付け焼き刃の覚え書き

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「虹の谷のアン」 ルーシー・モード・モンゴメリ

2024-01-27 | その他フィクション
「書くネタなら、オーエン・フォードも、カナダでたっぷり見つかるだろうに。何も女房と、いたいけな子供を、日本みたいな異教徒の国へ引きずってかなくとも」
 ミス・コーネリアはフォード一家が取材のために日本に1年間滞在するというのを面白く思っていない。

 ブライス家の子どもたちは、かえでの森の後ろに開けた小さな谷間で遊ぶのが好きで、そこを虹の谷と呼び始めた。
 自分たちの縄張りと決めつけていたその虹の谷で、彼らは見知らぬ子どもたちと出くわしたが、それはグレン・セント・メアリ村に新しく赴任してきた牧師一家の子どもたちだった。やがて意気投合して遊ぶようになった8人だったが、父親のメレディス牧師は考え事にふけると周囲のことにまったく意識が向かなくなるタイプ。母親を亡くした子どもたちが自分たちで良かろうと考えて行動した結果が、静かな村に大きな波紋を広げていくことになる……。

「愛することをやめると、人生のたくさんのことを逃してしまうのよ。愛すれば愛するほど、人生は豊かになるの」
 その愛を捧げる相手が小さなペットであったとしても同じだとローズマリー・ウェストはフェイス・メレディスに説いた。

 「赤毛のアン」シリーズの時系列では7作目で執筆順では5作目。原題は「虹の谷」でアンの名前は入っていないように、この話の主役はメレディス牧師の4人の子どもたち。それにブライス家の4人(シャーリーとリラはまだ幼いので員数外)、それに家なき子ながら家事が得意で口調が荒い(キャラの濃すぎる)メアリ・ヴァンスを中心に話が進みます。この子どもたちが巻き起こす騒動が村に騒ぎを巻き起こすようでいて、実際のところ子どものせいではなく、原因はがんこで意地っ張りでうかつで自己中心的な大人たちにあるんですけどね。
 そして、楽しく遊ぶ子どもたちの物語は戦争の予感で締めくくられます。「大きな戦が見られるなら、なんだってするよ」と声を張り上げるジェム。いずれ笛吹きがぼくらを連れて行ってしまうと予言するウォルター。けれど、輝かしい未来が約束されているはずの彼らの行く手には、フランス、フランドル、ガリポリといった地が待ち受けているのだ……って、ここで終わるんかいっ?!

【虹の谷のアン】【赤毛のアン7】【L.M.モンゴメリ】【松本侑子】【文春文庫】【むち打ち】【安息日】
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