ゆびさきを揃えたままで来し方を語り始める波 つらかろう
丘を行くつもりの足がぬかるみを何度もみつけてはよろこんで
四十度傾けて読む寄せ書きのゆるいひらかな絵文字はなびら
春を待つ熊よおまえの悔恨に寄り添えなくてすまなく思う
気短な眉をしているその人がいきものとして吐く朝の息
割られたがる氷があって割りたがる手足があった いってらっしゃい
蠢蠢と食べてねむって春になれば深いところがついに泣きだす
みずうみがひらくのを見にゆきましょう(裂けているから尊い心)
くるしいと言えばいいのに明るくてあなたからいただく春帽子
新しい感情がくる 三月の枝はおのおの花を兆して