自民党の「国家の情報機能強化に関する検討チーム」が情報会議の設置などを提言

　我が国には対外情報(正確には’諜報’)を取り扱う機関が存在しない。しかし、情報の収集と分析、すなわち諜報の重要性は、有名な『孫子』にも「爵禄百金をおしんで敵の情を知らざるものは不仁の至りなり」とあるとおり、極めて重大なものである。最近やっとこの部門への関心が高まってきたことは、国民の安全にとってよい方向である。国際テロの脅威の高まりや、上海総領事館員の自殺事件を目の当たりにすれば、このような動きになるのは自明の理と言ってもよい。自民党の「国家の情報機能強化に関する検討チーム」（座長＝町村信孝・前外相）は２２日に次のような骨子の提言をまとめた。

・首相、外相、防衛長官、公安調査庁長官など閣僚級の「情報会議」の設置
・内閣情報官を官房副長官補級から官房副長官級に格上げ
・内閣情報官の下に対外情報機関を新設し、スタッフに専門の養成・訓練を実施
・各省庁共通の情報保全基準の制定と、秘密保持を義務付ける法体系の新設・整備
・国会に情報政策を統制する「情報委員会」を設け、政府が報告した機密情報の保全を国会議員に義務づける法律を制定

　叩き台としては、十分評価できるものができたのではないかと思う。対外情報機関をどこに設置するべきかについてはいくつかの考え方がある。自民党案は内閣官房の下に置くという考え方である。一方、内閣情報調査室長を務めた大森義夫氏は著書などで、対外情報機関を独立のユニットとした上で外務省の中に「外務省であって外務省でない」形で設置すべきだと主張しておられる(たとえば文春新書『日本のインテリジェンス機関』参照)。これは、有名な対外諜報組織ＭＩ６が存在している英国のスタイルである。私には、対外と対内を峻別するという意味で大森氏の主張も傾聴すべきだと思われる。
　今回の自民党の提言では、内閣情報官が官僚出身の事務の官房副長官を経由して首相や官房長官に報告しているシステムも改め、首相に直接報告するようにすることを提唱している。内閣が「顧客」で、情報機関がそのニーズに沿った(というのはもちろん「都合のよい」という意味ではない)情報を提供するという原則により合致しているし、何よりも迅速性が増す。国会に「情報委員会」を設けるのは民主的統制の観点から当然である。

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(参考記事)
[閣僚級の「情報会議」など、自民検討チームが提言]
　自民党の「国家の情報機能強化に関する検討チーム」（座長＝町村信孝・前外相）は２２日、情報収集に関する指示を出す閣僚級の「情報会議」の設置や、内閣情報調査室（内調）へのインテリジェンス（情報活動）専門の対外情報機関の新設などを柱とする提言をまとめた。
　対外情報機関については、上海総領事館員の自殺事件の反省を踏まえ、外国情報機関による工作や、国際テロなどの脅威に適切に対応できるよう、専門的な養成や訓練を受けたスタッフをそろえることを求めている。小泉首相や次期首相に実現を求める方針だ。
　このほか、〈１〉内調のトップである内閣情報官を官房副長官級に格上げし、その下に、関係省庁と民間出身者が情報を収集・分析する「情報補佐官」を設ける〈２〉政府の情報活動を監視するため、国会に「情報委員会」を設置し、委員となる国会議員に守秘義務を課す――ことなどを盛りこんだ。
（2006年6月22日23時47分 読売新聞）

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