いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

「共存・共生」の精神は健在/山崎孝

2009-01-15 | ご投稿
共同通信社の世論調査で「二兆円の財源を優先的に使うべき政策」の回答では、定額給付金は3・3%と最少。「年金・医療など社会保障」42・0%が最多で、次いで雇用対策26・3%、減税11・2%、少子化対策10・7%、公共事業4・5%の順でした。読売新聞社の調査でも「支給をやめて雇用や社会保障などに使うべきだ」という意見に賛成する人は78%に達しています。

この世論調査の結果は、日本人は、決して利己主義のみに犯されているのではなく、利他の心を持ち「共存・共生」の精神が健在であることを示していると思います。憲法前文と9条の理念は「共存・共生」を根幹にしていると思います。

私は12日に発表された朝日新聞世論調査結果を読んで読者投稿欄に投稿しました。以下がその文章です。

1月15日付「声」欄掲載文【矜持があるのは大臣より国民】

 1月10・11日に朝日新聞社が行った世論調査では、定額給付金について「政府の方針どおり配った方がいい」と考えた人の28%を大きく上回り「やめた方がいい」と考えた人が63%であった。

 定額給付金が支給されれば、自らの家計が助かるにもかかわらず拒否したことは、大臣の中にさえ受取ると表明する人も出てきている今日、国民の方がはるかに矜持を持ち、国のことを真剣に考えていることの証左である。

 定額給付金の財源は「埋蔵金」と言われる特別会計があてられている。この特別会計は年金など保険事業の支払いに備えた金額が多く占めている。それに国の借金である国債残高は、一般会計税収の約10年分に相当し総人口で割ると国民一人当たり約433万円の借金を抱えているとされる。

 定額給付金支給はやめよと考える人の中には、一般的な生活支援よりも、特化した生活支援が必要と考え、切羽詰った人たちを助けなければという心、同じ日本人として共に生きたい矜持があったに違いないと私は思っている。

戦争犯罪の調査国連幹部が提案/山崎孝

2009-01-12 | ご投稿
1月11日の朝日新聞に、ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、9日、イスラエル軍によるガザへの攻撃に関し、国際人道法に抵触する可能性があるとして独立した調査しました。

特に問題視されたのは、ガザ市内で起きた事件で、ゼイドゥン地区に侵攻したイスラエル軍が住民約110人を1軒の建物に誘導、戸外に出ないように指示して、24時間後にこの建物を砲撃して、約30人が死亡した事件だとされています。

今までもイスラエルの不当な行為をしてきました。インターネットで収集したパレスチナ問題の経過を紹介します。

 第二次世界大戦が終わる頃、パレスチナのユダヤ人人口は60万人に達していました(人口の1/3)。パレスチナ人とユダヤ人の衝突とイギリスを標的とするテロの頻発に手を焼いたイギリスは1947年、問題解決を国連に委ねます。同年11月、国連はパレスチナをパレスチナ人とユダヤ人の国家に分割し、エルサレムを国際管理下におくというパレスチナ分割決議を採択します。

 人口で1/3、土地所有面積で6%弱のユダヤ人に57%の地域を割り当てる決議をユダヤ人は受入れ、アラブ人は拒否。1947年5月14日、イギリス軍が撤退するとユダヤ人は当事者間の合意がないまま、イスラエルの建国を一方的に宣言、分割決議に反対するアラブ諸国がイスラエルに攻め込み第一次中東戦争が始まります。戦争の結果、イスラエルは国連の決めたユダヤ人の領土をはるかに超えて侵略、追い出されたパレスチナ人70万人(100万人とも)が難民となりました。イスラエルが侵入しなかった東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区をとガザ地区はそれぞれヨルダンとエジプトが占領しました。

 以後、計3回の中東戦争がたたかわれ、67年の第三次中東戦争でイスラエルは全パレスチナを支配、シリア領ゴラン高原とエジプトのシナイ半島も占領しました。国連安保理は占領地からの撤退をうたった決議242号を採択しますが、イスラエルは受け入れず、1982年にシナイ半島は返還されたものの、基本的に占領状態を続けています。(以上)

イスラエルは、本年1月9日に国連安保理から、カザからのイスラエル軍の全面撤退につながる、即時、永続的で完全に尊重される停戦を要求され、ガザ全域での円滑な人道支援が出来る状況を求められています。

しかし、イスラエルの世論は(イスラエルの有力紙イディオト・アロハノトの9日付発表)インフラや民間人に被害があっても、カザへの空爆は正当化されると答えた人が92%に達しています。これは恐るべき独善的な考え方です。国際社会に経済制裁を受けないと目が覚めないのかも知れません。

フセイン政権下のイラクがクウェートを侵略し、北朝鮮が核実験を行い経済制裁を受けている基準から見れば、パレスチナ自治区を攻撃して民間人の多くを殺傷したイスラエルの行動は国際的な経済制裁に値するものです。

紹介したように、《国連安保理は占領地からの撤退をうたった決議242号を採択しますが、イスラエルは受け入れず、1982年にシナイ半島は返還されたものの、基本的に占領状態を続けています》という経過もあります。そして占領した土地でパレスチナ人を追い出して入植地を拡大させています。

私がイスラエルの世論で思うことは、日本が満州事変を起こして中国東北部を占領して国際連盟からこの行為は国際的に認められないと言われながらも、満蒙は日本の生命線だと独善的に多くの日本人が思っていた歴史です。1937年の「上海事変」では中国側に激しく抵抗され反撃を受けると「支那暴戻を庸懲」すると主張して南京と関東に爆撃を行なっています。

イスラエルの国民の多くも、当時の日本人と同じく独善的な国民になっているようです。いずれ将来にはこのような独善的な考え方は大きな「ツケ」を払わされると思います。

国連決議にある精神と日本国憲法の精神/山崎孝

2009-01-10 | ご投稿
【イスラエル:ガザ侵攻 国連安保理、停戦決議を採択 イスラエルに配慮、米は棄権】(毎日新聞のHPより 2009年1月9日)

 【ニューヨーク小倉孝保】パレスチナ自治区ガザ地区におけるイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの戦闘で、国連安全保障理事会は8日夜(日本時間9日午前)、双方に即時停戦を求める決議案を採択した。ハマス側に原因があるとして早期停戦に慎重だった米国は拒否権を行使せず、棄権した。米国はテロ行為批判を決議案に盛り込むことでイスラエルを非難していたアラブ諸国と歩み寄ったが、棄権によってイスラエルに配慮した格好だ。

 決議案の採択に踏み出したことで、安保理は停戦実現に向け主導力をアピールした。

 決議案は英国が提出し、米国以外の日本を含む14カ国が賛成した。前文で一般市民に多くの犠牲が出ている現状に強い懸念を表明し、(1)即時停戦とガザからのイスラエル軍撤退(2)テロ行為の非難--などを盛り込んだ。

 イスラエル軍が地上部隊を侵攻させたことをアラブ諸国は強く非難し、エジプトやヨルダン、サウジアラビアなどは外相を国連に派遣、イスラエルを非難して停戦を求める決議案採択を安保理各国に働きかけていた。一方、米国は、停戦の必要性を理解しながらも、ハマスの攻撃が続いている現状での決議案採択に反対し、ハマスの攻撃停止を保証するメカニズムを作ることが必要だと主張していた。

 アラブ各国外相はニューヨーク滞在を1日延ばし8日、最後の外交交渉を続けてきた。米国も多大の犠牲者が出る中、停戦決議に反対し続けるのは得策でないと判断、テロ行為を非難する文言を盛り込むことで妥協したようだ。安保理決議は加盟国に対する強い拘束力を持ち、違反は制裁などの対象になる。

 ◆ガザ国連停戦決議要旨◆

▽即時の持続的、完全な停戦を求め、イスラエル軍のガザからの完全撤退を実現

▽ガザ全域への人道援助のスムーズな供給、輸送ルート確保

▽すべてのテロ行為を非難

▽ガザへの武器弾薬の密輸防止と検問所の継続的な開放保証

▽中東和平交渉の進展と包括的和平の実現に向けた取り組みを奨励

【コメント】ブッシュ大統領はハマスを非難して、イスラエルは自衛行動だと主張していました。この論理が正しいとして論理を貫徹すれば、常任理事国の米国は国連決議案を、拒否権を行使して葬り去ることが出来ました。しかし、大義は国連決議にあり、拒否権を行使すれば国際社会と対立を深めることは避けられません。

赤十字国際委員会のまとめでは、先月27日のイスラエル軍のパレスチナガザ地区攻撃から1月8日までに、パレスチナ人の死者数は758人、うち子供が257人、大人の女性が60人で合わせて42%を占めている結果を生み出しました。このような行為が、イスラエルや米国が主張する「自衛行動」と言える筈がありません。

日本国憲法前文の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳う精神と国際紛争を武力で解決してはならないとする理念は、今回の国連決議の精神と繋がるものと言えます。

しかし、自民党は1月18日の党大会に提案する運動方針案で憲法改定を掲げています。自民党の2005年に発表された新憲法草案は、現行憲法の前文を削除して、国際紛争を武力で解決する事態に参加するため「自衛軍」の保持が掲げられています。これは非常任理事国として、今回の国連決議に賛成した自民党政府の行動とには論理的な整合性がありません。

昨年の12月13日、日中韓首脳会議は共同声明を発表しています。「日中韓は地域及び国際社会の平和、繁栄、持続可能な未来を創造するためのビジョンと責任を共有する」と認識し、会議をASEAN+3など地域協力の枠組みを補完し、相互に補強すると位置づけています。この声明と極東有事を想定して、それに対処するために日米同盟を更に強化するための集団的自衛権行使を可能にする憲法改定の方向とは整合性はありません。このように自民党の改憲は世界の動向とは合わないのです。

オバマ政権 米駐日大使にジョセフ・ナイ氏を起用/山崎孝

2009-01-09 | ご投稿
(2009年1月8日付朝日新聞より) 【ワシントン=加藤洋一】オバマ米次期政権は、次の駐日大使に元国防次官補で現在ハーバード大学教授のジョセフ・ナイ氏(71)を起用する方針を固めたことが7日、明らかになった。ホワイトハウス、国務、国防両省で東アジアを担当する高官の人選も終えており、政権のアジア政策チームの主な顔ぶれが出そろった。

 政権発足前に駐日大使の人選が行われるのは異例で、オバマ政権の対日関係重視の表れと見られる。関係者によると、起用方針はすでにナイ氏に伝えられており、同氏は受け入れる方向だという。大統領による指名と上院の同意をへて正式な任命となる。

 ナイ氏はクリントン政権で国防次官補をつとめ、96年の日米安保のいわゆる「再定義」を担当した。ブッシュ政権が誕生する直前の00年と今回の大統領選を前にした07年の2度にわたり、アーミテージ元国務副長官とともに対日同盟政策の包括的な戦略文書「アーミテージ・ナイ・リポート」をまとめるなど日米関係に深くかかわってきた。

 軍事力など「ハードパワー」に偏らず、価値観や文化など「ソフトパワー」も外交手段として活用すべきだとする「スマートパワー」論の提唱者としても知られる。

 一方、次期政権のアジア政策チームの主要メンバーとして、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長にジェフリー・ベーダー氏、国務省の東アジア・太平洋担当次官補にカート・キャンベル元国防次官補代理、国防総省のアジア・太平洋担当次官補にウォレス(チップ)・グレッグソン退役海兵隊中将がそれぞれ起用される見通しとなった。

 ベーダー氏は中国の専門家で、クリントン政権時代に東アジア・太平洋担当の国務次官補代理を務めた。選挙期間当初からのオバマ陣営の外交政策顧問で、アジア・グループの統括責任者だった。

 キャンベル氏は、ナイ氏のもとで国防次官補代理を務めた民主党きっての知日派。グレッグソン氏はキャンベル氏とともに、国防総省でアジア太平洋地域を担当。その後、沖縄で第3海兵遠征軍の司令官や4軍調整官を歴任した。

 オバマ政権では、この3人にナイ氏も加わって対日政策を立案、実施することになると見られ日本に厚い配慮をした布陣と言える。スマートパワー論を踏まえて、軍事偏重ではない幅広い同盟関係を築く方向に進みそうだ。

【コメント】朝日記事でナイ氏は、クリントン政権で国防次官補をつとめ、96年の日米安保のいわゆる「再定義」を担当したと書かれています。

ブログで既に紹介していますが、1996年4月17日、橋本首相とクリントン米大統領は「安保共同宣言」を発表し、安保の再定義を行います。それに基づいて、1997年9月23日、日米政府は有事を想定した防衛指針(新ガイドライン)決定します。「安保共同宣言」の特徴は、日米の従来の共同対処地域を極東地域から世界的な範囲に拡大させた。新ガイドラインは、アジア・太平洋地域の紛争処理において、自衛隊は米軍の行動に対して後方支援、武器と弾薬を除く補給、修理、物資輸送を行なうと決めました。

2000年10月に出た「アーミテージ報告」は、日米同盟協力の制約になっている集団的自衛権行使を日本が可能にすること、危機管理立法(有事法制)の制定などを求めました。

日本は既に国民を戦時体制に組み込む有事法制を制定し、イラクに航空自衛隊を派遣して米軍などを運んで、戦争する国で後方支援活動を行っています。「アーミテージ報告」で米国が求めた集団的自衛権行使を可能にする憲法の改定が企図されています。この流れを加速させるために、米駐日大使になったジョセフ・ナイ氏は、日本に対して憲法改定の圧力を強めることが予測されます。朝日新聞の予測のように《軍事偏重ではない幅広い同盟関係を築く方向に進みそうだ》とは楽観出来ません。

1月8日の「愛労連憲法ニュース」は《小坂憲次衆院議院運営委員長(自民党)は憲法審査会を始動させるために、今年1月からの通常国会で同審査会規程を制定すべきだと12月19日の議運理事会で提案しました。また、政府は、来年度予算の財務省原案に、「国民投票の準備に必要な経費」として2010年5月の国民投票法の施行に合わせ、市町村が投票人名簿の作成など新たなシステム開発をする費用に充てられる見込みの46億9千万円盛り込みました。このように、改憲勢力の執念はいささかも衰えていません。 私たちも、負けられません。憲法9条、25条、28条を活用し、憲法どおりの日本をつくっていくために、地道にかつメリハリを付けた憲法運動を進める1年としましょう。》と伝えています。

坂本哲志総務政務官の発言について/山崎孝

2009-01-07 | ご投稿
(しんぶん赤旗のHPより) 日が落ちると急激に冷え込んだ四日の東京・千代田区の日比谷公園。「人間としての誇りをズタズタにされた」と訴える元証券マン。「友人のところにいましたが限界です」と、「年越し派遣村」を訪ねてきた日雇い派遣で働く女性(28)…。「派遣切り」とたたかう仲間の連帯の輪が公園を囲みました。

 「川崎市の三菱ふそうを十一月末に解雇された」という男性(37)は、「二十五円しか持っていません」といいます。

 男性は三菱ふそうで派遣労働者として働く二年半前までは、証券会社でサラリーマンをしていました。

 「証券会社で働いていたときは、睡眠時間は三時間から四時間。家族が崩壊し、会社を辞めて派遣に登録しました」

 派遣先では、トラックやバスのエンジンカバーを取り付ける作業。「汚い」「きつい」「危険」の3K職場でした。

 男性は「駅頭で『派遣村』のビラをもらい、歩いてきました。ここにきて生活保護を申請しました。もう失う物はない。希望をなんとか手繰り寄せたい」と、炊き出しの食事にホッとしていました。

 四日朝、「派遣村」に着き、生活相談を受けていた男性(35)は、派遣社員として愛知県の自動車下請け工場で、部品の設計をしていました。

 「乗る人の安全を考え、厳しい要求にもこたえてきたのに、非正規雇用だということで切られた」と、悔しさをにじませていました。「いまの生活は精神的にも苦しい。安定した暮らしがしたい」と話しました。

 「日本にこんなあったかい心をもった人たちがいたことに救われた思いがします」というのは、愛知県でトヨタ自動車の下請け工場で働いてきた二十七歳の男性派遣労働者。「ネットカフェなどで新宿や池袋で生活してきましたが、手持ちのお金はゼロに等しくなって、ここに来ました。東京なら求人があるだろうときたがだめでした。支援者に出会えてよかった」

 青森県出身の日雇い派遣の女性(28)。昨年三月ごろから仕事が減って、日雇いで働いてきました。「友だちのところにいたのですが、友だちから『派遣村』のことを聞いてきました。うつ病で働けません。助けてください」と、すがるように訴えていました。(以上)

【コメント】年明けのテレビで見ましたが、派遣村に救援を求めた人が、人の優しさを知った。今年は仕事に就いて、今年の年末の派遣村で人助けをする人間になりたいと話をしていました。困難な状況に直面しても人間らしい心を失わないことに私は感動しました。

1月5日の朝日新聞は、居酒屋の職を失った男性は《今後は村内で出会った人と共同で、家賃4万円のアパートを借りるつもりだ。「今日から頑張って仕事を探します。もう一踏ん張りします」と伝えていました。

ところが、1月5日、坂本哲志総務政務官は総務省の仕事始め式の挨拶で、「年越し派遣村」に集まった人たちを「本当にまじめに働こうとしている人たちが日比谷公園に集まってきているのかという気もした」と述べました。そして「(集まった人が)講堂を開けろ、もっといろんな人が出てこいと(言っていたのは)、学生紛争の時の戦術、戦略が垣間見えるような気がした」とも述べました。

坂本哲志総務政務官は6日には発言を撤回しました。その時に「大人数なので、それだけ雇用状態が深刻だと思うが、そうでない人たちがいるのではないかと頭をよぎった」と述べました。

このように物事の瑣末なことが頭をよぎるのは、坂本哲志総務政務官の根底に「自己責任」という意識が強くあるのだと思います。このような意識で、職と住居を失う人を見るために、社会の深刻な状況を正確に見えなくなるのだと思います。社会の事象が正確に見えないことは、政治家としては重大な欠陥です。

派遣村を立ち上げた組合や市民たちは、労働・社会保障行政への批判を目に見える形で伝えようという政治目的は持っていました。この政治目的は、市民から遊離した「学生紛争の時の戦術や戦略」とは異なり、市民からの支持を受けています。これを真摯に受け止めるのが政治家の役割であります。

イスラエルは民間人を殺傷しても「正当な自衛行為」と主張/山崎孝

2009-01-06 | ご投稿
【エルサレム5日共同】イスラエル軍は5日、イスラム原理主義の強硬派ハマスが支配するパレスチナ自治区ガザで地上攻撃を続け、ロイター通信などによると、同じ家族の13人を含む民間人29人が死亡した。地上攻撃は3日目で、開始後の死者は計80人。うち70人以上が民間人という。

 国際社会の懸念が深まる中、フランスのサルコジ大統領や欧州連合(EU)の閣僚級代表団が同日イスラエル入りし、外交調停が本格化。同国のリブニ外相はEU代表団との記者会見で、攻撃は「正当な自衛行為」と述べ、現時点での停戦に否定的な姿勢を示唆した。

 中東和平を支援する国連、米国など4者のブレア特使(前英首相)も同日、ヨルダン川西岸の自治区ラマラでアッバス自治政府議長とガザ情勢を協議した。

 現地からの情報では、地上部隊は中心都市ガザ市を包囲し、周辺部の住宅地を戦車などで攻撃。砲弾が複数の民家を直撃し、一家7人と母子4人が死亡した。軍の標的が人口密集地に移ってきたことで、住民の犠牲が相次いだ。

 昨年12月27日の空爆で始まったガザ大規模攻撃は10日目となり、ロイターによると、死者は計541人となった。イスラエル側の死者は兵士を含め計5人。(東京新聞HPより)

【コメント】1月6日の朝日新聞社説は《空爆でこれまでに500人以上が死んだ。ガザにある独立系の人権団体は、その2割が子供たちだと報告している。地上戦でも犠牲者が出ている。 この事態に、国際社会はまったく無力だ。国連安全保障理事会は即時停戦を求める決議はおろか、声明さえ採択できないでいる。イスラエルを擁護する米国が反対しているからだ。》と指摘しています。ブッシュ大統領はハマスを非難して、イスラエルは自衛行動だと述べています。

このような米国ですが、麻生首相は2008年9月29日の就任所信表明で、日米同盟の強化を第一に掲げています。そして安倍元首相辞任以来休止していた「憲法審査会」を再開させて、改憲へ向けて動き出そうとしています。

【イスラエルによるガザへの攻撃の中止を求める緊急アピール】 2009年1月4日 世界平和アピール七人委員会

委員 武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 井上ひさし 池田香代子 小沼通二 池内了

 世界平和アピール七人委員会は、イスラエルが1967年から2005年まで占領を続け、今日まで18ヵ月にわたり封鎖してきたガザ地区に対して、昨年12月27日から続けている空爆、さらに1月3日に開始した地上戦展開の事態を深く憂慮し、以下のとおり緊急に呼びかけます。

1 私たちは、イスラエルに対し、ガザ攻撃をただちに停止することを求めます。きわめて人口密度の高いガザ地区への攻撃が、150万人の民間人を巻き添えにしていることは明らかです。行政・文化教育・宗教施設や民家の破壊もさることながら、民間病院にも被害を与えていることは、ジュネーヴ条約に違反しています(注1)。

 さらにイスラエルの政府と軍に、国連の「占領地における人権に関する特別報告者」リチャード・フォーク氏のガザ地区への立ち入りを認めること、ジャーナリストが同地区に入ることへの制限を撤廃すること、彼らの安全を保証することを求めます(注2)。

 また、イスラエルの政府と軍に、負傷者の搬出・治療と避難を希望する市民の地区外への安全な脱出をただちに保証することを求めます。

2 私たちは、ハマス地方政府にも報復の悪循環を断つよう求めます。また、ガザ地区の市民に共感を寄せるすべての近隣諸国の政府と市民にも、一刻も早い停戦を可能にするために自制を求めます。

3 私たちは、国連と各国政府が、ガザ地区における市民の窮状を深刻に受け止め、現在の惨状に対し、無条件での停戦を求め、事態の解決に向けてただちに人道的立場に立った紛争解決の仲介の労をとることを求めます。国連をはじめとする国際社会は、これまでもガザ地区における市民生活の支援に努めてきました。このたびの人道危機については、国連人道問題調整事務所や市民団体などが重大な関心を寄せています(注3)。私たちは、国連と各国政府に、目下の壊滅的な市民生活への支援をいっそう強化することを求めます。

4 私たちは、日本がこれまで繰り返しパレスチナに行なってきた緊急人道援助を評価します。日本政府は、これにとどまらず、本年より安全保障理事会非常任理事国に就任したことを重く受け止め、フランス政府が具体的提案を行ったように、日本国憲法にのっとり、和平に向けて積極的かつ具体的な尽力を行なうよう求めます(注4)。さらに、日本の税金によるODAによって建設されたガザ地区の施設が破壊されている可能性が大きいため、日本政府が状況を調査する権利を行使し、結果を公表することを要望します。被害が把握できた場合には、イスラエル政府に対して抗議すべきです。

5 私たちは、世界のすべての市民に、平和への意志をさまざまなかたちで表明するよう呼びかけます。

注1  「文民病院は、いかなる場合にも、攻撃してはならず、常に紛争当事国の尊重及び保護を受けるものとする。」(第4ジュネーヴ条約第18条 1949年)

注2  2008年12月15日、ガザ地区を訪問しようとしていた国連特別報告者リチャード・フォーク氏は、空港に20時間留め置かれたうえでジュネーヴに強制送還された。同氏は、ハマスがガザ地区を実効支配して以来、イスラエルが住民の最低の生活条件を無視してガザを封鎖していることは「人類に対する罪」の疑いがあるとして、調査のために立ち入ることを求めていた。

注3  国連人道問題調整事務所被占領パレスチナ地区オフィスは、連日のようにガザの深刻な状況を具体的かつ詳細に発信している。

注4  「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」(日本国憲法前文より)

自民党政治を象徴する情景/山崎孝

2009-01-05 | ご投稿
「生き残って再び会おう」「反貧困」。ビル風が吹き抜ける公園に、そんな文句の旗がはためく。200人を超える人たちが列を作り、炊き出しの牛丼をかき込む。たき火の向こうには、トヨタ自動車の営業拠点、ミッドランドスクェアがライトアップのまばゆい光を放っていた。(2008年28日の名古屋駅前の一角で行われているホームレスの支援活動/朝日新聞12月30日の社会面より抜粋)

路頭に迷う人たちが多く出る中でも、トヨタを始め大企業は内部留保金を溜め込んでいます。(以下は、しんぶん赤旗のHPの情報に基づきます)

財務省の法人企業統計調査をもとに、自動車、電機など大企業製造業の利益剰余金と資本剰余金の合計額を計算すると、大企業製造業の剰余金の合計額は、九八年九月末時点での約七十六兆七千三百億円から、二〇〇八年九月末には一・四倍の約百九兆一千五百五億円に増加しています。十年間の増加額は、三十二兆四千億円を超えます。

総務省の労働力調査によると、〇八年七―九月期平均の雇用者に占める非正規雇用の割合は34・5%に達しています。一方、大企業製造業の経常利益総額は、ピーク時より低下しているものの十年前の一・六倍になっています。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、正社員の平均賃金は残業代、一時金を合わせて年間五百二十三万五千円です。

十年間の剰余金の積み増し分だけで、正社員の年収の約六百二十万人分にあたります。十年間分のためこみを十年かけて取り崩すとしても、一年分の約三・二兆円で六十二万人分の正社員の年収分になります。

厚生労働省の企業からの聞き取り調査では、〇九年三月末までに八万五千人の非正規労働者の雇い止め・解雇が計画されています。

これまでの大企業製造業の剰余金の一年間分の積み増し分約三・二兆円だけで、「非正規切り」にあう労働者の解雇をやめることができるばかりでなく、その七倍以上の数の労働者を正社員にすることができます。(しんぶん赤旗の情報はここまで)

「派遣切り」などで仕事と住居を失った人に労働組合や市民の手で食事と寝場所を提供する「年越し派遣村」(日比谷公園)に年末の31日の開村から3日の夜までの入村者は400人超えた。村民の間では「今後はどうなるのかという不安が広がっている」と1月4日の朝日新聞は報道しています。

しかし、路頭に迷う人たちが多く出る中でも、2009年度予算財務省原案には、米軍再編で岩国基地へ空母艦載機の移転する米兵4千人分が必要とされる住宅用地調査費や沖縄からグァムに移転する米兵の3千5百戸分の家族住宅を整備するための調査費などが計上されています。全く道理の無い自民党政治のあり方です。

自民党政治で生まれた情景を歌う短歌が1月5日の朝日歌壇にありました。

「人権」のひびきも寂し 首切られ宿舎追われし人らを前に (八王子市)青木一秋さん

パンのみで生きるにあらず 配給のパンのみみにて一日を生きる (ホームレス)公田耕一さん

米国の覇権主義に追従する政治の下では、政府に憲法前文で謳われた「平和的生存権」を守らすこと、絶対的な生存権を謳う憲法25条を守らすことは不離一体の関係を示しています。路頭に迷う国民に充分な手を差し伸べないが、世界戦略のための米軍再編の経費を負担して、日本から他国に出かけ戦争をする米兵の住宅手当、水道費・光熱費まで負担するのです。

日米安全保障条約関係の概観史/山崎孝

2009-01-03 | ご投稿
1月18日に「いせ九条の会」は、いせトピアで午後1時30分から「安保と憲法」プレ学習会を開きます。私はこの催しへ参加のために自分の学習用として、日米安全保障条約関係と世界の動向という観点で資料を作りました。その資料をブログに投稿します。

日米安全保障条約関係の概観史

―米国の戦争で機能する日米安保/米国の要求を反映させた国内法の整備/世界の潮流に逆行する二国間同盟の強化をする改憲の方向―

1951年9月8日 資本主義体制と社主義体制との国が対立を深める中で、日本は肝心な隣国を除いた48カ国とサンフランシスコ講和条約を調印する。同時に日米安全保障条約と地位協定に調印した。日本は全面講和で異なる体制の国との平和的共存の路線ではなく、覇権国家米国の軍事路線に追従する道を歩み始める。沖縄・奄美などは日本から切り離され米国の占領統治が続けられる。

1954年3月 政府は日米相互防衛援助協定に調印する。米国より「自国の防衛能力の増強」を義務づけられて、防衛二法(自衛隊法、防衛庁設置法)を制定する。7月、自衛隊が発足する。

1960年1月19日 岸首相、アイゼンハワー大統領と新日米安全保障条約と地位協定に調印する。

多くの国民は、新安保は日米相互防衛義務が強められ軍事同盟としての性格がより強まり、日本が戦争に巻き込まれる危険性を感じ大規模な反対闘争を展開した。

5月19日、条約批准案を警察官まで衆院本会議場に導入して強行単独採決をする。このことで国民の多くは民主主義の危険を感じて反対闘争は更に盛りあがった。新安保は参議院の議決を経ず自然成立。新安保で日本が戦争に巻き込まれる(加担する)事態は、ベトナム戦争で具体的になった。

1964年8月2日 米国はトンキン湾事件を発表、米艦船が北ベトナムに攻撃を受けたとして、8月5日、米国は北ベトナム攻撃を開始した。ベトナム戦争で機能した日米安保の状況を例示する。

1965年7月27日 日本政府はB52戦略爆撃機をグアム島から九州の板付に移すことを承諾した。沖縄からはB52戦略爆撃機が南ベトナムを渡洋爆撃した。沖縄で訓練を受けた海兵隊がベトナムに送り込まれる。

ベトナム戦争時の防衛事務次官の夏目晴雄氏は、2008年11月9日のNHKの番組で、ソ連のウラジオストックから出る潜水艦を日本海に封じ込める「三海峡封鎖作戦」を海上自衛隊が行なったと話した。ベトナム戦争で布陣する第7艦隊を守るためであった。米空母3隻はベトナム、中国、ソ連に核攻撃の照準を合わせていた。その中の空母「オリスカニ」は横須賀が母港である。



1978年11月27日 日米安保協議委員会で「日米防衛のための指針」(ガイドライン)を決定。日本や極東の有事の際に行動する日米両軍の「共同対処行動」の基本を示す。この指針の具体的な一つの現われとして、1980年2月26日、海上自衛隊は環太平洋合同演習(リムパック 米国・カナダ・豪州・ニュージーランド)に初参加をする。政府は集団的自衛権行使のための共同防衛訓練ではないと強弁した。

1987年1月30日 中曽根首相、在日米軍駐留経費負担に係わる特別協定に調印した。(おもいやり予算の制度化)

1990年8月2日 イラク軍がクウェートに侵攻、湾岸危機が発生する。8月6日、国連安保理はイラクへの経済制裁を求める決議661号を採択した。米国は多国籍軍結成を呼びかけ、8月8日、英国は派兵を決定し、8月10日、NATOは派兵を支持する。8月28日、駐日アマコスト米大使は「日本は経済支援だけでリスクを何も負わない」「日本は、実際的に、ペルシャ湾岸にプレジェンスを持って貰いたい」と発言する。海部俊樹首相は「自衛隊派遣は考えていないが、憲法の枠内で何が許されるか検討する」と述べたが、自民党内の自衛隊を海外に派遣する好機と捉える軍事志向の一人、小沢一郎幹事長は「現行法制下でも(国連軍としてなら)自衛隊を中東地域に派遣することは可能」と主張する。政府は1990年8月と9月に多国籍軍の戦費として合わせて20億ドルを提供、湾岸周辺国のエジプト、トルコ、ヨルダンに20億ドルの経済支援を行なうことを決める。しかし、米国は9月に訪米した自民党国防族議員に対して、第二次大戦後、世界で120数回の紛争が起き、米国は血を流した。日本はどんな負担をするつもりなのかと迫った。(註、紛争とはレバノン、キューバ、ドミニカ、エルバサドル、ニカラグア、チリ、ボリヴィア、ホンジュラスなどへの米国の軍事介入である。尚、南米地域は2008年12月16日、中南米カリブ海地域の33カ国の首脳が集まり「中南米カリブ海諸国首脳会議」が開かれ、米国から自立した地域協力を強めた。同日、南米諸国連合首脳会議は、南米独自の安全保障機構「南米防衛理事会」の創設を承認した。

1990年10月 政府は国会に「国連平和協力法案」を提出し、国連決議に基づく海外へ自衛隊派遣を企図する。これは1954年に自衛隊を発足させた時に「自衛隊の海外出勤を為さざることに関する決議」を破るもの。湾岸に展開する多国籍軍は国連決議によるものではなく、集団的自衛権によるものであったから、集団的自衛権行使を禁じた憲法に違反する。法案は世論の抵抗で廃案。

1991年1月17日、米軍と多国籍軍はクウェートのイラク軍排除とイラク攻撃を開始、湾岸戦争が始まる。1月24日、政府は米国と多国籍軍への戦費として追加支援90億ドルを決定。戦争地域のヨルダンからカイロへ難民輸送のため航空自衛隊の大型輸送機(C130)の派遣決定をする。湾岸戦争後の4月24日、ペルシァ湾へ海上自衛隊の掃海艇を派遣することを決定した。日本は1兆3千億円の財政支援をしたが、クウェートの感謝リストに日本が無かったことを理由にして、政治家たちの軍事的貢献の声が高まる。

1991年9月19日 政府は「PKO協力法案」を国会に提出し、6月15日に可決成立させた。しかし、憲法規定の制約を受け、国際連合平和維持活動等に対する協力の基本原則の第2条2は「国際平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」と定められた。



冷戦後の1994年7月、アセアン諸国と日本、中国、韓国、米国、ロシア、EUなどが参加してアジア太平洋地域安全保障問題に関する閣僚対話の場「アセアン地域フォーラム」が設立、定期化された。しかし、政府は米国追従志向から脱せず、1996年4月17日 橋本首相とクリントン米大統領は「安保共同宣言」を発表し、安保の再定義を行った。1997年9月23日、日米政府は有事を想定した防衛指針(新ガイドライン)決定する。「安保共同宣言」の特徴は、日米の従来の共同対処地域を極東地域から世界的な範囲に拡大させた。新ガイドラインは、アジア・太平洋地域の紛争処理において、自衛隊は米軍の行動に対して後方支援、武器と弾薬を除く補給、修理、物資輸送を行なうと定めた。

1998年4月28日 新ガイドライン関連3法(周辺事態法・自衛隊法改正・日米物品役務相互提供協定改定)を閣議決定し、1999年5月24日に新ガイドライン関連3法を成立させる。

2000年10月 「アーミテージ報告」が出る。レポートは日米同盟協力の制約になっている集団的自衛権行使を日本が可能にすること、危機管理立法(有事法制)の制定などを求める。

2008年9月22日 オバマ陣営のアジア外交顧問ジャヌージ氏は「アーミテージ報告」に参画していたことを明らかにする。2007年2月に出た「第二次アーミテージ・レポート」は、日米同盟を英米同盟のような緊密な関係へと変化させることを提言している。(註、イラクでの英国戦死者は2007年の段階で140人を超え、アフガニスタンでは2008年12月16日現在で133人に達する)

2001年9月11日 米国で同時多発テロ事件起こる。10月7日、それへの報復として米国はアフガニスタン攻撃を開始する。横須賀から米空母はアフガン戦争(不朽の自由作戦 OEF)に参加。

日本政府はテロ特措法案を成立させ、11月9日、海上自衛隊は米艦船などOEF参加艦船に給油活動を行なうためインド洋へ派遣する。

2002年10月23日 日米安保審議官の会合において、ローレンス国防総省次官補代理は有志連合への地上軍の派遣を意味する「ブーツ・オン・ザ・グランド」と発言した。

2003年から冷戦時に厳しく対立した国々は、多国間協調による北朝鮮の軍事的核を廃棄させ北東アジアの平和と安定を図る多国間協議の枠組み6カ国協議を始めた。

2003年3月20日 米英軍はイラク攻撃を開始する。2003年3月、横須賀から出港した空母キティホークの艦載機はイラクにクラスター爆弾を投下。艦載機の放ったミサイルはイラクのマーケットを破壊して子供を含む住民60人以上を死亡させた。米海兵隊はイラク戦争へ沖縄から出撃。在日米海兵隊は第三海兵遠征軍の即応体制維持に重要な役割を担う。

2003年6月6日 戦争体制をしき国民を動員する有事法制関連の法案が成立。(参考※)

2003年7月26日 イラク復興特別措置法案が成立。政府は2004年1月9日、陸上自衛隊の先遣隊と航空自衛隊本隊に派遣命令を出す。2004年2月3日、陸上自衛隊本隊がイラクの戦地に向かう。

2004年6月10日 東京で「九条の会」発足。憲法を守る市民運動が全国に大きく広がっていく。

2004年12月 小泉政権は武器輸出三原則を緩和してミサイル防衛関連部品の対米輸出を認める。

2005年10月29日 日米安保協議委員会を開催し、在日米軍と自衛隊の再編についての基本的な考え方をまとめた。米軍と自衛隊の司令部の統合化を図る計画が盛り込まれる。2007年6月、在日米軍参謀長、横田基地の「共同統合作戦調整センター」(共同統合運用調整所)の活動開始を述べる。

2005年10月 自民党は新憲法草案を発表。2007年5月、改憲のための国民投票法が成立。

2007年1月14日 東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国の首脳会議(ASEAN+3)は、東アジア共同体の創設に向けた取り組みを強化することを確認する。

2008年11月27日 イラク議会はイラク米軍駐留協定を承認した。協定には米軍が2011年末までに完全撤退する、米軍はイラクから他国へ攻撃することは出来ないことなどを盛り込む。2008年12月15日発効したアセアン憲章にも、アセアン加盟国は外国軍への基地提供の自制が盛り込まれた。

2008年12月13日 日中韓首脳会議は共同声明を発表。「日中韓は地域及び国際社会の平和、繁栄、持続可能な未来を創造するためのビジョンと責任を共有する」と認識し、会議をASEAN+3など地域協力の枠組みを補完し、相互に補強すると位置づけた。声明と自民党の極東有事も想定し日米軍事同盟を強化するため改憲をして集団的自衛権行使を可能する方向とは全く整合性がない。整合性があり「未来を創造するためのビジョン」を持つのは、戦争放棄と平和的生存権を規定した日本国憲法である。2008年4月17日、名古屋高裁判決は平和的生存権を人権の基底的権利と認定。

参考※ 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(平成16年6月18日成立、平成19年6月8日改定) 抜粋

(目的)第一条  この法律は、武力攻撃事態等において、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)に従って武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴い我が国が実施する措置について定めることにより、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的とする。

(定義) 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。一 、武力攻撃事態等 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律第一条 に規定する武力攻撃事態等をいう。 二 、武力攻撃 事態対処法第二条第一号に規定する武力攻撃をいう。 三 、武力攻撃事態 事態対処法第二条第二号 に規定する武力攻撃事態をいう。(参考※※) 四 、合衆国軍隊 武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施しているアメリカ合衆国の軍隊をいう。

(地方公共団体及び事業者の責務)

第五条 地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたきは、その要請に応じるよう努めるものとする。(註、土地家屋の強制的な利用も規定)
(罰則)第十七条 第十五条第四項において読み替えて準用する自衛隊法第百三条第十三項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、二十万円以下の罰金に処する。2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項刑を科する。

参考※※ 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年6月13日制定、平成16年6月18日改定) 抜粋

(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。一 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。二 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。三 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。

(註、後藤田正晴氏は「世界」の対談で、武力攻撃事態を米国が判断すると述べ、筑紫哲也氏は2002年8月、野中広務氏との対談で、有事の体制があるとすれば米軍が戦争をする時だと述べた)

年表作成に用いた参考資料 田中伸尚著 憲法9条の戦後史/島本慈子著 ルポ労働と戦争/中村正則著 戦後史/進藤栄一著 東アジア共同体をどうつくるか/豊下楢彦著 集団的自衛権とは何か/憲法フォーラム編 有事法制批判/其の他インターネット上の情報