振興銀破たんで初のペイオフ発動、当局は「金融システムへの影響ない」との認識 2010年09月10日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043491520100910
金融庁は10日午前、預金保険法に基づいて日本振興銀行(東京都千代田区)に業務停止命令を出し、破たん処理の手続きに入った。振興銀行が債務超過に陥ったと同庁に申し出たことを受けた措置。預金者1人当たり元本1000万円までとその利息の合計額が預金保険制度により保護されることになるが、それを超える部分は保護の対象から外れる初のペイオフ発動となる。
振興銀行は同日午前に臨時取締役会を開催し、預金保険法に基づく破たん処理を金融庁に申請。同日中に東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行う。小畠晴喜社長によると、8月末時点の債務超過額は1804億円。同行は今年5月に融資業務がずさんだったなどとして業務停止命令を受けており、引当基準などを見直した結果、引当金が1500億円程度増加した。
小畠社長によると、1000万円以上の預金者は約3500人で、預金総額は460億円強。1000万円を超える預金額は約100億円ある。
金融庁によると、振興銀は、貸金業者からの債権買い取りを増やすとともに、親密な大口与信先に対する急激な業容拡大を図る特異なビジネスモデルを遂行した。しかし、十分な与信審査管理を行わなかったため多額の追加引当金が必要となり、今回の経営破たんに陥った。
これを受けて金融庁は、資産の劣化防止など財産保全と預金者の保護を図る必要があると判断。10日から12日まで、一部を除く業務の停止を命じる行政処分を出した。この上で、預金保険法によって預金保険機構を金融整理管財人に選任し、同法74条1項に基づいて金融整理管財人による業務と財産の管理を命じた。
複数の関係筋によれば、振興銀は最近まで資本増強に向けた方策を模索していた。しかし、金融庁からの指摘で不良債権の査定を精査した結果、大幅な債務超過に陥り、これを断念した。
自見庄三郎金融担当相の会見に同席した大塚耕平内閣府副大臣は、銀行法による報告徴求に対して提出された書面で「預金保険法の適用がない前提で、当行の債務超過を解消するに足りる投資をする意向を示した候補者は、現在までのところいない。今後、預金保険法の適用なく、当行の債務超過を解消する投資の提案が得られる見込みもない」と振興銀から報告があったと説明した。
振興銀の業務は今後、預金保険機構の完全子会社である「第二日本承継銀行」に引き継がれ、最終的には受け皿金融機関に引き継がれる見通しとなっている。最終的な受け皿銀行の選定に向けて大塚副大臣は「現時点では白紙。数カ月の間だと考えている」と説明し、遅くとも3年内には探すとした。
<政府・日銀はこぞって金融システムの健全性を強調>
自見庄三郎郵政・金融担当相ら閣僚は同行の特殊性を強調した上で、「金融システムへの影響はない」と預金者らに冷静な対応を呼びかけた。
振興銀は決済用預金や普通預金を取り扱わず、決済機能もない。インターバンク市場からの調達もなく、他の金融機関と形態が異なる。政府は、同行のこうした特殊性を踏まえてペイオフ発動に踏み切ったとみられ、政府・日銀は相次いで「金融システムの安定性に影響を与えることはない」(自見金融相)と表明。自見金融相は、元本が1000万円を超える同行の預金者は3%程度と説明し、「こうした方々には本当に申し訳ない」と述べるとともに、「預金者の方には冷静に対応して欲しい」と呼びかけた。
仙谷由人官房長官も「(振興銀は)預金の状況が定期預金だけで決済を行っておらず、金融システムの安定に影響を与えることはない」と指摘。一方で、金融機関破たん時の預金保護の取り扱いをめぐっては、リスクを分かっていながら預金者がリスクを取らないのは「金融規律から望ましくない」との見解を示し、「原則ペイオフが望ましい」と述べた。
野田佳彦財務相は、ペイオフ発動に際して「善意の預金者に対するきめ細やかな対応」が重要と指摘し、財務省としても金融システム安定を「サポートしたい」と語った。
日銀は、振興銀の破たんについて、日本の金融システム安定性に影響は与えないとの日銀総裁談話を発表。談話では「わが国の金融システムは全体として安定性を維持しており、預金保険制度に関する国民の理解も着実に深まっている」とした上で、「わが国金融システムの安定性に影響を与えることはないと考えている」との見解を示した。その上で、今後とも金融市場や金融システムの動向を注視し、金融システムの安定確保に万全を期すために「政府や預金保険機構との緊密な連携のもと、中央銀行として適切に対応していく」方針を示した。
金融庁が市場原理重視にかじ切る可能性、ペイオフで振興銀の退出決断 2010年09月10日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043568120100910
金融庁は日本振興銀行に対し、史上初めてとなるペイオフ発動に踏み切った。これまでの金融行政は、公的資金注入によって経営不振銀行の延命措置を繰り返してきたが「破綻処理による市場からの退出」を意味するペイオフ発動を決断したことで、市場原理によって金融機関経営を律する方向へ大きくかじを切る可能性が出てきたと指摘する声もある。
<日本振興銀行は渡りに船>
「ペイオフ実施は、金融庁の積年の課題」――。同庁のある幹部はこう話す。法律的には、破たん処理によるペイオフ発動は法律的には担保されてはいたものの、実質的には封印されていたのが現実だ。このため、市場や預金者、金融システムに与える影響を最小限に抑え、滞りなく破たん処理を行い、ペイオフを実施するには「実践が必要」との考えが同庁にはあった。
こうした点で、今回の日本振興銀行は「渡りに船だった」と先の幹部は明かす。自前で決済機能を持たず、預金は定期のみで決済システムにも影響を与えない。預金保険の対象となる預金が全体の97%を占め、大口預金者も少ない。特異なビジネスモデルを持ち、他の金融機関への波及も少ないなどの「条件が整っていた」からだ。
金融庁内では「一部の金融機関の中には、経営にあぐらをかいて改革努力が足りない」(中堅幹部)との問題意識も強くある。経営不振に陥ったらどのように対応するのか。金融危機時には公的資金注入により金融システムの維持が最重要課題となっていたが、国内の金融システムは比較的平常な状態だ。もはや、公的資金注入による銀行救済は市場からの信任を得られなくなってもいる。「破綻処理によって市場から退出してもらう仕組みを、現実化させることが重要」(同)となっていた。
<国際的な金融規制も破綻処理を後押し>
大詰めの段階に来ている金融機関の新しい資本規制「バーゼル 」や、G20の金融制度改革の議論も、破綻処理を後押ししそうだ。新しい自己資本比率の水準とともに、新しい金融制度の仕組みの議論の中では「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル」(大きすぎてつぶせない)の金融行政からの脱却が1つのテーマになっているからだ。「新金融規制は、大きい金融機関でもつぶすためのルールづくり」(投資銀行幹部)ともいえる。例えば、G20の議論の中では、大規模金融機関に対して、自ら破綻時の処理計画を作らせるような案も出ている。米国や欧州の一部の国では、リーマン・ショック以降、金融機関に対する安易な公的資金注入が財政危機を引き起こした経緯がある。
預金保険機構によると、米国で7月までに破綻した金融機関は103件。金融庁のある幹部は「米国のように年がら年中銀行が潰れるのは問題だが、破綻処理が通常のこととして受け入れられるような状態が望ましい」と話している。
ペイオフ、銀行が行動しない口実にならない 2010年09月10日 ロイター 田巻 一彦 ロイターコラムニスト
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17186120100910
日本振興銀行が経営破たんし、国内で初めてペイオフが発動されることになった。乱脈な信用供与が不良債権の増加につながったとみられるが、同銀行が目指そうとした新しい銀行のビジネスモデルの失敗も多くの人に印象付けられたに違いない。
だが、この経営破たんを口実に、メガバンクをはじめ多くの国内銀行が、旧来のビジネスモデルにしがみついているようでは、産業としての銀行業に明るい将来は訪れないだろう。“担保主義”を補完するリスクに見合った金利設定や、新技術の財産的評価など新しい手法にチャレンジすることで、新しい分野にマネーが流入し、活力ある日本の復活につながるはずである。
振興銀の設立にかかわった木村剛・前同行会長は「ミドルリスク、ミドルリターン」のビジネスモデルを追及していたとされる。新しいビジネスモデルを構築するはずが、いつの間にか経営破たんした商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)から債権を買い取ったり、その債権が信託銀行にも売却される二重譲渡であることが発覚。金融庁の検査でずさんな債権管理の実態が判明し、経営破たんへの道を歩んでしまった。
<チャレンジに臆病な邦銀の体質>
金融界には、当初から「ミドルリスク、ミドルリターン」路線は、絵に描いた餅との批判が強かった。銀行関係者の多くが、従来の基準にしたがった担保を提供できない債務者に貸し出し実行することの無謀さを再認識しているに違いない。だが、そのことで新しいビジネスモデルの構築にチャレンジすること自体も、ためらう風潮が強くなるようなら、銀行の成長は難しいと判断せざるを得ない。
日本にとっての「失われた20年」は、銀行の不良債権処理の長い歴史とかなりの期間がオーバーラップする。不良債権処理にあまりにも長期間携わった結果、日本の銀行経営者は、新しいビジネスにチャレンジすることに臆病になり過ぎたのではないだろうか。メガバンクなどの大手邦銀と欧米主要行の収益率を比較すると、欧州系銀行は邦銀の2倍、米系銀は3倍の収益力となっている。特に差がついているのは、リテール部門での利益率と言われている。ここでのビジネスで、新しい試みに挑戦する勇気がなければ、トップラインは伸びず、株価も上昇しないだろう。
ホールセールでも、似た状況が存在する。新しい技術を持ってはいるが、保有する資産が少ないベンチャー型の企業への融資に、国内の銀行勢は概ね慎重だ。リーマンショック後の景気の先行きが不透明感を強めていることを割り引いても、新規参入者への融資に慎重過ぎる姿勢が目立つ。この傾向が続けば、日本国内で企業や産業の新陳代謝は抑制され、いわゆるゾンビ企業だけが生き残りやすいという展開になりやすい。日本の低成長の背景には、こうした構造問題がある。
<弱い収益力とバーゼルIII>
国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は、早ければ12日にも、新銀行自己資本規制「バーゼルIII」で合意する見通しだが、世界の主要行はここで決められた数年の猶予期間内に一定の資本増強を強いられることになる。邦銀の収益力が弱いままでは、この資本増強の過程で、欧米の銀行に比べて資本増強のテンポが緩やかにならざるを得ず、いずれかの時点で欧米銀に対する競争力で劣勢に立たされる事態に直面するだろう。
邦銀に残された時間は、それほど長くない。銀行経営者は、経営のイノベーションに向けて直ちに行動を始めるべきだ。
で、10日の早朝にも日経などのマスメディアに経営破綻がスクープされていた日本振興銀行ですが、法的処理を選ぶにしても『民事再生法を選ぶのか』それとも『会社更生法を選ぶのか』(さすがに山一證券のような自主廃業はないだろうと受け止めていました)個人的には非常に気になっていたのですが、結局民事再生法を選択したようです。
とはいえ、以前発表したリストラ策のような2割程度の店舗数の削減では、100店舗を優に超える今の経営規模の日本振興銀行を引き受けようとするようなもの好きな金融機関なぞ、まず現れないでしょうし、当面は全114店舗のうち16店舗に限って業務を継続するようですが、正直16店舗でも引き受け手が現れるかどうか…。地方店舗が切り捨てになるのはスポンサー候補の負担を少しでも減らすためには必要不可欠でしょう。
融資が受けられなくなるという一部の零細企業や1000万円を超える預金を預けたあげく、預金の一部カットリスクが現実のものとなり慌てている一部の方に対しての同情は(少し冷たいようですが)正直あまり強くありません。
現在ではセーフネット保証制度もかなり整備され、大半の企業は市町村あるいは都道府県の自治体融資(信用保証協会付きの融資)を使ってメインバンクや競合金融機関経由で融資を受けることができるでしょうし、もし保証協会付き融資や地元の信用金庫・信用組合の融資さえ受けられない(当然プロパー融資だけでなく、責任共有を外す5号認定や経済変動対策認定をつけた融資も含めた意味での融資のことです)程までに財務内容が悪いとなれば、それは中長期的にその企業が生き残っていくことが厳しいと最終宣告を付きつけられたようなもの。
預金カットを受ける方というのも、ペイオフ制度そのものは何年も前に導入され十分な周知期間もありましたし、どこかの悪徳商法のごとく、いきなり電話等で連絡してきて何度も『絶対に儲かる』としつこく勧誘してきたというのならばともかく、仮にも銀行と名の付く金融機関が連絡もしないのにそこまでしつこく勧誘していたとは考えにくく、確かに行員も『ペイオフ制度があるから1000万円までは元本と利子が保証されます』といったセールストークはしていたようですが、ペイオフの説明は行っていた以上、顧客の側もそのリスクを理解していたと受け止めるのが妥当で、100歩譲って損害賠償請求を起こすならば国ではなく日本振興銀行相手に提起すべき。必要以上に国民の税金を使うことは一部の金融機関と預金者のモラルハザードを招きかねず、逆に1000万円の預金もできない本当の意味での庶民に対して公正性が保てなくなると個人的には考えます。
そもそも、預金金利が周辺金融機関より大幅に高い(個人的には、キャンペーン金利でも同年物の国債+0.2~0.3%までが経営体力的に限界。それ以上かけ離れた金利はそれ相応のリスクのある企業に貸付をしている可能性が非常に高く、たとえ1000万円以内の全額保護の対象でも引き出しにかなりの時間がかかるなど、それなりの実害を被るリスクがあると考えます)場合は『なぜ、その金融機関はそんな高い金利をつけないと預金が集められないのか?』と裏読みをして欲しいと思いますし、将来ご自身がお亡くなりになり、相続が発生した場合の遺族の側の手続きの煩雑さを考慮すると、例えば『預金総額が1億5000万円あるから、1000万円ずつ15の金融機関に預ける』といった預け方も、後に残される者が迷惑するだけに、本当に信頼のおける金融機関を複数選んで預けるなり、MRFやMMFなど安全性が非常に高い(証券版の普通預金のような)商品に分散預入するなど、それなりの工夫が必要な時代になってきているように思います。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043491520100910
金融庁は10日午前、預金保険法に基づいて日本振興銀行(東京都千代田区)に業務停止命令を出し、破たん処理の手続きに入った。振興銀行が債務超過に陥ったと同庁に申し出たことを受けた措置。預金者1人当たり元本1000万円までとその利息の合計額が預金保険制度により保護されることになるが、それを超える部分は保護の対象から外れる初のペイオフ発動となる。
振興銀行は同日午前に臨時取締役会を開催し、預金保険法に基づく破たん処理を金融庁に申請。同日中に東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行う。小畠晴喜社長によると、8月末時点の債務超過額は1804億円。同行は今年5月に融資業務がずさんだったなどとして業務停止命令を受けており、引当基準などを見直した結果、引当金が1500億円程度増加した。
小畠社長によると、1000万円以上の預金者は約3500人で、預金総額は460億円強。1000万円を超える預金額は約100億円ある。
金融庁によると、振興銀は、貸金業者からの債権買い取りを増やすとともに、親密な大口与信先に対する急激な業容拡大を図る特異なビジネスモデルを遂行した。しかし、十分な与信審査管理を行わなかったため多額の追加引当金が必要となり、今回の経営破たんに陥った。
これを受けて金融庁は、資産の劣化防止など財産保全と預金者の保護を図る必要があると判断。10日から12日まで、一部を除く業務の停止を命じる行政処分を出した。この上で、預金保険法によって預金保険機構を金融整理管財人に選任し、同法74条1項に基づいて金融整理管財人による業務と財産の管理を命じた。
複数の関係筋によれば、振興銀は最近まで資本増強に向けた方策を模索していた。しかし、金融庁からの指摘で不良債権の査定を精査した結果、大幅な債務超過に陥り、これを断念した。
自見庄三郎金融担当相の会見に同席した大塚耕平内閣府副大臣は、銀行法による報告徴求に対して提出された書面で「預金保険法の適用がない前提で、当行の債務超過を解消するに足りる投資をする意向を示した候補者は、現在までのところいない。今後、預金保険法の適用なく、当行の債務超過を解消する投資の提案が得られる見込みもない」と振興銀から報告があったと説明した。
振興銀の業務は今後、預金保険機構の完全子会社である「第二日本承継銀行」に引き継がれ、最終的には受け皿金融機関に引き継がれる見通しとなっている。最終的な受け皿銀行の選定に向けて大塚副大臣は「現時点では白紙。数カ月の間だと考えている」と説明し、遅くとも3年内には探すとした。
<政府・日銀はこぞって金融システムの健全性を強調>
自見庄三郎郵政・金融担当相ら閣僚は同行の特殊性を強調した上で、「金融システムへの影響はない」と預金者らに冷静な対応を呼びかけた。
振興銀は決済用預金や普通預金を取り扱わず、決済機能もない。インターバンク市場からの調達もなく、他の金融機関と形態が異なる。政府は、同行のこうした特殊性を踏まえてペイオフ発動に踏み切ったとみられ、政府・日銀は相次いで「金融システムの安定性に影響を与えることはない」(自見金融相)と表明。自見金融相は、元本が1000万円を超える同行の預金者は3%程度と説明し、「こうした方々には本当に申し訳ない」と述べるとともに、「預金者の方には冷静に対応して欲しい」と呼びかけた。
仙谷由人官房長官も「(振興銀は)預金の状況が定期預金だけで決済を行っておらず、金融システムの安定に影響を与えることはない」と指摘。一方で、金融機関破たん時の預金保護の取り扱いをめぐっては、リスクを分かっていながら預金者がリスクを取らないのは「金融規律から望ましくない」との見解を示し、「原則ペイオフが望ましい」と述べた。
野田佳彦財務相は、ペイオフ発動に際して「善意の預金者に対するきめ細やかな対応」が重要と指摘し、財務省としても金融システム安定を「サポートしたい」と語った。
日銀は、振興銀の破たんについて、日本の金融システム安定性に影響は与えないとの日銀総裁談話を発表。談話では「わが国の金融システムは全体として安定性を維持しており、預金保険制度に関する国民の理解も着実に深まっている」とした上で、「わが国金融システムの安定性に影響を与えることはないと考えている」との見解を示した。その上で、今後とも金融市場や金融システムの動向を注視し、金融システムの安定確保に万全を期すために「政府や預金保険機構との緊密な連携のもと、中央銀行として適切に対応していく」方針を示した。
金融庁が市場原理重視にかじ切る可能性、ペイオフで振興銀の退出決断 2010年09月10日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043568120100910
金融庁は日本振興銀行に対し、史上初めてとなるペイオフ発動に踏み切った。これまでの金融行政は、公的資金注入によって経営不振銀行の延命措置を繰り返してきたが「破綻処理による市場からの退出」を意味するペイオフ発動を決断したことで、市場原理によって金融機関経営を律する方向へ大きくかじを切る可能性が出てきたと指摘する声もある。
<日本振興銀行は渡りに船>
「ペイオフ実施は、金融庁の積年の課題」――。同庁のある幹部はこう話す。法律的には、破たん処理によるペイオフ発動は法律的には担保されてはいたものの、実質的には封印されていたのが現実だ。このため、市場や預金者、金融システムに与える影響を最小限に抑え、滞りなく破たん処理を行い、ペイオフを実施するには「実践が必要」との考えが同庁にはあった。
こうした点で、今回の日本振興銀行は「渡りに船だった」と先の幹部は明かす。自前で決済機能を持たず、預金は定期のみで決済システムにも影響を与えない。預金保険の対象となる預金が全体の97%を占め、大口預金者も少ない。特異なビジネスモデルを持ち、他の金融機関への波及も少ないなどの「条件が整っていた」からだ。
金融庁内では「一部の金融機関の中には、経営にあぐらをかいて改革努力が足りない」(中堅幹部)との問題意識も強くある。経営不振に陥ったらどのように対応するのか。金融危機時には公的資金注入により金融システムの維持が最重要課題となっていたが、国内の金融システムは比較的平常な状態だ。もはや、公的資金注入による銀行救済は市場からの信任を得られなくなってもいる。「破綻処理によって市場から退出してもらう仕組みを、現実化させることが重要」(同)となっていた。
<国際的な金融規制も破綻処理を後押し>
大詰めの段階に来ている金融機関の新しい資本規制「バーゼル 」や、G20の金融制度改革の議論も、破綻処理を後押ししそうだ。新しい自己資本比率の水準とともに、新しい金融制度の仕組みの議論の中では「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル」(大きすぎてつぶせない)の金融行政からの脱却が1つのテーマになっているからだ。「新金融規制は、大きい金融機関でもつぶすためのルールづくり」(投資銀行幹部)ともいえる。例えば、G20の議論の中では、大規模金融機関に対して、自ら破綻時の処理計画を作らせるような案も出ている。米国や欧州の一部の国では、リーマン・ショック以降、金融機関に対する安易な公的資金注入が財政危機を引き起こした経緯がある。
預金保険機構によると、米国で7月までに破綻した金融機関は103件。金融庁のある幹部は「米国のように年がら年中銀行が潰れるのは問題だが、破綻処理が通常のこととして受け入れられるような状態が望ましい」と話している。
ペイオフ、銀行が行動しない口実にならない 2010年09月10日 ロイター 田巻 一彦 ロイターコラムニスト
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17186120100910
日本振興銀行が経営破たんし、国内で初めてペイオフが発動されることになった。乱脈な信用供与が不良債権の増加につながったとみられるが、同銀行が目指そうとした新しい銀行のビジネスモデルの失敗も多くの人に印象付けられたに違いない。
だが、この経営破たんを口実に、メガバンクをはじめ多くの国内銀行が、旧来のビジネスモデルにしがみついているようでは、産業としての銀行業に明るい将来は訪れないだろう。“担保主義”を補完するリスクに見合った金利設定や、新技術の財産的評価など新しい手法にチャレンジすることで、新しい分野にマネーが流入し、活力ある日本の復活につながるはずである。
振興銀の設立にかかわった木村剛・前同行会長は「ミドルリスク、ミドルリターン」のビジネスモデルを追及していたとされる。新しいビジネスモデルを構築するはずが、いつの間にか経営破たんした商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)から債権を買い取ったり、その債権が信託銀行にも売却される二重譲渡であることが発覚。金融庁の検査でずさんな債権管理の実態が判明し、経営破たんへの道を歩んでしまった。
<チャレンジに臆病な邦銀の体質>
金融界には、当初から「ミドルリスク、ミドルリターン」路線は、絵に描いた餅との批判が強かった。銀行関係者の多くが、従来の基準にしたがった担保を提供できない債務者に貸し出し実行することの無謀さを再認識しているに違いない。だが、そのことで新しいビジネスモデルの構築にチャレンジすること自体も、ためらう風潮が強くなるようなら、銀行の成長は難しいと判断せざるを得ない。
日本にとっての「失われた20年」は、銀行の不良債権処理の長い歴史とかなりの期間がオーバーラップする。不良債権処理にあまりにも長期間携わった結果、日本の銀行経営者は、新しいビジネスにチャレンジすることに臆病になり過ぎたのではないだろうか。メガバンクなどの大手邦銀と欧米主要行の収益率を比較すると、欧州系銀行は邦銀の2倍、米系銀は3倍の収益力となっている。特に差がついているのは、リテール部門での利益率と言われている。ここでのビジネスで、新しい試みに挑戦する勇気がなければ、トップラインは伸びず、株価も上昇しないだろう。
ホールセールでも、似た状況が存在する。新しい技術を持ってはいるが、保有する資産が少ないベンチャー型の企業への融資に、国内の銀行勢は概ね慎重だ。リーマンショック後の景気の先行きが不透明感を強めていることを割り引いても、新規参入者への融資に慎重過ぎる姿勢が目立つ。この傾向が続けば、日本国内で企業や産業の新陳代謝は抑制され、いわゆるゾンビ企業だけが生き残りやすいという展開になりやすい。日本の低成長の背景には、こうした構造問題がある。
<弱い収益力とバーゼルIII>
国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は、早ければ12日にも、新銀行自己資本規制「バーゼルIII」で合意する見通しだが、世界の主要行はここで決められた数年の猶予期間内に一定の資本増強を強いられることになる。邦銀の収益力が弱いままでは、この資本増強の過程で、欧米の銀行に比べて資本増強のテンポが緩やかにならざるを得ず、いずれかの時点で欧米銀に対する競争力で劣勢に立たされる事態に直面するだろう。
邦銀に残された時間は、それほど長くない。銀行経営者は、経営のイノベーションに向けて直ちに行動を始めるべきだ。
で、10日の早朝にも日経などのマスメディアに経営破綻がスクープされていた日本振興銀行ですが、法的処理を選ぶにしても『民事再生法を選ぶのか』それとも『会社更生法を選ぶのか』(さすがに山一證券のような自主廃業はないだろうと受け止めていました)個人的には非常に気になっていたのですが、結局民事再生法を選択したようです。
とはいえ、以前発表したリストラ策のような2割程度の店舗数の削減では、100店舗を優に超える今の経営規模の日本振興銀行を引き受けようとするようなもの好きな金融機関なぞ、まず現れないでしょうし、当面は全114店舗のうち16店舗に限って業務を継続するようですが、正直16店舗でも引き受け手が現れるかどうか…。地方店舗が切り捨てになるのはスポンサー候補の負担を少しでも減らすためには必要不可欠でしょう。
融資が受けられなくなるという一部の零細企業や1000万円を超える預金を預けたあげく、預金の一部カットリスクが現実のものとなり慌てている一部の方に対しての同情は(少し冷たいようですが)正直あまり強くありません。
現在ではセーフネット保証制度もかなり整備され、大半の企業は市町村あるいは都道府県の自治体融資(信用保証協会付きの融資)を使ってメインバンクや競合金融機関経由で融資を受けることができるでしょうし、もし保証協会付き融資や地元の信用金庫・信用組合の融資さえ受けられない(当然プロパー融資だけでなく、責任共有を外す5号認定や経済変動対策認定をつけた融資も含めた意味での融資のことです)程までに財務内容が悪いとなれば、それは中長期的にその企業が生き残っていくことが厳しいと最終宣告を付きつけられたようなもの。
預金カットを受ける方というのも、ペイオフ制度そのものは何年も前に導入され十分な周知期間もありましたし、どこかの悪徳商法のごとく、いきなり電話等で連絡してきて何度も『絶対に儲かる』としつこく勧誘してきたというのならばともかく、仮にも銀行と名の付く金融機関が連絡もしないのにそこまでしつこく勧誘していたとは考えにくく、確かに行員も『ペイオフ制度があるから1000万円までは元本と利子が保証されます』といったセールストークはしていたようですが、ペイオフの説明は行っていた以上、顧客の側もそのリスクを理解していたと受け止めるのが妥当で、100歩譲って損害賠償請求を起こすならば国ではなく日本振興銀行相手に提起すべき。必要以上に国民の税金を使うことは一部の金融機関と預金者のモラルハザードを招きかねず、逆に1000万円の預金もできない本当の意味での庶民に対して公正性が保てなくなると個人的には考えます。
そもそも、預金金利が周辺金融機関より大幅に高い(個人的には、キャンペーン金利でも同年物の国債+0.2~0.3%までが経営体力的に限界。それ以上かけ離れた金利はそれ相応のリスクのある企業に貸付をしている可能性が非常に高く、たとえ1000万円以内の全額保護の対象でも引き出しにかなりの時間がかかるなど、それなりの実害を被るリスクがあると考えます)場合は『なぜ、その金融機関はそんな高い金利をつけないと預金が集められないのか?』と裏読みをして欲しいと思いますし、将来ご自身がお亡くなりになり、相続が発生した場合の遺族の側の手続きの煩雑さを考慮すると、例えば『預金総額が1億5000万円あるから、1000万円ずつ15の金融機関に預ける』といった預け方も、後に残される者が迷惑するだけに、本当に信頼のおける金融機関を複数選んで預けるなり、MRFやMMFなど安全性が非常に高い(証券版の普通預金のような)商品に分散預入するなど、それなりの工夫が必要な時代になってきているように思います。