猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

地球温暖化で台風は「少数精鋭」化

2005-09-21 22:57:46 | 環境・防災・エネルギー
昨年は日本に上陸した台風が史上最多の10個、今年は米国でハリケーン「カトリーナ」が猛威を振るうなど、熱帯性低気圧(台風・ハリケーンなど)の活動が活発化しているように思われる。従来は、地球温暖化と熱帯性低気圧の強さの因果関係は指摘できないとする見解が支配的だったが、気象庁気象研究所や国立環境研究所の最新の研究では、地球温暖化は熱帯性低気圧の発生数を抑制するが勢力を増大させるとしている。すなわち「少数精鋭」化である。以下に、共同通信の記事を引用しておく。


【台風発生減るが勢力強大に 気象研などが解明】
 地球温暖化の進行が台風や集中豪雨の強さと発生頻度に影響を与える詳しいメカニズムが、気象庁気象研究所や国立環境研究所のスーパーコンピューターなどによる解析で20日、明らかになった。
 大気中に含まれる湿気が増えて、ひとたび台風や雨雲が発達すると今以上に勢力が強まり、台風14号や米南部を襲った「カトリーナ」のように大きな被害が頻発する恐れがある。
 一方で、大気の安定度が高まって台風の発生個数そのものは減少。亜熱帯の一部では、季節によって豪雨と渇水に交互に見舞われることも予想されるという。
 研究者は「温暖化に伴う地域ごとの気候変化を見越したきめの細かい防災対策が必要だ」と指摘している。
 気象研気候研究部の吉村純・主任研究官は高性能スパコン「地球シミュレーター」を使い、温暖化が進んだ100年後に台風などの熱帯低気圧がどう変化するか調べた。
(共同通信) - 9月20日9時35分更新

経済的損失は、英国の保険業協会によれば、次のように、日本では台風による損害額が最大で年に約4兆円に達しうると試算されている。

【日本の損害額4兆円近くに 温暖化で自然災害増加】
 地球温暖化が現在のペースで進むと先進国では暴風雨による被害が拡大、日本では2080年までに台風による損害額が最大で年間340億ドル(約3兆8000億円)に達する可能性があるとの予測を英国の保険業協会が16日までにまとめた。
 温暖化による気候変動がもたらす経済的損失を分析した数少ない研究の結果で、同協会は「温室効果ガスが増え続けると、自然災害で経済や社会は大混乱する」と警告。温室効果ガスの排出削減に努めるよう各国政府に求めた。
 同協会の研究チームは、温暖化で各地の気候がどう変わるかを予測した結果と、過去のデータに基づき自然災害と社会的損害を予測する計算式とを組み合わせ、温暖化がもたらす自然災害で2080年までに発生しうる損害額を計算した。
(共同通信) - 7月16日18時36分更新


しかし、大気中の二酸化炭素の量を一定レベルに保ち上昇させないためには、その排出量を現在の50%まで削減しなければならない。これは、残念ながら不可能なことといわざるをえない。今後も経済の急成長が見込まれる中国やインドといった大国からの温室効果ガスの排出が飛躍的に増大する。先進国でも、京都議定書の削減目標である1990年と比較して6~8%減という目標すら達成困難である(日本は達成ほぼ不可能、米国は脱退)。そうはいっても、もちろん新エネルギーの開拓や技術革新を通じて温室効果ガスの削減努力は続けなければならない。これは、政治的な不安定な地域に多く分布している化石燃料への過度の依存から脱却することにより、むしろ地政学的に大きな意味を持っている。また、技術革新や温暖化防止についての国際的ルールは、新たな技術や金融商品(保険や排出権取引など)を生み出すことにより経済活性化の一助となりうる。災害に関しては、最近提唱されている「減災」の考え方で臨むべきであろう。そのためには、一番目の引用記事にあるように、温暖化に伴う地域ごとの気候変化をきめ細かく研究していくしかない。

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