32号)

答 申


第1 審査会の結論
滋賀県知事(以下「実施機関」という。)が、「9月25日 志賀町大物区意見交換会録音テープ」(以下「本件対象公文書」という。)の全部を非公開とした決定について、個人(滋賀県職員(職務で志賀町大物区意見交換会に参加した職員)および志賀町長を除く)の発言部分を非公開とした決定は妥当であるが、その他の部分は公開すべきである。

第2 異議申立てに至る経過
1 公文書の公開の請求
平成16年10月1日、異議申立人は、滋賀県情報公開条例(平成12 年滋賀県条例第113号。以下「条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、実施機関に対して、本件対象公文書の公開請求(以下「本件公開請求」という。)を行った。
2 実施機関の決定
同年10月18日、実施機関は、本件公開請求に係る公文書として、本件対象公文書を特定し、条例第6条第1号および条例第6条第6号に該当する情報が含まれていることを理由として、非公開の決定(以下「本件処分」という。)を行い、異議申立人に通知した。
3 異議申立て
同年10月20日、異議申立人は、行政不服審査法(昭和37 年法律第160 号)第6条の規定に基づき、本件処分を不服として実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容
(略)


第4 実施機関の説明要旨
(略)


第5 審査会の判断
1 審査会の判断理由
(1) 基本的な考え方について
条例の基本理念は、前文、第1条および第3条等に規定されているように、県の保有する情報は県民の共有財産であり、したがって、公開が原則であって、県は県政の諸活動を県民に説明する責務を負うものであり、県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにすることにより、県民の県政への理解、参画を一層促進し、県民と県との協働による県政の進展に寄与しようとするものである。
しかし、県の保有する情報の中には、公開することにより、個人や法人等の正当な権利、利益を侵害するものや、行政の適正な執行を妨げ、あるいは適正な意思形成に支障を生じさせ、ひいては県民全体の利益を損なうこととなるものもある。このため、条例では、県の保有する情報は公開を原則としつつ、例外的に公開しないこととする事項を第6条において個別具体的に定めている。
実施機関は、請求された情報が条例第6条の規定に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものであり、同条に該当するか否かについては、条例の基本理念から厳正に判断されるべきものである。
当審査会は、この基本的な考え方に基づき以下のとおり判断する。
(2) 本件対象公文書について
本件対象公文書は、「9月25日 志賀町大物区意見交換会録音テープ」である。
当該意見交換会は、大物区長、大物区の住民、滋賀県職員、志賀町長、志賀町職員、財団法人滋賀県環境事業公社職員が参加し、①区長挨拶、②志賀町長挨拶、③県からの説明、④意見交換の順で進行されたものである。
当審査会が本件対象公文書の内容を確認したところ、本件対象公文書には①から④のうち、主に④意見交換の部分が記録されているが、その前に行われた大物区長および志賀町長と住民の間で行われた会の周知方法等に関するやりとりも記録されていることが認められる。また、本件対象公文書には、大物区長、大物区の住民、滋賀県職員、志賀町長の発言が記録されている。志賀町職員および財団法人滋賀県環境事業公社職員の発言は、本件対象公文書には記録されていない。
なお、実施機関は当該意見交換会の④意見交換の部分を中心に概要をまとめた会議概要を作成しているが、これについては、本件公開請求とは別に異議申立人の求めに応じて既に情報提供されている。
実施機関は、条例第6条第1号および条例第6条第6号に該当する情報が含まれているとして本件対象公文書全体を非公開にすべきであるとしており、以下、非公開情報該当性について検討する。
(3)条例第6条第1号該当性について
条例第6条第1号は、公開請求された公文書に「個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるもの」が記録されている場合は、原則として当該公文書を公開しないことを定めたものである。
また、本号ただし書は、上記のような情報であっても、「ア 法令もしくは条例の規定によりまたは慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報」、「イ 人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」、「ウ 当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職および職務遂行の内容に係る部分」については、本号の非公開情報から除外し、例外的に公開することとしている。
実施機関は、本件対象公文書に記録されている情報について、条例第6条第1号本文に該当する旨を主張している。一方、異議申立人は、条例第6条第1号本文に該当しない旨を主張している。また、異議申立人は、同号ただし書のいずれかに該当するとの主張は明確には行っていないものの、ただし書アおよびウに該当するともとれる主張を行っている。
よって、本号ただし書アおよびウの該当性についても検討する。
ア 条例第6条第1号本文該当性について
実施機関の説明によれば、本件に係る意見交換会は、志賀町大字栗原地先に計画されている廃棄物処理施設整備計画について、住民に正確な情報を伝えるとともに、住民からの率直な意見や疑問を聴取することなどを目的として開催されたものである。同計画に係る問題は、計画の賛否を巡って町内で様々な意見の対立があるなど、町を二分するような複雑な問題であることがうかがわれる。
本件公開請求は、志賀町大物区で開催されたこうした意見交換会における発言が記録された録音テープの公開を求めたものである。
実施機関は、本件対象公文書は特定の個人の発言した内容が肉声により記録されたもので、この発言の中には、自ら氏名を名乗ることや前後の発言の内容により特定の個人の発言であることがわかる場合があるほか、そうでない場合であっても、区単位で意見交換会が開催されていることから、肉声により発言者を特定することが可能であるとして、本件対象公文書に記録された発言は、個人に関する情報であって特定の個人を識別することが可能なものであると主張する。
それに対して異議申立人は、意見交換会参加者以外の者にとっては当該録音テープを聞いても誰が発言しているのかは特定できず、発言には個人識別性がない旨を主張する。
たしかに、本件対象公文書に記録されている発言は、意見交換会参加者や地域住民等の関係者であれば発言内容や肉声から発言者を特定することが可能であるものの、そうした関係者以外の者であれば録音テープに記録された肉声のみをもって個人を識別することは通常不可能と考えられる。
しかしながら、本件に係る意見交換会が扱う廃棄物処理施設整備計画に係る問題は、これを争点の一つとして町長の解職請求や二回の町長選挙執行が行われるなど、町を二分するような問題となっていたことがうかがわれるところであり、本件対象公文書は、こうした非常に複雑な問題を扱った意見交換会において参加者が自らの意見、考え方等を述べた発言を記録したものであり、しかも、当審査会が本件対象公文書の内容を確認したところ、参加者より録音は行わずオフレコで行いたい旨の発言があるなど参加者の中には外部への公表を望まない者もいるという状況下で録音されたものであったことが認められるものである。
このようなことから、関係者以外の者であれば特定の個人が識別されないからといって公開すると、一部の関係者によって特定の個人が識別され、結果として個人の意見や考え方が明らかになり、有形無形の不愉快な影響が及ぼされるなど、個人の権利利益が害されるおそれがないとはいえない。つまり、本件対象公文書に記録された情報の個人識別性は、当該意見交換会で発言した住民と他の参加者、あるいは地域住民との間において格別に問題となるという特殊性を有しているものであると考えられる。
このように関係者以外の者であれば個人を識別できない場合でも、関係者によって個人が識別され、権利利益が侵害されることこそが特に問題となるような事案については、関係者が特定の個人を識別できることをもって、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものに該当すると判断するのが相当である。
以上のことから、本件対象公文書に記録された情報は、いずれも条例第6条第1号本文に該当すると判断する。
イ 条例第6条第1号ただし書ア該当性について
異議申立人は、意見交換会は、公開で開催されているものであり、そこに記録された発言は個人に関する情報に該当せず、また、区単位で開催されたようであるので参加者は誰がどのような発言をしたかを知っているし、発言者もその場で個人の権利や利益のことではなく公の利益という観点から発言しているという意識を当然持っているので公にされることを想定もしくは許容していると解されるなどと主張する。
しかしながら、本件に係る意見交換会は、大物区という特定の地域において、大物区の住民を対象に開催したもので、このような出席者の範囲が限定された会合での発言が広く一般に公開されることを発言者が想定もしくは許容しているとは通常考えられない。また、個人情報であるという点に関しては、仮に発言者が公の利益という観点から発言しているという意識を持って発言していたとしても変わりはない。
また、異議申立人は、その場にいた参加者によって個人が識別されること、発言者がそのことを容認していることから今更秘密にする必要は生じないなどと主張する。
たしかに、会合の場で発言する以上、その場にいた参加者に発言者である個人が識別されるのは当然のことである。しかしながら、そのようなことがそこでの発言内容を広く一般に公開すべきとする理由になるとは考えられない。また、この主張は、前述したように参加者より録音は行わずオフレコで行いたい旨の発言があるなど参加者の中には外部への公表を望まない者もいたという事実を考慮すると妥当とは考えられない。
以上のことから、本件対象公文書に記録された情報は、いずれも条例第6条第1号ただし書アに該当しないと判断する。
ウ 条例第6条第1号ただし書ウ該当性について
異議申立人は、本件対象公文書に記録されている①区長挨拶、②志賀町長挨拶、③県からの説明の部分については全く非公開にする理由は存在せず、また、担当職員発言内容、参加者発言内容ともに個人的な利益や権利を含むことは殆どあり得ず「個人の利益や権利を害する」という条項には該当しないと主張している。
そこで、本件対象公文書に記録される情報のうち、ただし書ウに該当するものがあるか否かについて検討する。
まず、大物区の住民が一私人として行う発言が、ただし書ウに該当しないことは明らかである。また、志賀町における区長は公務員には該当しないものであるため、大物区長が区長として行う発言についても、ただし書ウには該当しない。
次に公務員である滋賀県職員および志賀町長の発言部分がただし書ウに該当するか否かについて検討する。
当審査会が本件対象公文書の内容を確認したところ、志賀町長の発言内容は、意見交換会の周知方法に係る住民からの質問に対する回答と閉会時の挨拶であり、滋賀県職員の発言は、廃棄物処理施設整備計画に係る住民からの質問に対する回答であることが確認できた。これらの発言内容の全てが、公務員として行われた職務上の発言であると認められる。
以上のことから、本件対象公文書に記録された情報のうち、滋賀県職員および志賀町長の発言部分については、条例第6条第1号ただし書ウに該当すると判断する。
(4)条例第6条第6号該当性について
条例第6条第6号は、公開請求された公文書に「県の機関または国、独立行政法人等もしくは他の地方公共団体が行う事務または事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務または事業の性質上、当該事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」がある情報が記録されている場合は、当該公文書を公開しないことを定めたものである。
実施機関は、本件対象公文書を公開すれば、今後県が実施する住民との意見交換会等において、自由闊達な意見交換を期待することが困難となり、事務事業の遂行に支障を及ぼすおそれがあると主張し、一方、異議申立人は、公開したとしても今後県が実施する住民との意見交換会等において、自由闊達な意見交換を阻止することにはならないと主張している。
なお、本件対象公文書に記録された発言部分のうち、個人(滋賀県職員および志賀町長を除く)の発言部分については、前述したとおり条例第6条第1号に該当し、非公開情報となるものであり、この部分は、条例第6条第6号該当性を判断するまでもなく非公開が妥当と判断できる。
よって、以下、条例第6条第1号で非公開情報に該当しないと判断した滋賀県職員および志賀町長の発言部分についてのみ、条例第6条第6号該当性について検討する。
本件対象公文書に記録される情報のうち、滋賀県職員および志賀町長の発言については、前述したように、公務員として行われた職務上の発言であり、条例第6条第1号に基づく非公開情報には該当しないが、そうした発言が公開されると、区長や住民の発言が公開される場合と同様に自由闊達な意見交換ができなくなるなどといったおそれがあるか否かを検討する必要がある。
滋賀県職員および志賀町長の発言内容は、住民からの質問に対する回答や閉会の挨拶である。ここで、これらの発言部分が公開されることが条例第6条第6号に該当する場合とは、参加者からの質問に対する回答によって参加者である個人が識別される場合や、滋賀県や志賀町の考え方が聴く者によって誤解され、そのことによって意見交換会の開催に係る事務の円滑な遂行に支障が出る場合をいうと考えられる。
そこで、当審査会が本件対象公文書の内容を確認したところ、参加者からの質問に対する回答によって、質問をした個人が識別されるような発言は認められなかった。また、たしかに、意見交換会は、住民の質問に対して行政側が答えるというQ&A方式で進行されているものであり、行政側の回答の部分のみを切り取ると、質問と一体でないかたちで回答の部分だけが出るため、その意味を正確に捉えることができず、場合によっては説明の断片を捉えられて誤解されてしまうなどといった可能性は一般的には否定できない。
しかしながら、本件対象公文書の場合、滋賀県職員および志賀町長の発言部分のみが公開されることで、意味の把握が困難な部分や不正確な部分があるとしても、それゆえに回答の趣旨等が誤解されるとまでは認められない。特に本件の場合は、本件対象公文書をもとに作成された住民側の質問や意見、行政側の回答などをまとめた会議概要が公開されていることから、この会議概要と併せて確認することができ、回答の趣旨等が誤解されるなどといったおそれはほとんど考えられない。
よって、本件対象公文書に記録されている滋賀県職員および志賀町長の発言部分は、公開されると意見交換会の開催に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報とは認められない。
以上のことから、滋賀県職員および志賀町長の発言部分は、条例第6条第6号に該当しないと判断する。
(5)部分公開の可否について
条例第7条第1項は、「実施機関は、公開請求に係る公文書の一部に非公開情報が記録されている場合において、非公開情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、公開請求者に対し、当該部分を除いた部分につき公開しなければならない。 ただし、当該部分を除いた部分に明らかに有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。」と定めている。
本件処分において非公開とされた部分のうち、滋賀県職員および志賀町長の発言部分は、前述のとおり、条例第6条第1号および条例第6条第6号で規定する非公開情報のいずれにも該当しないと判断したものである。よって、以下、大物区長および大物区の住民の発言部分のみを区分して除き、その他の部分を公開するという部分公開が可能であるか否かについて検討する。
そこで、まず、本件対象公文書に記録される非公開情報が条例第7条第1項でいう「容易に区分して除くことができる」に該当するか否かについて検討する。本件対象公文書は録音テープであり、短いやりとりの部分などで若干技術を要する部分もあるが、例えば滋賀県職員および志賀町長の発言中に住民の発言が入り混じるなどといった部分もなく、また、専門的な技術や作業を要したり、そのために多額の費用が必要になったり、さらには高度な機器等の設備を要するなどといったことはないため、区分して除くことはそれほど困難とは認められない。
よって、容易に区分して除くことができないとはいえないと考えられる。
次に、条例第7条第1項でいう「明らかに有意の情報が記録されていないと認められる」に該当するか否かについて検討する。本件対象公文書に記録されている発言部分には、短いやりとりの部分から行政側の答の部分のみを切り取ると、意味の把握が困難な部分があるとは考えられるが、聴く者によっては有意性がある可能性もあり、必ずしも有意性がないとはいえない。特に本件の場合は、本件対象公文書をもとに作成された会議概要が既に異議申立人に情報提供され、住民側の質問や意見、行政側の回答などが公開されていることから、この会議概要と併せて確認することで有意性が充分に確保できると考えられる。
よって、明らかに有意の情報が記録されていないとは認められない。
以上のことから、個人(滋賀県職員および志賀町長を除く)の発言部分を非公開とし、その他の部分を公開するという部分公開を行うことは可能であると判断する。
(6)その他
異議申立人は、その他いくつか主張をしているが、いずれも当審査会の前記判断を左
右するものではない。
以上により「第1 審査会の結論」のとおり判断するものである。

2 審査会の経過
(略)


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