ペイオフ、初の発動 振興銀きょう破綻申請 債務超過1500億円 2010年9月10日 日経
経営再建中の日本振興銀行(東京・千代田)は自力再建を断念し、2010年9月中間決算で1500億円規模の債務超過に陥る恐れがあると、10日に金融庁に申請する方針を固めた。これを受けて同庁は経営破綻と認定、預金を一定額までしか保護しないペイオフを初めて発動する。1預金者あたり「元本1千万円とその利息」まで預金の払い戻しに応じる一方、これを超える部分は支払額が一部カットされる見通しだ。
振興銀は04年に中小企業専門銀行として発足したが、金融庁検査を巡る銀行法違反(検査忌避)容疑で、警視庁が木村剛前会長、西野達也前社長らを逮捕。社外取締役だった小畠晴喜(作家名・江上剛)社長が緊急登板して、業務体制を刷新し、自力再建を目指していた。
関係者によると、振興銀は最近まで資本増強に向けて出資者を探していた。ただ、金融庁に不良債権の査定が甘いと指摘され、改めて精査した。その結果、貸倒引当金の不足が判明。損失計上すると、大幅な債務超過に陥る見通しとなり、増資交渉も断念した。
金融庁は振興銀を破綻認定し、業務停止命令を出す。その上で預金保険機構を金融整理管財人に選び、預金など財産の管理を委ねる。同時に、振興銀は東京地裁に民事再生法の適用を申請する。
金融庁が同行を救済せず、ペイオフに踏み切るのは、預金者や金融システムへの影響が限定的とみているためだ。
ペイオフ発動は1971年に預金保険制度が発足して以来初めて。預金保険法は預金の一定額までしか保護しないことを原則としているが、銀行破綻が相次いだ1990年代の金融危機の際、政府はペイオフを凍結し、預金を全額保護。02年に定期預金についてペイオフ凍結を解除したが、足利銀行が03年に破綻した際には金融システムへの影響を懸念して公的資金を投入し国有化。預金も全額保護した。
直近の振興銀の預金者約11万人のうち、1000万円を超えるお金を預けている預金者は4000人程度で、大半の預金者の預金はすべて保護される。預金総額約6000億円のうち、一部払い戻しされない可能性がある預金は、100億円程度という。
振興銀は一般の銀行と異なり、取り扱う預金の種類が運用目的の定期預金だけで、当座預金や普通預金など決済性預金は扱っていない。このためペイオフに踏み切っても、企業の日々の資金繰りに悪影響を与える恐れは小さいと金融庁はみている。また不良債権比率が極めて高いこともあり、公的資金の投入には国民の理解が得られないと判断したもようだ。
90年代後半からの日本の金融システム不安が収束したことも、ペイオフ実施の背景にある。
預金保険機構の管理下でも、振興銀は預金の払い戻しや契約済みの融資実行など最低限の業務は続ける。そのうえで(1)受け皿銀行を探す(2)見つかるまで業務を引き継ぐブリッジバンク(承継銀行)を活用する(3)清算する――という3通りの選択肢の中で破綻処理を進めていくとみられる。
振興銀口座の97%は全額預金保護 2010年9月10日 日経
金融庁が日本振興銀行を破綻認定し、初のペイオフに踏み切るのは預金者への影響を最小限に抑えられるとの計算がある。
ペイオフとは銀行が経営破綻した場合でも、預金者1人あたり元本1千万円とその利息分まで預金を保護する制度。逆に言うと、1千万円を超える元本とその利息は保護の対象外で、払い戻しが凍結される。
振興銀の場合、3月末時点では全預金(約11万口座、残高約5900億円)のうち、元本1千万円を超える預金は口座数で約4800、金額で687億円、預金保険の対象外の金額は200億円程度。足元では約4000口座、450億円程度に減少。保険でカバーされない金額は約100億円に減っているという。97%の預金口座は全額払い戻しを受けられ、影響が出ない見込みだ。
預金保険機構は週末、複数の口座を持つ人の預金合計額を算出する「名寄せ」を実施、保護対象となる預金額を確定する。週明け以降、預金者は元本1千万円とその利息分まで預金の払い戻しを求めることができる。
元本1千万円超の部分がどの程度カットされるかは地裁が民事再生計画を認可・決定した後に決まる。1千万円超部分の払い戻しが受けられるまで約1年かかる見通しだ。
資金が必要で1年先まで待てない預金者は窓口に申し込めば、一定期間後に予想カット率に基づく「概算払い」も受けられる。予想カット率が5割の場合、1千万円超分が100万円なら50万円を仮払金として受け取る。1年後にカット率が確定した段階で、改めて差額を精算する仕組みだ。銀行から借り入れのある預金者は融資との相殺を申し込むこともできる。
振興銀、拡大路線で不良債権増 不祥事も痛手 2010年9月10日 日経
日本振興銀行が自主再建を断念した最大の要因は、膨大な不良債権が積み上がったことだ。2004年の開業当初に志していた中小零細企業向け小口融資を主体とした事業モデルは、いつの間にか変質。ノンバンクからの債権買い取りや大口融資で拡大路線にカジを切ったことがあだとなり、10年9月中間期で1500億円程度の債務超過に転落する見通しとなった。
振興銀の貸出金総額の7割強(2837億円、09年12月末)は大口融資先で、1社平均約30億円に上る。商工ローン大手SFCGから買い取った貸出債権や、木村剛前会長が主催する中小企業振興ネットワーク加盟企業向け債権がそれに当たる。08年春以降、振興銀の融資は急拡大する。
09年6月に入った金融庁の立ち入り検査は、こうした大口先融資の問題点に切り込んだ。回収可能性を十分検討せず言い値で貸すようないいかげんな実務が横行。査定資料をきちんとそろえてなかったり、経営内容を適切に審査してなかったりするなど、債権管理のずさんさも目立ったという。さらに金融庁は、SFCGからの買い取り債権を舞台に、出資法の上限金利を超す疑いのある融資が存在していることも指摘した。
銀行がこれらの指摘を踏まえ、自己査定を見直した結果、大口融資の半分以上の1600億~1700億円が不良債権となったもようだ。
今夏以降、投資ファンドのネオラインホールディングスなど出資候補も浮上した。だが、不良債権の処理損失が予想以上に膨らんだため、増資交渉は進展しなかった。
09年6月に始まった金融庁の立ち入り検査は10年3月まで異例の長期に及んだ。この過程で振興銀が検査に非協力的で、メールを削除するなど銀行法に抵触する行為も発覚。警視庁は木村前会長、西野達也社長ら経営陣を逮捕した。不祥事による信用低下も出資者探しの痛手となった。
日本振興銀行がとうとう破綻申請をするようです。まあ、経済に強い日経とNHK総合の双方で報道している(朝日でも報道しています)ことから、誤報はまずありえないでしょうし、いよいよ来たな…といった感でしょうか…。後続記事については週末にでもまたコメントを書きたいと思います。
経営再建中の日本振興銀行(東京・千代田)は自力再建を断念し、2010年9月中間決算で1500億円規模の債務超過に陥る恐れがあると、10日に金融庁に申請する方針を固めた。これを受けて同庁は経営破綻と認定、預金を一定額までしか保護しないペイオフを初めて発動する。1預金者あたり「元本1千万円とその利息」まで預金の払い戻しに応じる一方、これを超える部分は支払額が一部カットされる見通しだ。
振興銀は04年に中小企業専門銀行として発足したが、金融庁検査を巡る銀行法違反(検査忌避)容疑で、警視庁が木村剛前会長、西野達也前社長らを逮捕。社外取締役だった小畠晴喜(作家名・江上剛)社長が緊急登板して、業務体制を刷新し、自力再建を目指していた。
関係者によると、振興銀は最近まで資本増強に向けて出資者を探していた。ただ、金融庁に不良債権の査定が甘いと指摘され、改めて精査した。その結果、貸倒引当金の不足が判明。損失計上すると、大幅な債務超過に陥る見通しとなり、増資交渉も断念した。
金融庁は振興銀を破綻認定し、業務停止命令を出す。その上で預金保険機構を金融整理管財人に選び、預金など財産の管理を委ねる。同時に、振興銀は東京地裁に民事再生法の適用を申請する。
金融庁が同行を救済せず、ペイオフに踏み切るのは、預金者や金融システムへの影響が限定的とみているためだ。
ペイオフ発動は1971年に預金保険制度が発足して以来初めて。預金保険法は預金の一定額までしか保護しないことを原則としているが、銀行破綻が相次いだ1990年代の金融危機の際、政府はペイオフを凍結し、預金を全額保護。02年に定期預金についてペイオフ凍結を解除したが、足利銀行が03年に破綻した際には金融システムへの影響を懸念して公的資金を投入し国有化。預金も全額保護した。
直近の振興銀の預金者約11万人のうち、1000万円を超えるお金を預けている預金者は4000人程度で、大半の預金者の預金はすべて保護される。預金総額約6000億円のうち、一部払い戻しされない可能性がある預金は、100億円程度という。
振興銀は一般の銀行と異なり、取り扱う預金の種類が運用目的の定期預金だけで、当座預金や普通預金など決済性預金は扱っていない。このためペイオフに踏み切っても、企業の日々の資金繰りに悪影響を与える恐れは小さいと金融庁はみている。また不良債権比率が極めて高いこともあり、公的資金の投入には国民の理解が得られないと判断したもようだ。
90年代後半からの日本の金融システム不安が収束したことも、ペイオフ実施の背景にある。
預金保険機構の管理下でも、振興銀は預金の払い戻しや契約済みの融資実行など最低限の業務は続ける。そのうえで(1)受け皿銀行を探す(2)見つかるまで業務を引き継ぐブリッジバンク(承継銀行)を活用する(3)清算する――という3通りの選択肢の中で破綻処理を進めていくとみられる。
振興銀口座の97%は全額預金保護 2010年9月10日 日経
金融庁が日本振興銀行を破綻認定し、初のペイオフに踏み切るのは預金者への影響を最小限に抑えられるとの計算がある。
ペイオフとは銀行が経営破綻した場合でも、預金者1人あたり元本1千万円とその利息分まで預金を保護する制度。逆に言うと、1千万円を超える元本とその利息は保護の対象外で、払い戻しが凍結される。
振興銀の場合、3月末時点では全預金(約11万口座、残高約5900億円)のうち、元本1千万円を超える預金は口座数で約4800、金額で687億円、預金保険の対象外の金額は200億円程度。足元では約4000口座、450億円程度に減少。保険でカバーされない金額は約100億円に減っているという。97%の預金口座は全額払い戻しを受けられ、影響が出ない見込みだ。
預金保険機構は週末、複数の口座を持つ人の預金合計額を算出する「名寄せ」を実施、保護対象となる預金額を確定する。週明け以降、預金者は元本1千万円とその利息分まで預金の払い戻しを求めることができる。
元本1千万円超の部分がどの程度カットされるかは地裁が民事再生計画を認可・決定した後に決まる。1千万円超部分の払い戻しが受けられるまで約1年かかる見通しだ。
資金が必要で1年先まで待てない預金者は窓口に申し込めば、一定期間後に予想カット率に基づく「概算払い」も受けられる。予想カット率が5割の場合、1千万円超分が100万円なら50万円を仮払金として受け取る。1年後にカット率が確定した段階で、改めて差額を精算する仕組みだ。銀行から借り入れのある預金者は融資との相殺を申し込むこともできる。
振興銀、拡大路線で不良債権増 不祥事も痛手 2010年9月10日 日経
日本振興銀行が自主再建を断念した最大の要因は、膨大な不良債権が積み上がったことだ。2004年の開業当初に志していた中小零細企業向け小口融資を主体とした事業モデルは、いつの間にか変質。ノンバンクからの債権買い取りや大口融資で拡大路線にカジを切ったことがあだとなり、10年9月中間期で1500億円程度の債務超過に転落する見通しとなった。
振興銀の貸出金総額の7割強(2837億円、09年12月末)は大口融資先で、1社平均約30億円に上る。商工ローン大手SFCGから買い取った貸出債権や、木村剛前会長が主催する中小企業振興ネットワーク加盟企業向け債権がそれに当たる。08年春以降、振興銀の融資は急拡大する。
09年6月に入った金融庁の立ち入り検査は、こうした大口先融資の問題点に切り込んだ。回収可能性を十分検討せず言い値で貸すようないいかげんな実務が横行。査定資料をきちんとそろえてなかったり、経営内容を適切に審査してなかったりするなど、債権管理のずさんさも目立ったという。さらに金融庁は、SFCGからの買い取り債権を舞台に、出資法の上限金利を超す疑いのある融資が存在していることも指摘した。
銀行がこれらの指摘を踏まえ、自己査定を見直した結果、大口融資の半分以上の1600億~1700億円が不良債権となったもようだ。
今夏以降、投資ファンドのネオラインホールディングスなど出資候補も浮上した。だが、不良債権の処理損失が予想以上に膨らんだため、増資交渉は進展しなかった。
09年6月に始まった金融庁の立ち入り検査は10年3月まで異例の長期に及んだ。この過程で振興銀が検査に非協力的で、メールを削除するなど銀行法に抵触する行為も発覚。警視庁は木村前会長、西野達也社長ら経営陣を逮捕した。不祥事による信用低下も出資者探しの痛手となった。
日本振興銀行がとうとう破綻申請をするようです。まあ、経済に強い日経とNHK総合の双方で報道している(朝日でも報道しています)ことから、誤報はまずありえないでしょうし、いよいよ来たな…といった感でしょうか…。後続記事については週末にでもまたコメントを書きたいと思います。