産めよ、増やせよ、地に満ちよと言ったのはほかならぬ神なのに、70億を突破していっこうに解脱する様子もなく信仰心が厚くなるでもない人類に、とうとう神がキレてしまった。
やつあたりをくらったのは、2013年にはエリートサラリーマンだった“彼”である。
しかし、変化する環境に適応し、ルールの範囲で仕事を効率的におこなうことでエリート街道に乗ったサラリーマンである。自分がいずこともしれない世界に幼女として転生し、魔法使いとなり、戦場に立つことになろうと、なんら戸惑うものではなかった……。
現代人のエリートサラリーマンとしての意識と知識を持ったまま転生した主人公が、幼女のまま作業の効率化と出世だけを原則に最前線で軍を指揮する話。主人公が異世界に転生して無双状態になるパターンの話だけれど、この話も主人公は利己的です。ただし、ダークヒーローとかピカレスクではなく、性根は単なるサラリーマン指向の日本人。
逆に言えばそれが問題で、自分がいかに死なないように、楽をするかが第一で、そのためには他人は単なる人的資源にすぎません。もとがサラリーマンだけに組織の枠の中できっちりポジションを固めて出世していくために最大限効率的な仕事の仕方を模索し、無駄にならない範囲で他人を利用しまくるのです。
「勝手に他人が私のために死ぬのは、その方の完全な自由意思だ。だが、私が、他人のために死ぬのは、私の自由意志に完全に反する」
ターニャ・デグレチャフ少尉は、完全なる自由主義者であり、個人主義が世界を救うと信じている。
もう少し波瀾万丈でも良いかという気はしますが、1人で戦局を左右するほど強いけれど戦争に勝てるほどは強くないというバランス感覚と、きっちり前世でのキャリアを反映した行動が小気味よく、シニカルな語り口とユーモアがエッセンスにふりかかった戦場ストーリーでした。
欲を言えば、もうちょい「幼女」であるメリット・デメリットに言及しても良かったと思います。主人公がサラリーマンであったことにストーリー上の必然はあったけれど、今が幼女であることにあまり必然性はないですよね? この先ではそのあたりにも触れられるらしいので、続きに期待です。
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