つれづれなるままに

日々の思いついたことやエッセイを綴る

宮田章司師匠 売り声で伝える江戸風情(2)

2010年01月23日 | 社会
               弟子の宮田陽と昇と出演する宮田章司師匠(深川江戸資料館劇場)

●楽しみな「音」探し
売り声を芸にし始めたのは15年ほど前だ。大道芸の大家で、バナナのたたき売りなどの口上をやっていた坂野比呂志さんに病床に呼ばれ「オレの芸を継いでくれ」と頼まれた。その時は漫才師だったあたしの、江戸弁を見込んでのことだろう。しかし同じ芸だけをやっていたのでは、坂野さんを超えられない。そこで思いついたのが、幼いころから聞いていた売り声だ。始めたら、はまってしまった。

何が売られていたかは調べれば分かるが、江戸の「音」は残っていない。それを探すのがまず面白い。自分で声を出してみる。高い声や低い声を試しながら、お客さんが買いたくなるような、テンポやアクセント、リズムを探る。例えば梅雨時の青梅売り。「あおうめやー、カリカリッ」。少し硬い梅の歯触りを、シャキシャキとした江戸弁で語る。

売り声の世界をちょっと掘り下げると、これまたいろいろと分かる。例えばこうもり傘の張替え屋はあたしが子供のころもよく来ていたが、では、こうもり傘を日本に持ち込んだのは誰か? 答えは勝海舟。また水団には、第2次大戦中のもののない時代に食べたものというイメージがあるが、色町で普及したという。花街の客が小腹がすいた時、江戸弁でいうところの、腹の「虫おさえ」に食したのだ。

近年は、子守歌にも詳しくなった。各地にある子守歌の言葉は、本当にいい。子守歌を歌ったのは母親だけでなく、子守を仕事にした子供だ。この子らはきっと、飴売りの声を、毎日楽しみに待っていたことだろう。売り声も子守歌も、いってみれば労働歌。私がやっているのは、結局は労働歌なのだと思う。(つづく)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宮田章司師匠 売り声で伝え... | トップ | 宮田章司師匠 売り声で伝え... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。