猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

スイスのオプワルデン州で「逆進課税」導入

2006-03-05 02:31:27 | EU・欧州各国
 所得税といえば、累進課税で所得の再分配を図るというのが「常識」である。このほど、スイスのオプワルデン州で高額所得者ほど所得税率が低くなる「逆進課税」制度を導入したのは、なかなか注目に値するできごとである。詳細は参考記事を参照されたい。
 スイスは連邦国家であり、税は連邦税と州税の2本立てで、州税の税率は各州が独自に決めることができる。元来よりスイスは税金の安い国であるが、思い切った施策を導入したものである。今回の新制度導入の根拠は「お金持ちが引っ越してくれば税収が増え、結果的に低所得者も助かる」というものである。英国のサッチャー元首相も「金持ちから金を奪い取ったからといって貧乏人が豊かになるわけではない」という趣旨のことを述べている。そういう新自由主義的理念を徹底させたものだといえるだろう。
 もちろん、日本でも真似すべきだなどと言う気は毛頭ないが、租税の理念にはさまざまなものがありうるという点を強調する目的で今回の事例を紹介する。また、所得税に関してはともかくとして、法人税に関しては、グローバル化した世界で国際競争をする以上は、かねてから指摘されている法人税率の高さによる日本の産業の空洞化という懸念は、今回のオプワルデン州の決定の根拠と通底するものがある。
 折りしも小泉首相の国会での発言が「格差容認だ」としてマスコミに叩かれている。そういう単純なバッシングに対するアンチテーゼとしても、オプワルデン州の新税制導入の論理は興味深いものであると思う。


(参考記事)
<金持ち天国>高額所得者ほど税率低い制度 スイス中部の州
 スイス中部のオプワルデン州(人口約3万3000人)が今年から、高額所得者ほど所得税率が低くなる新制度を導入した。「お金持ちが引っ越してくれば税収が増え、結果的に低所得者も助かる」という発想だが、他州との税率引き下げ競争を懸念する声も出ている。【ザルネン(スイス中部オプワルデン州)で澤田克己】
 州都ザルネンはアルプス山中の小さな町。02年の州民1人当たり年間所得は3万7000フラン(約330万円)とスイス平均の約4分の3。中規模以上の企業進出は60年代が最後で、これといった産業はない。
 新税制導入は貧しい小さな州を一躍有名にした。スイスはもともと、欧州最低水準の税率で世界中のお金持ちを引きつけてきた。節税対策でスイスに居を構える大富豪は3000人に上るとされる。そのスイスでも同州が打ち出した“優遇策”は際立っている。
 連邦制のスイスの税制は連邦税と州税の2本立てで、州税の税率は各州が独自に決める。同州の新税制では年間の課税所得が30万フラン(約2700万円)以上になると所得税率が下がる。課税所得100万フラン(約9000万円)の人が支払う州所得税は従来より3割少ない11万6013フラン(約1060万円)。電車で1時間強の距離にあるチューリヒ州の税額の43%にすぎない。
 法人税も13.1%と欧州最低水準に引き下げたオプワルデン州の新税制は他州や外国に住む富豪や大企業の誘致を狙っている。州の税務責任者ブランコ・バラバンさんは、納税者ではなく「顧客」という言葉を使いながら「顧客を獲得する他州との競争だ。外国の企業や富豪がスイスに来ようと思った時、わが州が一番有利だと売り込める。すでに数社から相談が来ている」と自信満々だ。
 スイスのメディアによると、全26州のうち18州が同州に対抗して税率引き下げを検討しているという。しかし、バラバンさんは「わが州は小さいから小回りのきいた対応ができる」と意に介していない様子だ。
 町の人たちの反応はどうだろうか。駅前でコーヒーを飲んでいた飲食店員のシャンタルさん(30)は「お金持ちの方が低税率なんて少し不公平な感じがする」と話すが、不満の声はそれほど多くない。新税制は昨年末の住民投票で8割の賛成を得た。画家のシュルツさん(44)は「賛成だよ。働き口ができれば都会に働きに出なくていいからね」と笑顔を見せた。
(毎日新聞) - 3月4日15時23分更新


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