台湾に渡った日本の神々---今なお残る神社の遺構と遺物

日本統治時代に数多くの神社が建立されました。これらの神社を探索し神社遺跡を紹介するものです
by 金子展也

海軍水上特攻隊~震洋(しんよう)部隊 (中)

2014-09-27 07:18:00 | 台湾協会

第2回目です。台湾協会の会報には掲載されていない写真も追加しますのでご覧ください。なお、次回は「格納庫」を紹介します。

防空壕の発見

 台湾新幹線の南の最終駅「左営(さえい)」。この地は清朝時代の左営城であり、鳳山に県都が移転するまでの古都であった。それゆえ、左営旧城と呼ばれる。現在、この地で震洋部隊の舎営所の発掘調査が進行している。発掘対象となった場所は「西自助新村」と呼ばれる場所で、日本統治時代の左営埤子頭である。「西自助新村」とは、一九四九年、国共内戦で敗れた国民党軍人が移り住んだ居住地の一つであった。

昨年、政府の土地区割整理に伴い、「西自助新村(高雄市左営区)」の住宅の撤去作業中、まず清朝時代の遺跡が掘り起こされた。途中、防空壕が至る所に発見され、研究家の調査するところとなり、震洋部隊の宿営地であることが判明した。調査の段階で、防空壕の場所は一定の条件(必ずマンゴ(芒果)またはロンガン(龍眼)樹の下)に従ってあることが分った。また、宿営地の各施設も同じ条件を取ったようである。これは、米軍の偵察機から発見されないためである。この故か、この地域は米軍の爆撃を受けていない。

 この条件に沿った調査で、他には例のない瓢箪(ひょうたん)に似たドーム型の防空壕が十七個所見つかっている。壕の長さ八㍍、壕内の高さ約二・一㍍、壕の厚さ六十五㌢。両側に入口があり、二十五名程度がゆったり入れる。

 

営内神社

 今年の二月に入り、台湾の友人の紹介で一通のメールが廖徳宗さんから入った。

 廖さんは、高雄のIT関係の会社を経営する傍ら、郭吉清さん(高雄市旧城文化協会顧問)と一緒に左営旧城の歴史研究を行っている。メールの内容によると左営旧城内の日本海軍第二〇震洋部隊・薄(すすき)部隊の基地に神社遺跡らしい基壇があり、震洋部隊が左営旧城に造営したものではないかとの問い合わせであった。遺跡のそばに埋もれた手水鉢と石段が清朝時代の城壁と共に紹介されていた。同時に、「回想 薄 部隊:海軍第二十震洋特攻撃隊」が奈良県立図書情報館にあるとの連絡がもたらされた。 

 早速、海外神社研究会のメンバーであり、神奈川大学坂井久能特任教授に連絡を取った。坂井さんは営内神社(軍隊の施設内に建立された神社)を一貫して研究しており、その道の専門家である。また、情報のあった回想録を入手すべく、奈良県立図書情報館に複写依頼を行った。

 この回想録は薄会のメンバーによって書かれたもので、平成十三年三月発行された。唯一、一般の図書館では同図書館にのみ残る貴重な資料である。幸運と云うべきか、この回想録の口絵に「震洋神社とその製作者」とのタイトルが付いた小さな祠の前で写された隊員五名の写真があった。この写真は、震洋神社の存在を証明する大きな手掛かりとなった。また。回想録には、戦後の部隊処理で、「先ず震洋神社を焼く(兵舎跡の城壁の上に安置してあった)」との記述があった。このことにより、間違いなく口絵の写真は左営旧城に造営された「震洋神社」であり、現存する基壇、手水鉢や石段は「震洋神社」のものであることが証明された。

 こうして、震洋部隊の存在が少しずつ明らかになってきた。また、過去の調査資料により、旧城城壁に沿って、士官舎、兵舎、炊事所、倉庫、便所、車庫、燃料庫や充電所等が配置されたことも判明した。また、この地が更地になったことにより、城壁の一カ所は通路となって城壁を通して、左右の往来ができたことも分かってきた。

 

清朝時代の城壁                         震洋神社への石段

   

本殿の基壇                           手水鉢

 

防空壕                              今回、ご案内を頂いた廖徳宗さんおよび郭吉清さんらとともに

 

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2 コメント

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薄部隊 (大賀誠治)
2015-04-03 12:55:28
私の父は、薄部隊長でした、26年前に亡くなりましたが、当時の様子を城山三郎著、マンゴー林の中でという短編で知ることができます。
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薄部隊 (金子展也)
2015-04-03 20:17:22
大賀様
コメント有難うございました。早速、読んでみることにいたします。また、こうして、ブログを通じてお知り合いになれたこと、嬉しく思います。また、このブログに出てくる廖さんが書かれた研究ノート(中文ですが)が手元にあります。お送りしたく思いますので、fnhcx958@yahoo.co.jp宛に連絡を頂ければ幸いです。
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