
そしてフォーマットは説明をきちんと伝えるためにあるのだと、企画営業部の長崎要部長。
首都圏に展開するチェーン店「羽のドーナツ」に勤める灰庭留衣は、男にも金にも興味なく、一日中、美味しいドーナツのことばかり考えている無類のドーナツ馬鹿だ。「羽のドーナツ」は業績が低迷し、大手の競合他社に買収されることがほぼ確定していたが、彼女は食べた人が笑顔になるドーナツを作ることだけ考えている。
そんな彼女が、最後の周年イベントのために企画営業部に配属されるのだが……。
存亡の危機にある中堅ドーナツ・チェーン店を舞台にした、留衣と2人の同僚女性を中心にした恋とビジネスとドーナツ開発の物語。2時間ドラマ向きの1作。同じ作者の『カエルの子は』で、バカな主人公の無責任ぶりに辟易しちゃったのですが、今回は留衣の無類のドーナツ馬鹿ぶりがむしろ小気味よく思えるのは、彼女らの目標に向かって一丸となっていく過程がきちんと押さえられているからですね。
単に美味しいものを作るだけではお客さんに喜ばれないし、売れはしない。伝統の味も大事だけれど、そこで止まっていては衰退してしまいます。「Now, here, you see, it takes all the running you can do, to keep in the same place. If you want to get somewhere else, you must run at least twice as fast as that!」という赤の女王さまの言葉は、ここでも真実なのです。
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