猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

ブレア英首相、1年以内に退任の意向

2006-09-10 02:25:55 | EU・欧州各国
 英国のブレア首相は7日に「今月開かれる労働党大会が、党首として最後の大会になる」と述べ、今後1年以内に退任する意向を表明した。「第三の道」を掲げて颯爽と登場したブレア首相だが、さすがに9年もの長期政権ともなると飽きられてくるものだろう。
 外交面でみれば、欧州大陸と不即不離の絶妙な関係を保ちつつ、「特別な同盟国」である米国との関係を重視した結果、直接にはイラク戦争支持が政権の寿命を縮めたといえるのだろうが、長期的には英国の発言権を高めたのではないかと思う。米国のプードルなどと評する人もいるが、米国を単独主義から国際協調主義に回帰させるのに果たした尽力は大いに評価されてしかるべきである。また、対テロ政策では「やりすぎ」を批判されながらも、昨年の英国多発テロを重大な教訓として情報機関と治安組織のあり方を迅速に検討して、先月の自爆テロ阻止に繋がった。ブログ『グローバル・アメリカン政論』の舎亜歴氏は、その記事『アメリカの盟友を採点:英国宰相の群像』の中で、BBCマガジンによる英国首相の格付けでブレア氏への評価が5点満点の3と低いことに言及した上で「イギリスの首相の中でもチャーチル、サッチャー、ブレアはアメリカにとって最高の同盟者である。自由と民主主義の拡大、世界平和の達成で三首相の果たしてきた役割は大きい。BBCマガジンでの評価はどうあれ、米欧関係で三首相が残してきた業績は高く評価されるべきである。」と述べておられる。私もその意見におおむね同感である。さらに、当ブログでも何度か言及したことがあるが、国際開発援助に関して「貧困の撲滅」を前面にした理念を掲げ、国際開発省(DFID)を設置したことは、我が国も参考にすべきであろう。内政面では「第三の道」として、サッチャーによる自由主義改革の行き過ぎを修正しつつも、労働党の本来の政策である社会民主主義的政策とは一線を画してきた。「このままでは保守党の出る幕はないではないか」などと思ったものである。
 戦後の英国の首相で最も傑出しているのは間違いなくサッチャーであるが、ブレア首相は外交面でも内政面でもその後継者といってよいと思う。後世の歴史家からは高い評価を得られるのではなかろうか。



(参考記事)
[ブレア英首相が1年以内に退任の意向、具体的な時期は言及せず]
 [ロンドン 7日 ロイター] 英国のブレア首相は7日、今後1年以内に退任する意向を表明した。ただ退任の具体的な時期には言及しなかった。今月開かれる労働党大会が、党首として最後の大会になる、とも語った。
 首相はテレビで「(退任の)正確な日時を今決めるつもりはない。それは適切ではないと思う」とし、退任の時期は今後設定すると述べた。
 これに先立ち、次期首相候補のブラウン財務相は、ブレア首相の決定を支持するとした上で、退任の時期は首相自身が決めることだと強調した。
 政府内でのスキャンダルに加え、イラク戦争への対応をめぐる不手際などから、世論調査では首相の支持率が急低下。かつての支持者からも迅速な首相交代を求める声が上がっている。
(ロイター) - 9月8日6時30分更新

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4 コメント

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引用どうも (舎 亜歴)
2006-09-10 19:29:37
こちらの記事を引用していただいてありがとうございます。ブレア首相は昨年5月の総選挙で次の任期前に退陣すると明言していました。こうなるといつ辞めるかと突かれやすくなります。レバノン危機を機に党内左派の突き上げが強まりました。



途上国の援助と温暖化ではアメリカとの一体行動だけでない、ニューレイバーならではの政策が打ち出せました。この辺りは後に再評価されるはずです。



例によって長々と噛み付いてきたコメントに黙っておきたくないのですが、自分のブログ記事もあるので返答は遅れています。それにしても彼、あんなに長々とコメントするくらいなら自分のブログ記事をしっかり書けば良いのにと思います。
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舎 亜歴さんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-09-12 02:01:21
本当はブレア首相の内政についてももっと書きたかったのですが、外交面でのユニークさが目立つと感じたので、特に記事にしてみました。舎亜歴さんの記事があったので、それを紹介して皆さんにみていただきたかったのもこのエントリーを書いた趣旨の一つでもあります。求心力の落ちている現職首相への評価は、今後の歴史的評価として定まるわけがありませんよね。5はどうか分かりませんが少なくとも4にはなるでしょう。



>例によって長々と噛み付いてきたコメントに黙っておきたくないのですが



無責任といえば無責任かもしれませんが、やりとりを見てどちらの方が説得力があるか読者に判断していただきたいという立場で、あえて口を挟まないようにしています。

不快な思いをされることもあろうかと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。
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「イラク組」で“逃げ切り成功”は日豪 (tsubamerailstar)
2006-09-20 12:09:29
豪州の場合、直接的な被害がなかった部分が大きいのでしょうが、豪首相も三期目をうかがう勢いですもんねぇ。



ブレア政権ではファミリー・フレンドリー政策もかなりの効果をあげたようですが、労働関係に関してはまだまだ日本は後進国だと思います。(汗)

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tsubamerailstarさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-09-22 02:18:02
ブレア政権も日の出の勢いの時期であればイラク参戦によるダメージも乗り切れたのでしょうけど…。さすがに飽きがきたということが大きいのでしょう。



>ブレア政権ではファミリー・フレンドリー政策もかなりの効果をあげたようですが、労働関係に関してはまだまだ日本は後進国だと思います。(汗)



安倍新政権の「再チャレンジ」政策がどうなるか要注目です。
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