「奮闘」 ジョイス・ポーター

　昔は記憶力が良かったと思うべきか、それともインパクトがよほど強かったと思うべきか。
　名探偵ブラウン神父の著者であるチェスタトンは即答できないのに、迷探偵ドーヴァー警部の著者はジョイス・ポーターと即答できてしまうのは悲しい。しかもシリーズ１冊しか読んでないのに……。

「お嬢さん、もし私があんただったらね……私はとび降りるね！」
　自殺しようとする女へのドーヴァー警部のアドバイス。

　まあ、名探偵の登場するミステリや捕物帖によく出てくる、偉そうにしているわりには知恵は働かず、無実の人間を短絡的に犯人と決めつける横暴で無能な警官または岡っ引きというステロタイプを全部寄せ合わせ、スコットランドヤードに押し込めるとドーヴァー警部のできあがり。100キロを超える体重、ドングリ目にちょびひげ、しみだらけ、ふけだらけ、体臭が酷くてワイロ好き。女が殺されたなら亭主に手錠をかけて引っ張ってこいと言い切る探偵の誕生です。

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