伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

文化博物館の祇園祭展示

2024年06月21日 | 展覧会・絵
7月から始まる祇園祭に合わせて京都文化博物館で、
総合展示として祇園祭展示が行われている。

新館の2階の小さな1室のみでの展示だが、
無料招待券で行って来た。

1室だけの展示なので展示品も非常に少ないが、
祇園祭自体が歴史のある祭りなので意外なほど見どころがあった。




京都文化博物館
https://www.bunpaku.or.jp/

総合展示
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_sogo_post/20240605-0804/
祇園祭-山鉾巡行の歴史と文化
会期 2024年6月5日(水)〜8月4日(日)



祇園祭が済んでも展示は8月まであるようだ。




まず展示室に入るとすぐの所にガラスケースの中に
巨大な鉾の模型が飾られている。
放火鉾の模型だった。

鉾の心柱はあまりに長すぎるので3つのパーツに分けて置かれていた。
何十分の一か忘れたが、本物が10メートルくらいあるので、
模型になってもびっくりするほど巨大だ。

放火鉾の模型は江戸時代作だそうで、
そのため鉾の音頭取りと、鉾の中で祇園囃子を奏でている囃子方は
皆ちょんまけで、江戸時代の風俗を反映させている。

細部まで細かく作られていて、懸装品も前掛け・胴掛け、見送り、
土台となる石持ちまで忠実に再現してあった。

月鉾の模型も展示されていた。
こちらは明治時代の作だが、
こちらも音頭取りも囃子方もちょんまげを結っていた。
このミニチュアサイズの人形たちの表情はすごくうれしそうで、
ニコニコしながらお囃子を奏でているのが印象的だ。

模型は江戸時代から頻繁に作られたようだ。
祇園祭の期間に宵々山などへ行くと、
鉾町では玄関先に鉾の模型を飾っている町家が多くある。
今でもこうした模型は大事にされているのだ。
何より鉾の模型は細部までこだわって作られているので楽しい。




次に江戸時代に発行された祇園祭について書かれた冊子が展示されていた。
「祇園御祭礼記」とか「祇園絵鉾記」などというもので、
図版入りで祭と鉾についての説明がしてある。
当時(江戸時代)より、祇園会(祇園祭)の案内記が発行されていたようだ。

室町時代の屏風にも祇園祭が描かれているように、
どの時代でも祇園祭は京の観光の目玉だったのかもれしない。




「都名所百景」(江戸時代後期)の中より
「祇園会宵錺」という彩色豊かな版画は、
宵山の鉾に飾られている駒形提灯が現在のものより小さくて、
やたらに数が多い。無数に飾られている。
もしかしたら誇張して描かれたものなのかもしれない。

江戸後期には宵山ではすでに、
現代と同じ駒形提灯を飾る風習があったことがとても興味深い。



そうして山鉾の懸装品の本物そのものがいくつか展示されていた。



保昌山の見送り「仙人図」は16世紀前半の刺繍だそうで、
全山鉾の中でも最も古いものらしい。
刺繍が殆ど剝落して何が描かれているか分からないほど
褪色しているが、それでも16世紀の色彩は残っている。
刺繍が所々剥がれかけているのがかえって生々しく、
精緻な刺繍が施されていたのだと分かる。
(あまりに古すぎて巡行には使われない)


保昌山は東洞院通松原という、烏丸通より東側、
四条通より南側という、他の山鉾からぽつんと一つだけ離れた場所に建つ。



その保昌山の見送りがもう一点展示されていた。
日本で製作された綴れ織で「寿星図」という名前で、
描かれているのは寿老人たちだろう。
日本で綴織の技術が確立したころ、1798年に作られたというが、
300年以上前の織物が残っているのも脅威だ。

懸装品の多くが中国の逸話を描いているが、当時は中国の影響が濃かった。
そのため山鉾の装飾には中国の影響によるものが多い。





白楽天山の前掛けは、なんとヨーロッパ製である。
16世紀前半のタペストリーを切張りしたもので、
鯉山や函谷鉾に通じる西欧の作品を取り入れている。
中国だけでなく、装飾的で華やかだと思ったものは取り入れたのだろう。

白楽天山の前掛けは「イーリアス」がテーマの16世紀のタペストリーに、
そのほか18世紀・中国の官服を裁断して両側に繋ぎ合わせたものだという。
大胆に繋いでいるが、それが違和感なく調和しているのを思うと、
それが当時の美意識だったのだ。
良いと思うものはどんどん躊躇なくパッチワークして取り入れたのだろう。




最後に竹内栖鳳の見送りが展示されていたのはとても嬉しかった。
孟宗山の見送りとして、栖鳳が直接墨で描いた墨絵である。
始めて間近で見た気がする。
いつもは孟宗山の後ろに飾られているのを見ていたが、
改めて壁に吊るされているのを見ると、こんなに大きかったのかと驚く。


孟宗竹がまっすぐに伸びているのではなく、
左右の竹は中央に向けてしなっている。
その迫力に圧倒される。

他の見送りなどの懸装品は色彩豊かで、
極彩色で飾り立てられているが、
この栖鳳の見送りのみ墨一色で描かれた異色の作品である。
極彩色の山鉾の中で逆にかえって目立ち、
また竹の伸びやかさが清々しく感じられる。


文博の祇園祭特集はほんの少しの展示数だったが、
竹内栖鳳の本物を見られたし、
祇園祭好きとしてはとてもうれしい企画だった。



7月に入るといよいよ祇園祭マンスが始まる。
文博の2階のロビーには粽がディスプレイされていた。
「蘇民将来の子孫也」・・・
祇園祭が近づいて来たなと感じる展示だった。



(画像はパンフレットより)
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前祭の山鉾巡行(7月17日)をプレミアム観覧席(40万円!)で
観光客向けに売り出すことに八坂神社の宮司が反対していた件、
観光協会はプレミアム席では酒類と食事を提供しないことにした。

宮司は巡行はショーではない、と理事の辞意を表明していた。
(京都新聞より)

祇園祭・山鉾巡行は八坂神社のお祭りで疫病退散のために行う。
確かに酒を飲みながら鑑賞するショーではないが、
近年は(いや、江戸時代より)巡行が観光目的の客が増え
観光が主眼になって来ていた。

山鉾行事には膨大な費用もかかる。
維持してゆくだけでも大変だから毎年クラウドファンディングを募って
宵山や巡行の際の警備費などに当てている。

神事ではあるけれど、費用もまたかかるから、
観光目当てでお金を落とす人たちもまた大切なお客様。
けれども今回の宮司辞意の件は、お酒を提供しない、との結論で、
改めて祇園祭を双方が大事にしたいという気持ちの表れだ。
皆、祭を大切に思ってるのだ。
どのような形になったとしてもこの先何百年と続いてほしい。




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