いせ九条の会

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奇妙な感じの労使共同宣言/山崎孝

2009-01-16 | ご投稿
(1月16日の朝日新聞「社説」より抜粋)日本経団連と連合のトップ会談が開かれ、09年の春闘がスタートした。

 連合は物価上昇分を取り戻すベースアップ要求を掲げてはいる。だが、景気と雇用の急速な悪化を踏まえ、労使の議論は「雇用を守るために何ができるのか」に収まりつつある。

 トップ会談に合わせ、雇用の安定・創出に向けた異例の労使共同宣言も出された。狙いは政府への注文にある。緊急策として雇用保険や職業訓練など安全網の拡充を要請するとともに、医療・介護、環境、農業、教育などの分野での雇用創出を求めている。

 雇用対策を打つ責任が政府にあるのは当然として、では労使では何をするのか。その点が心もとない。

 経団連と連合は今後、雇用確保をめぐり定期協議を重ねる予定だが、対応が鈍すぎないだろうか。「雇用」に取り組む機運は年明けから労使双方に出ていた。経団連会長がワークシェアに言及し、連合会長も「話し合いの場ができれば」と応じたのに、動き出すのには半月近くかかった。

 景気は急降下している。労使のスピード感も問われている。(以下略)

【コメント】実に奇妙な取り合わせによる共同宣言です。社説には労使共同宣言の《狙いは政府への注文にある。緊急策として雇用保険や職業訓練など安全網の拡充を要請》と述べられています。

日本の社会が政府に雇用などの緊急策を求めなければならない状況を作り出したのは経団連加盟の大企業です。経団連加盟の大企業は、自らの大量の派遣切りの責任を頬かむりにして政府に自らの行為の尻拭いを求めているのです。

この経団連のトップと手を組んで緊急策を求めている連合トップの政治的センスを疑います。連合は大企業の社会的責任を頬かむりに手を貸していると取られても仕方がない行動です。

社説は《経団連と連合は今後、雇用確保をめぐり定期協議を重ねる予定》と述べていますが、連合は「雇用確保を望むこと」を真剣に望むのであれば、経団連加盟の大企業に十二分に溜め込んだ剰余金を使って雇用を維持せよと要求すべきなのです。

【以前ブログで紹介した資料の採録】 財務省の法人企業統計調査をもとに、自動車、電機など大企業製造業の利益剰余金と資本剰余金の合計額を計算すると、大企業製造業の剰余金の合計額は、九八年九月末時点での約七十六兆七千三百億円から、二〇〇八年九月末には一・四倍の約百九兆一千五百五億円に増加しています。十年間の増加額は、三十二兆四千億円を超えます。

総務省の労働力調査によると、〇八年七―九月期平均の雇用者に占める非正規雇用の割合は34・5%に達しています。一方、大企業製造業の経常利益総額は、ピーク時より低下しているものの十年前の一・六倍になっています。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、正社員の平均賃金は残業代、一時金を合わせて年間五百二十三万五千円です。

十年間の剰余金の積み増し分だけで、正社員の年収の約六百二十万人分にあたります。十年間分のためこみを十年かけて取り崩すとしても、一年分の約三・二兆円で六十二万人分の正社員の年収分になります。

厚生労働省の企業からの聞き取り調査では、〇九年三月末までに八万五千人の非正規労働者の雇い止め・解雇が計画されています。

これまでの大企業製造業の剰余金の一年間分の積み増し分約三・二兆円だけで、「非正規切り」にあう労働者の解雇をやめることができるばかりでなく、その七倍以上の数の労働者を正社員にすることができます。