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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「飛べ!ぼくらの海賊船」 鷹見一幸

2009-09-15 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「人間ってのはね、じぶんの知らなかったことを知る、わからなかったことがわかる、そういうときに喜びば感じるようにできているとよ」
 荻平地区歴史民俗博物館の“センセイ”の言葉。

 小学6年の夏休みに東京から九州の山奥にやってきた少年が見つけた、隠された海賊船の秘密とは?

 『銀河乞食軍団黎明篇』や『でたまか』の鷹見一幸初のジュブナイル小説です。いや、油断ならないぞ。
 話としてはオーソドックスなジュブナイル小説。子供が元気なのはもちろん、登場する大人も一見怪しげにみえても根っこのところは良識ある社会人なので、安心して子供たちの冒険を追いかけられます。結果的に命令無視の独断専行がベターな選択だったとしても、最初から無謀ありきな話ではがっかりしてしまいますから。

【飛べ!ぼくらの海賊船】【鷹見一幸】【岸和田ロビン】【そなえよつねに】【来島十傑衆】【村上水軍】【安宅船】【ワンピース】
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「こちら南極 ただいまマイナス60度」 中山由美

2009-08-31 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 第45次南極観測隊に同行した朝日新聞の中山由美記者の1年半の記録です。
 やはり、こういう事業は継続して行われることが重要であり、そしてただ続けるだけでなく社会の注目を集め続ける工夫が大切だということはアポロ計画の例を見ても分かります(アポロ計画は月着陸の成功がピークで以後取材なども激減し、次に注目を集めたのは13号の事故。社会の関心が薄れると共に予算も縮小され……という顛末)
 そういう意味で、これ以後、毎年取材が入るようになったのは嬉しいことです。南極に朝日新聞から記者が派遣されるのは25年ぶり、越冬隊としては36年ぶりということで、長くご無沙汰でしたから。
 記者として同行……というとお客さまで付いていくだけと受け取られがちですが、何かあっても途中で引き返せない上、持ち込める物資も送り込める人員も制限のある極地です。女性記者といえどもゴミ拾いから施設の建設作業にまで駆り出され、話のネタに困るということはありません。片道400キロ、標高4000mというドーム基地への遠征にも同行して交替でドライバーを務めています。
 かといって、隊員と完全に一体になってしまっては取材者が取材対象と近くなりすぎて記事が書けなくなりますので痛し痒し。それで人間関係がおかしくなっても、狭い基地内では逃げることもできません。いろいろ苦労もあったようです。

 菌がいなけりゃ賞味期限なんか関係ないとは『面白南極料理人』でも書かれたことですが、同じようなエピソードを配信しようとしたら「好ましくない」と編集長に没にされたあたりにぬくぬくした東京とサバイバルな現地との温度差を感じます。そして、そのことも含めて結局単行本に収録してしまったあたり、やはり納得してなかったのでしょうか。暖かくても冷蔵庫並という気温で無菌状態。まだ食べられるものを食べましたと報告するのがそんなにいけないことなのかしら?と。

 『不肖・宮嶋……』とは違って「子供に読ませたい南極紀行」ですが、難をいえば個人レポートのまとめに手を入れたものなので全体の流れが把握しづらく、また隊員の個人名を出すのは極力避けているようなので、そのときそこに誰がいるとか何人いるとかほとんど分かりません。ドーム基地遠征も女性が全部で3人いたというだけで、誰が何していたかも分かりません。名前を挙げて事細かに報告すると『不肖・宮嶋……』のように非難を受けるからなのか、「私がこうした」についてはかなりあけすけな部分まで書いてあっても「他の人がどうしたか」はあまり分かりません。それは言葉の選び方ひとつで思いも寄らぬクレームがきて詰め寄られるエピソードの数々や、子供も読むことが前提のホワイトメールという媒体でインターネットによって毎日配信ということを考えると仕方がないと思います。でも、そこだけは『不肖・宮嶋……』や『面白南極料理人』と比較して物足りない点でした。
 他にも同行していた朝日新聞社カメラマン・武田剛の『ぼくの南極生活500日』とか、日刊スポーツ新聞の女性記者・小林千穂の『南極、行っちゃいました』とかも関連書として面白そうなので近いうちに手に入れて読んでみたいものだと思います。

【こちら南極 ただいまマイナス60度】【越冬460日のホワイトメール】【中山由美】【皇帝ペンギンの黒い肉】【生理】【横転事故】【寿司】【訴訟】【高速データ通信】
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「不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス」 宮嶋茂樹

2009-08-29 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「カメラのことは忘れてください」
 不肖・宮嶋にダンボール箱を手渡した金戸ドーム基地旅行隊長の言葉。総出で物資100トンの揚陸作業が始まるのである。

 「週刊文春」に連載された、カメラマン宮嶋茂樹が第38次南極観測隊の夏隊に同行した2ヶ月余の記録を、「吠える40度」「狂う50度」「叫ぶ60度」など156枚の写真と共に1冊にまとめたものです。
「ほとんどの隊員のかたからは喜んでいただいたが、一部よりは大変なおしかりも受けた」とあるように、真面目な観測隊の活動の取るに足らぬ部分ばかりを取り上げ、針小棒大に誇張して面白可笑しく書いたものなので、あとがきは謝罪文の山です。「不肖・宮嶋」の文章パートを担当している勝谷誠彦のあとがきもほとんど言い訳です。でも、それが単なる詫び状や愚痴にならないところも芸だと思います。
 ただし、こういう本だけ読んでいて南極観測隊のことを知ったつもりになっていてはいけませんが、長い間、しばらくまともなマスコミの取材は行われていなかったようでしたから、その空白を埋めるという意味で重要です。とにかく南極観測は簡単で楽な大名旅行とは違うんだという点は伝わってきますので、ここんところは重要。そして、真面目な南極観測隊の活動については他の本や雑誌、新聞、インターネットの記事で幾らでも読めるので、合間にこういう本を読むのも悪くありません。
 とりあえずチェックする必要があるのは宮嶋カメラマンに怒り狂っている西村淳の『面白南極料理人』と、その7年後の第45次隊に参加した女性記者の『こちら南極~ただいまマイナス60度』でしょうか。(09.08/29)

 子供への就寝前の読み聞かせは続けるようにしています。
 就学前は童話。小学生になったら、ガリバーの冒険あたりの児童版から始まって、ロフティングや佐藤さとるあたりを経由してファンタジーやSFへ行き、高学年になったら旅行記みたいなものへ。そして「あとは自分で読め」と宣言するか「自分で読む」と言い出したら卒業。
 まだ小学生だった長男への夜ごとの読み聞かせは、西村淳の『面白南極料理人』が終わって、最後には『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』に突入したあたりで終わったんじゃないかな。ハリー・ポッターを自分で読めるようになったら、親は用済みさね。
 ただ、『不肖・宮嶋……』は端折って読んでいかないと、「南極大陸に南極2号」とか「胸ポケットにコンドーム」とか、親として非常に説明に困る部分が多いんだよね。いや、そんな本、最初から選ぶなと言われそうだけれど、アムンゼンとスコットとか南極探検シリーズだったんよ。(07.08/27)

【不肖・宮嶋】【南極観測隊ニ同行ス】【宮嶋茂樹】【勝谷誠彦】【平成のレイテ作戦】【不運長久】【幻日】【南極ラーメン横丁】【「捨てたのではない。置いているだけである」】
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「南極新聞」 編:朝比奈菊雄

2009-08-28 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 第45回の南極観測隊には朝日新聞社が女性記者を派遣し、インターネットを通じての現地報告などが話題となりましたが、そもそも朝日新聞社は第1次南極観測隊から既に同行取材の記者を派遣しておりました。
 1952年に国際学術連合会議が国際地球観測年を提唱し「国際協力で地球を観測しようぜ!」と呼びかけ、日本もそれに応えたもののまだ敗戦直後。南極観測までは手が出す余力がないと渋っていたのを、朝日新聞社のキャンペーンが後押ししたという縁があってのことです。
 その1956年の第1次南極地域観測隊において往復の観測船<宗谷>の船上で発行されたガリ版刷りの日刊新聞を縮刷したもので、上中下の3巻セットです。
 船内でおこなわれた行事や売店や理容店の開店情報、気象状況・緯度経度から赤道祭、途中で購入した物品等についても記されていて、航海中の様子を知るのに最適の書です。
 一時期、航海をテーマにした同人PBMを主催していまして、その参考に何か航海の様子がわかる本がないかと訊いて回っていましたら、スギヤくんが「これがいいですよ」といって貸してくれたもの。困ったときに何かを訊くと、すぐに答えてくれる人が周囲にいるのはありがたいことです。

【南極新聞】【朝比奈菊雄】【赤道祭】
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「ロビンソン・クルーソー(下)」 ダニエル・デフォー

2009-08-27 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 35年間も無人島に島流し。奇跡の生還を遂げ、その間にブラジルに持っていた農園の権利が膨らんで財産家に。素敵な奥さんを見つけてイギリスで結婚して7年、2人の子供に恵まれて早61歳。農園経営も順調というロビンソン・クルーソー。
 平均寿命が30代前半という17世紀末のイギリスの話です。私だったら「そろそろ足ることを知ってもいいんでない?」と言いたくなりますが、ダメなんですね。この男は……。
「神様が行けとあなたにお命じになっておられるのでしたら、わたしにも一緒に行けとお命じになっておられると思います」
 そんなことを言う“できた”妻が死んでしまったものだから存在意義を見失ってしまいます。まだ上の子が5歳かそこらという2人の子供は人に預けて財産を信託し、またふらふらと航海に……って、酷い親だよなあ……。碇ゲンドウって、絶対こういうタイプですよね。
 そんなロビンソンが今度はアフリカ・アジア方面にふらふら航海する旅の物語で、彼の残してきた無人島の後日譚が半分くらい。

 物語の展開そのものよりもキャラクターの描写や会話に紙幅が費やされるのが昨今のライトノベル的小説。物語の展開そのものやキャラクターの描写よりも見慣れぬ世界での風習や博物学的関心事に紙幅が費やされるのがベルヌの小説。そしてこの話は、物語の展開そのものよりも宗教的命題に関する言及と経済取引に関する克明な記録に紙幅が費やされています。これが第2部。ちなみに第3部『ロビンソン・クルーソー反省録』は文学史か経済史の研究者しか読まない、信仰と倫理と社会問題の思索ばかりなんだとか。
 キリスト教的寓話だそうだけれど、「産めよ増やせよ地に満ちよ、後は野となれ山となれ」でいいんですか? それとも反面教師? 確かに、いわゆる名作文学には『小公女』とか『秘密の花園』など「金持ちの両親に放置された少年少女の物語」が目立つ気がします。少なくとも、お金持ちの両親が子供の傍にいる名作って読んだことがないな。そういう時代だったのでしょうか?

【ロビンソン・クルーソー】【ロビンソン・クルーソーのその後の冒険】【ダニエル・デフォー】【海賊】【餓死】【宣教師】【放浪癖】
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「ロビンソン・クルーソー(上)」 ダニエル・デフォー

2009-08-25 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 夏休みに読む本といったら、『十五少年漂流記(二年間の休暇)』や『ロビンソン・クルーソー』のような漂流記が定番のような気がします。夏=海=漂流という短絡的な発想ですが。それをいうなら『コン・チキ号漂流記』も入る気がしますが、あれは正確には漂流ではなく「航海」ですからちょっと違います。それなら『エンデュアランス号漂流』の方が遙かに漂流だけれど、あまり夏に読む本ではないかもしれません。

 子供の頃、きちんとした本として最初に読んだのが『ロビンソン・クルーソー』。まだ、小学校にあがらない自分が、薄暗い納戸を手直しした部屋に置かれた机で一生懸命に読んでいた記憶がありますが、今あらためて全訳で読み返すと長い。ストーリー的にはしょったところはないけれど、やはり描写が細かい。神への信仰について自問自答している箇所も多いし、何を幾らでどれだけ買ってどれだけで売ったとかいうような帳面上の記録が細かい。それに年月がぐんぐん流れていきます。ろくな道具もないまま無人島に孤立してしまえば、テーブル1つ作るのも何週間、家畜の柵を完成させるのに何ヶ月という作業ですから仕方がありません。10年20年があっという間です。
 今でも読んで面白かったし、岩波文庫版も思ったほど読みづらくなくて良かったですね。意表を突かれたのは、いわゆる『ロビンソン・クルーソー漂流記』として児童書で知っていた部分が上巻で終わっていたこと。そうかあ、下巻はまったく違う話なんだ……。
 『ガリバー旅行記』が巨人の国と小人の国だけでなかったのと同じですね。(2009/08/25)

 ちなみに正式なタイトルは「The Life and strange surprising Adventures of Robinson Crusoe, of York, mariner, who Lived Eight-and-twenty years all alone in an uninhabited Isiand on the Coast of America, near the mouth of the great River Oroonque, having been cast on shore by shipwreck, where-in all the men perished but himself. With an Account how he was at last strangely delivered by Pirates, Written by Himself.」、大ざっぱに訳すと「船の遭難で他の船員が全滅したにもかかわらず、ただ1人生き残り、アメリカ海岸オリノコ河の河口近くの無人島で28年間たったひとりのサバイバルし、海賊に発見されて救出されるまでの一部始終を彼自身で書き記した、ヨークの船乗りであるロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険」くらいな感じ。省略して『ろびんそん!』。
 昨今の「ライトノベル」やら村上春樹の新刊のタイトルが長いなどと言っても、せいぜい先祖返り。『がりばー!』こと『ガリヴァー旅行記』も正確には『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』こと「Travels into Several Remote Nations of the World, in Four Parts. By Lemuel Gulliver, First a Surgeon, and then a Captain of several Ships」なんだそうですよ。あと、有名どころだと映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』こと「Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb」というのがあります。
 タイトルに限らず、章題がそのままあらすじのような作品もそんなに珍しくないんですけどね。(2013/05/01)

【ロビンソン・クルーソー】【ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険】【ダニエル・デフォー】【岩波文庫】【フライデイ】【干しぶどう】【大工道具】【人喰い人種】
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「キャプテン コン・ティキ」 アルノルド・ヤコービー

2009-08-22 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「人類の歴史はそもそも最初から、実践的な知能と哲学的な知能の二つながらを示す例で満ちている。僕たちが昔の人たちより優れていると考えていつも怪しまないのは、おそらく僕らの最大の誤りなのだ」
 トール・ヘイエルダールの言葉。

 「コンチキ」といったらコン・ティキ号漂流記で、コン・ティキ号といったら文化人類学者ヘイエルダールというのは、冒険小説好きの子供にとっては常識でした。少なくとも自分はそう思ってました。自分が子供の頃から本当にそうだったのか、今ではどうなのか知りませんが、少なくともインパクトはありました。
 本家の漂流記の方はいろいろな児童向けを何度も読みましたが、本書はそのヘイエルダールの半生を、幼なじみの視点から語ったものです。大雑把に言ってしまうと、1/4が幼少期から青年期、1/4が自由ノルウェー軍の一兵士として参戦しカナダでの訓練からノルウェーでの戦いまでの第二次大戦期、1/4がコン・ティキ号の航海実験、そして1/4が成功後の騒動の顛末といったところでしょうか。戦記ものとして読んでも愉しめます。何度も読み返した本編漂流記とは違った感覚で面白いですね。教養文庫でも上下巻に分冊されて復刊されてました。
 読んでいて感じるのはヘイエルダールは実行力はあっても冒険家ではなく、あくまで学者であって論理の人。論理的に正しいはずの自説が、「不可能だからありえない」と言われ、ならば「不可能ではない」ことを証明することで議論をテーブルに載せようとしたのです。「可能性はある」ことが必ずしも「真実であるとは限らない」ということをきちんと理解していた人なのです。
 彼の目的としたポリネシア諸島の住人の起源はいまだに確定したものはなく、ヘイエルダール説は非主流となっているようですが、無謀と思われる航海に挑んでも自説を検証しようという姿勢は尊いものです。自分では現地に足を運びもせず、研究実績もあげないまま非難否定を繰り返す論敵の姿を見るとなおさら痛感します。

【キャプテン コン・ティキ】【アルノルド・ヤコービー】【教養文庫】【ファツ・ヒバ】【ロンゴ・ロンゴ】【クヌート・ハウグランド】【空挺降下】【SOE訓練センター】【青い少佐】【護衛船団】【テラー地雷】【無線通信部隊】【除隊申請】
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「地底世界のターザン」 エドガー・ライス・バロ-ズ

2009-08-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『仮面ライダーディケイド』の24話と25話と『侍戦隊シンケンジャー』の第20幕と第21幕が見事にクロスオーバーしていまして、それぞれの個性を活かしながら同時進行で同じ瞬間に立ち会った2組のヒーローの相剋を描いておりました。
 それぞれの役割や個性が活きていなかったりオリジナルの設定を無視していると「なんでも一緒に出せば良いと思っているだろ!?」と言いたくなりますが、やはり物語の枠を超越したクロスオーバーというのはエンターテイメントの醍醐味です。デルザー軍団に対抗するため世界各地から集結してくる仮面ライダーたちとか、スーパーロボット大戦とか。
 真正面からがっぷり四つに組まなくても、ちらりと匂わすだけでも燃えたり笑えたりします。魔夜峰央の『パタリロ!』と『ラシャーヌ!』の作品を超えたかけ合いとか、和田慎二の『スケバン刑事』と美内すずえの『ガラスの仮面』とか……。

 地底世界ペルシダーの皇帝となった快男児デヴィッド・イネスだったが、『海賊の世界ペルシダー』のエピソードにおいてコルサールの海賊に捕らえられたままであった。この知らせをカリフォルニアの無電技師ジェイスン・グリドリーがたまたま無線装置で受信したことから、地上世界ではただちに皇帝イネス救出部隊が編成されることとなるが、その隊長として招聘されたのはグレイストーク卿、すなわちジャングルの王者ターザンであった!

 さあ、自作品同士のコラボが大好きなバロウズですよ?
 書店では創元版とハヤカワ版が競い合うようにバロウズの作品を平積みしていた時代でした。迷ったあげくペルシダーもターザンも読めるとハヤカワ版『地底世界のターザン』を買っちまいましたが、創元版の『ターザンの世界ペルシダー』でも良かったんだよなあ。あとは柳柊二と武部本一郎のどちらが好きかという踏み絵みたいなもんです。細かな訳の違いまでは店頭の立ち読みでは分かりませんから。
 
 そもそもバローズは『地底世界のターザン』に限らず自作品のクロスオーバーを派手にやってます。月世界シリーズの地球は火星のバルスームとの交流があるし、金星シリーズもバルスーム行きのロケットが金星に不時着したところから始まるし、どうもバローズ作品は基本的にどれもこれも同じ世界の話のようです。

【地底世界のターザン】【エドガー・ライス・バローズ】【柳柊二】【恐竜】【北極】【飛行船】【ゾラムの赤い花】
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「アジア・旅の五十音」 前川健一

2009-08-11 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 アジアをテーマにしたミニコラム&エッセーを五十音順に並べて事典風にまとめたもの。さらに自分の生れ故郷を訪ねた話や、ビルマで出会った日本語を学んでいた女性のその後についてなども収録。

 各国の食事や文化といった話から著者自身の生き方まであれこれ詰め込んであり、いつでも気軽に好きなところから読めるお得な1冊。アジアといいつつ、アメリカ・ヨーロッパについても言及することもあり、アメリカで出会った幼い姉弟はジュースとクッキーを自分たちで売りさばいてサマーキャンプ代金を捻出していたけれど、その後見かけた日本人留学生は「これっぽっちの仕送りでは足りない」とほざいていたとか、世界各地で見聞きしたあれこれ詰め合わせです。
 特に印象的だったのはアジアの定義について考えてみた部分。
 オーストラリア人の旅行者と話をしたらその人はオーストラリアをアジアの一員と考えていたけれど、日本人は日本と「アジア」は別と思っているよね? アジアは劣っているモノと日本人は決めつけていないかというくだり。
 確かにそういう一面はあるかもしれないと思いました。「ふるさとはいちばん」というのは良いけれど、主観的評価を客観的評価と思いこむことは避けたいと思います。

【アジア・旅の五十音】【前川健一】【朝食】【カメラ】【ガイドブック】【ワイロ】【毛ジラミ】
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「魔法医師ニコラ」 ガイ・ブースビー

2009-08-07 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 不死の秘密を手に入れようとする怪人ニコラと、彼に雇われたブルース青年が、中国人秘密結社と渡り合いながらチベットの奥地へと旅する物語。菊地秀行の新訳で小学館文庫から出版されたのを買って読んで、前にも読んだ気がすると思ったら、ハードカバーの「地球人ライブラリー」版も実はうちの書架に並んでいて、さらにいうなら小学生の頃にも読んでました……。

 小学館が1971年から76年にかけてワイドカラー版『少年少女世界の名作』というシリーズを全55巻で刊行していたのです。まだたいして景気の良くない頃でしたが、小学生だった私に親がこの全集を買い与えてくれまして、自分はこれと江戸川乱歩の少年探偵シリーズで育ったようなものです。
 今になって思えば、「小学館の暴挙!」「ご乱心!?」というようなシリーズでした。各巻ごとにアメリカ編とかフランス編などと別れており、その中に文学からノンフィクション、昔話までひととおり収録されているという行き届いた構成です。たとえば「フランス編7」なら、ジュール・ベルヌの『十五少年漂流記』、ジュール・ルナールの『にんじん』、アンリ・ファーブルの『科学物語「かみなり」』、『きつね物語』、『モーパッサン短編』、『キュリー夫人』といったように文学、冒険小説から科学読み物、伝記までフォローされています。
 それだけなら普通の「よくできた」文学全集なのですが、その収録範囲がやけに広いのですね。テア・フォン・ハルボウ の『メトロポリス』や海野十三の『海底大陸』のようなSFあり、スーベストル&アランの『怪盗ファントマ』や黒岩涙香の翻案小説『ゆうれい塔』のような怪奇とミステリーあり、高垣眸の時代活劇小説『怪傑黒頭巾』あり、エミリオ・サルガーリの海賊小説『黒い海賊』あり。こんなラインナップを武部本一郎や小松崎茂、柳柊二といったイラストで読んで育つとどうなるかというと、ヘロドトスもディケンズもシャミッソーもクストーもバローズもルー・ウォーレスもコナン・ドイルもトーマもベルヌもデュマも壺井栄もバイコフもルナールもロフティングも川端康成も酒井三郎もモンゴメリもチャペックも夏目漱石もルブランもハガードも海野十三も、みんな互角になってしまうのです。読まずギライにはなりません。ノンフィクションだろうと科学の啓蒙書だろうと「とりあえず読んでみよう」となります。

 ……で、大きく話がそれましたが、ブースビーの『魔法医師ニコラ』も、もともとはそこで読んでいたのですね。それを小学館が完訳で「地球人ライブラリー」の1冊とし、さらには菊地秀行の新訳で小学館文庫から出版し……って、日本ではさほどメジャーでもあるまいに、どれだけ『魔法医師ニコラ』が好きなんだ、小学館!?
 なんというか、普通の基準でいう「良い人」「正義の味方」が出てこないのが特色。秘密結社にしろ博士にしろ、目的のためには騙す・殺すは当たり前なので、一種のピカレスク・ロマンなのかも。

【魔法医師ニコラ】【ガイ・ブースビー】【菊地秀行】【チベット】
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「少年ケニヤ」 山川惣治

2009-08-01 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 住んでいる町がケニア共和国とパートナーシップを結んで交流事業をおこなっているものですから、小学校の夏休みの宿題に「ケニアに関する本を読んで読書感想文を書く」というものがありました。そのことを夏休みが始まってから知り、学校にはいくらでもケニアに関する本があるけれど、うちにそんな本があるわけな…………ありました。
 あったんだなあ。よく持っていたなあ。でも、うちの子が読むかなあ?

 1941年、太平洋戦争が勃発し、10歳の日本人少年ワタルは商社マンとして英国植民地のケニヤに駐在していた父親と奥地ではぐれてしまう。ただ1人アフリカの大地を放浪するワタルは、やがてマサイ族の老人や白人の美少女ケートたちと知り合い、彼らを味方にして父親を捜し続けます。そして父親がコンゴの奥地で原爆を開発しているナチスの秘密基地にいることが判るのだが……。

 昭和26年から新聞連載された絵物語が角川文庫としてまとまったもの。
 こうやって見ると、諸星大二郎の絵はこの系統なんだなあという気がしましたが、少年少女が手に手を取って逃げるシーンでもつい栞と紙魚子を連想して笑ってしまいました。ごめんなさい。
 内容は明るく健全で、敵は野獣であったり悪い兵隊だったり、美少女に秘密があったりと正統派の冒険小説でした。

【少年ケニヤ】【山川惣治】【マサイ】【ナチス】【原爆】
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「時間に忘れられた国」 エドガー・ライス・バロウズ

2009-07-31 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 世界的にはターザンの生みの親として、日本のSFファンの間では火星シリーズの作者として知られるエドガー・ライス・バロウズによる秘境冒険譚。今なお恐竜や海竜が棲息する南海の孤島に漂着した男女の物語の顛末である「時間に忘れられた国」「時間に忘れられた人々」「時間の深淵より」の3本を1セットにして復刊したものです。
 表紙は何回か変わりましたが、最初期の「密林の美女」バージョンは未入手。そのうち手に入れたいものです。イラスト最高★ Uボートと海竜というモチーフだけでご飯が3杯くらいはいけます。今の、ちょっとピンボケで撮れてしまった翼竜らしき姿……もなかなか捨てがたいのですが。

【時間に忘れられた国】【エドガー・ライス・バロウズ】【武部本一郎】
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「アジアンパンクGO!GO!」 河嶋陶一朗

2009-07-31 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『サタスペ』というテーブルトークRPGがあります。
 世界最大の犯罪都市と化した「オオサカ」を舞台に、プレイヤーは亜侠(アジアンパンク)になって用心棒や運び屋をして金を稼いだり人捜しで人助けしたり巨大な犯罪結社の抗争に巻き込まれたりするゲームで、シリアスな冒険活劇というよりドタバタなにわアクション。いや、ゲームで遊んだこともルールを読んだこともないんですが、そんな感じなんだと思います。この理解であってますか?
 これはそのリプレイ集。

 売れない映画俳優のエルヴィス弗箱、両親の仇を追う姉弟亜侠の千葉素子とマサト、それに小学生の野村斬々舞を加えた四人組<アベレージ90K>に持ち込まれる身辺警護などの仕事には、常に裏がある。裏があり、罠があるのを承知でさらにその上を狙わなくては給食費も払えないのだ。
 千葉姉弟らのチームの冒険を描いた4作品を収録。

 ……あー、久々にリプレイ読んで笑った。声が出てしまった。インパクトあるわ、幼稚園児。装甲幼稚園バスというのもかなりスゴイと思いますが。

【アジアンパンクGO!GO!】【サタスペ】【河嶋陶一朗】【冒険企画局】【速水螺旋人】【マグロ漁船】【ゾンビ】
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「トレジャー・キャッスル」 菊地秀行

2009-07-25 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 オンライン書店bk1からメール便到着。
 昨日の朝に注文した本が翌日昼に到着というわけです。速いね。まとめて頼むから送料無料だし、品切れは少ないし便利。もちろんリアル書店も、出ているのを知らなかった新刊や中身を確かめたい本などを手にとって中身を確かめてから買えるという意味では貴重な存在なので、両方とも満遍なく利用していきたいと思ってます。
 さて、開封してみれば『るくるく』の最終巻と『もやしもん』の8巻、そして『トレジャー・キャッスル』が出てきます。『るくるく』と『もやしもん』は長男と嫁にとられてしまったので、まずは『トレジャー・キャッスル』から。
 これは「かつて子どもだったあなたと少年少女のための――ミステリーランド」というキャッチフレーズで講談社から刊行されているシリーズです。田中芳樹、乙一、加納朋子、上遠野浩平、綾辻行人、二階堂黎人、法月綸太郎、森博嗣、小野不由美、有栖川有栖等々のメンツが大人の鑑賞に堪えるミステリー系の作品を書き下ろしているわけで、これに我孫子武丸、北村薫、京極夏彦が続く予定ときたら、全国の中学校は、図書館にかならずこのシリーズを常備すること!と声明を発表したいくらい。
 講談社は小学生対象の青い鳥文庫でも宮部みゆきの『この子だれの子(我らが隣人の犯罪)』とか上橋菜穂子の『獣の奏者』を難しい漢字を直しただけで刊行していますし、読者層の拡充を目ざして小中学生から地道な努力を続けているようです。

「男と女が一緒にいて、何かやらかしたら男の責任だ、阿呆」
 能登クンの罵声。男って悲しい生き物やね。

 喧嘩の達人という中学3年生は、倒した相手にとどめを刺すのにも容赦はない。そんな彼が城趾で出会ったのは、この城の何処かに眠ってる宝を探しているのだという同級生たちだった……。

 菊地秀行ですよ? しっかり菊地秀行してます。上には上があるという話です。世の中金だという話です。清楚とセクシーさを同居させているという安藤冬美さんは、どこかで選択肢を間違えると太宰ユキに変貌しそうで怖いです。
 でも、あくまで中学生あたりが読者層なのであからさまなエログロはないし、魔人怪人妖魔宇宙人も出てこないので、学校の図書館にも安心しておくことができます。
 しかし、男でフルネームが出たのは文太だけでしたねえ。 

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「鋼鉄の騎士」 藤田宜永

2009-07-24 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「貴族の長所は、とんでもないことを考えつき、それを実行に移すことだと思っていたが、君はまさに、その典型だな」
 パリ在住の日本人、高石三郎の言葉。

「貴族の美徳は、金を浪費することだよ」
 貴族は人が滑稽に思ったり脅威を感じることに散在するのが仕事であり、損得勘定で動くのは単なるブルジョワだと語るド・トゥルニエ男爵の言葉。

 貴族が科学を発達させ芸術を振興させたのかもしれません。
 モーター・スポーツに身を投じた日本人青年が巻き込まれる波瀾万丈の冒険と国家間の陰謀劇。

 左翼運動に挫折した子爵家の次男・千代延義正は、帝国陸軍フランス駐在武官の父に引きずられるように日本を離れた。そして出会った1936年トリポリでのグラン・プリ・レースに心を奪われた義正は勘当されながらもカー・レーサーを目指す。
 だが、心ならずもドイツとソ連間の諜報戦のまっただ中に陥り、さまざまな組織から狙われることになってしまう……。

 厚さ3センチの上下巻にいきなり及び腰。こんな分厚い文庫を本当に読み切れるかなとおそるおそる上巻だけ買ってみたところ、意外に読みやすくてするすると750頁ちょいを読んでしまったのにはびっくり。
 トリポリ優勝直後にレース界から消えたレーサー、ベルニーニはどこにいるのか? ドイツの誇る天才レーサー・シュミットと女性科学者の運命は? 怪盗<弓王子>はこの諜報戦にどう絡んでくるのか? そして、パリの街に消えた恭子の運命は……?と上巻はレースよりも諜報戦でさまざまな人物が入り乱れてパリを右往左往している感じです。
 スパイの世界は非情というより疑心暗鬼の世界だなあと思います。上巻ではかろうじてレース初勝利まで。さあ、下巻をどこからか工面してこよう……。(09/07/21)



 結局、下巻分は500円の中古で最初の新潮社版ハードカバー1巻本を買ってしまいました。著者に印税が入らないから新刊で手に入るものは出来る限り新刊で買ってますが、今月はそろそろ金穴。上巻は新刊で買ったということで勘弁してください。(20/07/24)

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