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神戸市情報公開審査会 答申第122号 平成16年4月~8月、神戸港ターミナル搬出入システム…

2008年05月16日 | 法人等に関する情報
答申第122号
平成20年5月16日

神 戸 市 長
矢 田 立 郎 様

神戸市情報公開審査会
会長 佐 伯 彰 洋

神戸市情報公開条例第19条の規定に基づく諮問について
( 答 申 )


平成19年6月29日付神みみ経第214号により諮問のありました下記の件について、別紙のとおり答申します。


「平成16年4月~8月、神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議の内容が判るもの」及び「平成16年8月~9月、神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会の内容が判るもの」の公開請求に係る非公開決定に対する異議申立てについての諮問

別紙
答 申


1 審査会の結論
(1)神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議議事録を非公開とした決定は、妥当である。
(2)神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会確認事項等に記載された各事業者の担当者名及び連絡先としての電話番号を非公開とした決定は妥当である。その他の部分を非公開とした決定は妥当ではなく、公開すべきである。

2 異議申立ての趣旨
(1)異議申立人(以下「申立人」という。)は、神戸市情報公開条例(以下「条例」という。)に基づいて、以下の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
「平成19 年3月27 日付、住民監査請求監査結果通知からの不明点の情報公開請求
・ 3頁上部、平成16年4月~8月、神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議の内容が判るもの。
・ 3頁上部、平成16年8月~9月、神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会の内容が判るもの。」

(2)市長(以下「実施機関」という。)は、本件請求に対し、神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議議事録及び神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会確認事項等を文書特定(以下「本件公文書」という。)し、本件公文書を非公開とする決定を行った。

(3)これに対し、申立人は、本件公文書の非公開決定を取り消し、公開を求める異議申立てを行った。

3 申立人の主張
申立人の主張を平成19年6月18日付の申立書から要約すれば、概ね以下のとおりである。
平成19年4月19日神みみ経第60号による公文書非公開決定処分の取り消しを求める。
本件公文書は、住民監査請求への回答文に記載された事実経過を示す文書であり、これ抜きにしては住民監査請求の回答内容を理解することができず、かつ、公開可能と考えるため、公開を求める。

4 実施機関の主張
実施機関の主張を、平成19年7月17日付の非公開理由説明書、平成19年10月24日における事情聴取から要約すれば、概ね以下のとおりである。
神戸港をはじめ国際コンテナターミナルのある全国の貿易港においては、コンテナをコンテナターミナルに搬出入するための海上コンテナシャーシ車が臨港道路に溢れ、道路渋滞、物流の停滞によるコストの増加、周辺環境の悪化が社会問題化している。この事態を緩和し、かつ神戸港の活性化と更なる発展をするためには、神戸市(港湾管理者)と神戸港に関係する企業や団体との信頼関係、協力関係が必要であり、平成16年以降港湾管理者、船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者が一体となって対策を検討してきた。
その方策として、海上コンテナシャーシ車のシャーシのみを切り離し、一時仮置きする仮置き場を設置する方向で協議を進めることとなった。
その詳細を協議するため船社、港湾運送事業者、海上コンテナ運送事業者の3者が「神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議」及び「神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会」を立ち上げたものである。
「神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議」及び「神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会」は船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者の内部会議である。
海上コンテナシャーシ車を財産区分ごとに見ると、コンテナは船社若しくはコンテナリース会社、荷物は荷主、シャーシは海上コンテナ事業者若しくはリース会社、ヘッドは海上コンテナ事業者の所有に分かれる。
このような財産を管理するために対象土地(ストックヤード)でのシャーシの受け入れ方法、保管している間の保安対策、ターミナルへの引渡方法、コンテナのダメージ検査方法、シャーシの返還方法、この間コンテナ貨物及びシャーシの管理責任の範囲及び所在について、専門的に討議している。この討議は、各事業者の利害関係を調整するために行ってきたもので、これを公開することは各事業者の財産を公開することになり、正当な利益を害すると認められる。

5 審査会の判断
(1)本件における争点について
本件の争点は、
「神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議議事録」(以下「実務者会議議事録」という。)
「神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会確認事項等」(以下「小委員会確認事項等」という。)
についての非公開決定処分であり、以下検討する。

(2)「神戸港ターミナル搬出入システム」及び「神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議」について
実施機関によると、船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者によって構成された「よみがえれ神戸港推進委員会」(以下「推進委員会」という。)は、平成14年6月、神戸港活性化のためには物流拠点の集結と効率化が必要との視点で、神戸市に対して10項目の提言を行った。「神戸港ターミナル搬出入システム」(以下「本システム」という。)は、その提言の一つであり、海上コンテナ車シャーシ部分の一時仮置き場を設置運営することにより、コンテナゲートでの車両滞留、道路渋滞、周辺環境の悪化、物流の停滞によるコストの増加、神戸港における取扱貨物量の低迷等を解決しようとするものとしている。
そして、本システムの構築に向けての検討を行うため、船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者などで構成された神戸港ターミナル搬出入システム検討実務者会議(以下「実務者会議」という。)が開催された。

(3)実務者会議議事録について
実務者会議は、平成16年4月から同年8月までに5回開催され、同会議の議事を記録した文書が実務者会議議事録である。
審査会が実務者会議議事録を見分したところ、当該議事録には、本システムの業務分担のあり方に関する職域問題や本システムの構築・運用に伴う費用分担と責任の帰属問題等についての利害関係を調整するためになされた、それぞれ異なる立場を有する船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者における自由・率直な意見交換や反対意見等が克明に記録されていることが認められる。
また、実施機関によると、本システムの具体的な内容を検討する中で、様々な意見や議論が交わされ、採用もしくは実施に至らなかった意見も含まれているとしている。
以上を考慮すれば、また、実施機関の主張にもあるように、神戸港の活性化と更なる発展には、神戸市(港湾管理者)と神戸港に関係する企業や団体との信頼関係、協力関係が必要であり、一体として、これに取り組む必要があるとする主張には理由があると考えられることから、上記のような議事内容が記載された実務者会議議事録を公開すれば、実務者会議における参加企業や関係団体において、神戸市(港湾管理者)に対する信頼関係、協力関係が損なわれることとなり、ひいては今後の神戸港の活性化という事務事業の公正で円滑な執行につき著しい支障が生じるものと認められる。
実務者会議議事録は、条例第10条第5号アからオに掲げる事務事業には該当しないが、実務者会議議事録の公開による支障に鑑みれば、本号本文でいう「その他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を生じると認められるもの」に該当し、非公開とした決定は妥当である。
なお、実施機関は、実務者会議議事録を非公開と決定した理由として、条例第10条第2号アに該当することをあげているが、上記のとおり第10条第5号本文に該当すると判断した以上、当審査会としては判断しない。

(4)「神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会」について
実施機関によると、実務者会議で本システムの内容が決定された後、本システム実施に向けて実証実験を行うにあたって、本システムのより詳細な検討を行うため、神戸港ターミナル搬出入システム検討小委員会(以下「小委員会」という。)が設立された。
小委員会は、実務者会議と同様に、船社、港湾運送事業者、海上コンテナ事業者などにより構成されている。小委員会は、平成16年8月から同年9月までに3回開催され、その際に確認した内容をまとめた文書が小委員会確認事項等であるとしている。
なお、本システムは、実施機関によれば、同年10月から12月まで本システムの実証実験を行った後、準備期間を経て、平成17年4月から本格稼動を行ったとしている。

(5)小委員会確認事項等
審査会が小委員会確認事項等を見分したところ、当該確認事項には実証実験の実施場所、仮事務所の設置場所、事故処理の基本方針、対象コンテナの範囲など、実証実験の実施に向けた準備に関して確認された内容が記載されている。
小委員会確認事項等は、小委員会において事業者間で確認と決定を行った内容であり、その後平成16年10月から12月までの3ヶ月間の実証実験において運営面に反映された内容であることから、当該確認事項等を公にすることによっても何ら支障が生じるものではないものと認められ、公開すべきである。
なお、小委員会確認事項等に記載された各事業者の担当者名及び連絡先としての電話番号は特定個人の勤務先に関する情報であり、条例第10条第1号アに該当することから、非公開とした決定は妥当である。

(6)結論
以上のことから、冒頭の審査会の結論のとおり判断する。

(参 考)審査の経過
年 月 日審査会経 過
平成19年6月29日*諮問書を受理
平成19年7月17日*実施機関から非公開理由説明書を受理
平成19年10月24日第211回審査会*実施機関の職員から非公開理由等を聴取
*審議
平成19年11月26日第212回審査会*審議
平成20年1月28日第214回審査会*実施機関の職員から非公開理由等を聴取
*審議
平成20年3月17日第215回審査会*審議
平成20年4月21日第216回審査会*審議


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