付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「フラクタルの女神」 アン・ハリス

2014-02-02 | 超能力・超人・サイボーグ
「ものごとがどれほど複雑になっても、そこにはつねにパターンがあるのよ」
 真の美とは対称性なのだとシド。

 デトロイトの貧民街を逃げ出した美しい少女は、ニューヨークで売春婦となり、そこで男に殺されかけて逆に返り討ちにしてしまう。だが、その光景はライブで世界各地の専用チャンネルに配信されていた。
 人工知能生命体にとりつかれた老博士は、この少女の人格を雛形に新しい人工生命を生み出そうと考えたのだが……。

 男たちは酒飲んで女抱いて過去の妄執に取り憑かれ、女たちはそんな世界から脱却しようとあがき、老人は世界の黒幕になったつもりでせせこましく飛び回り、人工生命体は温室のプールにゆらゆら浮かびながら他人を操ろうとする、ディストピアでジェンダーな百合小説。
 親殺しの人工生命タムカリとか、黒幕っぽくあれこれ画策しているんだけれど専門外のことには無知で、しかも何かと自分で動き回っているあたりが妙に小物っぽいラウール博士とか、彼らは結局どうなってしまうんだ!?とか、感染するっていってたアレはどうなった!?とか、あの少年が感じ取っていたのは結局何?とか、なんかいろいろ伏線を放り投げっぱなしの読後感がある作品。でも、つまるところは脳筋な美少女マグノリアと、ラウール博士と比較すると常識的で温厚っぽいけど実は彼以上のマッドサイエンティストだった分子生物学者シドのカップルの物語なので、そういう意味ではこれにて完結。

【フラクタルの女神】【アン・ハリス】【D.K.】【創元推理文庫】【ジェンダーSF】【カオス理論】【人工知能生命体】【裏ビデオ】【アムステルダム】【バイオハザード】
コメント
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