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横浜市情報公開・個人情報保護審査会 横情審答申第 467号 市受付番号H14N0647の確認済証…

2006年08月22日 | 確認検査員の氏名/建築士の氏名
横情審答申第 467号
平成 18 年8月 22日

横浜市長 中 田 宏 様

横浜市情報公開・個人情報保護審査会
会 長
三 辺 夏 雄

横浜市の保有する情報の公開に関する条例第19条第1項の規定に基づく諮問について(答申)


平成18年2月10日まち北指第10403号による次の諮問について、別紙のとおり答申します。

「市受付番号H14N0647 の確認済証を交付した旨の報告書及び確認済証を交付した旨の報告書(計画変更)」の一部開示決定に対する異議申立てについての諮問



別紙

答申

1 審査会の結論
横浜市長が、「市受付番号H14N0647の確認済証を交付した旨の報告書及び確認済証を交付した旨の報告書(計画変更)」を一部開示とした決定は妥当ではなく、開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、「市受付番号H14N0647の確認済証を交付した旨の報告書、確認済証を交付した旨の報告書(計画変更)」(以下「本件申立文書」という。)の開示請求(以下「本件請求」という。)に対し、横浜市長(以下「実施機関」という。)が、平成17年11月9日付で行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の一部開示理由説明要旨
本件申立文書については横浜市の保有する情報の公開に関する条例(平成12年2月横浜市条例第1号。以下「条例」という。)第7条第2項第2号に該当するため、一部を非開示としたものであり、その理由は次のように要約される。
(1) 本件申立文書に記録された情報のうち、確認を行った検査員の氏名は個人に関する情報であり、特定の個人を識別できる情報であることから条例第7条第2項第2号本文に該当する。
(2) 確認検査員は、建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第77条の24第2項の規定に基づき、指定確認検査機関が選任するが、確認検査員の氏名の公表を義務づけた規定は存在せず、確認検査員の名簿も存在しないことから、法令の規定や慣行により、公にされているものとは認められないため、本号ただし書アに該当しない。異議申立人(以下「申立人」という。)は、確認検査員が建築主事と同じ資格のみなし公務員であるがゆえに開示すべきとしているが、公務員である建築主事は職員録に氏名が掲載されているのに対し、確認検査員はそのような慣行はない。また、検査済証は、建築主事が行った場合は建築主事名で発行されるが、指定確認検査機関が行った場合は該当指定確認検査機関の代表者名で発行されていることから、本号の該当性の判断に当たって、確認検査員と建築主事の氏名を同様に取り扱うことは適当ではないと考えた。
(3) また、本件申立文書の確認検査員の氏名以外の部分は既に開示しており、人の生命、健康、生活又は財産を保護するために確認検査員の氏名を開示することが必要であるとはいえない。
(4) なお、申立人が主張するとおり、建築局中部建築事務所(当時。現在は、まちづくり調整局情報相談部情報相談課)が実施機関の担当部署として行った開示決定では、確認検査員の職務の性質上公にすることが予定されている情報と解して確認検査員の氏名を開示しているが、本件処分に当たって再度検討し、前述の理由から非開示とした。

4 申立人の本件処分に対する意見
申立人が、異議申立書及び意見書において主張している本件処分に対する意見は、次のように要約される。
(1) 本件申立文書に記載されている確認を行った確認検査員の氏名の開示を求める。
(2) 条例の趣旨は、情報公開を原則として認め、行政の透明性を確保することにより適正な権力の執行を担保することであると考えられる。
(3) 本件申立文書を提出した法人は、建築基準法に基づく指定確認検査機関であり、特定行政庁の確認検査の業務を代行している。確認検査の業務は、人の生命、健康、生活や財産に密接にかかわるものである。たとえば、地震の際に建築物が倒壊しないように建物の構造計算が正確にされているかどうか、適正かつ公正に判定する必要がある。指定確認検査機関で確認検査が適正に行われなかったことが重大な社会問題になっている。指定確認検査機関による確認検査の情報を特定行政庁が積極的に公開することは、確認検査の業務が適性かつ公正に実施されることに大いに役立つと考えられる。
(4) 実施機関は、本件申立文書に記載された確認検査員の氏名を条例第7条第2項第2号に該当するとして非開示とした。しかしながら、指定確認検査機関で確認を行う確認検査員は、特定行政庁の建築主事と同じ資格でみなし公務員である。建築主事の氏名は公開されている。確認検査員の氏名も公開されるべきである。
(5) 本件マンションの確認を行った確認検査員の氏名及び当該確認検査員が当該指定確認検査機関の取締役であることは既に公にされている。
(6) 実施機関は、平成17年10月26日付まち中指第15038号をもって、別件の確認済証を交付した旨の報告書を開示した。その際に、確認を行った確認検査員の氏名を開示している。同様に、本件申立文書に記載された確認を行った確認検査員の氏名も開示していただきたい。
(7) 申立人が他の特定行政庁に確認済証を交付した旨の報告書を開示請求したところ、確認を行った確認検査員の氏名が開示されている。
(8) 本件申立文書に係る建築物の確認に関する事務は、横浜市の事務である(最高裁判所平成16年(行フ)第7号 訴えの変更許可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 平成17年6月24日決定を参照)。
(9) 法第77条の24の規定は、指定確認検査機関においても特定行政庁の建築主事と同様に建築基準適合判定資格者による確認検査を行うことを定めている。また、法第77条の25は、「指定確認検査機関及びその職員で確認検査の業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。」と定めていることから、指定確認検査機関の役員及び確認検査員の職務は、公務員の職務と同等であるといえる。
(10) 最高裁判所平成10年(行ヒ)第54号 公文書非公開決定処分取消請求事件 平成15年11月11日判決で示された個人に関する情報の解釈から、指定確認検査機関の確認検査員の職務の遂行に関する情報は、地方公共団体の公務員の職務と同視すべきものであり、また、権限に基づいて当該法人等のために行う契約の締結等に関する情報にも該当するため、個人に関する情報に当たらないと考える。
(11) 社会資本整備審議会建築分科会の中間報告において、「(8) 建築士及び建築士事務所、指定確認検査機関に関する情報開示制度の充実、強化 指定確認検査機関の情報開示の徹底 指定確認検査機関の業務実績、組織体制、出資状況・財政状況、監督処分の状況等の情報を開示することが必要である。」と提言されている。

5 審査会の判断
(1) 本件申立文書について
法第6条の2第3項では、指定確認検査機関が確認済証の交付をしたときはその旨を特定行政庁に報告しなければならない旨を定めている。本件申立文書は、この規定に基づき、特定の指定確認検査機関から特定行政庁である実施機関に提出された確認済証を交付した旨の報告書であり、建築主等の氏名、確認済証番号、確認済証交付年月日、確認を行った確認検査員氏名、建築場所等、建築物の概要等が記録されている。
このうち、実施機関は、確認を行った確認検査員の氏名を非開示としている。
(2) 条例第7条第2項第2号の該当性について
ア 条例第7条第2項第2号本文では、「個人に関する情報・・・であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」については開示しないことができると規定している。
また、本号ただし書アでは、本号本文に該当する個人に関する情報であっても、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」については、開示しないことができる情報から除くと規定している。
イ 実施機関は、本件申立文書に記録されている確認検査員の氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報であり、また、法令の規定や慣行により公にされているものとは認められず、本号に該当するとしているので、以下、検討する。
ウ 本件申立文書に記録されている確認検査員の氏名は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであることから、本号本文に該当する。
次に本号ただし書の該当性について判断する。法第6条第1項は、特定の建築物を建築しようとする場合等においては建築計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、建築主事の確認を受け、建築主事から確認済証の交付を受けなければならないと規定している。また、法第6条の2第1項等の規定は、指定確認検査機関の確認検査及び確認済証等の交付は、建築主事による確認検査、確認済証等の交付とみなすと定めている。さらに、法第77条の24第1項は、指定確認検査機関が確認検査を行うときは、確認検査員に実施させなければならないと規定している。
このように、確認検査員が実施した確認検査は指定確認検査機関の確認検査となり、指定確認検査機関の確認検査及び確認済証等の交付は、建築主事による確認検査及び確認済証等の交付とみなされることとなる。確認済証を交付した建築主事又は指定確認検査機関の代表者の氏名については、法第89条及び建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号。以下「省令」という。)第11条により、工事現場における表示が義務づけられ、また、法第93条の2及び省令第11条の4第1項により一般の閲覧に供されている建築計画概要書への記録が義務づけられている。したがって、建築主事及び指定確認検査機関代表者の氏名は、法令の規定により公にされている情報であるといえる。
一方、確認検査を実施した確認検査員の氏名の取扱いについてみてみると、建築主事が交付する確認済証、中間検査合格証及び検査済証に確認検査をした建築主事又は委任をした建築主事の氏名を記録することとされているのと同様に、法第6条の2第1項及び省令第3条の3の規定等により、指定確認検査機関が交付する確認済証、中間検査合格証及び検査済証に、確認又は検査を行った確認検査員の氏名を記録することとされている。
また、現行の法制度においては、前述のとおり、確認検査員が実施した確認検査が指定確認検査機関の確認検査となり、指定確認検査機関の確認検査及び確認済証等の交付は、建築主事による確認検査及び確認済証等の交付とみなされるから、結果的に確認検査員の確認検査は建築主事のそれと同一の法的効果をもたらすものであるといえる。
さらに、確認検査員は建築主事と同じ建築基準適合判定資格者であり、法第77条の25が、刑法(明治40年法律第45号)その他の罰則の適用については法令により公務に従事する職員とみなすと定め、収賄罪や公務員職権乱用罪等の適用について確認検査員を建築主事と同じ取扱いとすることを規定していることを考え合わせると、情報公開における取扱いについても建築主事と同様に扱うことが妥当である。
したがって、建築主事の氏名が公にされていることに照らし、確認検査員の氏名も開示することが適当であり、故に、本件申立文書に記録されている確認検査員の氏名は、本号ただし書アに規定するところの慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報に該当するため、開示すべきものと判断する。
(3) 結論
以上のとおり、実施機関が、本件申立文書に記録されている確認検査員の氏名を条例第7条第2項第2号に該当するとして非開示とした決定は、妥当でなく、開示すべきである。
(第二部会)
委員 金子正史、委員 池田陽子、委員 高見沢 実

《参考》
審査会の経過
年 月 日審査の経過
平成 18 年2月 10 日・実施機関から諮問書及び一部開示理由説明書を受理
平成 18 年2月 17 日
(第 19 回第三部会)
平成 18 年2月 23 日
(第 79 回第一部会)
平成 18 年2月 24 日
(第 79 回第二部会)
・諮問の報告
平成 18 年3月 15 日・第二部会で審議する旨決定
平成 18 年4月 24 日
(第 82 回第二部会)
・審議
平成 18 年5月 10 日
(第 83 回第二部会)
・審議
平成 18 年5月 23 日・異議申立人から意見書を受理
平成 18 年5月 24 日
(第 84 回第二部会)
・審議
平成 18 年7月 12 日
(第 87 回第二部会)
・審議
平成 18 年7月 26 日
(第 88 回第二部会)
・審議
平成 18 年7月 28 日・異議申立人から意見書(追加)を受理
平成 18 年8月9日
(第 89 回第二部会)
・審議


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