朝マック

新宿のはずれにある
マクドナルドにはいった話です。


仕事まえに
ゆっくりしてから
行こうとおもってはいったら
誰も並んでませんでした。

まだなにを注文するか決めずに
ふらふらとはいってしまったので


こちらへどうぞ～


と浅黒い小太りのおばさんに
案内されるまま
レジのまえに立ったはよいが


どうしよう


と困って
とりあえず
メニューをみようと
下をむいて
悩みはじめた直後
やけに近いところから


ご注文はなににしますかー


と、どことなく異国風な言葉が
聞こえてきました。



顔をあげると



小太りのおばさんが
私の顔を覗き込むように
マニュアルにあるセリフを
話しかけてきていました。


もうすぐで
メニューと私の顔の間に
小太りのおばさんの顔が
入りこんできそうになっていました。



私は怯えました。



よくよくそのおばさんを見てみると
インドと中国の間くらいにありそうな国の
顔立ちをしています。

ネームプレートには



マケルズ



と書いてありました。

マケルズおばさんは
とてもにこやかです。


私は


文化が違うのか


とおもい
気を取り直して
ホットコーヒーを一杯注文しました。

それくらいは
いたしかたないとおもいながら

200円払って
おつりをもらおうと手をだしたら



近い



ものすごく身を乗りだして
満面の笑みで


80円のお返しです


と言って
手をにぎるように
お金を私のてのひらにおきました。


私は　びくっ　としました。


油断は禁物です。


私はそのまま何事もなかったように、
たくさんいるお客さんの一人なのだと言い聞かせて
なにげない素振りで
ホットコーヒーをもってその場を去りました。


つぎはおどろかない


肝に命じました。

ご近所に住んでいるロッキー

きょうの怪人社の稽古で

ロッキーが稽古をつけてもらっているときに


ＩＫＫＡＮさんが


「こっち来て」
って台詞のところから
もう一度やってみて


という意味で


「こっち来て」


と言ったら
ロッキーが
もぞもぞしてたので
すぐにＩＫＫＡＮさんが


そんな動かなくていいからすぐやって


みたいなことを言ったので
ロッキーはそのシーンをはじめたのですが

私は
ロッキーが

演出席のＩＫＫＡＮさんのところへいって
やろうとしたのを見逃しませんでした。



駄目だしをもらって
てんやわんやになるのは
私もよくわかるので
その行動、察します。


でも、心の中で私は


絶対行こうとしてた
ロッキーは行ってた
ほっといたら行ってた


とおもって


ロッキーがＩＫＫＡＮさんの横で
芝居をやろうとして
みんなにつっこまれるのを想像して

ニヤケました。


そして


これは私だけの思い出にしよう


そう心に決めて誰にも言いませんでした。

すれ違いざまに

きょうの夜


自転車を走らせていたら
おなじく自転車に乗っている
ロッキーとすれちがいました。


私もぼぉーっとしていたので
さいしょ、


5メートル前方あたりで

ん？

とおもって

すれちがうときくらいに

あれ？

っとおもい

自転車を走らせながら
後ろをふりむいて


ひょっとして・・・


そして


まっ　いっか


こんな流れで
声をかけませんでした。


そのご今度は力さんと同じように
すれちがいました。
またしても自転車同士で


ん？
あれ？
ひょっとして・・・
まっ　いっか


です。

いままでそんなすれちがうこともなかった人々に
一夜にして二人も
すれちがってしまうとはおもいませんでした。


ロッキーは怖い顔をしていました。
力さんは真面目な顔でメガネをかけていました。



私は声をかけずに通りすぎました。



案外気づかれないものだとおもいました。



ん？

あれ？

ひょっとして

私の存在感がないのか。



まっ　いっか


とは言いづらいです。

さむい

ここ数日で
だいぶ寒くなったような気がします。


朝


ベッドからでれません。


寒いときの布団のなかほど
居心地のよいものはないとおもいます。