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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「ニルスのふしぎな旅/コン・チキ号漂流記/絵のない絵本 …他」 少年少女世界の名作40

2010-01-06 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「そこ(5555キロの荒海)をいかだでのりきるなんて、できっこありません」

 小学校5年くらいの頃に従兄から譲り受けた『少年少女20世紀の記録』というノンフィクションの全集がありました。確か中学の図書館にも入っていましたが、『沈黙の世界』も『ノーチラス号北極横断記』も『地球は青かった』もこのシリーズで読みました。『コン・チキ号漂流記』も最初に読んだのは、このシリーズだった気がします(筑摩書房の「少年少女世界ノンフィクション」の方だったみたい。2022/11/02)。やっぱりノンフィクションは面白いよね。ヘディンのシルクロード探訪記も収録されていて探検小説三昧の巻です。
 それからNHKのアニメにもなった『ニルスのふしぎな旅』も別の児童向け全集で読んでいての再読。何度読んでも、一夜だけ浮き上がる街の話は悲しいね。
 天空を通る月が地上に見た光景や人間模様を作者に語る形式の『絵のない絵本』からは「インドのむすめ」「めんどりと女の子」「いなかしばい」「王座で死んだ少年」「森の道」「北の国」「神さまのおくり物」「道化役者」「空色の服とばら色のぼうし」「隊商」「木の上の人形」「ベルテルとアモール」「えんとつそうじの小ぞう」「白鳥」「くまの兵隊」「おいのり」……ああ、全部書きだそうと思わなければ良かった。全部で16編を収録。
 『ストリンドベリ童話』からは「海におちたピアノ」と「ねぼうな音楽家」。
 読み返すまで存在そのものを忘れていた『七人兄弟』は、フィンランドの農場の7兄弟の物語でどいつもこいつも勉強嫌いでなまけものの暴れん坊。最低ですね。

『ストリンドベリ童話』原作:ジョン・A・ストリンドベリ/絵:坂本健三郎
『コン・チキ号漂流記』原作:トール・ヘイエルダール/絵:柳柊ニ
『絵のない絵本』原作:H・C・アンデルセン/絵:斎藤博之
『七人兄弟』原作:アレクシイ・キビ/絵:藤沢友一
『シルク・ロード』原作:スヴェン・ヘディン/絵:古賀亜十夫
『ニルスのふしぎな旅』原作:セルマ・ラーゲルレーフ/絵:清沢治

【ワイドカラー版少年少女世界の名作40】【北欧編2】
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「赤毛のアン/翼よ、あれがパリの灯だ/白鯨 …他」 少年少女世界の名作18

2010-01-04 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「神、天をしろしめし、世はすべてよし」

 アメリカ編といいつつカナダの話あり、ブラジル民話ありの「アメリカ大陸編」です。
 そのカナダの話である『赤毛のアン』は新潮社版と同じく村岡花子の文章です。まあ、小学生の頃は少女小説などというのは女の子向けの話で自分が読むような本ではない!……と思っていました。ところがこうした全集だとイヤでも読んでしまうんですね。それで読んでしまうと、やはり名作と言われるものはそれなりに面白いんですよ。『赤毛のアン』しかり『若草物語』しかり『少女パレアナ』しかり。

 それから初の大西洋単独無着陸横断を成し遂げたチャールズ・リンドバークの『翼よ、あれがパリの灯だ』。パイロット2人による無着陸横断は1919年6月に成功していて、その8年後の話だと知ると感動もちょっと冷めますが“ひとりぼっち”であり、なおかつニューヨーク=パリという大都市間を飛びきったところが重要です。
 『白鯨』はイメージばかり先行し、きちんと読んだことがなかったのをここで初めて読みました。それ以来、読んだことはありません。
 『ティンガリン物語』は馴染みがありませんでしたが、怪物に立ち向かう巨人タリリラを助ける小さい仙女ティンガランの物語。敵は怪物といっても、やはり巨人のようなんですけどね。
 『なぞのマヤ発見記』はジョン・ロイド・スチーブンスとフレデリック・キャザーウッドによる伝説の都コパン探索記。ちゃんとエドワード・トンプソンによるチチェン・イッツァの「聖なる泉」探索まで言及されています。

『ティンガリン物語』原作:F・R・ストックトン/絵:赤坂三好
『赤毛のアン』原作:L・M・モンゴメリ/絵:谷俊彦
『翼よ、あれがパリの灯だ』原作:C・リンドバーク/絵:古賀亜十夫
『ブラジル民話』文:槇本ナナ子/絵:山本忠敬
『なぞのマヤ発見記』文:白木茂/絵:梁川剛一
『白鯨』原作:ハーマン・メルビル/絵:中西立太

【ワイドカラー版少年少女世界の名作18】【アメリカ編8】
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「湖底怪獣~その追跡と目撃」 ピーター・コステロ

2009-12-21 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 ネス湖をメインに、その他スコットランド、アイルランドからアイスランド、スウェーデン、カナダ、アメリカ、ボリビア、アルゼンチン、シベリア、マレー、ビルマ、ニュージーランド、オーストラリアと世界中の湖底怪獣の目撃情報や伝説を集め考察をしたモノ。ただし、アフリカ方面については白紙なのでモケーレ・ムベンベは名前すら出てません。残念。
 有名な図版も一通り掲載されているので、まとめ本として重宝。でも、さまざまな証拠写真は湖面の波紋の大きさがおかしいよね。円谷英二が自然には勝てないといっていたくらい、水の特撮でスケールを誤魔化すのは大変です。

 著者のピーター・コステロというのがどういう人か本書では不明なのだけれど(オーストラリアの元財務長官とは別人だと思う……)、単なるネッシー信者かと思ったらロマンと論理は別物の人らしく、最後の最後で「冷淡水じゃあ爬虫類は生きてられないだろ」と常識的な指摘でしめくくってます。何かがどこかに居るかも知れない。でも、少なくともネス湖とかシベリアとか北欧とかの湖に何かがいるとしても、それは海竜じゃないよねと。

【湖底怪獣】【その追跡と目撃】【ピーター・コステロ】【南山宏】【ヒュー・グレイ】【マルコム・アーヴィン】【ケネス・ウィルソン】【F・C・アダムズ】【ピーター・オコンナー】
コメント (3)
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「幻の恐竜を見た」 ロイ・P・マッカル

2009-12-20 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
……正直に言えば「幻の恐竜を見たかった」もしくは「幻の恐竜を見たという人がいた」。

 アフリカ奥地今後の湖に棲んでいるという謎の怪物モケーレ・ムベンベの正体を探るべくコンゴへの調査団を編成したロイ・マッカル博士1979年から始めた2回の探検旅行の記録。そんな知識が何の役に立つかという疑問はありますけど、序文の恐竜生存説の歴史はよくまとまっているのでありがたいかも。
 著者のマッカル博士はシカゴ大学の動物学者で、ネス湖の恐竜探索でも名をはせた人物らしいのです。結局調査が失敗に終わったのはいまだにそんな怪物が発見されていないことからも明白ですが、探検旅行記としては面白い読み物になっています。過去の伝承から恐竜の生き残りではないかと仮説を立て、スポンサーを探し、トラブルがあってさらに資金集めに走り、メンバーを集め、予備調査に現地に赴き、帰還してさらに本格的な資金とメンバー集めに奔走し、意見の食い違いから探検隊が分裂し、いざ出発したものの厚いコンゴの密林と乾期の前に……。

 正統派の探検隊記録ですね。出るか出るかと期待させておいて、怪しげな証言ばかり登場するところは川口浩探検隊と同じです。
 その後もさまざまな大学や研究者のチームがモケーレ・ムベンベ探しに現地に赴いており、日本では早稲田大学探検部の挑戦が、高野秀行の『幻の怪獣ムベンベを追え』に詳しいです。このときの調査ではモケーレ・ムベンベがいるというテレ湖の水深は何かが隠れるにはあまりにも浅すぎるというソナー探査の結果が出ていますが、それでもどこかに何かが隠れているのではという幻想を消しきれないのが現代の恐竜探しです。

【幻の恐竜を見た】【ロイ・P・マッカル】【南山宏】【UMA】【ピグミー】【ナショナル・ジオグラフィック】【ゴリラ】
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「二人の女王」 ヘンリー・ライダー・ハガード

2009-12-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 日本には「船頭多くして船山に登る」ということわざがあるけれど、物語にほぼ同格の支配者や経営者が複数登場したら、分裂騒ぎになることは約束されているようなものですが……。

 一人息子を亡くして悲嘆に暮れていた狩猟家アラン・クォーターメンを、友人のヘンリー・カーティス卿や退役軍人ジョン・グッド大佐が暗黒の大陸アフリカへと探険の旅へと連れ出す。
 苦難の末ようやく行き着いた秘境の奥には、美しい双子の女王ニレプタとソレイスの支配するズ・ベンディ国があった……。

 『宝島』のスティーヴンスンのライバルであり、コナン・ドイルが目標とした冒険小説の大家ハガードが描く秘境冒険小説『ソロモン王の洞窟』の続編です。
 映画『リーグ・オブ・レジェンド』の公開に合わせて復刻された際に表紙が変わりました。旧版(右)は映画ポスター的なバタ臭い美女2人で、いかにも仲が悪そうですが、新版は日本的なセンスの美少女2人でいかにも仲の良い姉妹に見えます。物語の先の展開を知って見ると心が痛いですね。ビフォー・アフターといった感じの新旧表紙です。

【二人の女王】【H・R・ハガード】【末弥純】【山本耀也】【骨肉の戦い】
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「チベット遠征」 スウェン・ヘディン

2009-12-12 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 スウェン・ヘディンといえば20世紀最大の探検家といわれるスウェーデン人地理学者。特に意識して追いかけたことはなくても、さまよえる湖「ロプ・ノール」の謎を解いて楼蘭の遺跡を発見したりゴビ砂漠を横断したりと大活躍している人なので、中央アジアの探検記とか旅行記を読んでいると自然に「一般常識」として名前が頭に入ってくる人です。
 けれども、その最盛期に第二次世界大戦が勃発。ナチスに政治的に利用されたり功績を地理学会に無視されたりと後半生はさんざんだったようです。『栄光なき天才たち』に登場するくらい……。
 そんな探検家ヘディンが3度の遠征したチベットの自然・地理・風俗を記録したものです。

【チベット遠征】【スウェン・ヘディン】
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「豹の目」 高垣眸

2009-12-11 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 高垣眸といえば作家としてデビューしたのが大正14年、最後の作品が昭和56年とほぼ昭和を通じて執筆を続けた大衆小説家にして児童文学者。晩年の昭和54年には「快傑黒頭巾」の原作者、あの高垣眸が20余年の沈黙を破り、再び熱筆を振った“愛と感動”のSFスペクタクルロマン!!とのアオリ文句でオフィスアカデミー版『宇宙戦艦ヤマト』のノベライズをやっていたりします。
 そんな高垣眸の代表作と言えば、もちろん『宇宙戦艦ヤマト』などではなく『怪傑黒頭巾』、そして『豹(ジャガー)の眼』です。

 日本人快男児、黒田杜夫の正体はインカ帝国の末裔である!
 杜夫は隠された秘宝を狙う怪盗ジャガーと戦いつつ、太平洋上で燃える貨物船からの脱出劇を経て、サンフランシスコへ上陸する。目指すはアリゾナの奥地ジャガーの神殿。
 彼の行く手に現れるのは、死笑狂病に冒された美少女・錦華、そしてサンフランシスコ警察の名探偵デュカン……。

 インカ帝国の末裔がなんでアリゾナくんだりでアメリカン・インデイアンらとともに新帝国を樹立しようとする秘密結社の旗揚げをしないといけないのかとか、ツッコミどころ満載な気がしますが、大衆文学・児童文学はそれでいいのです。「実は高貴な血筋に連なる者」という設定などは、長屋暮らしの浪人が実はお家断絶の危機にある大名の落し胤であるとか平凡な少年が銀河系規模の皇家の血を引くとか定番のネタ。
 でも、インカ帝国というなら、せめてもうちょい南米寄りのところまで行って欲しいと思いました。
 わが家の『豹の目』は少年倶楽部文庫版。かなり表紙が傷んでいるけれど、あの東海豪雨を生き残ったのだから仕方がないですね。

【豹の目】【高垣眸】【落胤】【秘密結社】【インカ帝国】【ピンカートン探偵社】
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「人外魔境の秘密」 横田順彌

2009-12-08 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 明治から昭和初期にかけて「天狗倶楽部」と呼ばれた一団が活躍しておりました。テニスからボート競技までなんでもこなす親睦団体というと、どこぞの大学のナンパなサークルみたいな気がしますが、こちらは硬派も硬派。日本プロ野球誕生の原動力とも言われるくらい特に野球への入れ込みが有名で、『海底軍艦』の著者である冒険小説家の押川春浪を中心に、東京朝日新聞社や「野球害毒論」を唱える新渡戸稲造と厳しく対立したことでも知られています。
 その天狗倶楽部を主人公に、コナン・ドイルの「ロスト・ワールド」の後日談をやろうというのがこの話です。

 ジャングル奥深くに隠された台地の謎を解き明かさんと、押川春浪率いる天狗倶楽部の面々が探検隊を組織し、南米へと向かう。その行く手に現れるのは、ドイツ人の間諜、そしてチャレンジャー教授だった……。

 「天狗倶楽部」シリーズとしては第2弾。前作では火星人とも戦いを繰り広げた天狗倶楽部ですが、今度は今なお太古の恐龍が跋扈する人外魔境に挑むという、痛快無類の冒険活劇。こういう話が成立するのは実際に彼らが行動力を持った硬派……というかバンカラ集団だったからであり、職業や身分の上下関係を超えた交遊によってさまざまなアイデアを実現していったという実績があればこそです。
 
【人外魔境の秘密】【横田順彌】【バロン吉元】【押川春浪】【吉岡信敬】【中村直吉】【テーブルマウンテン】
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「地底大陸」 蘭郁次郎

2009-12-07 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 マイブームだった秘境冒険小説が、「朝日新聞」の朝刊に連載していた『新・地底旅行』の影響か、地底探検に片寄り始めた頃に手に入れたもの。

 鉱物資源を探索にアジア大陸奥地に赴いた日本の大陸探検隊が、高度な科学文明を誇る地底帝国への入り口を発見する。だがそこに隣国R国の息がかかった秘密結社ゲーウー団が潜入し、女指揮官アスリーナが地底帝国の科学技術を奪うが、日本男児は柔道の技と勇気でR国の陰謀から2つの帝国を救う。

 ……という、いかにも戦前の少年向け物語です。
 蘭郁次郎という人は、海野十三と並んで日本の科学小説界を代表する作家だったそうですが、1944年1月に台湾で事故死してしまい、そのまま戦後に再評価されることなく幻の作家となってしまったようです。
 ギミック満載で少年向けとしては面白い小説なので、ちょっと残念な話です。ガガガ文庫の跳訳シリーズあたりで復刊しても良いのにね(まあ、跳訳そのものがどこかに跳ねて行っちゃってる現状ですが……)。

【地底大陸】【蘭郁次郎】【モンゴル】【秘密警察】【インカ帝国】【人間タンク】【音波兵器】【怪力線砲】
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「地底の世界ペルシダー」 エドガー・ライス・バローズ

2009-12-03 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 バローズの代表的シリーズの1つ、地底世界ペルシダーの1作目ですが、当時は創元推理文庫とハヤカワ文庫が競って同時展開していました。
 70年代の名古屋といえば大きな本屋=デパートの書籍コーナーでしたが、そこにはハヤカワ版の『地底世界ペルシダー』と創元版の『地底の世界ペルシダー』が並んでいて、どちらを買えばいいのか、違いがあるのか、そもそも同じ本がどうして2種類出ているのか悩んだものです。
 まあ、イラストの柳柊二(ハヤカワ版)を選ぶか、武部本一郎(創元版)を選ぶのかの踏み絵みたいなものですが、わが家にあるのは後になって手に入れた陳腐な映画版です。残念。

 鉱山主の青年イネスは老技術者ペリーを相棒に、新たに開発した地底試掘機で地球内部の探索に挑む。ところが舵の故障から試掘機は地殻をつらぬいて地球の中心へと暴走!
 やがて2人は、太陽が静止して動かず、無気味な翼竜が空を飛ぶ不思議な世界へと到達する。地球の内部はがらんとした大空洞だったのだ!

 夜が訪れない神秘境ペルシダーで獅子奮迅の活躍をする快男児デヴィッド・イネスの冒険譚。
 ペルシダーというと科学特捜隊の地底戦車のイメージの方が強いですが、それくらい地底冒険の代名詞となった作品ですね。

【地底の世界ペルシダー】【エドガー・ライス・バローズ】【地球空洞説】
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「人外魔境」 小栗虫太郎

2009-11-30 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 一時期は秘境探検小説がマイブームでして、そういうのは最近の流行りではないのであちらこちらで古書店を回るなどしていました。この本もそうして手に入れた1冊。この本は神田神保町だったか名古屋上前津だったか。今ならアマゾンでなんとかなってしまうので便利だけれど、面白みとか意外な出会いとかはないよね。

 世界の各地の秘境で繰り広げられる事件を、主に採集家・折竹孫七が魔境小説作家である「私」に語って聞かせる形で描く連作短編集。

 登場するのは有尾人とか水棲人とか第五類人猿などといった未発見の新生物からボルネオのジャングルから大氷河までの秘境などなど。中でも太平洋の「海の水の漏れる穴」は必見ですね。
 でも、亜人類との遭遇ネタが目立ちます。もうちょっと怪物ネタがあっても良いのに……とわがままを言いたくなりますが、この日常世界に帰還した冒険者の土産話というのが1つのフォーマットになっているんですね。

【人外魔境】【小栗虫太郎】【有尾人】【メールシュトローム】【ボルネオ】
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「地獄の世界一周ツアー」 エリオット・ヘスター

2009-10-23 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
『友人や身内と面と向かってもたがいに話すことがないくせに、携帯電話をもたせたとたん日に15回も連絡しあう。これはどういうことなんだ?』

 フライアテンダントになってみても世界各地を観光する暇など無く、お客は馬鹿でわがままだし、航空会社はリストラと経費削減で労働条件の悪化は甚だしい。ならばこの機会にと、人員整理のための長期休暇を利用して6大陸20カ国、1日60ドルの旅に出てみたのだけれど……。

 出発前に世界一周の企画をエージェントを通して出版社の了解を得ていたところはかなりしたたかだと思います。無謀であっても破滅型ではないようです。
 ラクダに揺られて砂漠に足を踏み入れ、他に客らしい客のいない巨大遊園地で遊び、ぼったくりバーに足を踏み入れたり、映画スターのニセモノを務めたり、入国手続で拘束されたり、あちらでゲリしてこちらでゲリをして、ホテルで門前払いをくらい、ブランド店でお引き取り願われ……と紆余曲折の1年ちょいの記録です。
 コラムのまとめ本だった『機上の奇人たち』より読みやすい気がしました。

【地獄の世界一周ツアー】【フライアテンダント爆笑告白記】【密猟】【スクラブル・ゲーム】【密造酒】【ジェルドンパーク】【ボクサー】【ベドウィン】【サウナ】【アダルトショップ】【機上の奇人たち】
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「アイス・ステーション」 マシュー・ライリー

2009-10-16 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「敵に片手を見せている間に、反対の手で種を仕掛ける」
 SASのトレジャー・バーナビー准将の教えは手品と同じ。違うのは、こちらは確実に人を殺すための手段ということです。

 南極ウィンクル基地からの緊急無線に現地入りしたアメリカ合衆国海兵隊第16分隊は孤立無援となった。
 次々にウィンクル基地へ到着するフランス軍、イギリス陸軍特殊空挺部隊SAS、アメリカ海軍SEALsはすべて敵だった。しかも内部には正体不明の殺人者、裏切り者が潜伏している。すべての鍵は国防総省情報集約グループ(ICG)にあった。
 これもウィンクル基地が発見した正体不明の“宇宙船”の存在のせいだったのだが……。

 オーストラリア人作家によるシェーン・スコーフィールド大佐を主人公にしたシリーズの1作目。
 大風呂敷を広げるだけ広げてするすると瞬時に畳んでしまう展開は、アリステア・マクリーンが生きていたら書きそうだなあと思いました。閉ざされた地底基地、南極海の死闘、襲い来る海洋生物、軍用ホバークラフトによるチェイス、F22の編隊による空中戦と見所満載。読者の想像力によってのみ再現可能でハリウッドでも映画化できなかろうという自負があるらしいけれど、最近はCGが進化しているから……やりかねませんよ?

【アイス・ステーション】【マシュー・ライリー】【リトル・アメリカIV】【F22】【窒素爆弾】【突然変異】【フィボナッチ数】【SETI】
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「タイ様式」 前川健一

2009-09-28 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
『タイ料理が、格別にうまいですか?』
 インドネシア料理だってベトナム料理だって、日本人の舌にはタイ料理より合いそうなのに、流行っているのはタイ料理ばかりなり。

 タイに関する衣食住その他あれこれについて紹介するテーマ別エッセー集。読み物として愉しむガイドブック。

 その国にずっといるからといって、その国のすべてを全肯定するわけでもないんだよという立ち位置ではあるし、刊行からかなり年月が経っているのでなんだけれど、タイという国の全体像を把握するのにちょうど良い本。読み物として面白いというあたりも重要です。

【タイ様式】【前川健一】【掘りごたつ】【スルメ】
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「南極、行っちゃいました。」 小林千穂

2009-09-27 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
『半年前に賞味期限が切れている? おお新鮮。1年前? まだまだいける。2年前?…非常食用ならいいかも。3年前…さすがにやめときますか』

 日刊スポーツの女性記者が南極観測隊に同行した4ヶ月の記録。
 南極観測50周年の年に実施された第48次隊には、報道関係にも広く参加が呼びかけられ、それで日刊スポーツの女性記者にもチャンスが回ってきたのだとか。日刊スポーツHPの南極ページに掲載されたブログ記事を中心に再構成したのが本書です。

 意外と言ってはどちらにも失礼なんだけれど、『こちら南極 ただいまマイナス60度』より面白かった……というより分かりやすかった。主立った事件とか南極観測の意義とかをドカーンとセンセーショナルに叫んで面白いのは『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』だけれど、ちょっとセンセーショナルに脚色しすぎの面もありそうです。南極観測の様子を食の面から語った『面白南極料理人』は面白くて、すごく好きだけれども当然ながら食を巡る人間模様中心で時系列もばらばら。最近の日本の南極観測に関する本は、みんなそれぞれ良い本だけれど一長一短です。
 この本の強みは、『こちら南極 ただいまマイナス60度』に欠けていて不満があったものが、ちゃんと詰め込まれていること。冒頭に「取材日程」「南極観測隊と同行者のポートレイト」「昭和基地の内部図解や周辺地図」が記載されていて、最後に「個人装備品一覧」も載ってましたが、全体像をまず把握したところから始めるので取っつきやすいのです。何を伝えたいかにもよると思いますが、「南極観測隊」をレポートするなら、どんな役割の人がいて、どんなところで寝起きしていてという部分は、さまざまな記事と共に掲載されるブログではなく1冊の本として出される以上はフォローして欲しいところです。各メンバーの詳細な研究テーマまでは要求しませんので……。
 夏隊だけで終わってしまったのが残念です。

【南極、行っちゃいました。】【極寒ほんわか日記】【山経験、技術なし、体力…自信なし。スポーツ紙女性記者の121日】【小林千穂】【影山直美】【地極の歩き方】【るるぶ南極】【ダウンウォッシュ】【ビールかけ】【全裸男】【ふんどし】
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