「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)6月27日(木曜日)
通巻第8307号
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金価格の暴騰。最大のバイヤーは中国だった。
多くに必要性。理由は、外貨準備の豊饒を見せびらかすことによって人民元の崩落をふせぐ
************************************
ロシアがウクライナを侵攻した直後から金価格の暴騰が始まった。
最大のバイヤーは中国だった。中国中央銀行は18か月連続で金を購入し2023年に最大の金購入国となった。
公式でも中国人民銀行は300トン以上の金を外貨準備金に積み増しし、このために保有していた米国債を数千億ドル規模で売却し、米国を慌てさせた。五月のイエーレン財務長官は表向き「中国の過剰生産」への懸念を表明したとされるが、舞台裏では「これ以上米国債を売らないで」と懇願したとう観測がある。
ところが、中国人民銀行は、5月に金を一切購入しなかった。
ウォール街のアナリストには「中国の公式報告よりもはるかに多くの金を保有している」と分析する論者がいる。中国国家外為管理局(SAFE)が数千トンの金を「帳簿外」で保管しているという。
実態はどうかと言えば、統計上、整合性がない。各種統計を総合すると中国の公式金保有量は数字がまったく合わない
中国は2023年に1400トン以上の金を輸入し(うち300噸を外貨準備にまわした)、一方で中国は南ア、ロシアを抜いて、世界最大の金生産国である。中国の鉱山は2023年に375トンの金を採掘した。
金の輸入ライセンスを持つ中国の商業銀行は十数行でしかなく、23年末時点で国有銀行4行を含む17行が約1016トンの金を保有していると報告している。
まったく数が合わない。つまり2022年から23年の2年間の集計だけをみても、およそ2700トンの金が未計上となっている。
第一に中国人民銀行は報告より多くの金を購入したとする仮説に従えば、中央銀行が公表している金準備高は2倍の約5,000トンになる。
第二に中国の政府系ファンドが保有しているという観測がある。政府系ファンドは、政府の余剰収入を保有する国有投資ファンドだ。
第三に中国の商業銀行は金保有量を誇張して報告している一方で、家計による金購入量は過小評価されている可能性がある。もとより個人所有の金は外貨準備だけには算入されない。
▼統計数字が矛盾しているのはいつものことだが。。。。
しかし待てよ、国家統計局の統計数字は三割水増しが常識の国であるからにはカラクリがあるはずだ。
多くに見せかける必要性がある。理由は、外貨準備の豊饒を見せびらかすことによって人民元の崩落をふせぐことができるからだ。
理論的に言えば不動産崩落、外資撤退、経常収支の悪化、西側の中国制裁、EVへの個関税等々、外貨準備高は減少することはあっても増えることはない。人民元の高値圏維持は中国経済にとって死活的であり、原油、ガス、鉱物資源を輸入している国ゆえ通貨は高い方が便利である。
軍備にしても誇張されている。使えない武器やミサイルも軍事力に算入しているし、在庫の弾丸など軍が横流しをしているのは常識、こうした中国の汚職、不敗、手抜きをいう数千年来の中華的特徴を勘案すれば、実際より多く金保有を見せかけることは極めて重要なのである。
しかも備蓄されている筈の金も相当数はメッキで贋物とすりかえられえている可能性を否定できない。
嘗て故宮博物館の宝物を蒋介石は軍監四隻に詰め込んであちこち移動したことで知られる。移動機関中に相当の国宝級が贋物をすり替えられた歴史をもつ。
また蒋介石は金塊を積んだ船が没したなどとフェイクニュースを意図的に流して国際価格をつり上げサヤを稼いだ詐欺的な錬金術にも長けていた。
うっかり中国の発表数字を鵜呑みにすると痛い目にあう。
ちなみに世界の金保有ランキングは次の通り。
ランキング 国名 金準備(トン) 2024年三月末時点
~~~~ ~~~ ~~~~~
1 米国 8,133.46
2 ドイツ 3,351.93
3 IMF 2,814.04
4 イタリア 2,451.84
5 フランス 2,436.97
6 ロシア 2,335.85
7 中国 2,264.32
8 スイス 1,040.00
9 日本 845.97
10 インド 827.69
11 オランダ 612.45
12 トルコ 578.18
13 ECB 506.52
14 台灣 422.38
15 ポルトガル 382.63
16 ポーランド 363.36
以下、ウズベキスタン、サウジアラビア、カザフスタン、英国、レバノン、スペイン。
世界全体の金保有量は2024年4月末時点での世界全体の中央銀行金保有量は36004トン。前月比65トンの増加だった。上位100カ国の合計保有量は35607トンとなっている。
令和六年(2024年)6月27日(木曜日)
通巻第8307号
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金価格の暴騰。最大のバイヤーは中国だった。
多くに必要性。理由は、外貨準備の豊饒を見せびらかすことによって人民元の崩落をふせぐ
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ロシアがウクライナを侵攻した直後から金価格の暴騰が始まった。
最大のバイヤーは中国だった。中国中央銀行は18か月連続で金を購入し2023年に最大の金購入国となった。
公式でも中国人民銀行は300トン以上の金を外貨準備金に積み増しし、このために保有していた米国債を数千億ドル規模で売却し、米国を慌てさせた。五月のイエーレン財務長官は表向き「中国の過剰生産」への懸念を表明したとされるが、舞台裏では「これ以上米国債を売らないで」と懇願したとう観測がある。
ところが、中国人民銀行は、5月に金を一切購入しなかった。
ウォール街のアナリストには「中国の公式報告よりもはるかに多くの金を保有している」と分析する論者がいる。中国国家外為管理局(SAFE)が数千トンの金を「帳簿外」で保管しているという。
実態はどうかと言えば、統計上、整合性がない。各種統計を総合すると中国の公式金保有量は数字がまったく合わない
中国は2023年に1400トン以上の金を輸入し(うち300噸を外貨準備にまわした)、一方で中国は南ア、ロシアを抜いて、世界最大の金生産国である。中国の鉱山は2023年に375トンの金を採掘した。
金の輸入ライセンスを持つ中国の商業銀行は十数行でしかなく、23年末時点で国有銀行4行を含む17行が約1016トンの金を保有していると報告している。
まったく数が合わない。つまり2022年から23年の2年間の集計だけをみても、およそ2700トンの金が未計上となっている。
第一に中国人民銀行は報告より多くの金を購入したとする仮説に従えば、中央銀行が公表している金準備高は2倍の約5,000トンになる。
第二に中国の政府系ファンドが保有しているという観測がある。政府系ファンドは、政府の余剰収入を保有する国有投資ファンドだ。
第三に中国の商業銀行は金保有量を誇張して報告している一方で、家計による金購入量は過小評価されている可能性がある。もとより個人所有の金は外貨準備だけには算入されない。
▼統計数字が矛盾しているのはいつものことだが。。。。
しかし待てよ、国家統計局の統計数字は三割水増しが常識の国であるからにはカラクリがあるはずだ。
多くに見せかける必要性がある。理由は、外貨準備の豊饒を見せびらかすことによって人民元の崩落をふせぐことができるからだ。
理論的に言えば不動産崩落、外資撤退、経常収支の悪化、西側の中国制裁、EVへの個関税等々、外貨準備高は減少することはあっても増えることはない。人民元の高値圏維持は中国経済にとって死活的であり、原油、ガス、鉱物資源を輸入している国ゆえ通貨は高い方が便利である。
軍備にしても誇張されている。使えない武器やミサイルも軍事力に算入しているし、在庫の弾丸など軍が横流しをしているのは常識、こうした中国の汚職、不敗、手抜きをいう数千年来の中華的特徴を勘案すれば、実際より多く金保有を見せかけることは極めて重要なのである。
しかも備蓄されている筈の金も相当数はメッキで贋物とすりかえられえている可能性を否定できない。
嘗て故宮博物館の宝物を蒋介石は軍監四隻に詰め込んであちこち移動したことで知られる。移動機関中に相当の国宝級が贋物をすり替えられた歴史をもつ。
また蒋介石は金塊を積んだ船が没したなどとフェイクニュースを意図的に流して国際価格をつり上げサヤを稼いだ詐欺的な錬金術にも長けていた。
うっかり中国の発表数字を鵜呑みにすると痛い目にあう。
ちなみに世界の金保有ランキングは次の通り。
ランキング 国名 金準備(トン) 2024年三月末時点
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1 米国 8,133.46
2 ドイツ 3,351.93
3 IMF 2,814.04
4 イタリア 2,451.84
5 フランス 2,436.97
6 ロシア 2,335.85
7 中国 2,264.32
8 スイス 1,040.00
9 日本 845.97
10 インド 827.69
11 オランダ 612.45
12 トルコ 578.18
13 ECB 506.52
14 台灣 422.38
15 ポルトガル 382.63
16 ポーランド 363.36
以下、ウズベキスタン、サウジアラビア、カザフスタン、英国、レバノン、スペイン。
世界全体の金保有量は2024年4月末時点での世界全体の中央銀行金保有量は36004トン。前月比65トンの増加だった。上位100カ国の合計保有量は35607トンとなっている。