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情報公開・個人情報保護審査会 平成17年度(独情)答申第23号 平成16年度入学者選抜に係る…

2005年07月28日 | 事務・事業に関する情報
諮問庁 : 国立大学法人山形大学
諮問日 : 平成16年 9月24日 (平成16年(独情)諮問第51号)
答申日 : 平成17年 7月28日 (平成17年度(独情)答申第23号)
事件名 : 「平成16年度入学者選抜に係る医学科後期面接について」の不開示決定に関する件

答 申 書


第1  審査会の結論
 「平成16年度入学者選抜に係る医学科後期面接について」(以下「本件対象文書」という。)につき,その全部を不開示とした決定について,異議申立人が開示すべきとする部分については,別紙に掲げる部分を開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
1  異議申立ての趣旨
 本件異議申立ての趣旨は,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成16年8月18日付け形大総第30-3号により国立大学法人山形大学(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った本件対象文書の不開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。

2  異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書の記載によると,おおむね以下のとおりである。
 平成16年度山形大学の医学部医学科(後期)の面接試験では,受験生に「ガリバー」についての文書を渡し,それについての感想を書かせた。同大学では受験生に対し,感想文について点数化しないことを断っている。以下に開示請求の理由を箇条書きする。

①  平成15年度の後期試験では,感想文の無い10分間の普通の面接が行われた。感想文については,16年度の後期試験で初めて導入した試みであるにもかかわらず,「平成16年度一般選抜学生募集要項 平成15年12月 山形大学」(以下「募集要項」という。)のどこにも記載されていない。受験当日,会場で初めて知らせるという方法をとっている。

②  10倍以上の倍率の試験で受験生が極度の緊張状態に置かれているにもかかわらず,感想文の説明や作成に1時間以上の時間をかけて実施されていること。そのために,10分程度の面接時間がすべて遅れて実施されている。

③  山形大学では,受験生に書かせた感想文を,面接カードと呼んでいるが,面接前に書かせる面接カードというものは,受験生がこれまでに活動してきた内容を書かせたり,面接官にアピールしたい内容を書かせるものと解釈する。今回,山形大学で書かせた面接カードの内容は「ガリバー」についての考え方であり,これは筆記試験や小論文に類するものと考える。当日受験生に渡された210字の下書き用紙を見る限り,面接カードと言えるものではなく,明らかに作文であり,簡単な小論文である。筆記試験や小論文に類するものならば,募集要項に記入する必要がある。連絡無しに突然書かせるという方法自体,試験に類するものにしたいという意図を感じる。山形大学は,中途半端であいまいな状態で実施している。

④  受験生には事前に感想文の内容については点数化しない,と説明している。

⑤  10分間の面接の冒頭で,「ガリバー」の感想文について種々のことを説明している。中央の面接官は,「ガリバー」以外の面接内容には関心がない様子で,その後の受験生の回答を聞き間違えたり,どうして部活動に参加しなかったのか(3年間運動部の活動に打ち込んでいたことが面接官の手元に用意されていた調査書に書かれていたにもかかわらず)という的外れな質問をして,隣の面接官から調査書を見るように促される場面もあったようである。

⑥  上記の①から⑤までの経過から,感想文の内容を問うことが,16年度の面接の中心になっていたように思われる。山形大学の医学部長から頂いた回答の中にも記載されているように,感想文については,点数化しない,と受験生に明言して書かせている。山形大学が主張するように感想文が面接の一部ならば,点数化しないと断った以上,面接の中で受験生が記述した感想文の内容について点数化する部分があってはならないと考える。面接時に面接官は,必ず共通の評価シートを用意する。その評価シートの項目に「ガリバーについての感想内容の評価など」が本当に無いのかどうか示していただきたい。受験生に説明したとおりの面接試験の評価がされ,適正に後期試験が実施されているかどうかを知ることが開示請求の目的である。

⑦  開示請求において,当方からは,④の事実確認をするために部分開示でも構わないと断っている。「ガリバー」についての項目がなければ,すべて塗りつぶした状態で構わない。「ガリバー」についての項目があれば,その部分を開示していただきたい。このような事実確認によって,入学試験の適正な遂行に支障を及ぼすとは考えられない。

第3  諮問庁の説明の要旨

1  本件対象文書について
 本件対象文書は,平成16年度医学部後期入学者選抜試験において実施された,面接試験の取扱いについて定めた文書である。
 この文書は,入学試験という性格からして,入学試験に携わる学部教員及び事務員のみが知り得るものであり,その取扱いには細心の配慮がされ,その関係者以外はたとえ同じ職場に勤務する職員であっても知り得ることはない。
 なお,この面接試験に係る部分としては,受験生等一般に公開している募集要項に,試験の採点・評価基準として,大学入試センター試験,面接,調査書及び健康診断書を総合して行うとの記述と,面接では,医療人としての適性を評価するとの記述を掲載しており,また,同じく合否判定基準として,大学入試センター試験,面接(調査書の評価を含む。)の成績を合わせて総合的に判定するとの記述を掲載している。

2  不開示とした理由について
 本件対象文書には,面接の実施方法及び面接カードの取扱い方法に関する情報が記載されている。
 これらの情報は,試験問題の採点の方法などと同様に受験生に知らせるべきでない内部評価事項と考えるのが通常である。
 以上のように,本来開示することが予定されていない文書が開示された場合,今後の入学試験事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから,本件対象文書を不開示とした原処分は妥当であると判断する。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

①  平成16年9月24日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年10月19日  異議申立人から意見書及び資料を収受
④  同年12月1日  本件対象文書の見分及び審議
⑤  平成17年1月24日  諮問庁の職員(山形大学医学部長ほか)からの口頭説明の聴取
⑥  同年2月23日  審議
⑦  同年3月23日  審議
⑧  同年6月7日  審議
⑨  同年7月26日  審議

第5  審査会の判断の理由
1  本件対象文書について
 異議申立人は,「平成16年度医学部後期試験の面接試験で,面接前に受験生に書かせた「ガリバー」の作文について。受験生に書かせた作文の提出後の取扱い方法に関する文書。」(以下「本件請求文書」という。)との開示請求を行い,これに対し処分庁は,原処分に係る法人文書不開示決定通知書において,「平成16年度医学部後期試験の面接試験で,面接前に受験生に書かせた面接カードの取扱いに関する次の文書」として,本件対象文書を特定している。
 諮問庁から聴取したところ,面接カードとは,面接カード用課題を提示された受験生が,当該課題についての感想を記入する用紙のことであり,当審査会において,当該課題を確認したところ,ガリバーについての記載が認められることから,面接カードは,本件請求文書の「受験生に書かせた作文」に該当するものと認められる。他方,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,面接カードの取扱いに関する記載が認められる。
 なお,当審査会において,異議申立人が指摘する「評価シート」に相当する書面の提示を受け確認したところ,面接カードの取扱いについての記載は認められなかった。

2  不開示情報該当性について
 諮問庁は,本件対象文書について,法5条4号柱書きに該当するとして不開示とした原処分は妥当であると説明するが,異議申立書及び意見書の記載によれば,異議申立人は,記入した面接カードの内容について点数化しないとの取扱いを確認するため,面接カードの提出後の取扱いが記載された部分(以下「本件記述部分」という。)の開示を求めていると考えられ,本件異議申立における不服の範囲は本件記述部分に限ると認められることから,本件対象文書の記載のうち,本件記述部分の不開示情報該当性について,以下,検討する。
 山形大学の平成16年度一般選抜学生募集要項によれば,同大学医学部医学科入学試験(後期)について「面接では,医療人としての適性を評価します。」との採点・評価基準が明らかにされているが,諮問庁の説明によれば,「医療人としての適性」の概念には対人的なコミュニケーション能力も含まれており,あらかじめ想定がされていない話題を出すことによって,突発的な事態への対処能力や,さらには,医師への志望動機,当該受験生の人格についても把握することができるとしており,反面,面接の際に何が質問されるのかが分かってしまうと,受験生をしてその対策が講じられることにより,適正な面接試験はできないとした上で,本件対象文書には,面接試験の実施事務に係る事項が詳細かつ具体的に記述されていることから,このような情報が公にされると,受験生においては,面接に対する対策が画一的に講じられるようになり,受験生の「医療人としての適性」を適正に評価することが困難になることが予想され,ひいては,入学試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれを生ずるとしている。
 また,本件記述部分の開示について諮問庁は,本件記述部分に限定した開示であれば,内容的にも問題はなく特に支障はないが,本件対象文書の記載内容については,国立大学協会が平成11年6月にまとめた「国立大学の入試情報開示に関する基本的な考え方」に基づいた「自主的・積極的に開示することができると考えられる合否判定基準」以外の入試情報の根幹にかかわるものであり,このような情報を公にすることで入試情報の提供における公平性を保つことができなくなることから,不開示が相当であると説明する。
 しかしながら,平成16年度山形大学医学部医学科の入学試験(後期)において,受験生が面接カードに記入をする際,併せて配付している「面接カード用課題」に「なお,面接カードは面接の際の参考資料として用います。」と付記されていることに加え,諮問庁は,受験生全員に対し,事前に,面接カードの趣旨とその記載内容については採点の対象としないことを明言したと説明していることから,面接カードの採点上の取扱いについては,既に公になっているものと認められ,したがって,上記諮問庁の説明にもあるように,本件記述部分に限定した開示であれば,これを公にしても,入学試験事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものとは認められず,法5条4号柱書きの不開示情報に該当しないことから,本件記述部分については開示すべきである。
 なお,本件対象文書の表題は,原処分において,特定した法人文書の名称として明記されているので,併せて開示すべきである。

3  本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書につき,その全部を法5条4号柱書きに該当するとして不開示とした決定については,異議申立人が開示すべきとする本件記述部分は同号柱書きに該当せず,別紙に掲げる部分を開示すべきであると判断した。

 (第1部会)

 委員 矢崎秀一,委員 宇賀克也,委員 吉岡睦子





 別紙

 開示すべき部分

 (資料番号,日付,作成主体に係る頭書きを含まず,表題を1行として数える。句読点は1字として数える。行頭の空白は1字として数えない。)

1  本件対象文書1枚目の上から1行目(本件対象文書の表題)の全部

2  本件対象文書1枚目の上から2行目の全部(冒頭の項目番号を含む。)

3  本件対象文書1枚目の上から6行目の左から5文字目ないし9行目末尾まで


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