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情報公開・個人情報保護審査会 平成19年度(行情)答申第228号~第231号 防衛庁職員採用試験…

2007年09月20日 | 事務・事業に関する情報
諮問庁 : 防衛大臣
諮問日 : 平成18年 9月11日 (平成18年(行情)諮問第288号ないし第291号)
答申日 : 平成19年 9月20日 (平成19年度(行情)答申第228号ないし第231号)
事件名 : 平成17年度防衛庁職員採用Ⅰ種試験実施結果等の一部開示決定に関する件(平成18年(行情)諮問第288号)
平成16年度防衛庁職員採用Ⅰ種試験実施結果等の一部開示決定に関する件(平成18年(行情)諮問第289号)
平成17年度防衛庁職員採用Ⅱ種試験実施結果等の一部開示決定に関する件(平成18年(行情)諮問第290号)
平成16年度防衛庁職員採用Ⅱ種試験実施結果等の一部開示決定に関する件(平成18年(行情)諮問第291号)

答 申 書


第1  審査会の結論
 平成16年度及び同17年度における防衛庁職員採用Ⅰ種試験及び同Ⅱ種試験に係る試験問題及び第2次試験口述試験官名簿(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定について,第2次試験口述試験官名簿のうち,諮問庁がなお不開示とすべきとしている部分は,開示すべきである。

第2  異議申立人の主張の要旨
1  異議申立ての趣旨
 本件異議申立ての趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」又は「情報公開法」という。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成18年3月31日付け防官文第3370号ないし同3373号により防衛庁長官(現防衛大臣。以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。

2  異議申立ての理由
 異議申立人の主張する異議申立ての理由は,異議申立書及び意見書によると,おおむね以下のとおりである。

(1)  異議申立書
ア  まず,平成18年3月31日付け処分の取消し,開示請求時より60日以内の開示決定等を改めて行うことを求める。
 当方の開示請求は平成17年9月22日付けであったところ,法11条の規定を適用され,開示請求時より半年以上も先である平成18年3月31日まで開示決定が延期された。法11条は,開示請求に係る文書が著しく大量であること及び事務遂行に著しい支障が生じるおそれがあることをその要件としている。ここで,当方が開示請求した文書量はそこそこの量であるかもしれないが,「著しく大量」の「著しく」の要件を満たすとは到底考えられない。さらに,法11条適用の理由付けの1つとして,「不開示情報を含むおそれがある」となっているが,不開示情報を含むおそれがあるか否かを含めて30日(特例60日)以内に開示決定等をなすことを法は予定しており,理由付けにも納得がいかない。法11条適用は違法であり,平成18年3月31日付け開示決定等の取消しを求める。開示請求時より30日又は60日以内に存在する日付にて改めて開示決定をするように求める。
 なお,当方は平成17年10月28日付けにて法11条適用に関し異議申立てを行っているが,退けられている。この法11条適用に関する異議申立てを退けた行為にも納得がいかない。
 また,半年以上も先に期限を設定する行為にも納得が行かない。「半年先の設定行為は著しく不当とは言えないから違法ではない」という気もしないではないが,行政不服審査は処分の違法性だけでなく,処分の妥当性をも勘案するものであり,いきなりの半年先の設定は不当であると考える。
 さらに,本件開示決定の通知が当方に到着したのが,平成18年4月6日である。通常,東京からの郵便物は3日程度で当方に到着するところ,平成18年3月31日に開示決定が行われていれば,平成18年4月3日には到着しているはずである。文面上,平成18年3月31日付けにて開示決定等が行われたかのようにされているが,実際には平成18年4月3日に開示決定等が行われた可能性がある。納得いかない。
 当方の主張は,総論的には開示決定日が納得いかないものであるが,各論にも言及する。

イ  試験問題について
(略)


ウ  口述試験官名簿について
 法5条6号イに該当とのことであるが,同号イのおそれはない。過去の試験官氏名が判明したところで,今後において何の「おそれ」があるのだろうか。過去の試験官に対する圧力等が行くことと,今後の「おそれ」をどんぶり勘定するのはダメとしか言いようがない。個人的には6号イには該当せず,1号に該当すると考える。1号のただし書の適用については,官職は開示されるべきものであり,かつ,氏名も公になっている者ならば開示されるべきであると考える。

(2)  意見書
(略)


第3  諮問庁の説明の要旨
1  理由説明書
(1)  概要
 本件開示請求は,別紙1に掲げる文書の開示を求めるものであり,これに対し,別紙2及び別紙3に掲げる文書を特定した。当該文書の開示決定にあたり,法11条の規定による特例延長を適用した上,平成17年11月21日付け防官文第8778号ないし同8781号において,別紙2に掲げる文書について全部開示の決定を行い,平成18年3月31日付け防官文第3370号ないし同3373号(原処分)において,残りの別紙3に掲げる文書について,別紙3の4に掲げる文書(専門試験問題。以下「文書1」という。)の全部が法5条2号イに該当することから不開示とし,別紙3の8に掲げる文書(第2次試験口述試験官名簿。以下「文書2」といい,文書1と併せて「本件対象文書」という。)の一部が同条6号イに該当することから,当該部分を不開示とする一部開示決定をしたものである。
 本件は,平成18年3月31日付け防官文第3370号ないし第3373号の一部開示決定に対し,異議申立てが提起されたものである。

(2)  不開示情報該当性
 本件対象文書中,文書1の全部については,試験問題作成業者が作成した試験問題であり,防衛庁と試験問題作成業者との試験問題の提供に関する契約書中9条2項に,「甲乙双方は,共に問題集の取扱いに慎重を期し,試験実施後においても,一切公表しないものとする。」との規定があるため,当該試験問題を防衛庁が開示した場合,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることから,法5条2号イの規定に該当する。また,文書2の一部については,平成16年度及び同17年度防衛庁職員採用Ⅰ種試験及び同Ⅱ種試験第2次試験における口述試験官の官職・氏名に関する情報が記載されており,当該情報を開示した場合,受験者が自らの受験した口述試験の口述試験官を類推することが可能となる場合があり,受験者による口述試験官に対する違法又は不当な行為を容易にするおそれがある。また,今後の口述試験において,口述試験官がじ後に自らの官職・氏名が公表されることを認識した場合,受験者からの違法又は不当な行為が将来的に発生するおそれがあるということから,口述試験時に口述試験官に心理的・精神的圧迫感が生じることが懸念され,正確な事実の把握(受験者に対する的確な人的評価)を困難にするおそれがある。さらに,当該情報を蓄積した場合,今後の口述試験の口述試験官を類推することも可能であり,口述試験官に対する違法又は不当な行為を容易にするおそれがあり,それによって正確な事実の把握(受験者に対する的確な人的評価)を困難にするおそれがある。したがって,法5条6号イの規定に該当する。

(3)  異議申立人の主張について
 異議申立人は,「試験問題については公開できるはずである。」としているが,上記2で記述したとおり,法5条2号イに該当することから不開示としているところであり,異議申立人の主張は当たらない。
 また,異議申立人は,「口述試験官名簿については法5条6号イには該当せず又1号にも該当しないので開示できるはずである。」としているが,上記2で記述したとおり,法5条6号イに該当することから不開示としているところであり,異議申立人の主張は当たらない。

2  補充理由説明書
(1)  平成18年(行情)諮問第288号ないし同291号の各諮問のうち,諮問第288号において,「平成17年度防衛庁職員採用Ⅰ種試験第2次試験口述試験官名簿」が本来2枚であったものが,当該開示決定の際には1枚しか特定し開示決定されていなかったので,当該1枚を加えて特定し,氏名欄については,試験に係る事務に支障のおそれがないと判断し,開示とする。

(2)  官職欄については,これを公にすると,毎年の開示請求による当該情報の蓄積によって,どの機関のどのような官職の職員が口述試験官となることが推定されることとなり,事前に当該官職の職員に対する脅迫等の違法又は不当な行為が生じ,的確な人物評価の妨げとなり,試験に係る事務に支障を及ぼすおそれがある。さらに,事後においては,口述試験不合格者の不満等による口述試験官に対する嫌がらせ等の違法行為が生じるおそれがある。
 したがって,法5条6号イに該当すると考えられることから,官職欄については不開示とする。

第4  調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,平成18年(行情)諮問第288号ないし同291号を併合し,調査審議を行った。

①  平成18年9月11日  諮問の受理
②  同日  諮問庁から理由説明書を収受
③  同年10月2日  異議申立人から意見書を収受
④  同年11月28日  本件対象文書の見分及び審議
⑤  同年12月21日  諮問庁の職員(防衛庁長官官房秘書課採用試験室長ほか)からの口頭説明の聴取
⑥  平成19年2月20日  審議
⑦  同年4月17日  委員交代に伴う所要の手続の実施,本件対象文書の見分及び審議
⑧  同年7月3日  審議
⑨  同月27日  諮問庁から補充理由説明書を収受
⑩  同年9月18日  諮問第288号ないし同291号の併合及び審議

第5  審査会の判断の理由
1  本件対象文書について
(1)  防衛庁職員採用試験について
 諮問庁の説明及び同庁の受験案内によれば,防衛庁職員の採用は,人事院が行う国家公務員採用Ⅰ種試験の合格者から採用している事務系のⅠ種職員を除き,防衛庁が独自に採用試験を実施している。当該試験の種類は人事院が行う国家公務員採用試験と同様で,大学卒業程度のⅠ種試験(技術系のみ),大学卒業程度のⅡ種試験及び高校卒業程度のⅢ種試験であり,それぞれ年度ごとの採用予定に応じた試験区分によって試験が実施されており,また,Ⅰ種及びⅡ種試験においては,第1次試験として教養試験(多枝選択式),専門試験(多枝選択式又は記述式)及び論文試験が行われ,第2次試験として口述試験及び身体検査が行われていると認められる。

(2)  本件対象文書について
 本件対象文書は,平成16年度及び同17年度における防衛庁職員採用Ⅰ種試験及び同Ⅱ種試験(以下「本件採用試験」という。)に係る別紙1に掲げる文書についての開示請求に対し,処分庁が特定した文書のうち,異議申立人が不開示部分の開示を求める文書1及び文書2である。
 文書1は,本件採用試験における試験問題のうち教養試験問題(原処分の開示決定通知書では「試験区分教養の専門試験問題」と表記されているが,試験区分に教養は存在せず,「教養試験問題」のこととのこと。)及び一部の試験区分に係る専門試験問題であり,処分庁は原処分において,法5条2号イの不開示情報に該当するとして,その全部を不開示としており,また,文書2は,本件採用試験における第2次試験である口述試験の試験官名簿であり,法5条6号イの不開示情報に該当するとして,その一部を不開示としている。
 異議申立人は,上記不開示部分について,いずれも不開示情報に該当しないので開示すべきと主張するのに対し,諮問庁は,補充理由説明書において,文書2の不開示部分のうち一部については開示するが,その余の不開示部分及び文書1については,不開示が妥当であるとするので,以下,文書1の全部及び文書2の諮問庁がなお不開示が妥当であるとする部分の不開示情報該当性について検討する。

2  不開示情報該当性について
(1)  文書1について
 文書1は,本件採用試験における試験問題のうち,原処分において不開示とされた教養試験及び一部の試験区分(平成16年度Ⅰ種試験の7試験区分のうち4試験区分(化学,機械,土木及び建築),同年度Ⅱ種試験の9試験区分のうち2試験区分(行政及び国際関係),平成17度Ⅰ種試験の12試験区分のうち7試験区分(心理,経営工学,化学,電気,機械,土木及び建築)及び同年度Ⅱ種試験の10試験区分のうち2試験区分(行政及び国際関係))の専門試験の問題である。
 諮問庁は,文書1について,その全部を不開示にした理由として,当該試験問題は試験問題作成業者(以下「作成業者」という。)が作成した問題であり,防衛庁と作成業者との間で締結した本件採用試験の試験問題の提供に関する契約書(以下「本件契約書」という。)において,当該問題を一切公表しない旨の規定があることから,これらの問題を開示した場合,当該法人の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり,法5条2号イの不開示情報に該当する旨説明する。また,本件採用試験の試験問題には,防衛庁内部において同庁職員が自ら作成したものと本件対象文書のように作成業者が作成したものがあり,同庁職員が作成したものは,法5条2号イの不開示情報に該当するおそれはないため,その全部を平成17年11月21日付け防官文第8778号ないし同8781号において開示しており,作成業者が作成したものだけを原処分において不開示にしたと説明する。
 当審査会において,諮問庁から本件契約書の提示を受け確認したところ,当該契約は,本件採用試験の試験区分に係る試験科目のうち防衛庁が指定したものの試験問題を作成業者が防衛庁に提供することを目的としたもので,各年度ごとに2業者と随意契約を締結しており,年度ごと及び業者ごとに計4件の契約書が作成されていると認められる。当該契約書には,いずれも9条2項として,甲(防衛庁)・乙(業者)双方は,共に問題集の取扱いに慎重を期し,試験実施後においても,一切公表しないものとすると規定されていることが認められる。また,防衛庁が各契約書の別紙において提供することを指定した試験科目を確認したところ,全部不開示とされた文書1の試験区分に係る試験科目と一致し,さらに,同別紙において防衛庁内部で作成するとされた試験問題は,既に全部開示された試験問題と一致することが認められた。
 諮問庁は,防衛庁職員採用試験の試験問題は部内で作成することが基本であるが,教養試験は出題分野が広範多岐にわたるため,部内作成は困難であり,また,専門試験についても専門知識を有する人材等の関係から,部内作成が困難な一部の試験区分があるとして,これらの試験問題については外部の民間作成業者に作成を委託しているとしている。その委託契約の際には,試験実施後においても試験問題を一切公表しないという条件で契約を締結し,その提供を受けているが,諮問庁が本件諮問に当たり,当該作成業者に確認したところ,これらが開示されると,出題傾向が類推されることなどから,それを回避するために問題作成の人的負担が増大することなどにより,効率的な問題作成と低価格な提供が困難になるとのことであったので,文書1の全部は,公にすることにより法人の正当な利益を害するおそれがある情報であり,法5条2号イに該当すると説明する。
 公務員採用試験の試験問題は,近年においては,採用試験制度の透明性の向上を図る観点からも一般的に公開されている傾向にあると言え,本件採用試験についても防衛庁内部で作成した問題は開示されているなど,特定の試験問題だけについて,一般的な不開示情報該当性を見出すことは困難である。しかしながら,本件の場合,試験問題は一切公表しないという条件で,試験問題の提供に関して作成業者と契約を締結し,その条件を前提として作成業者から提供を受けた試験問題であることを考慮すると,これを開示した場合,そのことにより,出題傾向が類推されるなど,作成業者が試験問題作成時には想定していなかった影響が生じ,それを回避するための人的負担の増加など,当該作成業者の事業活動などに支障が出る可能性も否定できない。したがって,文書1の全部は,公にすることにより法人の正当な利益を害するおそれがある情報であり,法5条2号イに該当すると認められることから,不開示としたことは妥当である。
 なお,公務員採用試験の試験問題は,本来,試験実施後には公開されることが望ましいものであることから,諮問庁においては,将来的に当該契約の条件を見直すなど,外部作成の試験問題の公開についても検討することが望まれる。

(2)  文書2について
ア  文書2の特定について
 文書2は,本件採用試験における第2次試験のひとつである口述試験の試験官名簿であり,Ⅰ種試験については各年度1枚,Ⅱ種試験については各年度4枚の文書が,原処分において一部開示決定されている。ただし,諮問庁は補充の理由説明書において,平成17年度Ⅰ種試験については,本来2枚であったものが,原処分の際に1枚しか特定されていなかったとし,もう1枚を加えて特定する旨説明している。当審査会において,諮問庁から当該文書の提示を受け確認したところ,当該文書はその記載内容等から,原処分において特定された平成17年度Ⅰ種試験の口述試験の試験官名簿の続きの文書と認められるので,以下,当該試験については,当該文書を加えた上で検討する。

イ  文書2の不開示部分について
 当審査会において見分したところ,文書2のうち,Ⅰ種試験に係る文書は表形式の名簿となっており,平成16年度又は同17年度防衛庁職員採用Ⅰ種試験第2次試験口述試験官名簿という標題に続き,冒頭に実施日及び実施場所が記載され,その下の各欄には,口述試験官の整理番号,官職及び氏名が記載されている。Ⅱ種試験に係る文書は,平成16年度又は同17年度防衛庁職員採用Ⅱ種試験第2次試験口述試験官名簿という標題に続き,試験地(8箇所)ごとの8つの表形式の名簿から成っており,口述試験官の整理番号,官職及び氏名が記載されている。
 原処分においては,口述試験官の官職及び氏名については,すべて不開示とされていたが,諮問庁は補充理由説明書において,氏名については不開示情報に当たらないとして開示するとしていることから,諮問庁がなお不開示が妥当とする口述試験官の官職について,以下検討する。

ウ  口述試験官の官職の不開示情報該当性について
 本件採用試験の口述試験は,Ⅰ種試験については防衛庁本庁庁舎,Ⅱ種試験については全国8箇所の会場で実施されており,諮問庁によると,文書2に記載されている口述試験官の中から,試験区分ごとにⅠ種試験では4人,Ⅱ種試験では3人の試験官が一組になって,受験者への口述試験(個別面接)を行っているとのことである。
 諮問庁は,文書2に記載されている口述試験官の官職が開示されると,毎年の開示請求による当該情報の蓄積によって,どの機関のどのような官職の職員が,どの試験区分の口述試験官となるかが推定されることとなり,試験の前に,当該官職の職員に対する脅迫等の違法又は不当な行為が生じ,的確な人物評価が妨げられ,試験に係る事務に支障を及ぼすおそれがあることや,また,事後においては,口述試験不合格者が不満等から口述試験官に対して嫌がらせをする等の違法行為が生じるおそれがあることから,当該情報は,法5条6号イに該当すると考えられる旨説明する。
 しかし,文書2には,Ⅰ種試験の平成17年度分には36人,平成16年度分には22人の口述試験官の氏名及び官職が一覧として記載されていると認められるものの,それぞれの口述試験官が,平成17年度には12試験区分,平成16年度には7試験区分のうち,どの試験区分を担当したかを示す情報は見当たらず,他にそれらの情報が公にされている事情も認められない。
 諮問庁は,当該官職により担当する試験区分が推定されると説明するが,上記のことからすると,当該官職により担当する試験区分が推定されるとは認め難く,仮に推定されるとしても,担当試験官が推定程度でしか分からない状況において,防衛庁に採用されることを希望する受験者が,口述試験官を担当すると推定される官職の職員に対して,脅迫等の違法行為又は不当な行為を行うとはにわかに想定し難く,事後においても,口述試験を担当したと推定される官職の職員に対して,嫌がらせ等の違法行為を行うおそれが生じるとは認め難い。
 Ⅱ種試験についても,年度や試験会場によって多少異なるが,全試験区分を同じ試験官3人で担当する沖縄地方を除き,いずれの試験会場でも,6人ないし25人の口述試験官が10又は9の試験区分のうち,どの試験区分を担当するのかを示す情報は,Ⅰ種試験の場合と同様に,文書2には認められず,他にそれらの情報が公にされている事情も認められない。したがって,Ⅰ種試験の場合と同じ理由により,諮問庁が説明する口述試験官に対する脅迫等の違法行為又は不当な行為が行われるおそれがあるとは認められない。
 また,Ⅱ種試験のうち沖縄地方については,他の試験会場とは異なり,全試験区分を同じ試験官3人で担当するという事情のため,少なくとも事後においては,口述試験官の官職を開示することにより,受験者は口述試験を担当した官職の職員を特定することが可能であるが,そもそも受験者が不合格となった不満等に乗じて,口述試験官に対して嫌がらせ等の違法行為を行うことは,完全に否定はできないものの,一般的には想定し難く,それにより試験に係る事務に支障が生じることの蓋然性を認めることは困難である。
 したがって,諮問庁がなお不開示とすることが妥当としている口述試験官の官職については,これを開示することにより,本件採用試験に係る事務に支障を及ぼすおそれがあるとは認められないことから,法5条6号イの不開示情報に該当せず,開示すべきである。

3  審査請求人のその他の主張について
 審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

4  本件一部開示決定の妥当性
 以上のことから,本件対象文書のうち,文書1につき,その全部を法5条2号イに該当するとして,また,文書2につき,その一部を同条6号イに該当するとして不開示とした決定について,諮問庁が同条2号イ及び6号イに該当するとしてなお不開示とすべきとしている部分は,文書1については,同条2号イに該当すると認められるので,不開示としたことは妥当であるが,文書2については,同条6号イに該当するとは認められないので,開示すべきであると判断した。

 (第3部会)
 委員 名取はにわ,委員 北沢義博,委員 高橋 滋

別紙
(略)


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