いしころにっき

石原石子の日記です

公演の初日があけました

2011-12-02 01:37:47 | 山の手事情社のなか
公演の初日があけました。
舞台裏では
ひとくさり台詞をしゃべって戻ってきた浦さんが
足をなげだし座りこみ
首をうなだれ

ふーふー

言ってます。
どうやら暑いらしくひどく汗をかいているので
扇子をぱたぱたあおいでいます。
私はこのほの暗い舞台裏が
夏の縁側のように感じられました。
初冬にひろがる田舎の夏。
浦さんはこんなところでも
私たちにイメージを残してくれます。

そこへ

みはるさんがとことこやってきて
そっと体育座りをして
首をうなだれます。

私は


孤独がいる


とおもいました。
みはるさんが床に沈んでいくようです。


浦さんは自分の出番がやってきて
ひとくさり台詞をしゃべりにいきます。
みはるさんはますます孤独を深めます。
戻ってきた浦さんは扇子をあおぎます。
文さんは椅子に座って携帯のメールをチェックします。
私も気になってついチェックしてしまいます。

舞台のほうからは
誰かが熱演をしている声がきこえます。

本日初日があけました。

涅槃から胎児へ

2011-11-19 01:35:35 | 山の手事情社のなか
本番まであと少しです。
今日は道成寺の方の止め通しということで
シーン冒頭からダメ出しをされながら
稽古は進行しました。

山の手事情社の道成寺では
三種類の道成寺が錯綜して物語がすすみます。
私の出番は真ん中くらいにでてきて
いろいろやって語って去っていきます。
その時のシーンにいっしょにいる岩淵さんは
冒頭に出番がありこのシーンの出番まで間があるのですが
ふと見ると隅っこのほうで椅子に座っていました。
それ自体はさして不思議でもなんでもありません。
集中力でも高めているのかな
くらいにおもっておりました。

数分後

岩淵さんはいつのまにか
床に座ってじっとしていました。
私は椅子から降りたのかとおもって
一人で軽く自主稽古をして
飽きたころに岩淵さん方面へ視線をむけると
胎児のように丸くなって安眠をしておりました。

岩淵さんは段階をおって
お休みになられた模様です。

高められたのは
集中力というより
睡眠力だったようです。

劇団内では有名な
岩淵さんの涅槃のポーズと呼ばれる
日曜日のお父様のような格好よりも

深い

へその緒がまだつながっているかのような
ポーズを披露していただきました。
とはいえ
自分たちのシーンがはじまるよ
という掛け声はひびいているらしく
ちゃんと起きるところは
尋常ではないと感心するばかりの
きょうこのごろでした。

帰国しました

2011-06-07 10:56:34 | 山の手事情社のなか
帰国しました。
シビウは危険なので一人で行動しないようにと
言われておりましたが
行きのバスのなかで通訳の志賀さん曰く

危ない人たちはもっと稼ぎのよいところにながれていった

とのことらしく
10人に1人いた危なげな人々は
100人に1人くらいになったそうです。
実際に行ってみると
表面上はだいぶ安全でした。

よい稼ぎ口をみつけてもらってよかったです。

それでも異国は異国。
日本のように勝手がわからないので
危ないことは慎みます。
制作の福冨さんやシビウに何度か来ている劇団員も
なんだかだと言われます。
集団で
しかも仕事できているのだから
いたしかたないところです。


さてホテルでは二人一組で宿泊です。
私の相方は谷さんです。
朝食はいつもいっしょにいきます。
ホテルにもどる時間はそれぞれで
私もフェスティバルの主催である
ラドゥスタンカの
劇団員、古木と
飲んだりすることもあり
帰りが遅くなったりします。
古木は以前いっしょに芝居をした人で
ルーマニアに演劇を勉強しにいくと言って
いつのまにか劇団員になっていたヤツです。

そんなこんなで
いろんな人と飲むこともあり
谷さんより帰りが遅くなってしまう日には
申し訳ないな
とおもいながらそっと部屋にもどります。
ただ部屋のカードキーはひとつしかなく
帰ってきたら起こすしかありません。
はじめは


すみません。
遅くなります。
寝ててください。
でも起します。


といった言伝をしました。
以来谷さんは
起こされるのが嫌なのか
部屋の明かりをすべて点け
ドアを開けっ放しにして
寝てまっています。
帰ってくると私はソッと部屋にはいり
ドアを閉め
明かりを消して
しずかに床につきます。

びびり症な私にはできない待ち方です。

それを制作の福冨さんにいったら


浦さんや川村さんもそうだけど


それがどうしたといった調子でかえされました。


私は


いづれ一人や二人、消えるな


とおもいました。

渡航3日前

2011-05-27 00:24:40 | 山の手事情社のなか
もう間もなく渡航です。

山の手事情社は今年も海外公演です。
私はといえば
スタッフとしてついていきますが
この一月、毎日終日稽古に参加し
やることもなにげにあり
ずいぶんと時間が経っているような気がします。

パソコンのメールをあけると
facebookから


たくさんのお友達が待っています


とのご連絡があります。
どれだけきているのだと見てみると

8人ほど

そのうちの半分は知らない名前でした。
facebookの呪いから早く解放されたいです。
私が安易に登録してしまったために
面倒がひとつ。


話しは変わって
今回のお芝居のヘアスタイルを一から考えるため
最初にキャストではない私や明香、沙織などが
実験としてまず被験者となりました。
明香はそんなでもなかったですが
沙織は場末のママか売れないストリップ嬢のようなメイクでした。
私はといえば真美さんと穂高さんの二人にせめられ
雲のような綿をのせられたりしながら

石原メガネかけてみて

と言われメガネをかけると


穂高さん:いとうせいこう・・・?

真美さん:いとうせいこう・・・ですね・・・

穂高さん:これは?

真美さん:林家ペー・・・

穂高さん:ペーかぁ・・・


もうどうにもなりません。
その結果昨日の通しをみると

川村さんはほっそりしたパパイヤ鈴木
文さんはミッチー
浦さんは
一役めはベンゾウさん
二役めはツッパリ
恵さんはダックスフント

といったようなバラエティー豊かな色どりでした。
どこでどうなってこうなったのか
山の手七不思議です。
この人たちはどこまで本気なのか。
いや、むしろ本気でそうなっているところが
すごいとおもいました。

明日で通しは最後。

まだまだヘアメイクも考え中です。
もっと面白いことがでてくるでしょう。
ぎりぎりまで粘る
それが山の手事情社です。

あしからず

2011-05-07 00:42:31 | 山の手事情社のなか


「嫁御寮が着かれたぞー」


傾城反魂香の台詞です。
山の手事情社は今年も海外公演をします。
本番まで一月をきりました。

さて冒頭の台詞は斉木さんです。

私は稽古場できいていて毎回おもうのは


「嫁御寮が疲れたぞー」


にきこえるということです。

お嫁さんは長い道のりをお輿にのってやってきて
疲れて果てて結婚式はぐだぐだでした。

その台詞をきくといつもそうおもいます。

私のまったくどうでもよいつぶやきです。

支援物資

2011-04-10 02:21:47 | 山の手事情社のなか
私の研修生のときの担当である
ブッチこと岩淵さんは
今回おこった東北大地震時
宮城県下にて演劇ワークショップを
展開中でした。

避難所に数日居候してから
東京に帰還できたわけなのですが
さくじつ
その岩淵さんがあちらの方々から
支援物資の要請をうけました。
メールにて送られてきた
欲しいものリストに書かれた物資を
山の手事情社劇団員と関係者一同で
送ることになりました。


そこで本日
稽古があるので
私はいくつかの物資を
稽古場にもっていったところ
まだ収集するための箱が用意されてなかったので
空いているおおきなクリアーボックスに入れ
A4判の白紙の紙におおきく



「支援物ッち」



と書いて貼っておきました。

それからしばらくして
劇団員がぼろぼろやってきました。

岩淵さんもやってきます。


すると


岩淵さんはクリアーボックスのおいてある部屋にいき
うろちょろしだしました。
これから集まる支援物資を保管できるものはないか
物色している模様です。
けれどもすぐに
支援物ッちボックスを発見。
岩淵さんは観察します。
私は横目で見ます。
そうして
見ないふりをしてとおりすぎました。


稽古がおわると

安田さんがなにか報告などある人いますか
なければこれで解散します

というようなことを言うと
岩淵さんは元気よく

はい

と手をあげました。

支援物資のご協力のお願いのことでした。

岩淵さんは


倉庫に支援ぶっちと
書かれたクリヤボックスがあるので
そこににいれてください


と言いました。

みんなは笑いました。

果たして岩淵さんは
私が書いたことを
知っていたかどうか
わかりません。


けれども私は


犯人は私です


無言のままに懺悔しました。

今年度の山の手事情社修了公演

2011-02-26 01:06:38 | 山の手事情社のなか
現在進行中の事
山の手事情社研修生による修了公演
ただいままっさいちゅう


私はいちばん下っ端なので
スタッフとしてつねに劇場におります。
たいしたこともせずにただいるだけです。


弁当買ってきてー


と言われれば買います。


道案内に
駅の出口にチラシ持って立っててー


と言われれば立ちます。
下っ端なので。
立ちながら私はコートを忘れたことを後悔します。
下っ端とはいえ。
そうして本番もはじまり15分ほどすぎてから
劇場にもどります。
本番がおわるまで受付で待機です。

ところで
受付と客席の間に扉があります。
防音ではないので
受付にいる劇団員たちは薄暗いなか


しずかに


床に座布団を敷き体育座りのまま
首をうなだれさせ


じっと


というより


じっとり


戦地で負傷した傭兵のように
眠る女子4人。


劇場からきこえる研修生の声と
お客様の笑い声と


対称の


受付


あと4回公演があります。


1回くらいは本番を観たいとおもいました。


山の手事情社発声隊

2011-02-03 23:09:02 | 山の手事情社のなか
山の手事情社でも
当然ですが
発声の稽古をします。


そしてそれぞれに



というものがあります。


川村さんは
人差し指を差しながら
くるくる手をまわします。

斉木さんは
腕を組んだり
長袖をまくったり
でも落ちてくるので
またまくったり
何度でもまくりまくります。
けっして留めることはしません。


そうして

このまえの台本読みのときに
私が出番のおおい役のセリフを読んでいると
だんだん手がまわりはじめ
さらに
人差し指をも差しはじめました。


これか!!
川村さんのくるくる人差し指は!!


私は感に堪えませんでした。



さて
発声にもどります。


浦さんの顔をみると
高い声をだすときに
マユゲがものすごい高さまでハネあがります。

ハイ!
ロウ!
ハイ!ハイ!
キープ・・・
ロウ!!

上がって下がってまた上がって
この上下運動の激しさは
並ではありません。

得体の知れないマユゲです。


浦さんの表情をあらためて見てみます。

下唇はひっこめ
目はやけに細目になり
好々爺のようです。

発声において
どこが新たな境地に達しているのやも知れぬと
おもいながら
声よりも顔をみている私でした。


青い色のマスク

2011-01-11 09:17:08 | 山の手事情社のなか
昨日の稽古のことです。


真美さんが
青色のマスクをしていました。
どうやら風邪をひいたようです。


私は色つきのマスクは珍しいなと思い


安田さんにつっこまれますよ


と言ったところ


えーやだー
そんなに変?


とおっしゃるので
私から見たら


めずらしいな


というだけのことだけでしたので
じっさいはそれほどでもないとは思いますが


あるいは言われるかも


と。


さてそこで
安田さんが入室してくると
真美さんはいそいそと青色マスクをぬいで
安田さんの死角にはいる
右斜め後ろに置きました。


私は


そんなに嫌か


と思いました。


坂野でいいや

2011-01-06 12:12:36 | 山の手事情社のなか
麻里絵さんから
2月末に予定されてる
山の手事情社の研修生修了公演によせて
劇団員全員に自分が研修生だった頃の
修了公演にまつわる話を一筆書いてくれとの
お話があったのが去年末。
(担当官は担当目線で)


私は昨日書いて送ったら
石原が一番のり
ありがとうと麻里絵さんから返信がありました。
締切は1/10です。

私が一番のりかぁとおもいました。


それはともかくとして
修了公演にまつわる話ってなにを書けばよいのか
いまいちピンとこなく
そのうえたいがい面白いのを書けと言われるので
困ったもんだとおもい
とにかく修了公演にまつわっていればよいかと
公演のときにおもった
同期の坂野について書きつづりました。


これはどうかなぁ~
どうだろー


とおもいつつ
今朝パソコンのメールをチェックしてみると
麻里絵さんから返信がきていました。
その一部を抜粋すると



修了公演を経験して坂野しか体験していないような文章



だったらしいので
少し書き直してほしいと。

これを見て私は


たしかに公演を経験して坂野しか体験していないのは
非常に気分が沈没すると


おもいました。

私は自分の愚かさを悟り
少しどころか
まったく別物を書いて送りなおしました。



麻里絵さんの要望に従い
ふだんよりだいぶ真面目に書きました。


麻里絵さんの的確なご忠告がなければ


坂野でいいや


ですましておりました。


あぶないところを助けていただき
感謝感謝です。