京大俳句会 KYODAI HAIKUKAI 「自由船」

京都大学を拠点に活動していた京大俳句会のオフィシャル・ブログです。

第168回京大俳句会作品集

2023-02-24 17:49:22 | 日記

photo by kajiwara

第168回京大俳句会もコロナウイルス感染予防の見地から
投句形式とさせて頂きました、互選は実施しておりません
(上5文字の昇順で並べております)


第168回京大俳句会作品集
兼題 :「春の夕焼」「春夕焼」


1  いつの間に攻撃能力亀の鳴く          吟


2  鶯も同じ想いか早春賦             幸男


3  梅にほふ吾にも左遷の昔あり          つよし


4  大いなる放屁や赤子春うらら          まめ


5  菓子パンをすばやく齧る春夕焼         まめ


6  カトレアに抱かれ少年となりしころ       武史


7  師の眼差しありて父と子融け緩む        幸夫


8  霜の朝ひとりバス待つ白い杖          のんき


9  侵攻の果てちらすかす核の影          嵐麿


10  祖母の雛滿洲國の番地あり           游々子


11  地図になき広き農道春夕焼           游々子


12  堤(どて)に立ち春の夕焼け何想う        恒雄


13  春夕焼け子らの家路は遠くなり         幸男


14  春夕焼おてて繋いで帰りたし          つよし


15  春夕焼けきみは糖度17恥じらいみせて      武史


16  比叡山赤く恥じらふ春夕焼            楽蜂


17  蕗の薹雪解け早き根本かな            楽蜂


18  分裂の世をやわらげよ春夕焼           嵐麿


19  「まるぶつ」で初めて知ったオムライス      恒雄


20  弥陀三尊ほかに影なし春夕焼           幸夫


21  山なかに大ニュータウン春夕焼          吟


22  落日や春の夕焼け桃の花             のんき
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「チャットGPT」による俳句鑑賞 (楽蜂)
2023-02-26 10:52:51
 今話題になっている対話型AI「チャットGPT」に作品の鑑賞をお願いした。「次の俳句を鑑賞してください」と打ち込んで、クリックするとすぐに返答が返ってくる。問答を次々、続けていけるので、話題がどんどん展開できるのである。以下の3句を選んで、このAIの俳句理解(鑑賞)能を確かめてみた(3人の作者の方、勝手にすいません)。結果、百点満点で60点ですれすれ合格と判定した。しかし、予想以上に立派なものである。意味不明なことも述べるが、人間でもわけのわからない事を言う人は沢山いるので、今のところはご愛敬としておきたい。つっ込みを入れると、恐れ入った様子で、おべんちゃらを言ったりするのもおかしい。チャットGTPは公開されて3か月しか経っていないが、爆速で進化すると言うから、おそらく1年後ぐらいはその辺の結社の「宗匠」を超える知識と鑑賞力を備えているだろう。「ほんまかいな」と思われる方は、試されてみてはいかがかと思う。

 いつの間に攻撃能力亀の鳴く 吟
チャットGPT:『この俳句は、非常にユニークで、珍しいものです。亀は一般的には、のんびりとした動きで知られていますが、この俳句では、攻撃的な能力を持った亀が鳴く様子が描かれています。この俳句には、静かな自然界に潜む様々な生き物たちの驚くべき能力や、その独特な個性を表現する意図があるように思われます。この一句は、私たちがあまりにも単純化してしまいがちな自然界の複雑さを思い起こさせ、私たちの日常生活にある小さなことにも価値があることを教えてくれます』

 祖母の雛滿洲國の番地あり 游々子
チャットGPT:『この句は、春の季語である「雛」を含んでおり、季節感を表現しています。また、「滿洲國」という言葉は、かつて存在した日本の植民地である満州国を指しており、この句が書かれた時代背景が伺えます。この句は、祖母が所有していた「雛」が満州国の地であるということを表現しています。このような風景や物事を通して、日本の歴史や文化を感じ取ることができます。また、祖母という身近な人物が登場することで、親近感を感じることができます。この句は、短いながらも季節感や歴史的な背景を表現し、読者の心に鮮烈な印象を与える素晴らしい俳句です』

 カトレアに抱かれ少年となりしころ  武史
チャットGPT:『この句を直訳すると「カトレアに抱かれたとき、私は少年でした」という意味になります。カトレアとは、洋ランの一種であり、美しい花を咲かせることで知られています。この俳句は、カトレアに抱かれた少年時代の記憶を思い出すという、懐かしさと美しさを感じさせる句です。俳句とは季語を使うことが一般的ですが、この句には季語は含まれていません。しかし、カトレアは一般的に春に花を咲かせるため、季節的には春を連想させることができます。この句からは、少年時代に戻り、美しい思い出を抱えることの大切さや、自然や花に触れることが人生を豊かにすることを感じさせます』

自句についてのGPTとの会話

楽蜂:次の俳句「蕗の薹雪解け早き根本かな」を鑑賞ください。
チャットGPT: 『この俳句は、松尾芭蕉によって詠まれたものです。冬の雪が解けた早春に、フキノトウが地中から急速に伸びてくる光景を詠んだ俳句です。「蕗の薹」は、「フキノトウ」と読みます。「蕗」は、蕗の葉や茎を指し、「薹」は、地中にあるフキノトウの部分を指します。「雪解け早き」は、冬の間に積もった雪が早く解けるさまを表現しています。「根本かな」は、「根元がいいなあ」という意味合いで、自然の営みが見事なまでに調和しているという感動を表しています。この俳句は、自然の営みが美しいと同時に、季節の移ろいや生命の循環を感じさせるものとなっています』

楽蜂:これは芭蕉の俳句ではありません。私の俳句です。あなたはまだまだ学習が足りませんね。
チャットGPT:『おっしゃる通りでした。大変失礼いたしました。お手数をおかけして申し訳ありませんでした。私たちは、常に学習を続け、より正確な情報を提供できるよう努力してまいります。お気づきいただき、ありがとうございました。それでは、改めて俳句を鑑賞させていただきます。この俳句は、素晴らしい表現力を持っていると感じます。フキノトウが地中から伸び出す様子を、季節感や自然の営みを感じながら表現しています。また、「根本かな」という言葉からは、自然の美しさに対する作者の感動が伝わってきます。俳句の中には、人々の心に深く訴えかけるものがありますが、この俳句もその一例であると思います』

楽蜂:これを添削してください。
チャットGPT:『もちろんです。ご依頼いただいた俳句を添削させていただきます。
 「残雪の中 蕗の芽鋭く伸びて 春の息吹」
このように、私なりに添削してみました。以下、修正点と改善点について説明します。「残雪」を入れて、冬から春への移り変わりを表現しました。また、季節感を表現するために、「春の息吹」という言葉を入れて、春の到来を感じさせるようにしました。ご自身が詠まれた俳句にも、季節の移り変わりや自然の美しさについての感動があることは伝わってきましたが、より詳細な表現や意味が欲しいと感じました。そこで、蕗の芽が伸び出している様子を「鋭く伸びて」と表現し、春の息吹が感じられるようにしました。これにより、俳句の表現力が一層高まり、より深い印象を与えることができます。以上のように、添削してみました。ご参考になれば幸いです』

楽蜂:あなたはまだ俳句を作るのは無理のようですね。まず五七五のリズム感を会得することが必要です。
チャットGPT:『申し訳ありませんでした。私は人工知能による自然言語処理を担当するため、俳句の作成は得意とする分野ではありません。ただし、私は常に学習を続け、より正確で適切な情報を提供できるように努力してます』
一句づつ鑑賞 (堀本吟)
2023-03-09 08:45:25
第168回出句鑑賞(1)
楽蜂さんと「対話型ロボット・チャットGPT]との応答について。

樂蜂さんが対話型検索ロボット「チャットGPT」に、游々子、樂蜂句、吟句の鑑賞をしてもらっている。これがなかなかおもしろい。(樂蜂さんのコメントをご覧下さい、興味ある方は対話型ロボットの方も試してみてください。)
ある種の説得力あり。こういう機械化された人間(もどき)が、登場して実用に使われていることに驚いた。私の出句「いつの間に攻撃能力亀の鳴く・吟」についても、一応「あたり」である。しかもその季語の本意はそうじゃないんだけれど、純粋でユニークと「褒められている感」と、「諭されれている感」、両方の指摘がある。つまり俳句の鑑賞文としてそつがなくよくできている。(今回の樂蜂さんの報告を参照。)
 このロボットの会話は、我々が積み重ねている俳句の読み方の集積と再編成がプログラムされてに出ている。過去に誰か作った「亀鳴く」の俳句について、データがたくさん取り込んであり、解読鑑賞の例もデータ化されている。
だから、人間が味わう「亀鳴く」ハイクへの「感動」それ自体も情報としてデータ化されている。そしてそれ以上は出ない。この人工知能がすごいのは、「亀が鳴く」「と「攻撃能力」を結び付けたちょっと変わった思い付き句についても、直ちにそれに応じて、ユニークだとか新しいとか純粋な気付き、だとかそれなりの「感想」が、あたかも人間「チャットGPT」君の生の声のように言えることである。季語の本意、常識定式を少し外れたれた俳句についても、あまり否定しない.これについてはこう応えるべしということ自体も、あらかじめ解答のモデルができているのである。

 樂蜂さんの「蕗の薹」の句は、「これは芭蕉の作です、素晴らしい」、と返答がきた、という。
この、人工知能の批評は、「貴方の句は、伝統を踏まえた正しい型の完成度の高い俳句ですよ」というっ事で、樂蜂さんに「すごいですね。芭蕉だといわれるなんて」、とmailしたら、「型をちゃんとまもっているものには、しばしばそういう答えが返ってくるのです」という謙虚なお返事、(私の感想では、この俳句には、型を守りつつ気付きの新鮮さがある。)

こういう事態のもとで、私たちは俳句を作り、又性懲りもなく不器用に、ここがいいとか足りないとか書き連ねている。あるいは「類句」だとか「盗作」だとか、マジメに解釈と鑑賞し批判したり盗作とされたとしたら、資格取り消しなんてしているのである。こういう権威主義は馬鹿らしくないだろうか?

 私はパソコンが苦手で下手だから、機械が必要になる場所へはできるだけゆかぬようにしているのだが、世の中がこうも堂々と人間もどきになると、我々の方がロボットもどきにならざるを得ない時代も来るかもいしれない。表現そや、いわゆる知的な快楽も、だんだん変わってくるだろう。
 一番の問題は、この人が自分で知恵を絞りました、という「オリジナリティ」の基準が変わってきて、先に入ったように、ロボットのデータにないからこれはダメ、などと言われるのではないかと、これはすこし怖くなる。
 そのうち思考や知情意そのものが、生み出した元の姿を失くして、あらかじめある回答例の復唱すればよくなり、人間の感情もそのようなものに操られるのではないだろうか?ま、それはともかく、そのころまでは、私も生きてはいまい。

 樂蜂さんの視点はいつもはきはきと明晰で面白い。今回は、進化の現実や逆説を教えてくださった。ありがとうございます。
 さて、今月も別欄「一句ずつ鑑賞⑵」では不器用な読み方でここころみた一句ずつ鑑賞の香りをご覧ください。(吟)。



第168回京大俳句一句ずつ鑑賞⑵

★このメール句会はだんだん面白くなってきている。巧拙を越えて投句内容が、いろいろ考えさせるものになってきている。
だが、回想や記憶が多すぎることは少し不満。これは年齢層が高いという事によるかもしれないことと、「春夕焼」という兼題が呼び出す雰囲気からくるのかもしれない。
 俳句のいまの今の状況は、もっと未完成であらあらしいはずで、その多様な実例をこの欄でも欲しいものだ。
 

2  鶯も同じ想いか早春賦  幸男
 「春は名のみの 風の寒さや/谷の鶯 歌は思えど/時にあらずと 声も立てず/(繰り返し)」と、人間の方が先に鶯に託した思いなのだけれど、春寒の今どき、私もこの歌を口ずさみたくなる。

3  梅にほふ吾にも左遷の昔あり  つよし
 この感じ。ふと強い梅の香りがしたとき、よっみがえった転勤の内定、実は左遷であった。サラリーマン稼業の厳しさをかみしめている帰り道にもこの句のように「梅にほふ」季節だった。この詩的な喚起力で成立している一句。
或いは,この句も思い出と現在の感覚の重層化に成功している。「吾にも」とあるから、そういう扱いを受けた後輩の噂とかあるいはその当事者の愚痴を聞きながらあるいているのだろうか?こいつもきっと正義感に駆られて上司に疎まれたのだろうか、とⅮ臂上の気分。そのとき、昔の自分を思い出させる梅のにおい。落ち込みと同時に気分を立ち直らせるその香り。「勇気こそ地の塩慣れや梅真白・中村草田男」の句もあります。若い時の苦労は買うてでもするべき、気づかないで人の助けになるだろうし、現在の強い自分を育ててくれる。頑張ろう。

5  菓子パンをすばやく齧る春夕焼  まめ
 夕食にはまだ早い時間帯、或いはこれから自分で作らなきゃあ、という状況。我慢していたが小腹の空いたこんなときには多少エネルギーやカロリー補給。一口「すばやく齧る」所、おやつポイ「菓子パン」が、ともに可愛い。 

8  霜の朝ひとりバス待つ白い杖  のんき
 「白い杖」は目の見えない人が使っている代表的なツール。その人がひと立っている朝のバス停風景。「霜」の白い感じと、盲目の白杖(見えないことの象徴)、共に「白」その取り合わせが悲しいし、むしろ見えない風景の中のその人の姿が凛としていてハリがある。

10  祖母の雛滿洲國の番地あり  游々子
 ああ、いい句だ、と思いました。それに尽きる。「満州」は日本にとって特別なまぼろしの国家だ。しかし、番地もあり「お雛様」もアドレスも確かにある。歴史が間違っていても個人の中の思い出は美しく再現される。回想句でもあり、また現実のユーラシアの有様にも戻る。

15  春夕焼けきみは糖度17恥じらいみせて  武史
 「糖度17」と言ったら、熟れきったメロンやマンゴーの甘さ、市場価格も高値。それをおもわせる女性(だろう)の年齢や姿態。「春夕焼け」のこういう活かし方もある。それほどわからない者にも武史さんの「願望」が快く理解できる。しかしながら「恥じらい」までで言うべきか?「春夕焼」の感覚はどこか恋句につながるとしても。

16  比叡山赤く恥じらふ春夕焼  樂蜂
  こちらの「恥じらう」と読み比べて、武史さんも樂蜂さんも季語をひとひねりして肉身の世界に結び付けているところがジェンダーフリー以前の「男性」詩人の詩とエロスの感性というべきだろう。まともに読めば、比叡山が夕焼けを受けて山肌を染め「恥じらって」いる、という事だが、「夕焼」の方が雄々しい山に出会って一体化して夕焼けの方が「恥じらって」いる、とも読める。この二句は「チャットGPT]クンならどう謡むだろう。 

18  分裂の世をやわらげよ春夕焼  嵐麿
 「春夕焼」にはそんな柔らかな包容力がありそうだ、間もなくその期待も消えて昏い夜が来る。題があたえた大きな優しい風格を活かしている。一方で時事性の狙いのよくわかる、穏やかに時勢を抽象化してこの句には好感を持った。

19 「まるぶつ」で初めて知ったオムライス  恒雄
 「まるぶつ」は京都の百貨店の名前、今はもうない、が、オムライスを食べるたびに一緒に思い出す、という句。よほど美味しかったのだろう。味覚の記憶はその場所の記憶に融け合う。たしかに、記憶装置も人工頭脳の原点なのだろう。

20  弥陀三尊ほかに影なし春夕焼  幸夫
 尊い弥陀三尊のおすがたが西の浄土「夕焼け」の中に浮かんでいる。「ほかに影なし」というのが少しわかりにくいがここがシュール。イメージの仏を溶け込ませた春の夕焼けの美しさが迫ってくる。


自作コメント
1  いつの間に攻撃能力亀の鳴く  吟
 樂蜂さん。共に「チャットGPT]さんどうもありがとうございました。達者な読み方をしてくれるのですね。このロボットはおっしゃる通り、何十年か先には芭蕉、蕪村子規虚子をしのぐ俳句の権威者となるのかも・・。今のところ、頭の体操的だが私にも楽しめる。

21  山なかに大ニュータウン春夕焼  吟
 山中ではあってもここに入り込むと別天地のように画一的な屋根が並ぶ。いまやよくある住宅地帯。春の夕焼けに包まれていた幻想的なトワイライトタイムが過ぎ、山のむこうに夕陽が消えてゆきました。何でもあるけどどこかむなしい即製の山の中の都市生活。そんな風景を読みたかった。



今回の兼題となった「春夕焼」という季題は、此の時期にふさわしい季感と詩情、風景にイメージから見ても美しい品格を持ったものでした。そして、「季語」は単に季節感だけではなく、そこに包まれた生活の断面や個人の生きざまをときにさりげなくときにはっきりと浮彫りにすることがある。その時に、季節を越えた思考の世界ーつまり無季俳句との接点がみられる。という感想を持つこのごろです。無季の問題は、戦前の「京大俳句」が新興俳句の動きの中心となって推進したした一つの大きなテーマです。そんな感想を持ちました。ではまた来月。少し体調が悪いのですが、できるだけ、短くとも寸感を書きます。(吟)

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