付け焼き刃の覚え書き

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「プロテウス・オペレーション」 J.P.ホーガン

2008-06-10 | 時間SF・次元・平行宇宙
「わたしはもうあらゆることを知っているほど若くはないのでね」
 アルベルト・アインシュタインの言葉。それでも彼は人間を信じている。

 ハードSFミステリ『星を継ぐもの』でデビューして注目を浴びたJ.P.ホーガンの作品には、独創的なアイデアを軸に、人々の自由な思想や行動を抑圧しようとする専制的な勢力との対決を描いたものがほとんどです。『星を継ぐもの』はそんな構図はほとんど見えなかったけれど、シリーズが進むに従って顕著になるし、『創世記機械』もそうだし『断絶への航海』とか……『終局のエニグマ』はその典型ですね。この『プロテウス・オペレーション』もそうですね。

 原爆開発に成功したナチス・ドイツは第二次大戦に勝利し、欧州、アジア、アフリカと勢力圏を拡大していた。
 そして1974年。最後の自由主義の砦であるアメリカ合衆国とドイツ陣営との間に戦争が起こるのは必至で、そのアメリカに勝利の希望はほとんどない。唯一の道は、時間の流れを遡って特殊部隊を送り込み、第二次大戦でドイツが勝利しなかった世界を作り出すことだった。
 この無謀ともいえる任務に送り出され、1939年の世界に到達したプロテウス部隊は、政界の第一線を退いたチャーチル議員に接触し、領土拡大の野心に燃えるナチスへの抵抗を訴えるのだが……。

 時間改変ものもいろいろありますが、これは「歴史を正しい流れに戻す」話ではなく、「歴史を自分たちの都合の良いように改変する」のが目的の話。ホーガンのSFとしては【駄】の方かもしれないけれど、でもホーガンのスパイアクションとしては【上】の部類ですかね。タイムパトロールは出てこないのかしらん。
 チャーチルとかアインシュタインらに接触し、自分たちが未来から来たのだと説得していく過程が前半の山場。後半はもちろんナチスの原爆計画を叩きつぶせという、戦争アクションではお馴染みの展開になりますが、ここでさらに時間SFらしいひねりが用意されています。さて史実の第二次大戦では、連合軍による大陸反攻作戦には「オーバーロード」という作戦秘匿名がついていたわけですが……。

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