猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

フランス暴動について

2005-11-10 01:56:24 | EU・欧州各国
 先月27日に起こったアフリカ系2少年の感電死に端を発したフランスの暴動は、8日の臨時閣議で夜間外出禁止令が出され、その後沈静化に向かっているようだ。経緯は報道記事を読んでいただきたいが、一言で言ってしまえば、今回の暴動は、イスラム系アフリカ移民が貧困や最近の厳格な政教分離政策などに反発して火がついたものである。一時はドイツやベルギーに波及しそうな勢いだった(まだ沈静化したわけではないが)。この件から日本が学ぶべきことは、二つである。
 一つは、安易な移民受け入れ政策をとるべきでないということである。少子高齢化の進行にともない、労働力不足を補うために移民を大幅に受け入れるべしという議論がある。安易な移民受け入れは、社会的亀裂を生むだけである。移民の子弟の教育をどうするのか、貧困や差別を生み出さないようにできるのか、など問題は山積である。しかも、少子高齢化対策のつもりで移民を受け入れたとしても、その移民がまた少子高齢化することを見落としている。こんな物価の高い日本で移民に「多子」など無理な相談である。
 もう一つは、治安維持に関する法制度の充実と迅速な決断の重要性である。まだ暴動が完全には沈静化していないので、判断するのは早計かもしれないが、沈静化に向かいつつあるのはフランス政府の夜間外出禁止令の果断な発令という点に追うところ大であろう。わが国でも、治安維持に関する法制度は十分に整備されなければならないし、そのことは憲法においても緊急事態条項として明記しておくべきである。
 とりたてて目新しい学ぶべき内容ではないが、フランスの暴動を目の当たりにして改めて実感できたのではないかと思う。

(補足)移民問題について、ドイツ在住のMarie様が『さようなら、ユートピア。』という記事でドイツにおける移民問題を現地の視点で報告してくださった。「ドイツに暮らしてから気づいた、以前は全く予想していなかった事は、外国人にドイツ人がとても萎縮しているという事。(中略)私はその主要要因はやはり、”ナチス”にあると思う。ドイツで、ドイツ人は卑劣なドイツ人を批判することはいくらでもできる。しかしもし相手が外国人だったら?いくら卑劣でも公に批判できない。だって、また「ナチスだ!」って言われるに決まってるから。(中略)そんなところに(移民は)義務は果たさないが、権利は主張しまくる、我が物顔の外国人による悪行が次々と起こる。。そうしたら外国人嫌い、差別主義の人間だって簡単に出来上がってしまうだろう。もう悪循環極まりない。そしてもちろん、外国人による悪辣な犯行、暴動が起きて一番被害を被るのは誰か?まじめな同国人だろう。」と指摘しておられる。本題のフランスではないけれど、根源は全く同じことなので、是非読んでみてください。


(参照記事1)
[夜間外出禁止令の構え 仏暴動で政府半世紀ぶり「強権」]
 フランス政府は全土に拡大した暴動を抑えるため、各地の知事が夜間外出禁止令を出せるようにする。8日の臨時閣議で正式決定し、必要な法的手続きをとる。本土に外出禁止令が発動されれば、アルジェリア独立戦争(1954~62年)当時以来の非常事態。12日目に入った騒乱状態が沈静化しないため、「国家」を前面に早期の事態収拾を目指す考えだ。
 仏政府の方針は7日、ドビルパン首相がテレビのニュース番組に生出演して発表した。1955年施行の非常事態法に基づき、各県の知事(政府任命)が必要と判断すれば非常事態を宣言し、外出禁止令を発動できるようにする。官報での公示を経て、9日午前にも適用される。
 首相は「この重大事態を受け、大統領は55年法の活用を決断した。秩序回復と住民保護に有効とみれば、知事は内相の権威の下に夜間外出禁止令を出せる」と表明した。外出を禁じる地域や時間帯は知事が決める。
 また、警察官や憲兵の予備役1500人を大都市郊外の騒乱地域に投入し、現在8000人の警備態勢を増強する。
 首相は軍の出動について「その段階ではない」と否定。各地で放火を繰り返している若者に対しては「両親の責任」を指摘する一方、イスラム組織の関与は「無視すべきではないが重要ではない」と語った。
 さらに、暴動の背景とされる移民社会の困窮を和らげるため、(1)貧困地域で社会活動に携わる団体への財政支援増(2)学業不振者に対する職業訓練の前倒し(16歳→14歳)と、優秀な生徒への奨学金の3倍増(3)6月に発足させた国の反差別機関に懲罰権限を与える――などの方針も表明した。
 アフリカ系2少年の感電死(10月27日)に端を発したフランスの暴動は、7日朝までに274の自治体に拡大。約5000台の車が放火され、警察官や消防士100人以上が負傷している。暴徒の攻撃は学校や市役所、郵便局などにも及び、7日には一連の暴動で初の死者が出た。
 このままでは、統治能力への国際的な信頼が揺らぎかねず、観光や飲食業など国内経済への打撃も大きくなるため、強権による「短期決戦」に出たとみられる。
 各地での放火は政府方針の発表後も続き、8日午前0時(日本時間同8時)までに全国で324台の車が燃えた。
 〈キーワード・夜間外出禁止令〉 フランスで「復活」する非常事態法は、アルジェリア戦争の国内的な備えとして生まれた戦時法。外出禁止令はその後、85年1月に独立運動に絡んで海外領ニューカレドニアに1回発動(午後7時~午前6時)されただけ。
 閣議決定で同法が適用されれば、政府が任命する知事の判断で、地域と時間帯を定めて人や車の往来を禁止できる。「戸外にいるのは無法者だけ」の状況を作ることで、暴徒の活動が抑制され、警備・検挙活動もしやすくなる。ただ、飲食業など地域経済への「副作用」も甚大で、期間は限られる。
 各国で法の仕組みが異なるが、途上国や独裁国家では、クーデターや内乱などの際にしばしば発動されてきた。先進国では大災害などの非常時を除けば極めて珍しい。
(朝日新聞 2005年11月08日10時40分)

(参照記事2)
[仏の暴動、沈静化へ…一部での外出禁止令発令を機に]
 【パリ=島崎雅夫】フランスの暴動発生地域で9日未明、夜間外出禁止令が発令可能になったのを機に、8日夜から9日早朝にかけて全国で放火車両数が大幅に減少するなど暴動は沈静化傾向を示してきた。
 ただ、依然、放火車両数は600台を超えており、仏当局は警戒を強めている。
 非常事態宣言に基づく夜間外出禁止令は、北部ソンヌ県が9日、県都アミアンとその周辺地域で発令した。
 この宣言には基づかないものの、パリ郊外のランシーが7日夜から、パリ南方のオルレアン、サビニ・シュロルジュが9日から、若者を対象にそれぞれ独自の夜間外出禁止令を発令した。
 仏警察当局によると、失業などに不満を高める移民の若者らによる暴動で9日早朝にかけて、全国で車両617台が放火された。先月27日の暴動発生以来、放火車両数は今月6日夜から7日早朝にかけて最高の1408台に上ったが、7日夜から8日早朝にかけて1173台に減少、8日夜から9日早朝にかけて、さらに減少した。
 サルコジ内相は8日深夜、「暴動発生件数は著しく減少している」と語った。
 しかし、南西部のボルドーやトゥールーズ、南部のリヨンなどでは若者が火炎ビンを投げ、警官隊と衝突するなど暴動は続いている。
 また、ドビルパン首相は8日、国民議会(下院)で演説、「政府には日々の生活が困難な地域を他の地域のレベルまで引き上げる責任がある」と述べ、<1>差別解消にあたる専門機関の設立<2>貧困層に対する約2万人の雇用創出<3>同化政策を推進する民間団体を対象とした1億ユーロ(約140億円)の援助――などの同化政策を主に移民向けに実施する方針を明らかにした。
(読売新聞) - 11月9日22時2分更新


☆もしよろしければ、Blog●Rankingに投票お願いいたします。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (kiniroakio)
2005-11-10 07:10:49
はじままして、TBさせていただきました。

安易な移民計画は本当にやめてもらいたい。

日本がフランスのようにならないようによろしくお願いします。

返信する
ご紹介、ありがとうございます。 (Marie)
2005-11-10 19:51:02
猫研究員さんのように、日本にもまだまだ日本をしっかりと考えてくれる方がいるのだという事を知り、少し安心致しました。私は海外在住なもので、日本の状況把握はネット、主にブログでしかできないのですが、実際日本にいらっしゃる猫研究員さんから見て、日本を正しい視点で見る人間が増えたと思いますか?ブログだけ見ていると、だいぶ多い気がするのですが。



日本にも移民受け入れ案が出ているという事ですね。移民受け入れは始めるのは簡単ですが、止める(もしくは規制)のは非常に難しいと思います。ですから私も安易な受け入れには”断固反対”です。それにより、”区別=受け手にとっては差別”が生まれるのは当然ですし、すでに(地に落ちた)国連により”差別国家”と名づけられたニッポン(猫研究員さんもご存知だとは思いますが、この内幕には脱落ですね→http://blog.livedoor.jp/mumur/archives/50202677.html)はどうなっていくのでしょうね。



しかし、日本が高齢化社会になるのは確実ですし、移民受け入れに代わる良案が必要なのも事実ですよね。猫研究員さんは高齢化社会に対してどのような政策が最善だと思われますか?(私もいろいろ考えてはいるのですが、なかなかいい案が思いつかないんです>0<)
返信する
あっ! (Marie)
2005-11-10 19:57:53
たった今、猫研究員さんの国連に関するエントリー読みました。もう上記リンクもとっくにご存知でしたね(笑)失礼しました!
返信する
Unknown (猫研究員)
2005-11-10 23:18:10
>kiniroakioさま

TB&コメントありがとうございます。

そちらの記事も拝見しました。移民受け入れ政策という愚がなされぬよう、国民が皆で注視していかねばなりません!



>Marieさま

ご丁寧に有難うございます。

日本でも以前にくらべれば、国家意識が芽生えてきたとは思います。といっても、まだ安心できるようなレベルではありません。インターネットの世界ではいわゆる保守派の声が大きいようですが、これは裏を返せば現実世界に対する危機感のゆえだと見ています。

高齢化社会への対応は非常に難しい問題で、おそらく特効薬はありませんよね。まず、「高齢者=弱者=国家が救済しなければならない」という図式から脱却する必要があります。もちろん弱者切り捨ての意図は毛頭ないのですが…。高齢者も経済活動に能動的に参加できるような、自助努力をより重視する経済構造に変革していくべきです。わが国が今後優位を保つと予想される分野は、特殊技能を伴うものづくり、知的財産です。高齢者であっても、こういう分野で働ける人は少なくないと予測されます。長期的視野で見て、そのための教育の充実も必要でしょう。また、高齢化に伴って医療費の増大が予想されますが、それに対して”予防”の概念が少しずつ提唱されるようになってきました。これは正しい方向でしょう。健康な高齢者が増えることは医療費削減に加えて高齢者が働けるための必要条件でもあります。

あまり具体的でもないのですが、思い浮かんだポイントをいくつか指摘してみました。
返信する