「彼女でもない女の子が深夜二時に炒飯作りにくる話」 道造

「武士の嘘を武略と呼ぶならば、女子高生の恋の駆け引きは、卑怯は恋愛そのものと呼ぶべきです」
　明智光秀もそう言っていたと桐原銭子。

　高級マンションに住んでいる藤堂破蜂のところには、彼女でもないのに夜な夜な同級生の桐原銭子がやって来て、いきなり炒飯を作り始めるのだ。藤堂は高身長、高学歴だが、桐原だって同じ進学校で、試験では常に一番なくせに蠱惑的な色気と美貌の持ち主なのだ（その代償か、胸はなく背は低い）。そんな彼女はことあるごとに「私は藤堂君なら性的に無茶苦茶にされてしまっても構わないのですが」などと告白してくるのだが、彼は頑として受け入れない。
　藤堂は知っているのだ。桐原が母子家庭で裕福ではなく、彼の父親が彼女に金銭的支援を与えていることを……。

　主人公の破蜂は成績・運動神経共に優秀で、善良だけれど基本的に人の心が分からないクズ男で、銭子はその破蜂を上回る天才なんだけれど、人に迷惑かけるなと優しく導く母親の教えに反して利己的な銭ゲバで……どちらも自己中心的なクズですね。この２人の関係にさらに女子２人が絡んでくるのだけれど、彼女らもちょっとおかしいですね。べーちゃんはトリックスター。

「一方的に人を殴るのは楽しいんです。これ以上楽しいことなど世の中に滅多にありません。石を犯罪者に投げつけるのは人類の誰もが好む行為です」
　温厚に見えて実はすごく暴力的でドスケベな女子高生の言い分。

　ヒャアと叫ぶ銭子が良いね。良いといえばほとんど出番のない桐原母が、出番がない故にインパクト大です。ちゃんと深夜２時の炒飯に理由があった!?
　実写向きです。邦画界はお涙ちょうだい悲恋ものではなく、こういうのを原作にしないといけません。
　レシートもくれないし、支払いは現金以外受け付けないけど安い肉屋……そういう店知ってるなあ。うどん屋もそういう店ある。そして自分も彼と同じ事が気になりました。だって、伝票、支払いしたらこっそり破り捨ててるんだもの……。

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