いせ九条の会

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新自由主義的イデオロギーの行き詰り/山崎孝

2008-10-16 | ご投稿
10月14日に、ノーベル経済学賞の受賞が決まったクルーグマン教授がブッシュ政権の「民間が善で、公的なものは悪だ」という基本的考え方を批判したことをお伝えしました。

この文章の補足として、ブッシュ政権の新自由主義経済政策が破綻する事態になっていることを指摘した文章をお伝えします。「世界」11月号掲載の立教大学教授 山口義行氏の文章からの抜粋です。

(前略)FRBが最大八五〇億ドル(九兆円)を同社(米国保険大手のAIG)に融資することになった。事実上の国有化である。

 「税金を使うのが適当と考えたことは一度もない」と公言して、リーマン破綻の際には公的資金による救済を拒否したポールソン財務長官は、その翌日、AIG救済について「混乱拡大を防ぐための措置を支持する」と、公的支援に賛意を示す声明を発表した。この豹変ぶりにこそ、「市場に追い込まれて、救済を迫られ」(日本経済新開、○入年九月一入日付)ていく米国政府の姿が、鮮明に映し出されている。(中略)

 その一つは、投資銀行の活動を主軸にして、欧米商業銀行を巻き込みながら展開されてきた信用膨張のメカニズムが破綻し、反対に信用収縮の連鎖が起きていること。そして、それに伴って、縮小均衡型の金融再編成が相当荒っぽい形で進んでいることである。

 いま一つは、そうした投資銀行の「やりたい放題ともいえる」活動を正当化してきた新自由主義的イデオロギーが行き詰り、「どのように規制を加えるか」が模索され始めたことである。(中略)

■両足骨折の米国とどう付き合うか

 近年、米国は軍事と金融という二本の足で世界を閥歩してきた。しかし、軍事はイラク戦争の泥沼化で、金融はサブプライム問題を端緒にした投資銀行バブルの崩壊で、大きな挫折を余儀なくされた。いわば、両足骨折で歩行困難な状況にあるのが、今日の米国の姿である。

 しかも、その治療と回復には、相当の時間とコストを要することも明らかになってきた。米国の「回復」を待ち切れない世界の国々は、新たな「世界地図」を描こうと、政治と経済の両面でさまざまな試みを開始するだろう。

 麻生新政権の誕生とともに日本の政界は「総選挙モード」に突入した。次期総選挙では、そうした激動の国際社会の中にあって、日本の「立ち位置」があらためて問われることになる。いよいよ日本人の知恵が試される。(以上)

【コメント】山口義行氏は《日本の「立ち位置」があらためて問われることになる》と述べています。しかし、日本の二大政党の外交政策の基本を麻生首相は9月の国連総会演説で「日米同盟を不変の基軸」と述べ、集団的自衛権行使可能のため解釈改憲に言及。小沢民主党代表は10月の国会代表質問で、「日本の安全保障は日米同盟を基軸と位置づけ、米国と対等なパートナーシップを確立し、より強固な日米関係を築く」と述べています。これでは救いがありません。