つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

60歳のラブレター(8)

2009年02月01日 | 文化
                        林家正楽師匠の紙切り「相合傘」

●夫から妻へ
数式しか関心のなかった高校教師の僕に、あなたは「変わった人ね」と、かわいらしく笑いました。
でも、あなたは、もっと変わっていました。
窓の鉢植えの花に、「おはよう」と言葉をかけながら、水をやっていました。
ぞうきん掛けをしながら、部屋がきれいに片付いていくのを、楽しんでいました。
ベランダに洗濯物を干しながら、石けんの匂いに、晴れた空を見あげて、鼻歌を歌っていました。
冬があけると、子ども達つれて、蕗のとうを摘んできました。「春の香よ」と、料理しました。
喧嘩しても、いつもあなたは、さっぱりしていました。
そんなあなたが、子どもが熱を出した時、二晩も三晩も、ほとんど寝ることなく、祈るように看病をしていました。
あの時、我が家を支えているのは僕ではなく、あなただと分かりました。あなたの支えになっていない自分に気づきました。
35年たち、おかげで変わり者だった僕も、今は生徒達からも同僚達からも頼られる教師になりました。
きっと神様が、あなたに巡り合わせてくれたからだと思います。
だからこれからは、体が少し不自由になってきたあなたに、「ありがとう」を胸に、精一杯恩返しさせてもらいます。(U.Kさん 横浜市 61歳)
コメント (1)
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