付け焼き刃の覚え書き

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「無職転生~蛇足篇~2」 理不尽な孫の手

2024-06-16 | 異世界転生
 ルーデウスとザノバは試行錯誤の繰り返しの末、やっと満足のいく自律人形(オートマタ)完成させるところにまでこぎ着けていた。狂龍王カオスの手記を参考に、甲龍王ベルギウスから魔法陣と精霊召喚の教えを受け、龍神オルステッドには材料到達に助力してもらった。
 ただ、あまりに出来が良すぎた。定期的に長い眠りについているナナホシこと七星静香の存在をこの世に刻み続けるため、彼女をモデルにする事は本人も了承していた事だが、興に乗りすぎ、胸部には乳首をつけ、股間部は実用に耐えうる造形にしてしまったのだ。
 これはさすがに妻たちに怒られそうと正気に返ったルーデウスだが、その直後にオートマタがいなくなってしまった。逃亡したのだ……。

 物語そのものはルーデウスの生涯からヒトガミとの対決まで含めて26巻できれいに完結しているのだけれど、ビヘイリル王国での決戦から後の彼と彼を取り巻く人々のその後を描く蛇足編の2です。ルーデウスの子どもたちに自分と彼が殺し合った顛末を講談調に語る北神カールマン三世とか、祖母との和解とか、本編の余韻に浸りながら新しい物語を垣間見ます。ルーデウスの下っ端、三下ぶりに磨きがかかってます。
 自律人形ナナホシの逃走劇『オートマタを作ろう!』、家族全員がそろう今のうちに思い出を作ろうとミリス神聖国へ旅行し、実家のラトレイア家を訪問して半ば喧嘩別れした祖母クレアと再会する『ミリス旅行記』、未来のヒトガミとの戦いの布石のため狂剣王エリスと剣の聖地に向かうはずが上司の龍神オルステッドや北神カールマン三世が加わって殴り込み同然になってしまう『剣の聖地に住まう神』、そしてルーデウスの子供たちの日常譚『グレイラットの子供たち』の4編。ただ、『ミリス旅行記』の終盤はタルハンドが炭鉱族の里に帰還する別ストーリーなので、実質5編かも。
 しかし、長編の大河ラノベの主人公で、曲がりなりにも妻を3人迎えて子宝に恵まれながらも、独立独歩で頂点に立っていないキャラは珍しいかもしれません。ルーデウスは魔力量こそ多いし、魔術でも武術でもなんでもできるけど器用貧乏。一流かもしれないけれど結局トップにはなれません。つまり、敵はみんな最後まで彼より強いのです。
 でも、そんな彼がなりふり構わず家族のために戦い働く姿こそ「無職転生」のあるべき姿です。人を信じられなくなり、好意をはねのけ、家族すら拒絶して引きこもった男が、最後は家族に拒絶されて無職のまま死ぬところから始まる物語。その前世を反省し、家族を大切に、人と人の絆を大事にして生きていく様こそが主題です。だから、他の作品のように俺ツエーで無双して、誰にも従わず自分の思うままに生きていく……なんて展開にはなりませんが、そこがイイ!のです。上司にへいこらしつつ、命じられるままに仕事であちこち飛び回るのも、つまりは家族のため。家族のためならなんでもする男の物語でした。

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