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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「“文学少女”と恋する挿話集3」 野村美月

2010-05-02 | 本屋・図書館・愛書家
「ウソでも、本気でホントウの振りをしていたら、いつかホンモノになるかもしれないよ」

 “文学少女”シリーズの挿話集も3冊目。井上くんと遠子先輩と柔道部の牛園主将の三角関係話から始まり、竹田千愛の告白で終わる短編集。確かに著者あとがきでお願いされていたように、短編集も含めて本当にシリーズ既刊を順番に読まないといけませんね。『迷える仔鹿と嘘つき人形』にしても、あの校舎屋上でのエピソードから病室での一幕まで順を追って読んでいないと、あの感慨にはたどり着けません。それよりなにより、いきなりこの巻だけ読んでいては、流人を中心とする人間模様は理解できないでしょう。困った人ですね。
 夕歌と毬谷さんの話やそのまた後日譚など、またシリーズを最初から読み返したくさせる短編集でした。
 だから、1冊も読んでない書店員の妻に「なにが面白いの?」と訊かれて四苦八苦。最初は「ビター&ミステリアス・学園コメディ」で売り出したシリーズだけれども3冊目には「コメディ」の言葉が消え、4冊目では「ミステリー」が消えてしまったわけで……。
 人に言えない過去や想いがある人々の心の闇を、文学作品が暴き、許しを与えるけれど、それは単なる救いではなく、自分自身で克服しなければならない……つまり、時にはコメディ的な展開で笑わせ、ミステリーの文法で謎を解き明かしながらも、テーマそのものは青春小説の王道なのです。

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