猫研究員の社会観察記

自民党中央政治大学院研究員である"猫研究員。"こと高峰康修とともに、日本国の舵取りについて考えましょう!

露サミットで日本式省エネ策「トップランナー方式」採用呼びかけへ

2006-05-09 16:34:23 | 環境・防災・エネルギー
 7月にロシアのサンクトペテルブルクで開かれるサミット(主要国首脳会議)において、我が国は省エネルギーと環境対策として、「トップランナー方式」の採用を各国に呼びかける予定である。トップランナー方式というのは、1998年に改正された省エネ法に基づくもので、電気製品などの省エネ基準や自動車の燃費基準などを、市場に出回っている機器の中で最高水準の製品に合わせて設定するものである。さらに、同法では、目標達成ができない製造業者及び輸入業者に対して、国が是正勧告を行うことや、従わない業者への罰則を定めている。この方式は、国際的にも環境への取り組みとしては高く評価されている。これをサミットで各国に採用するよう呼びかけることは、日本独自の厳しい基準や技術を伝えることで我が国の環境への取り組みをアピールするよい機会になる。
 ただし、一点だけ指摘しておくならば、トップランナー方式は、実はWTO・GATT法に抵触する可能性がある。すなわち、改正省エネ法に基づく規制は輸入品に対しても適用されるため、WTO・TBT協定に定める「貿易の技術的傷害」と受け取られることもありうる。現にEUが、自動車の燃費規制についてのトップランナー方式に対して「外国車を悪意的に差別するおそれがある」との意見書を提出した事実がある。環境対策は、通商における自由貿易の原則との折り合いを常にうまくつけながら実施していく必要がある。逆に、この折り合いを主要国で議論する契機としても、日本がサミットでトップランナー方式の採用を提唱する意味合いは小さくないと思う。
 技術面では、脱硝装置により窒素酸化物を水と窒素に分解することなどにより燃焼時の窒素酸化物や二酸化炭素などの発生を大幅に抑える「クリーン・コール・テクノロジー(CCT)」という石炭利用の新しい技術を紹介する予定である。化石燃料からの急激な脱却は難しいし、ちょうど、世界経済は原油価格高騰という問題を抱えているところである。同じ化石燃料ではあるが、産出地が原油とは異なる石炭を有効活用することができれば、エネルギー資源供給に関する脆弱性軽減の観点からも望ましい。



(参考記事)
[露サミットで日本式省エネ策を提案へ…性能競争基本に]
 小泉首相は8日、ロシア・サンクトペテルブルクで7月に開かれる主要国首脳会議(サミット)で、省エネルギー対策の一環として、省エネ性能が最も優れた商品を業界全体の基準とする「トップランナー方式」の採用を各国に呼びかける意向を固めた。
 環境に配慮した石炭利用の新技術も紹介し、導入への支援を表明する。原油価格の高騰や地球温暖化が国際的な課題となる中、日本独自の厳しい基準や技術を伝えることで、省エネ分野の先進性を生かした貢献策とする考えだ。
 サミットは7月15~17日に開かれる。エネルギー、教育、感染症対策などが主要議題になる見通しだ。
 特に、エネルギー問題では、原油価格の高騰が世界経済のリスク要因になっている事態を受け、石油生産や輸送、精製能力を高める投資促進などの価格安定策のほか、エネルギー効率の改善策が協議される。
 「トップランナー方式」は、日本では1998年に改正された省エネ法に基づき、自動車や冷蔵庫など21品目で実施され、効果を上げている。首相は、各企業による性能競争をベースにした同方式を、省エネの「切り札」として提案する考えだ。主要国の中では省エネ分野での遅れが目立つロシアを念頭に、同方式導入の前提となる省エネ技術の底上げのため、技術者の派遣なども検討している。
 石炭利用では、脱硝装置により窒素酸化物を水と窒素に分解することなどで、燃焼時の窒素酸化物や二酸化炭素などの発生を大幅に抑える「クリーン・コール・テクノロジー(CCT)」と呼ばれる技術を紹介する。横浜市の磯子発電所で導入されており、日本の進んだ環境技術の代表例として、アジア各国から多くの技術者が見学に訪れている。
(2006年5月9日3時3分 読売新聞)


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
PJさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-11 01:18:54
環境問題は通商問題、つまり各国の利害と密接に関連してくるのでなかなか一筋縄には行かないわけです。本文で紹介したとおり、EUを「地球環境の第一」であるかのごとくとらえるのがいかに実態から懸け離れているか、感じ取っていただければと思います。



>日本の提案するものは何でも、採択されるのが難しいというような話を聞きます。



これは、日本の発信力の弱さによるところが大きいかもしれません。
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いいことなのに。 (PJ)
2006-05-10 11:25:24
賛成してもらうのは大変なんですねぇ。

日本の提案するものは何でも、採択されるのが難しいというような話を聞きます。
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さいごうさんへ (猫研究員。=高峰康修)
2006-05-10 00:08:41
お久しぶりです。コメントありがとうございます。

米国は、実はこういう形の環境対策には意外と積極的で、京都議定書批准拒否から来るイメージとは異なり、ひそかに(というわけでもないのでしょうけど)技術革新を進めています。



>中国などのコストを抑えた製品との競争力が落ちる部分



先進国が同時に導入してしまえば、少なくとも先進国における市場に目を向ける限りでは、そういうものが発生しないのがトップランナー方式の利点でもあり、逆に本文でも述べましたとおり、WTO協定違反の疑いありとの見解を招く原因でもあるのです。何しろ基準に達しない製品は輸入できないことになりますから、先進国市場には中国製品などは基準をクリアしない限りは入れなくなります。
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こんばんは (さいごう)
2006-05-09 22:45:46
お久しぶりです。



 この手の環境問題は日本が積極的にアピールしようとしているところですが、京都議定書の際にもそうだったように米国の支持をいかに取り付けるかにかかっていると思います。



 また、先進国が従う姿勢を見せたとしても、中国などのコストを抑えた製品との競争力が落ちる部分でどのようなカバーをしていくかが今後の問題ではないかと思います。
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