台湾に渡った日本の神々---今なお残る神社の遺構と遺物

日本統治時代に数多くの神社が建立されました。これらの神社を探索し神社遺跡を紹介するものです
by 金子展也

海軍水上特攻隊~震洋(しんよう)部隊 (下)

2014-10-16 06:24:34 | 台湾協会

 最終回です。台湾協会の会報には掲載されていない写真も追加しますのでご覧ください。

台湾海峡にむけた格納壕

 高雄市南西の海岸線に位置する寿山がある。この寿山の南側から海岸線を走る柴山大路を北上する。途中、若者の集まる「海角珈琲」から台湾海峡の波打ち際を1㎞、約40分かけて進むと寿山の岸壁に掘られた第29部隊(永井部隊)の格納壕が2ヶ所ある。左営から直線距離で約3㎞であろう。これらの格納壕内部のトンネルは寿山に向かって250㍍ほど深く伸びていたようある。回想録によると、「震洋艇が泛水する際には、寿山の洞窟からも震洋艇をトロッコに載せ、海岸まで運んだ」や「標高80メートルくらいの山麓には、八方に隧道が掘りめぐらされており、震洋艇では四ケ部隊200隻が出陣待機していたのである」と言う。現在は、土石で埋まっており、壕内の35~50㍍の所で行き止まりである。壕入口には、艇を出し入れする古ぼけたレールが無造作に放り出されている。

 この先は、柴山軍治管理区となっており、一般人は立ち入り禁止である。第20、21、そして31隊の格納壕の場所がこの管理区にあり、未だに残って

いるのであろう。

 

忠軍士碑

 調査が進むにつれて、この地で亡くなった隊員を慰霊したと思われる場所があったことも判明してきた。これは、「西自助新村」の一角に以前「忠軍士碑」があり、そこに住む住人が深夜不思議な足音や揺れを感じ、悩まされていた。そこで、お寺の住職に供養をしてもらった。住職によると、9名の日本軍人および3名の台湾兵の遺骨が埋葬されているとのことで、供養後、ピタリと不思議な現象は消えたようである。その後、その住人は「忠軍士碑」を建て、弔ったとのことである。現在、この一角までも更地になっている。

回想録では、「台湾海峡での訓練は川棚訓練所で座学と実体体験とは異なり、要港から大海に出た瞬間の浪は荒く、鏡のような大村湾とはその比どころではなかった。時に波浪を浴びながら、うねりの高い時には、先方の艇を見失うくらいのことは廔々であった」とある。昭和20(1945)年6月10日、夜間訓練の際、震洋艇のエンジン故障で転覆撃沈事故が発生したとある。この時の戦死者は第二艇隊長含む7名であった。起きるべくして起きた悲劇かもしれない。

 「忠軍士碑」の存在は、この事故と符合するのかもしれない。

 

戦後

 最後まで、「出撃命令」が下らなかった震洋部隊。終戦と共に、震洋艇は解体焼却され、一部は海中に沈められた。そして、震洋部隊は高雄海兵団に集結され、中華民国の捕虜となる。昭和30(1955)年頃までは、日本に帰る船がないため、帰ることもできないと言われ、自活のため台湾中部の竹山や新港で竹材・木材の搬出業務や野菜の作り従事する隊員もいた。

 「マンゴの林の中で日本の再建と自分自身の再建を誓って、それぞれの故郷に別れ別れに散って行って以来、20数年の歳月が過ぎた」昭和42(1967)年5月27日、旧川棚訓練所跡に特攻殉国の碑が建立され、薄部隊からも7柱の英霊が合祠されたとのこと。

平成9(1997)年10月、半世紀ぶりに元薄部隊の隊員が高雄を訪問している。亡くなった戦友の供養と旧薄部隊の宿営地を訪問した写真が、回想録に掲載されている。

 

現在、旧城文化協会と高雄市と協議の結果、旧左営城の遺構取り壊しの一時中止が決まった。今後、廖徳宗さんおよび郭吉清さんは高雄市政府文化局に対して史跡保存の申請を行うとのことである。

格納庫が作られた海岸

第1格納庫

第2格納庫

 

 

 

 

コメント (2)
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「海外神社 公開研究会」のお知らせ

2014-10-07 20:43:27 | 海外神社研究会

下記の要領にて第4回公開研究会「海外神社・旧樺太(現ロシア連邦・サハリン州)における神社の創立と、今日の神社跡地の現況について」を開催いたします。興味のある方はご参加ください。

なお、神奈川大学の「海外神社」のWebsiteにも旧樺太に造営された神社の情報がありますので、合わせて参考にしてください。

http://www.himoji.jp/himoji/database/db04/serch_map_04.html

 

報告: 旧樺太時代の神社について(仮)

        ---- 前田孝和 非文字資料研究センター客員研究員、神社新報社取締役

    旧ソ連連邦時代の神社政策と海外神社の現況について(仮)

    ---- I.A.サマリン ロシア・サハリン州文化局

日時:2014年11月22日(土)14:00~16:00

場所:神奈川大学3号館207号室

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