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付け焼き刃の覚え書き

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「宇宙の傭兵たち」 ジェリー・パーネル

2010-08-27 | ミリタリーSF・未来戦記
「軍人にできることは時間を稼ぐことだけだ」
 軍事作戦の成功で世界が救われたり平和が築かれたりすることはない。それは政治の仕事であり、軍人はそのための汚れ役に過ぎないのだと。

 2004年にオルダースン航法が完成し、人類の太陽系外進出が始まって100年近くが経過。既に宇宙各地に植民地が建設されていたが、地球を統治する《連合国家》は崩壊寸前となり、植民惑星の治安も悪化していた。
 政情不安な惑星ハドリーも治安回復のために傭兵部隊を雇い入れたが、その指揮官ジョン・クリスチャン・ファルケンバーグ大佐には謎が多かった……。

 今はすっかりハヤカワ文庫の独壇場となったミリタリーSFですが、かつては弓と剣で戦う文明レベルの星まで異星人に連れてこられた地球の兵隊が戦う『地球から来た傭兵たち』とか、傭兵を育て上げることが国家産業となっている星の物語『ドルセイ!』とか、創元推理文庫も翻訳をいくらでも出しておりました。原書風のイラスト中心で展開してたから、売れなかったのかねえ……。

 この『宇宙の傭兵たち』はミリタリーSF界の御大パーネルの代表作なので、ミリタリーSFの代表作みたいなもんです。腐りきった政争の巻き添えで軍より追放された優秀な司令官と、彼が育て上げ、人減らしのために解散させられた前線海兵隊第42連隊が傭兵として星々を渡り歩く話なのだけれど、その背後には大海軍大将セルゲイ・レールモントフの深謀遠慮かつ諦観による長期計画が隠されていて……というあたりがSFなのかな。
 戦場がベトナムのジャングルから中東の砂漠に変わっただけ、あるいは使う武器がマスケット銃からM-16に変わっただけではSFと呼ばないように、単に、未来の異星でドンパチするというだけではミリタリー小説であってもSFじゃありません。そのあたりのさじ加減は巧いと思いますが、ガチ右な作品です。敵もあくまで地球出自の人間であり、見た目も醜悪で思考も異質な異星人ではないですしね。
 話せば解る、交渉でなんとかなるという段階を過ぎてから送り込める傭兵の話ですから、情け無用です。

 今、戦乱をテーマにしたブラウザゲーム(ブラウザ三国志)とかやっていると、すぐに「開戦だ!」とか別陣営と戦争が始まり、出撃したかと思うと「停戦!攻めるな」とか命令が来て、「なにを始めたり終わったりしてんだよ? そんな簡単に終わるくらいなら始める前に外交でなんとかしろよ」と思ってしまうのは、ここらの作品を読んで育ったせい。
 自分の無能で悪化した事態の収拾に軍を使っておきながら、もうこれくらいでいいよと(あとの状況悪化も予想できず)作戦途中で撤収させたがる政治家なんて!と文民統制を否定したくなるのには困ったものです。

【宇宙の傭兵たち】【ジェリー・パーネル】【傭兵】【連合国家】【神の目の小さな塵】【ファルケンバーグ傭兵部隊】【《連合国家》】

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