付け焼き刃の覚え書き

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「消えた公爵家の子息~エノーラ・ホームズの事件簿」 ナンシー・スプリンガー

2010-01-05 | ミステリー・推理小説
 ナンシー・スプリンガーといったら初期のハヤカワ文庫ファンタジーにおいて、ケルト神話をベースにした「アイルの書」シリーズで一世風靡した作家。ナンシー・スプリンガーの新訳が出るぞ!と思ったら、ルルル文庫でエノーラ・ホームズの事件簿……?と知って腰砕けになったのは許して欲しい。

 元気いっぱいの少女エノーラ・ホームズの母が失踪したが、年の離れた兄であるマイクロフトもシャーロックもあてにならず、14歳になる妹がいわゆる淑女にふさわしい教育を受けていないと知るや全寮制の寄宿舎に押し込めようとする。
 女性を一人前の人間扱いしない家族や社会に腹を立てたエノーラは、母が残した暗号を解いて軍資金を確保すると大都会ロンドンへと向かうことを決めた。だが、その道中でエノーラは名門貴族の嫡男失踪事件に遭遇する……。

「マイクロフト、やめるんだ。見ての通り、この子はすこぶる背が高い割に、頭が小さくて脳味噌の容量が少ない」

 ヴィクトリア朝のイギリスですから、女性は男性に比べて劣っているものという認識が強く、法律的にも女性に不利な時代です。エノーラも初っ端から十何年ぶりかに再会した兄たちから散散な言われようです。だから、そんな状況で頑張ろうとする女性を描くと、男は女の能力をこれほどまでに低く見ているのだ、許しがたい、当然の権利を獲得せねばならない……というようになんというかジェンダー論っぽくなっちゃいますね。「元気な少女の冒険活劇」とか「ホームズもののパロディ」ではなく「女性が自立する物語」になっちゃうんです。
 それで良いと言えば良いのかなあ。

【エノーラ・ホームズの事件簿】【消えた公爵家の子息】【ナンシー・スプリンガー】【パーディトリアン】

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