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美智子の失業 19

2025年04月19日 19時27分35秒 | 美智子の失業
 「ホテルとかじゃなくて、温泉がいいな、できれば窓から富士山が見えるところ」
あっけらかんと美智子は言う、私は少し緊張している
(夢じゃないか)まさか彼女いない歴10年のおっさんでもいいと若い娘に言われたようなもの、前の彼女は28だったし当時の私も29だった
それに比べれば美智子は21歳のぴちぴち娘だ
そんなことを思うだけで頭から血の気が引いていくような気分だ
妄想が始まって、喉はカラカラになった
自販機の前で停まって、缶コーヒーを買って飲んだが、むせかえてってしまった。

 それから走りながら日程を決めた、9月6日と言うことになった
今日は8月2日だから、お盆商戦をまたいで一か月後であろうか
その日が待ち遠しくて仕方ない
お盆商戦は太陽スーパーにとっては年末年始と同様に一大事である、それまでは浮ついた気持ちを捨てて本気で取り掛からなければならない
この町ではトップクラスと言えども、駅前スーパーの存在は脅威だ
売り上げも利益もじり貧だから何とか目標を達成しなければならない
その意味では、美智子との約束が私には強いバックアップとなった
かっこいい男でいるためには、金を稼いで大盤振る舞いすることも大事だ
儲けて、美智子が驚くほど気前の良い男を演じるのだ。

 久しぶりに私は店長と一緒にマルキュウへお盆用の特売品の交渉に行った
私が、ここに来るのは昨年の年末商戦の交渉だったから11月だった、半年以上たっている
大岩社長も、坂崎も姿が見えなかった、販売部長が我々を迎えてくれた
お盆の3日間での売り上げ予定は700万を予定しているから、マルキュウにとっても太陽スーパーは無視できない
我が店もマルキューだけが仕入れ先ではないからマルキューにしてもなんとか自分の会社から少しでも多く買ってもらいたい。

 交渉に入ったが、マルキュウは高い、隣の町から配達に来る問屋と比べても1割から2割高い
「高いよ、1割くらいなら地元だから利用するけど、それを越えたら他の店と戦えないぜ、他の問屋の価格調べてる?」
私は遠慮なく販売部長に言った
「わかりました、なんとか頑張ってほかの問屋並みにしますのでぜひお願いします」と部長
「なんか全体的に商品数も少ない気がするんだが、なにかあったの」
と私は問い詰めた
すると部長は声のトーンを落として、「本当は言ってはいけないことなんですが、太陽さんは大事なお得意様なので言います、絶対私に聞いたなんて誰にも言わないでくださいね、約束ですよ」
「もちろん、部長の立場が悪くなるようなことは言わないさ」
「実はですね、仕入れの支払いが最近滞りがちで、一次問屋からは『何とかしてくれないと取引できませんよ』と脅される始末で
それで坂崎事務長にお願いするんですが、『そんなのは社長に言えよ』というし、社長に言えば『坂崎の仕事だろう』と取り合ってもらえず、私も困っているんですよ、それでも時々支払いをするようで商品が滞ることは無いのですが、仕入れ価格を前よりもあげてくるんですよね、それで私も頭が痛いんですよ」
「優良会社なのに、どうして支払いができないんだ」
「わかりません、わかりませんけど、最近銀行はもちろん、なんだか怪しい人間も社長室を訪ねてくることがあって、どうも社長がなにかに投資して損をしているんじゃないかと事務員が言うんですがね
それに社長と事務長の不仲なのも問題ですよ、ここ数か月で事務員三人辞めたのか辞めさせられたのか知りませんが、相次いで辞めましたからね」

登場人物
私 地方でスーパー太陽を営む 39歳
美智子 大岩の物流会社「マルキュウ」勤務、突然解雇される 21歳
大岩 「マルキュウ」の社長、博打好きで、とかくの噂がある 50歳
宮内 商店主 私の遊び仲間 38歳
秋野 商店主 私の遊び仲間 37歳
松金大吉 成金の市会議員 55歳
絵理 美智子の友達 22歳
友美 マルキュウの事務員 35歳
坂崎竜馬 マルキュウの事務長 経理部長 大岩の甥 41歳
 



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