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付け焼き刃の覚え書き

 開設してからちょうど20年。はてなにお引っ越しです。https://postalmanase.hateblo.jp/

「小さな国の救世主2」 鷹見一幸

2014-01-10 | 架空戦記・仮想戦史
 勘違いから天才軍師、異能者シマオオカミと祭り上げられてしまった龍也だが、彼は別に知略が勝っているのでもなければ、武勇に優れているわけでもない。ただ、中央アジアのセリカスタンを観光中にツアーからはぐれて戦渦に巻き込まれた日本の高校生に過ぎない。
 でも、彼は部族が違うというだけで内戦が続くのは理解できなかった。自分の目の前で子供が殺されるのを見たくなかった。それだけだ。

「本当の軍師ってのは、戦って勝つ方法を考えるんじゃなくて、戦わなくて済む方法を考える人間のことじゃないかって」

 徒手空拳の少年は政府軍の空爆を阻止し、対立している複数部族に手を結ばせることはできるのか?
 なにもかも他人に頼りっぱなしで戦い始めた少年の物語。でも、意志があるのなら足りないものは、知恵だって武器だって、誰かから借りてくれば良いだけなんです。それができたら、自分になにができてなにができないかを自覚し、はっきりした目標を見極め、必要なものを他人に補っても確保できるようになったらもう一人前です。

【小さな国の救世主】【おざなり将軍の巻】【鷹見一幸】【Himeaki】【電撃文庫】【IRCチャット】【暗殺】【自爆テロ】【バンカーバスター】【本番台本】
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「皇国の守護者3」 佐藤大輔

2014-01-06 | 架空戦記・仮想戦史
「すべてのものに意味などない。意味がないからこそ価値がある」
 新城直衛はそんな境地に到達していた。

 帝国軍の龍洲上陸作戦が発動した。そして、膨大な敵上陸部隊を迎え撃つ皇国軍の一角には、新たに編成された近衛鉄虎兵大隊を指揮する新城少佐の姿があった……。

 龍が天に舞っていたりするけれど、基本的には明治期の地球とよく似た別世界を舞台にした戦記小説で、主人公は戦争の達人ながら小心者で歪んだ性格・性癖を自認している若手将校。その新城直衛を中心にした物語も、いよいよ帝国軍の本土上陸を迎え撃つことになります。期間はほとんどなかったものの、周囲の支持もあって近衛鉄虎兵大隊はほぼ期待通りの仕上がりとなりますが、たった1部隊の勇戦だけで勝てるほど戦争は甘いものではないのです。
 佐藤大輔の作品でこれだけは未読なので、「この続きはどうなるのか?」とわくわくしながら、「きちんと完結するのか?」とどきどきしながら読み進めたいと思います。
 今回の書き下ろしは、第501大隊の撤退戦を描いた短編「職業倫理」。本編のサイドストーリーというか、そのまま続きくらいのつもりで読んでしまいました。これまた歪んだ性格の天才の物語です。

【皇国の守護者3】【灰になっても】【佐藤大輔】【中公文庫】【大河戦記】【浸透戦術】【観戦武官】【狙撃兵】【犯罪者】【上陸作戦】
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「幼女戦記1」 カルロ・ゼン

2013-12-03 | 架空戦記・仮想戦史
 産めよ、増やせよ、地に満ちよと言ったのはほかならぬ神なのに、70億を突破していっこうに解脱する様子もなく信仰心が厚くなるでもない人類に、とうとう神がキレてしまった。
 やつあたりをくらったのは、2013年にはエリートサラリーマンだった“彼”である。
 しかし、変化する環境に適応し、ルールの範囲で仕事を効率的におこなうことでエリート街道に乗ったサラリーマンである。自分がいずこともしれない世界に幼女として転生し、魔法使いとなり、戦場に立つことになろうと、なんら戸惑うものではなかった……。

 現代人のエリートサラリーマンとしての意識と知識を持ったまま転生した主人公が、幼女のまま作業の効率化と出世だけを原則に最前線で軍を指揮する話。主人公が異世界に転生して無双状態になるパターンの話だけれど、この話も主人公は利己的です。ただし、ダークヒーローとかピカレスクではなく、性根は単なるサラリーマン指向の日本人。
 逆に言えばそれが問題で、自分がいかに死なないように、楽をするかが第一で、そのためには他人は単なる人的資源にすぎません。もとがサラリーマンだけに組織の枠の中できっちりポジションを固めて出世していくために最大限効率的な仕事の仕方を模索し、無駄にならない範囲で他人を利用しまくるのです。

「勝手に他人が私のために死ぬのは、その方の完全な自由意思だ。だが、私が、他人のために死ぬのは、私の自由意志に完全に反する」
 ターニャ・デグレチャフ少尉は、完全なる自由主義者であり、個人主義が世界を救うと信じている。

 もう少し波瀾万丈でも良いかという気はしますが、1人で戦局を左右するほど強いけれど戦争に勝てるほどは強くないというバランス感覚と、きっちり前世でのキャリアを反映した行動が小気味よく、シニカルな語り口とユーモアがエッセンスにふりかかった戦場ストーリーでした。
 欲を言えば、もうちょい「幼女」であるメリット・デメリットに言及しても良かったと思います。主人公がサラリーマンであったことにストーリー上の必然はあったけれど、今が幼女であることにあまり必然性はないですよね? この先ではそのあたりにも触れられるらしいので、続きに期待です。

【幼女戦記1】【Deus lo vult】【カルロ・ゼン】【篠月しのぶ】【エンターブレイン】【世界大戦】【引き籠もり専用マジノ線】【愛国無罪】【シカゴ学派】【アスターテ会戦】【つじーん】【参謀旅行】【ブートキャンプ】
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「二人の脱獄者」 九条菜月 

2013-12-01 | 架空戦記・仮想戦史
「君は私の癒やしなんだ」
 ララファ・クライシュナ警邏隊長の言葉。

 いつも獄中で無実を叫んでいた囚人、アレクシス・ホドロフ少佐が脱走した。
 前警邏隊長だったホドロフの脱走に動揺が走るが、その知らせを聞き、自らも脱走した者がいた……。

 地図の座標すら秘密にされている孤島に設置された『グルア監獄』を舞台にしたシリーズ2作目。内偵で潜り込んだ万年少年の諜報員を主人公に、気分次第で性別転換する美形でドSな監獄長に、ドジで怪力な美少女看守、対立する生真面目な警邏隊隊長たちが繰り広げる、シリアスだけれどどこか気の抜けたアクション小説。
 あいかわらずコミック向けの展開だなあと思いながらも、楽しく読了。

【二人の脱獄者】【蒼穹に響く銃声と終焉の月】【九条菜月】【伊藤明十】【C・NOVELS】【グルア監獄】
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「マージナル・オペレーション5」 芝村裕吏

2013-11-28 | 架空戦記・仮想戦史
「未来とは子供のことだ」
 カラトラ族の長老の言葉。

 3000人の少年少女を兵士として使い、アラタはミャンマーの国境線で戦い続けていた。少しでも子供たちにより良い未来を与えるために。
 しかし、状況の悪化にミャンマー軍はアラタたちを裏切り、スポンサーの西欧諸国は切り捨てを謀り、ついには14万人の人民解放軍が国境を越えて侵攻を開始した。
 けれど、アラタにとってこの状況を乗り切ることよりも、守護天使ジブリールの機嫌を取る方が遙かに困難だった……。

 短い言葉を積み上げていくのが特徴的な文章で、単純に細切れなだけだと読んでいられないけれど、これはリズム感が良い文章でテンポよく話が進むので、気がつくとどこまでものめり込んで読めてしまいます。真面目に戦争の話をしていて状況は最悪なのだけれど、読んでいて心の中は青空。斉藤さん、泣きながら電話。アラタさん、失業慣れしすぎ。ジブリール、面倒くさい。よってたかって悪口大会。そしてなぜかラブコメ。
 芝村作品の主人公というのは、基本的に無目的な行動はしません。まず目標をしっかり定め、そのためにするべきこと(=できること)をきちんとリストアップし、自分を含めた世界の要素を取捨選択して順番に片付けていくことで、ありえないと思えた最初の目標をクリアしていきます。
 すごく論理的で、主観的にはできることをあたりまえにやっているだけなので、天才に見えない天才。敵は頭が良い方が戦いやすいというアラタですが、それだけにウェットな対応を求められると天才が一転して朴念仁に転げ落ちる面白さがあります。

【マージナル・オペレーション05】【芝村裕吏】【しずまよしのり】【星海社FICTIONS】【民間軍事会社】【死の商人】【黄金の三角地帯】【なぜか半眼のホリー】【胸が無いと心が貧しくなる】【再就職】【女体化】【地雷原】【夜間パトロール】【クロスアクシャ】
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「隠密部隊ファントム・フォース(下)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-11-15 | 架空戦記・仮想戦史
「人間はタイフーンに揉まれる船のマストとおなじだ。倒れる直前まではまっすぐに立っている」
 マカラ・ハーコナンの言葉。

 大富豪ハーコナンは政府崩壊をたくらむ海賊であり、大義のためには人命や財産に多少の犠牲が出ることは容認していたが、インドネシアの内戦は統制不可能なまでにエスカレートして民族浄化にまで至ろうとしていた。そこまでは海の王に許せるものではない。
 この事件の背後に、自分の計画を横取りして利用する敵の存在に気がついたマカラ・ハーコナンだったが、敵は既にハーコナンの拠点にも攻撃を仕掛けていた……。

 今回の敵ボスは、反乱軍のケタラマン海軍大将。今までのシリーズの敵ボスたちと比べるとあきらかに格下ですが、やはり本命はハーコナンとアマンダの宿命の対決編。なんというか、東映マンガまつりの『マジンガーZ対デビルマン』的な意味で盛り上がります。

「攻撃されたときには、どういう手段でもよいから積極策で対応するほうがいい」
 そうでなければ最善の策を考えている間に手遅れになってしまうと、ストーン・キレイン海兵隊大尉。

【隠密部隊ファントム・フォース】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【インドネシア海軍】【オタクの女神】【Qシップ】【私掠船】
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「隠密部隊ファントム・フォース(上)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-29 | 架空戦記・仮想戦史
「日本人は美しい船を愛する」

 1万を超える島々と、100を超える民族と、300種類以上の言語が交錯するインドネシアで、民族対立や宗教による衝突がエスカレートしつつあった。状況を放置し続ければ、インドネシアの無政府状態は取り返しがつかなくなり、世界経済に与える影響は計り知れない。
 この状況を解決するには、すべての仕掛け人であるマカラ・ハーコナンを殺さねばならない。大貿易商であり海賊王でもある男だ……。

 アマンダ艦長シリーズの5作目で、今のところの最新刊。今回のアマンダ・ギャレットは各地から精鋭を招集して、文字通りの秘密戦隊で戦います。ひとことでいうと、アメリカ軍って、こわいなーという話。冗談めかして流しているけれど、「アブダクト体験」の真相っぽいくだりとか。
 ストーリー的には、秘密戦隊の必要性が指摘され、そのためのとっておきの資材や人材があちらこちらから極秘裏にかき集められるプロセスがメインイベント。懐かしいあの人やこの人、トンデモ(っぽい)兵器の数々が集まってくるのが愉しいです。

【隠密部隊ファントム・フォース】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【インドネシア海軍】【戦いの踊り】【複合式ヘリコプター】【スコポラミン】【Qシップ】【空飛ぶ円盤】
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「攻撃目標を殲滅せよ(下)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-23 | 架空戦記・仮想戦史
「蟹の爪を叩きつぶす強襲計画を用意しろ。諸君、この作戦にはいっさい条件をつけない。いっさい制限なしだ! どんなに汚い手でもかまわない。好きなように考え、戦え。お話にならないくらいひどいやつを思いついた場合は、UnODirで行こう。ワシントンの事務屋には、あとで報告すればいい!」
 話は面白くて痛快だし、作劇上そうなるしかないのは分かるのだけれど、こういう文民統制なんて知らないよ?みたいな台詞をアメリカ軍に堂々と言われると、ちょっと引きます。

 インドネシア各地の武装勢力を支援して、政府の崩壊を試みる大富豪との戦いで、ストーリー的にはジェームス・ボンドなんだけれど、やっていることは帆船時代の海賊と同じ。そこに敵との読みあいや駆け引きが絡んだ冒険小説なのだけれど、クライマックスは007と同じく敵の秘密要塞の攻略戦で海兵隊や海軍が大活躍。大富豪ハーコナンがどうして白猫を抱いていないのか、不思議でなりません。
 いろいろあったけれど、今回はアマンダがヒロインで、主役はクリスティーンだと思うよ?

【攻撃目標を殲滅せよ】【ステルス艦カニンガムIII】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【空中砲兵】【焼き討ち船】【ボーディング】【残留日本兵】【スタートレック】【自爆装置】【殿】
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「攻撃目標を殲滅せよ(上)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-20 | 架空戦記・仮想戦史
 副題は『ステルス艦カニンガムIII』だけれど、シリーズ的には4作目。もう、分かってはいたけれど、巻頭の謝辞の最後は「カワモリ・ショウジ、ミキモト・ハルヒコ、ハヤセ・ミサ」に捧げられて締められています……。

 宇宙実験室を回収した回収船<スターキャッチャー>が南太平洋上で海賊に襲撃され、人工衛星が強奪された。
 事件の背後に大がかりな海賊カルテルの存在があると推測したアメリカ国務省は、地中海で作戦行動中のシーファイター任務群に出動を命じるが、その動きは既に察知されていた……。

 軍隊相手の戦いが3作続きましたが、今回の敵は海賊。舞台はインドネシア近海。
 でも、単なる現代の海賊というだけではなく、国際的なネットワークを持つ大企業によって組織化された武装集団であり、仮想戦記とか海洋冒険小説というより007みたいなスパイ小説の雰囲気です。主人公が女性で、戦闘シーンが少し大がかりなだけです。
 そして、今回も敵は有能なカリスマ指導者です。まともに正面からぶつかれば質量共に圧倒的な上に諸兵科合同で包囲網を敷くアメリカ軍に勝てる敵なんてそうそういませんので、逆算的に知謀と指導力に優れた強敵とならざるを得ません。

【攻撃目標を殲滅せよ】【ステルス艦カニンガムIII】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【インドネシア海軍】【世界海戦記】【駆逐艦キーリング】
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「シーファイター全艇発進(下)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-17 | 架空戦記・仮想戦史
「誇りはすくなすぎるとかありすぎるというものではないわ。問題はそれをどう使うかよ」
 すべてを投げ捨てる気が無ければ、時間のかかる、困難な道を選べとアマンダ・ギャレット大佐。

 西アフリカ連邦を経済封鎖して兵糧攻めを試みる国連軍だったが、その前に記録的なハリケーンが襲いかかってくる……。

 たとえ装備で劣り、補給もままならなかろうと、連邦軍は一方的にやられてはいません。それぞれの誇りを賭け、めざすもののために戦う好敵手。でも、掛け金は部下たちの命なのです。
 そして、戦隊司令になりながら、戦闘は司令室で起きているのではなく最前線で起きているのだとばかり、ここぞというときには陣頭指揮を執りたがるギャレット大佐に「アマンダ、きみはカーク船長ではないんだ!」と渋い表情の提督ですが、それでもいつの間にか染まってきているのにまだ気がついていないようですが……。

【シーファイター全艇発進】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【経済封鎖】【少年兵】【港湾封鎖】


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「シーファイター全艇発進(上)」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-15 | 架空戦記・仮想戦史
 『ステルス艦カニンガム』のアマンダ・ギャレットが主人公の海洋冒険小説というか近未来軍事サスペンスの3作目。

 政権が腐敗し内戦が続くリベリアで、青年将校オペ・ペレワはクーデターを成し遂げ、諸勢力をまとめ上げて西アフリカ連邦を建国した。
 善意の独裁者となったペレワは経済の再建にも成功しつつあったが、彼の拡大路線を容認できない国連軍は治安維持部隊を派遣する。だが、監視に当たっていた戦闘ホバークラフト部隊の指揮官が、連邦軍の奇襲によって戦死。後任としてアマンダ・ギャレット大佐に白羽の矢があたるのだが……。

「人生はつらいし、人間はいずれ死ぬ」
 情報分析の若き天才、クリスティーン・レンディーノ海軍少佐。

 ベレワ大将軍は平和に繁栄する国家を建設しようとする有能な独裁者だけれど、彼を放置しておけば難民が増え、死者はとどまることを知らない。かといって、彼を倒したからといって、それでアフリカが安定するどころか混乱するしかないこともわかりきっていて、それでも時間稼ぎするしかできることがない、国連部隊の戦い。

【シーファイター全艇発進】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【グッドモォォォォニング・アフリカ】【海兵隊】【プレデター】【ステルス・ホバークラフト】
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「ストームドラゴン作戦」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-06 | 架空戦記・仮想戦史
 天安門事件によって表面化した中国内部の亀裂はついに内戦へと発展し、党の支配する装備と練度の高い中央の人民解放軍と、質で劣るが数で凌駕する地方軍と民兵による民主連合軍が各地で激突を始めた。
 当初は静観していたアメリカであったが、この内戦に台湾が介入して上陸を開始し、双方が核攻撃の準備を始めたことから周辺諸国をとりまとめて介入せざるをえなくなった……。

「共産主義者に支配されていたこの50年間、毎日すこしずつ死に近づいていたのです。核兵器など怖いわけがありません。あっというまに、きれいさっぱり消滅するだけことですから」
 元広東人民大学教授、丁儀の言葉。

 最新鋭のステルス駆逐艦カニンガムとアマンダ艦長による海洋冒険小説の2作目。(執筆当時は)近未来を舞台にした軍事サスペンスで、ストーリーの骨格は帆船時代の海洋冒険小説に近く、最近のミリタリーSFではお馴染みの女性艦長が主役。これに年下で皮肉屋だけれど情報分析は一流のクールビューティーな情報士官が副官ポジションにつき、艦長の恋人でもある艦載ヘリのパイロットが前線を担当。さらにはマニュアルどおりにしか仕事ができない若手を叱咤する機関長とか、設備の足りない中で奮闘するドクターが加わって話が進みます。あと、実際に外交の最前線でかけひきしている国務長官もレギュラー・メンバーかな。
 日本の大使が「諸星」というので、どこから拾ってきた名前かなあと思っていたのだけれど、海上自衛隊の潜水艦<はやしお>の艦長が一条ヒカルで副長が柿崎という点で「あ~~~っ……そっちの人か……」と呆然。

【ストームドラゴン作戦】【ステルス艦カニンガムII】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【中共内戦】【戦略原潜】【上海】【機雷原】【水雷艇】【ルッキング・グラス・ワン】
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「ステルス艦カニンガム出撃」 ジェイムズ・H・コッブ

2013-10-05 | 架空戦記・仮想戦史
「指導的立場にある政治家の問題点は、その政治家の過ちや失策を、ほかの人々が血を流して償わなければならん点です」
 アルゼンチン大統領アントニオ・スパルサ。

 2006年3月、かねてより南極大陸の領有権を主張していたアルゼンチンが、イギリス南極基地を急襲し占拠した。このまま状況を放置すれば、南極は冬期にはいって長期間誰も身動き取れなくなり、結果的に領有の既成事実ができてしまう。そうなれば他国も南極大陸の資源確保に動き出すことは想像に難くない。
 僚艦の修理でリオデジャネイロに寄港していた、イージス・システムを搭載した誘導ミサイル駆逐艦カニンガムは、状況に即応できる唯一の戦力として、アルゼンチン軍の阻止任務に送り込まれるのだが……。

 書かれた当時は10年未来を想定したハイテク軍事小説。今の視点なら仮想戦記。たいした違いはありませんけれど、“スカートをはいたアーレイ・バーク”と評される、女艦長が主人公というのは近現代ものでは珍しいかな。女性の軍事分野への進出にともなってSFや日本の架空戦記では珍しくなくなりつつありますが。
 アメリカの新鋭艦1隻vsアルゼンチン空海軍という組み合わせは、ちょうどいいハンディキャップと見るべきか、アメリカ強すぎだろうと笑うべきか。でも、読後の感想は、軍事小説といいながらもしっかり海洋冒険小説だなあということ。勇敢なアマンダ・リー・ギャレット艦長と部下たちの物語で、ちょろっとロマンスめいた要素も取り入れ、敵方の事情にも振れつつ、南極圏での海戦を描いています。
 LORAINだのELINTだの横文字の軍事用語がどんどん出てきますが、なじみのない専門用語というなら帆船小説の船首縦帆引き帆索というのも十分わかりにくいので、今さら気にしません。わからなければ、巻末の用語集で確認するだけです。気にせず一気読み。

【ステルス艦カニンガム出撃】【ジェイムズ・H・コッブ】【文春文庫】【軍事冒険小説】【シー・コマンチ】【衛星迎撃】
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「小さな国の救世主」 鷹見一幸

2013-09-21 | 架空戦記・仮想戦史
「俺が選ぶのは、正義か悪かじゃなくて、どっちが信じられるか、ということなんだ」
 右も左もわからない異国で内戦に巻き込まれた天山龍也は、自分の選ぶ道を決めた。

 治安が急激に悪化しつつある中央アジアの国セリカスタンで、パスポートと財布を奪われて草原に放り出された日本人少年を救ったのは、逃亡途中の女性2人だった……。

 とりたてて取り柄の無かった高校生・龍也が戦乱に巻き込まれて、キンリの里の姫巫女リューカとその護衛である女戦士サラサと共に逃亡を繰り返す顛末から始まり、国内の部族勢力を殲滅して己の覇権を確立しようとする大統領派と対決して自分の居場所を自分で決めるまで。
 新刊で出たときには意識していなかったシリーズですが、作品紹介をネットで見て面白そうだと感じて購入。確かに面白かったので、今から追いかけていきたいと思いますが、既に新刊書店ルートでは入手困難な模様です。

【小さな国の救世主】【なりゆき軍師の巻】【鷹見一幸】【Himeaki】【電撃文庫】【RPG7】【T-55】【GPS誘導爆弾】【ノモンハン事変】
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「皇国の守護者2」 佐藤大輔

2013-09-19 | 架空戦記・仮想戦史
「人は常に卑しい。貴賤の別なく。我々もその例外ではない」
 五将家の一角、駒城家当主である篤胤の言葉。

 友軍撤退までの時間を稼ぐべく、北領で決死の後衛戦闘を続けていた剣虎兵大隊指揮官・新城大尉だったが、既に戦力は激減し、東方辺境姫ユーリア率いる帝国軍の猛攻によって蹂躙されるのを待つばかりとなっているように思えたが……。

 社会制度の変遷、それによる経済活動の変化、またそれによる国家の変容までしっかり理詰めで設定された、いずこともしれない世界での祖国防衛戦争と国内での権力闘争を描いた作品。
 文庫で再始動したシリーズですが、中公の新書でスタートしたときは手をつけていませんでした(1巻だけは買ったものの当時は未読)。既に佐藤大輔の面白さと筆の遅さ……というか、すぐにシリーズが止まるのは知られていましたから、「完結するまでとっておこう」と思っていたのですね。
 それから早幾年月……というか、1巻の初版が1998年のはずだから15年になるはずだけれど、この文庫化できちんとけりがつくものと期待して手をつけてみました。
 人相は悪いし、体格も優れているとはいえないし、無口でバカみたいに思われることもあるけれど、頭の中ではいろいろな考えがぐるんぐるん回っていて、敵に回すと致命的という主人公です(Aくんみたいだね)。 
 文庫もぼちぼち出るそうですが、読み始めると面白くて止まらないので、既刊9巻までを古書かKindle版で読んでみようかなとふらふらしているところです。

【皇国の守護者2】【勝利なき名誉】【佐藤大輔】【中公文庫】【大河戦記】【士官学校】【遅滞防衛戦】【捕虜交換】【血塗られた英雄の伝説】
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