つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

ホスピタリティの心(8)

2012年07月20日 | 友人
                             石垣いちご

津田令子様著作本「接客革命」(芦書房 1,575円)より転載。

 ◎「ピンチ」を「チャンス」に

ツアーコンダクターをしている知人のAさんは、機転の利いたとっさの現場判断でピンチをチャンスに変えた話をしてくれました。
20年以上前、静岡への日帰りツアーを大入り満員で実施したときのことです。当時、たいていのツアーは開催当日に数名の欠席者が出るのを見越して多めに申し込みを受け付けていたというAさん、その日も出発時間の5分前になって残席2名と順調な流れでした。彼が「これで大丈夫、補助席を使わずに皆さんにゆったり座っていただける」と思った瞬間でした。
むこうから「ごめんなさ~い。ぎりぎりになっちゃいまして~」とダダダダと威勢のいい女性3人組がやってきました。Aさん内心「あ~来ちゃった~」と思ったそうです。

たったひとりだけ補助椅子に座らなければならなくなってしまったのです。数名ならばまだよかったのかもしれませんが、ひとりというのは、困りものです。50名近くいる乗客のなかでただひとりだけお豆扱いになってしまうわけですから。ぎりぎりにドヤドヤ飛び乗ってきた三人組は「え~補助席なんて聞いてない~」とご機嫌斜め、ツアコンのAさんは、対処を考える間もなく出発しなければならず、とにかくひとりがいやいや補助席に。いちいち上司におうかがいをたて「どうしたらいいでしょうか」なんていったら、すかさず「おまえ、そんなことぐらい自分で考えろよ。頭を使え」と、ガチャンと切られてしまうのがおちです。

そこでAさん、最初の訪問先である「久能山の石垣いちご園」で、みんながいちご狩りを楽しんでいるあいだに、いちご狩り組合のおじさんから、いちご四パック入りの箱を安くわけてもらいその三人組に渡したそうです。その人たちは一パックではなく一箱ももらってビックリしながらおおよろこび、そしてそのあとのすべての行程を楽しく過ごすことができたそうです。

そのお客さまは、その後も何度か別のツアーに参加されたとのこと。Aさんは「ちょっとした転機」で、もう少しでクレームになりそうな案件をチャンスに変え、結果として3人のリピーター客を得たわけです。
うまくいくケースとそうでないケースの分かれ道は、「相手の立場になって機転を利かせる」ことができるかどうかではないでしょうか。

(7月20日記)

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