付け焼き刃の覚え書き

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「はじめてのゾンビ生活」 不破有紀

2024-07-10 | 破滅SF・侵略・新世界
※2519年6月20日「新人類憲章」の成立により、長年差別的であるとされてきた「ゾンビ」という呼称は廃止されました。本書では当時の時代背景と本書の資料的意義を考慮し、一部表現をそのまま掲載しています。

 もはや人類は新人類であるゾンビに圧され、滅びつつあるが、そのことを旧人類側がむしろ歓迎している風潮にある。
「おめでとうございます! ゾンビの陽性反応が出ました」
 人間がゾンビになるというのはもはや珍しいことではなく、むしろめでたいことなのだ。家族だってみんなゾンビだし、ゾンビになったことが確認されると役場からリーフレットがもらえる。
 そして、酸素や新鮮な食料を必要としないゾンビによって宇宙開発は一気に進み、星の海へと乗り出しつつあった……。

 ある日突然、人間がゾンビと化すようになってから、それが当たり前になりつつある時代、むしろ家族にゾンビの1人もいないと恥ずかしい時代を経由して、旧人類がすべて死に絶えて、ゾンビとロボットだけの時代になったその先まで、高校生から人形師の老人、宇宙飛行士、弁当屋まで、さまざまな時代のさまざまな立場の人々の人生のパッチワークで組み上げられた千年ばかりの人類史です。
 『地球最後の男』とか『流血鬼』とか人類滅亡における価値の逆転の発想の物語はそこそこあれど、ここに極端に陽気かつポジティブに語るところから始まる作品はありませんでした。ゾンビになったって怖いことはない。日常生活は普通に過ごせるし、むしろ人間の時より身体は元気。ポジティブ・シンキング!! とはいえ、差別もあります。差別する側とされる側が入れ替わる事だってあります。そんな歴史の表も裏も描ききった物語でした。
 電撃文庫ですが挿絵イラストはありません。『ミミズクと夜の王』とかと同じです。そして表紙イラストは『同志少女よ、敵を撃て』の雪下まゆ。

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