同じ一般財団法人 台湾協会に所属する理事の森道子さんが、今年一月に『語られなかった 日本人画家たちの真実』を(株)振学出版から上梓された。
台湾の芸術家というと、李梅樹(三峡の祖師廟の改築に貢献)や楊英風(中国と西洋のスタイルを融合した彫刻作品「哲人」が有名)しか知らなかった。ましてや、台湾における近代美術の発展に尽くした石川欽一郎、塩月桃甫、郷原古統、木下静涯や立石鐡臣は全く知らない画家であった。ましてや、石川は陸軍部参謀本部の通訳官として渡台したこと、台湾に渡った塩月の赴任先が台中第一中学(台湾人のための初めての中学校)、郷原が台北第三高等女学校と台北ニ中であったことは驚きであった。
これら画家たちは台湾という新鮮な風土との出会いとその魅力にひかれ、数々の大作を残し、その後の台湾絵画界に大きな影響を与えた。また、昭和2年に第一回の台展(台湾美術展覧会)が開催され、その後府展(台湾総督府展覧会)と名称を変え、終戦間近の昭和18年まで開催された。これら展覧会を通して多くの台湾人画家の活躍の舞台が実現した。
この本の中には日本統治時代の絵画の歴史や展覧会に関する審査委員の選定などの裏話もも豊富に詰まっている。是非、一読を願いたいものです。