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振興銀、負債総額6194億円 銀行初の民事再生法申請 その2

2010-09-11 06:13:05 | Weblog
振興銀破たんで初のペイオフ発動、当局は「金融システムへの影響ない」との認識  2010年09月10日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043491520100910
 金融庁は10日午前、預金保険法に基づいて日本振興銀行(東京都千代田区)に業務停止命令を出し、破たん処理の手続きに入った。振興銀行が債務超過に陥ったと同庁に申し出たことを受けた措置。預金者1人当たり元本1000万円までとその利息の合計額が預金保険制度により保護されることになるが、それを超える部分は保護の対象から外れる初のペイオフ発動となる。
 振興銀行は同日午前に臨時取締役会を開催し、預金保険法に基づく破たん処理を金融庁に申請。同日中に東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行う。小畠晴喜社長によると、8月末時点の債務超過額は1804億円。同行は今年5月に融資業務がずさんだったなどとして業務停止命令を受けており、引当基準などを見直した結果、引当金が1500億円程度増加した。
 小畠社長によると、1000万円以上の預金者は約3500人で、預金総額は460億円強。1000万円を超える預金額は約100億円ある。
 金融庁によると、振興銀は、貸金業者からの債権買い取りを増やすとともに、親密な大口与信先に対する急激な業容拡大を図る特異なビジネスモデルを遂行した。しかし、十分な与信審査管理を行わなかったため多額の追加引当金が必要となり、今回の経営破たんに陥った。
 これを受けて金融庁は、資産の劣化防止など財産保全と預金者の保護を図る必要があると判断。10日から12日まで、一部を除く業務の停止を命じる行政処分を出した。この上で、預金保険法によって預金保険機構を金融整理管財人に選任し、同法74条1項に基づいて金融整理管財人による業務と財産の管理を命じた。
 複数の関係筋によれば、振興銀は最近まで資本増強に向けた方策を模索していた。しかし、金融庁からの指摘で不良債権の査定を精査した結果、大幅な債務超過に陥り、これを断念した。
 自見庄三郎金融担当相の会見に同席した大塚耕平内閣府副大臣は、銀行法による報告徴求に対して提出された書面で「預金保険法の適用がない前提で、当行の債務超過を解消するに足りる投資をする意向を示した候補者は、現在までのところいない。今後、預金保険法の適用なく、当行の債務超過を解消する投資の提案が得られる見込みもない」と振興銀から報告があったと説明した。
 振興銀の業務は今後、預金保険機構の完全子会社である「第二日本承継銀行」に引き継がれ、最終的には受け皿金融機関に引き継がれる見通しとなっている。最終的な受け皿銀行の選定に向けて大塚副大臣は「現時点では白紙。数カ月の間だと考えている」と説明し、遅くとも3年内には探すとした。

<政府・日銀はこぞって金融システムの健全性を強調>
 自見庄三郎郵政・金融担当相ら閣僚は同行の特殊性を強調した上で、「金融システムへの影響はない」と預金者らに冷静な対応を呼びかけた。
 振興銀は決済用預金や普通預金を取り扱わず、決済機能もない。インターバンク市場からの調達もなく、他の金融機関と形態が異なる。政府は、同行のこうした特殊性を踏まえてペイオフ発動に踏み切ったとみられ、政府・日銀は相次いで「金融システムの安定性に影響を与えることはない」(自見金融相)と表明。自見金融相は、元本が1000万円を超える同行の預金者は3%程度と説明し、「こうした方々には本当に申し訳ない」と述べるとともに、「預金者の方には冷静に対応して欲しい」と呼びかけた。
 仙谷由人官房長官も「(振興銀は)預金の状況が定期預金だけで決済を行っておらず、金融システムの安定に影響を与えることはない」と指摘。一方で、金融機関破たん時の預金保護の取り扱いをめぐっては、リスクを分かっていながら預金者がリスクを取らないのは「金融規律から望ましくない」との見解を示し、「原則ペイオフが望ましい」と述べた。
 野田佳彦財務相は、ペイオフ発動に際して「善意の預金者に対するきめ細やかな対応」が重要と指摘し、財務省としても金融システム安定を「サポートしたい」と語った。
 日銀は、振興銀の破たんについて、日本の金融システム安定性に影響は与えないとの日銀総裁談話を発表。談話では「わが国の金融システムは全体として安定性を維持しており、預金保険制度に関する国民の理解も着実に深まっている」とした上で、「わが国金融システムの安定性に影響を与えることはないと考えている」との見解を示した。その上で、今後とも金融市場や金融システムの動向を注視し、金融システムの安定確保に万全を期すために「政府や預金保険機構との緊密な連携のもと、中央銀行として適切に対応していく」方針を示した。


金融庁が市場原理重視にかじ切る可能性、ペイオフで振興銀の退出決断 2010年09月10日 ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK043568120100910
 金融庁は日本振興銀行に対し、史上初めてとなるペイオフ発動に踏み切った。これまでの金融行政は、公的資金注入によって経営不振銀行の延命措置を繰り返してきたが「破綻処理による市場からの退出」を意味するペイオフ発動を決断したことで、市場原理によって金融機関経営を律する方向へ大きくかじを切る可能性が出てきたと指摘する声もある。
 
<日本振興銀行は渡りに船>
 「ペイオフ実施は、金融庁の積年の課題」――。同庁のある幹部はこう話す。法律的には、破たん処理によるペイオフ発動は法律的には担保されてはいたものの、実質的には封印されていたのが現実だ。このため、市場や預金者、金融システムに与える影響を最小限に抑え、滞りなく破たん処理を行い、ペイオフを実施するには「実践が必要」との考えが同庁にはあった。
 こうした点で、今回の日本振興銀行は「渡りに船だった」と先の幹部は明かす。自前で決済機能を持たず、預金は定期のみで決済システムにも影響を与えない。預金保険の対象となる預金が全体の97%を占め、大口預金者も少ない。特異なビジネスモデルを持ち、他の金融機関への波及も少ないなどの「条件が整っていた」からだ。
 金融庁内では「一部の金融機関の中には、経営にあぐらをかいて改革努力が足りない」(中堅幹部)との問題意識も強くある。経営不振に陥ったらどのように対応するのか。金融危機時には公的資金注入により金融システムの維持が最重要課題となっていたが、国内の金融システムは比較的平常な状態だ。もはや、公的資金注入による銀行救済は市場からの信任を得られなくなってもいる。「破綻処理によって市場から退出してもらう仕組みを、現実化させることが重要」(同)となっていた。
 
<国際的な金融規制も破綻処理を後押し>
 大詰めの段階に来ている金融機関の新しい資本規制「バーゼル 」や、G20の金融制度改革の議論も、破綻処理を後押ししそうだ。新しい自己資本比率の水準とともに、新しい金融制度の仕組みの議論の中では「トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル」(大きすぎてつぶせない)の金融行政からの脱却が1つのテーマになっているからだ。「新金融規制は、大きい金融機関でもつぶすためのルールづくり」(投資銀行幹部)ともいえる。例えば、G20の議論の中では、大規模金融機関に対して、自ら破綻時の処理計画を作らせるような案も出ている。米国や欧州の一部の国では、リーマン・ショック以降、金融機関に対する安易な公的資金注入が財政危機を引き起こした経緯がある。
 預金保険機構によると、米国で7月までに破綻した金融機関は103件。金融庁のある幹部は「米国のように年がら年中銀行が潰れるのは問題だが、破綻処理が通常のこととして受け入れられるような状態が望ましい」と話している。


ペイオフ、銀行が行動しない口実にならない 2010年09月10日 ロイター  田巻 一彦 ロイターコラムニスト
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17186120100910
 日本振興銀行が経営破たんし、国内で初めてペイオフが発動されることになった。乱脈な信用供与が不良債権の増加につながったとみられるが、同銀行が目指そうとした新しい銀行のビジネスモデルの失敗も多くの人に印象付けられたに違いない。
 だが、この経営破たんを口実に、メガバンクをはじめ多くの国内銀行が、旧来のビジネスモデルにしがみついているようでは、産業としての銀行業に明るい将来は訪れないだろう。“担保主義”を補完するリスクに見合った金利設定や、新技術の財産的評価など新しい手法にチャレンジすることで、新しい分野にマネーが流入し、活力ある日本の復活につながるはずである。
 振興銀の設立にかかわった木村剛・前同行会長は「ミドルリスク、ミドルリターン」のビジネスモデルを追及していたとされる。新しいビジネスモデルを構築するはずが、いつの間にか経営破たんした商工ローン大手のSFCG(旧商工ファンド)から債権を買い取ったり、その債権が信託銀行にも売却される二重譲渡であることが発覚。金融庁の検査でずさんな債権管理の実態が判明し、経営破たんへの道を歩んでしまった。

<チャレンジに臆病な邦銀の体質>
 金融界には、当初から「ミドルリスク、ミドルリターン」路線は、絵に描いた餅との批判が強かった。銀行関係者の多くが、従来の基準にしたがった担保を提供できない債務者に貸し出し実行することの無謀さを再認識しているに違いない。だが、そのことで新しいビジネスモデルの構築にチャレンジすること自体も、ためらう風潮が強くなるようなら、銀行の成長は難しいと判断せざるを得ない。
 日本にとっての「失われた20年」は、銀行の不良債権処理の長い歴史とかなりの期間がオーバーラップする。不良債権処理にあまりにも長期間携わった結果、日本の銀行経営者は、新しいビジネスにチャレンジすることに臆病になり過ぎたのではないだろうか。メガバンクなどの大手邦銀と欧米主要行の収益率を比較すると、欧州系銀行は邦銀の2倍、米系銀は3倍の収益力となっている。特に差がついているのは、リテール部門での利益率と言われている。ここでのビジネスで、新しい試みに挑戦する勇気がなければ、トップラインは伸びず、株価も上昇しないだろう。
 ホールセールでも、似た状況が存在する。新しい技術を持ってはいるが、保有する資産が少ないベンチャー型の企業への融資に、国内の銀行勢は概ね慎重だ。リーマンショック後の景気の先行きが不透明感を強めていることを割り引いても、新規参入者への融資に慎重過ぎる姿勢が目立つ。この傾向が続けば、日本国内で企業や産業の新陳代謝は抑制され、いわゆるゾンビ企業だけが生き残りやすいという展開になりやすい。日本の低成長の背景には、こうした構造問題がある。

<弱い収益力とバーゼルIII>
 国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は、早ければ12日にも、新銀行自己資本規制「バーゼルIII」で合意する見通しだが、世界の主要行はここで決められた数年の猶予期間内に一定の資本増強を強いられることになる。邦銀の収益力が弱いままでは、この資本増強の過程で、欧米の銀行に比べて資本増強のテンポが緩やかにならざるを得ず、いずれかの時点で欧米銀に対する競争力で劣勢に立たされる事態に直面するだろう。
 邦銀に残された時間は、それほど長くない。銀行経営者は、経営のイノベーションに向けて直ちに行動を始めるべきだ。 




 で、10日の早朝にも日経などのマスメディアに経営破綻がスクープされていた日本振興銀行ですが、法的処理を選ぶにしても『民事再生法を選ぶのか』それとも『会社更生法を選ぶのか』(さすがに山一證券のような自主廃業はないだろうと受け止めていました)個人的には非常に気になっていたのですが、結局民事再生法を選択したようです。
 とはいえ、以前発表したリストラ策のような2割程度の店舗数の削減では、100店舗を優に超える今の経営規模の日本振興銀行を引き受けようとするようなもの好きな金融機関なぞ、まず現れないでしょうし、当面は全114店舗のうち16店舗に限って業務を継続するようですが、正直16店舗でも引き受け手が現れるかどうか…。地方店舗が切り捨てになるのはスポンサー候補の負担を少しでも減らすためには必要不可欠でしょう。

 融資が受けられなくなるという一部の零細企業や1000万円を超える預金を預けたあげく、預金の一部カットリスクが現実のものとなり慌てている一部の方に対しての同情は(少し冷たいようですが)正直あまり強くありません。
 現在ではセーフネット保証制度もかなり整備され、大半の企業は市町村あるいは都道府県の自治体融資(信用保証協会付きの融資)を使ってメインバンクや競合金融機関経由で融資を受けることができるでしょうし、もし保証協会付き融資や地元の信用金庫・信用組合の融資さえ受けられない(当然プロパー融資だけでなく、責任共有を外す5号認定や経済変動対策認定をつけた融資も含めた意味での融資のことです)程までに財務内容が悪いとなれば、それは中長期的にその企業が生き残っていくことが厳しいと最終宣告を付きつけられたようなもの。

 預金カットを受ける方というのも、ペイオフ制度そのものは何年も前に導入され十分な周知期間もありましたし、どこかの悪徳商法のごとく、いきなり電話等で連絡してきて何度も『絶対に儲かる』としつこく勧誘してきたというのならばともかく、仮にも銀行と名の付く金融機関が連絡もしないのにそこまでしつこく勧誘していたとは考えにくく、確かに行員も『ペイオフ制度があるから1000万円までは元本と利子が保証されます』といったセールストークはしていたようですが、ペイオフの説明は行っていた以上、顧客の側もそのリスクを理解していたと受け止めるのが妥当で、100歩譲って損害賠償請求を起こすならば国ではなく日本振興銀行相手に提起すべき。必要以上に国民の税金を使うことは一部の金融機関と預金者のモラルハザードを招きかねず、逆に1000万円の預金もできない本当の意味での庶民に対して公正性が保てなくなると個人的には考えます。

 そもそも、預金金利が周辺金融機関より大幅に高い(個人的には、キャンペーン金利でも同年物の国債+0.2~0.3%までが経営体力的に限界。それ以上かけ離れた金利はそれ相応のリスクのある企業に貸付をしている可能性が非常に高く、たとえ1000万円以内の全額保護の対象でも引き出しにかなりの時間がかかるなど、それなりの実害を被るリスクがあると考えます)場合は『なぜ、その金融機関はそんな高い金利をつけないと預金が集められないのか?』と裏読みをして欲しいと思いますし、将来ご自身がお亡くなりになり、相続が発生した場合の遺族の側の手続きの煩雑さを考慮すると、例えば『預金総額が1億5000万円あるから、1000万円ずつ15の金融機関に預ける』といった預け方も、後に残される者が迷惑するだけに、本当に信頼のおける金融機関を複数選んで預けるなり、MRFやMMFなど安全性が非常に高い(証券版の普通預金のような)商品に分散預入するなど、それなりの工夫が必要な時代になってきているように思います。

振興銀、負債総額6194億円 銀行初の民事再生法申請 その1

2010-09-11 06:06:56 | Weblog
振興銀、負債総額6194億円 銀行初の民事再生法申請 2010年9月10日 共同
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/business/n_bankruptcy2__20100910_2/story/10kyodo2010091001000594/
 預金保険法に基づく破綻処理に入った日本振興銀行は10日、東京地裁に民事再生法の手続き開始を申請した。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、10年3月末時点の負債総額は6194億円。銀行による初の民事再生法申請となった。負債総額は、1月に経営破綻した日本航空グループの2社に次いで今年3番目の規模。東京地裁は10日、振興銀に対し業務や財産に関する保全処分命令を出した。

「振興銀の融資は命綱」 中小企業、倒産の不安 2010年9月10日 朝日夕刊
http://www.asahi.com/business/update/0910/TKY201009100257.html
 「融資はこれまで通り受けられるのか。借りられなくなったら、経営が行き詰まってしまう」。日本振興銀行から300万円ほどの融資を受けている千葉県の製造業の男性(70)は不安そうに話した。審査が厳しい大手銀行に比べ、多少金利が高くても、短期の資金を素早く貸してくれたのが振興銀だった。「振興銀行がつぶれてしまったら、うちのような中小零細企業はどこからも借りられなくなる」
 東京都内のネット運営会社は、振興銀から3億円を借りている。まだ銀行から返済計画の提出を求められていなかった。同社幹部は「破綻するのではないかと聞いていたが、こんなに早いとは思わなかった」と驚く。「振興銀の融資を命綱にしている中小企業がほとんど。我が社と同様に倒産の危機に陥る融資先が多数出てくるのではないか」と話した。
 また、東京都内の輸入会社は、商工ローン最大手SFCGから数百万円を借りていたところ昨年経営破綻したため、振興銀に借り換えた。「いつも変なところから借りてしまうなという思いだ」と嘆いた。「我々のような零細業者は、こんな金融機関からしか借りることができないのが現状なんです」

「2千万円が消える…」 扉揺すって悔しがる預金者 2010年9月10日 朝日夕刊
http://www.asahi.com/business/update/0910/TKY201009100196.html
 経営破綻を金融庁に申し出た日本振興銀行。東京都千代田区の本店前には、通常営業時の開店時間となる午前9時前から預金者数人が訪れた。9時を過ぎても銀行側の対応はなく、「どうして開かないんだ」と不満の声があふれた。
 本店の電話は朝から留守番電話。再生される音声では、金融庁から処分を受けたことが説明され、今後の預金や融資について自動応答システム(0120・91・1607)にかけるよう促している。
 2千万円ほど預けているという東京都台東区の70代の女性は8日に、満期で解約したいと銀行側に電話で相談した。「手続きに4、5日かかりますよ」と答えられたという。「銀行は安全第一で選ばないとだめなんだね」
 東京都中央区の小伝馬町店で開店を待っていた同区の男性(73)の預金額は3千万円。「2千万円が消える。本当にショックだ」。入り口の扉をガタガタと揺すって悔しがった。預金したのは08年。1年定期で利率は1.3%だった。「利息がよすぎて変だとも思ったが、まさかできたばかりでつぶれるとは。事件が発覚した時に全部おろすべきだった」と悔やむ。
 大阪市北区の梅田店を訪れた大阪府豊中市の無職男性(79)は1050万円ほど預けている。「早めに来れば、1千万円以上も返してくれるのではないかと思った」
 一方、元本1千万円までのペイオフを確認し、少しほっとする人も。小伝馬町店を訪れた印刷会社経営の女性(42)の預金額はちょうど1千万円。「ちょっとのんきに構えすぎていた。こんな思いはもうしたくない」。神戸店に来た神戸市中央区の会社員男性(29)は720万円を預けていた。「メガバンクより数倍高い金利に目がくらんだ。今思えば異常で、『おかしい』と思うべきだった」
 多くの店舗では、銀行側から張り紙以外に説明がなく、集まった預金者が不満を募らせた。横浜市西区の横浜店前では男性行員が「本日は対応ができない。月曜に問い合わせてほしい」と話した。同市の会社員の女性(50)は「預金額は保証内だけど、おろせるか心配になってきた。休みをとって来たのに、なぜ今日休業なのか」といった。
 水戸店の職員通用口のドアをたたいて行員を呼び出したという水戸市内の50代の女性は「手が赤くなるまで(ドアを)たたいた。きちんと説明してくれれば」と怒った。
 福岡市博多区の福岡店では、福岡県内から訪れた50代の女性が窓ガラスを握り拳でたたいて叫んだ。「開けてください、私は顧客です。どうして無視するんですか」
 約1時間後に店内からようやく男性行員1人が現れ、処分内容や今後の店舗再開について知らせる紙を、預金者数人に配ったり、ペイオフの説明をしたりした。
 預金者たちが「どうして対応しないんですか」「いつまで待たせるんですか」と詰め寄ると、頭を下げ続け、「申し訳ありません、いま対応を協議中です」と繰り返した。

振興銀破綻:「どういうことだ」…預金者、行員に詰め寄り 2010年09月10日 毎日夕刊
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100910k0000e020067000c.html
 経営破綻し、預金の払戻保証額が元本1000万円とその利息までとなるペイオフが初めて発動された日本振興銀行。各地の本支店には10日朝、預金の取り扱いを心配する人たちが次々と訪れた。中にはペイオフの預金保護の対象から外れる人もおり、行員に詰め寄ったり、痛切な表情で説明を求めたりした。
 東京都千代田区の本店前には、午前8時過ぎから大勢の報道陣が詰めかけ、警察官が警備にあたり物々しい雰囲気に包まれた。正面の出入り口には、預金保険法に基づき預金者1人当たり1000万円とその利息までは保護されることなどを説明した紙が掲示されたが、いつもは午前9時に開かれるドアは閉ざされたまま。
 報道で知って駆け付けた台東区の70代の不動産賃貸業の女性は「高金利にひかれて昨年、夫が2000万円、自分は400万円を預金した。夫の定期預金の満期はまさに今日」と話した。ペイオフで夫の預金の一部は戻らない恐れがあり、「経営陣にだまされた。老後のためにためたお金なので悔しい」とため息をついた。
 千葉市中央区の千葉店では午前10時半ごろ、預金者の男性(60)が現れ、「どういうことだ」などと行員に激しく詰め寄った。男性は飲食店を営み、約5000万円を預けているという。「事件があった7月以降、4~5回電話をしたが『経営陣が代わるから大丈夫』と言われ、信じた。預金が下ろせなければ店がつぶれる」と憤りをあらわにした。
 さいたま市の大宮店前には午前10時15分ごろ、4、5人の預金者が集まった。外出先でラジオニュースを聞き自転車で駆け付けたという預金者の女性(59)はシャッターをたたき「返してください、お金」と叫んだが、誰も出てこなかった。女性は会社の退職金をマンション購入などに充てるため約3800万円を預金していたといい、「悪夢だ。今からもうこんなにはためられない」と嘆いた。
 福岡市博多区の福岡店前には、午前9時半ごろ、約10人の預金者が集まった。1000万円を預けたという同市南区の無職女性(54)は「老後の資金に、と預金した。なぜ対応しないのか」とガラスをたたきながら大声で抗議。混乱が広がったため、警察官が駆け付け「誠実に対応を」と銀行側に求めたところ、行員が「業務停止命令中で対応できない」と繰り返した。
 神戸市中央区の神戸店に駆け付けた同市北区の無職夫婦(いずれも72歳)は1000万円以上預金しており、「『全額保証する』と言われて、信頼して預けたのだが……」とうなだれた。
◇不透明取引や債権飛ばしの指摘も
 日本振興銀行を巡っては、金融庁がリスク管理状況などを調べるため、09年6月~今年3月に金融検査に入った際、サーバーに保管されていた取引に関する電子メールを意図的に削除するなどしたとして、警視庁が7月、銀行法違反(検査忌避)容疑で木村剛(たけし)前会長(48)や西野達也前社長(55)ら元幹部5人を逮捕、元行員ら4人を書類送検した。警視庁が検査忌避を主導したとみる木村前会長は同罪で8月3日に起訴されたが、起訴内容を否認し、現在も保釈が認められていない。
 同行を巡っては、融資先企業百数十社で構成する「中小企業振興ネットワーク」間での不透明な取引や、不良債権を別会社に移す債権飛ばしが行われたと指摘されている。
 削除されたメールにはこれらの取引に関するものも含まれていたとみられ、警視庁は取引に法令違反がなかったかや、木村前会長の関与の有無について慎重に捜査を続けている。

払い戻し確定1年以上先、複数口座は「名寄せ」でカット 2010年9月10日 産経夕刊
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100910/fnc1009101217021-n1.htm
 日本振興銀行に適用されるペイオフについて、預金の払い戻しなどの手続きをまとめた。
 Q  業務はどうなる。
 A  金融庁の命令で、預金の払い戻しなど振興銀の全業務は10日から12日まで止まり、この間は預金を引き出せない。ただ振興銀は金融機関同士の決済の一部を担う「全銀システム」にも加わっておらず、ほかの金融機関には直接的な影響は及ばないだろう。週明けの13日には16店舗に限って営業を再開する予定だ。
 Q  週明けからの預金の扱いはどうなるか。
 A  振興銀が取り扱っているのは、定期預金のみ。預金の全額が保護される決済用預金はない。振興銀の預金者は、預金保険で保証される元本1千万円とその利息までの払い戻しを受けることができる見通しだ。それを超える額は振興銀の資産状態が分かるまで凍結される。
 Q  凍結分の払い戻しにはどれぐらいかかるのか。
 A  払戻額が確定するのは1年以上先になる見通し。預金保険機構は数週間程度で振興銀のおおまかな資産状態を調べて、概算で払い戻しを始めたい考えだ。最終的な払戻額は、債務超過の規模によって変わる。
 Q  同一人物が1千万円を超える預金を複数の口座に分けている場合はどうなるのか。
 A  「名寄せ」と呼ばれる作業で同一人物の名義の預金は合算されるため、預金の一部カットの対象になる。


振興銀、預金払い戻しに5日程度 13日、受け付け開始 2010年9月11日 
朝日 http://www.asahi.com/business/update/0910/TKY201009100544.html
毎日 http://mainichi.jp/select/biz/news/20100911k0000m020136000c.html
 日本振興銀行(東京都千代田区)が10日、経営破綻(はたん)し、金融庁は初めて「ペイオフ」を発動した。確実に保護される預金は元本1千万円とその利息まで。ただ、利息は場合によって、予定された受取額より下がる可能性がある。
 振興銀は週明けの13日にまず全国の16店で営業を再開し、預金者の払い戻しの申請を受け付け始める。申請からお金を受け取るには「5日ほどかかるのではないか」(金融庁)という。事務手続きに時間がかかるためだ。
 振興銀は定期預金しか扱っていない。預金者は今の利息で満期まで預けられるが、満期前に払い戻しを申請すれば中途解約扱いとなり、利息は下がる。また、振興銀の事業と資産は約8カ月後、「承継銀行」に移される。この際、振興銀の利息は他行より高いため、預金者の同意を得て引き下げられる見通しだ。
 一方、1千万円を超える部分の元本とその利息の返済額は、振興銀の財産がどれだけ残るかなどに応じて決まる。財産が少なければ大幅にカットされる。このカット率の決定などに最終的に1年程度かかるという。財産の概要が分かれば、3~6カ月程度で戻る可能性もある。
 融資を受けている企業は預金保険機構が「健全な借り手」であると判断すれば、引き続き融資を受けられる。健全ではないと判断すれば、融資は止める。
 振興銀の株式は無価値になる可能性が高く、株式を持つ企業は損失処理を迫られる。3月末の株主数は、融資先の企業や個人ら453人。
 同行と関係の深い総合金融サービスのNISグループ(東証1部)は10日、簿価で18億円の株式に加え、長期貸付金などの債権67億円があると発表した。ほぼ全額を損失処理すれば、2010年9月中間決算で最大数十億円の債務超過になる可能性があるという。
 ペイオフや振興銀についての問い合わせは、預金保険機構(03・3212・6030)まで。11日と12日は午前7時から午後8時まで受け付ける。13日からは専用ダイヤルを設置する予定だ。

振興銀経営破綻 定期預金特化で影響は限定的  2010年09月10日 ロイター
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100910/fnc1009100948010-n1.htm
 金融庁が日本振興銀行の経営破綻処理とペイオフ発動に踏み切った背景には、振興銀行の特殊なビジネスモデルと規模の小ささがある。振興銀は経営規模が小さく、定期預金に特化しているため、破綻による混乱は最小限に抑えられる見通しだ。金融システム全体への影響も軽微とみられるが、融資先企業の一部には悪影響が出かねない。
 振興銀は2004年、東京青年会議所のメンバーが中心となって設立された。中程度の金利水準で中小企業に貸し出しを行う一方、手間やコストのかかる普通預金は扱わず、定期預金のみを受け付けるビジネスモデルを採用している。窓口では原則として現金を取り扱っていない。
 このため、ほとんどの預金者は余剰資金を比較的高い金利で運用する目的で定期預金をしているとみられており、「ペイオフ発動で預金の一部が引き出せなくなっても、大きな混乱が起こる可能性は低い」(銀行関係者)という。
 また、振興銀の預金総額は約5900億円で、03年に経営破綻し公的資金が投入された足利銀行などと比べると規模が小さい。金融機関同士の決済に使われる「全銀システム」にも加入しておらず、他の金融機関への影響も限定的だ。
 一方、振興銀から融資を受けている企業の一部には影響が出る恐れもある。金融庁は「善意かつ健全な借り手」への融資の継続を求める一方、「資産内容の悪化を招く貸し出しの実行」は防止すると説明。融資の返済が滞っている企業などは、新たな貸し出しが受けられなくなる可能性がある。