DVDディスク、寿命に格差 数年から「永遠」まで 2008年02月09日 朝日夕刊
http://www.asahi.com/business/update/0209/TKY200802090125.html
子どもの幼い頃のデジタル画像が、成人式を迎える頃には見られなくなっているかもしれない――。デジタルカメラで撮った画像を保存するDVDディスクは、製品によっては数年で劣化してデータを読み出せなくなる可能性がある。経済産業省所管のデジタルコンテンツ協会(東京)の実験で浮かび上がった。注意してディスクを選び、かつ定期的な点検も欠かせないようだ。
■出荷段階で不良品も
旅先の風景や家族の写真を撮るのが趣味の横浜市の男性(36)は、デジタルカメラの画像をDVDディスクに保存している。量販店で「20枚で1500円程度」でまとめ買いすることが多い。「ディスクをみても高価なものとの違いはよくわからない」
デジタルコンテンツ協会は、DVDディスクの寿命を推定する方法を確立する目的で、03年から4年かけて国内市販の18ブランドについて実験した。ブランドの優劣を評価するためではないので、実験結果でブランド名は明確にしていない。
DVDの規格は、ディスク内で書き込み・読み出しができないエラー部分が一定の基準を下回るように求めている。協会は、劣化が早い高温の下にディスクを置き、何年すればその基準を超えるのかを推計した。
基準を上回れば、読み出せないリスクは高まる。品質保持の観点から、実験では「寿命」と厳しく位置づけた。
実験結果はかなりのばらつきが出た。実験前からエラーが基準値以上だったものは、出荷段階から規格を満たしていなかったとみられる。同じブランド名の製品でも品質に差が出るケースもあった。
逆に品質の良さが実験の想定を超えたため、寿命を「永遠に劣化しない」としたのもあった。
外観が同じように見えても、素材や製造工程で差が出る。悪い素材だと腐食が進みやすかったり、水分がディスク内部に入り込みやすかったりするという。
実験をまとめた渡部篤美・元日立マクセル技術顧問は「早く劣化するものがこんなにあるとは驚いた。品質に差があることを認識してほしい」。
ただ、厳しい結果が目立った台湾ブランドの製品も急速に品質を高めているようだ。国内外のDVDディスクを扱うある卸会社は「10年前までは台湾製品が劣っていることもあったが、今は日本メーカーから生産委託される台湾メーカーもあり、素材も技術も差がなくなっている」。
■補正機能、劣化気づかず
国内メーカーの中には、独自の劣化実験の結果をカタログなどに示して、品質の高さをアピールしているところもある。しかし、DVDは普及してからそう長くたっていないだけに、劣化に関するユーザーの関心はまだ高くない。
家電量販店ヨドバシカメラの佐々木秀樹さんは「ブランドで選ぶ人は多いが、寿命まで意識している客は少ない。ディスクが劣化して読み出せないという被害はまだ少ないようだ」という。
理由は、ディスク自体や再生機器のデータ補正機能のためだ。エラーによる不明情報がわずかなら、周辺の情報を基に復元できる。だが、劣化が進めばその機能で補いきれなくなり、読み出せなくなることもある。渡部さんは「今は画像が鮮明でも補正機能のおかげ。ディスク内部では劣化が少しずつ進んでいることに注意してほしい」。
長期保存に不安の声もあるDVDだが、「プロ」の世界では、「現時点では最善」として、電子データの保存方法として主流になりつつある。
電子文書管理のシステム開発を手がけるマスターマインド(本社・長野県塩尻市)は重要データのDVDへの保存・管理を支援する機械を06年に発売した。名付けて「30年保存システム」。「ディスクを入れると劣化の度合いをチェックし、進んでいれば警告してくれる」というものだ。
顧客には使用ディスクを指定する。デジタルコンテンツ協会の実験で推定寿命が100年以上と出たものだ。おおまかに見て、その3分の1ぐらいの期間の保存が可能とアピールする。現在は主に民間企業に納めているが、官公庁も採用を検討しているという。
宮内正・営業技術部長は「30年を保証したわけでなく、お客様がディスク選びと定期的な点検を行って管理した場合のこと」と断りつつ、「現時点での信頼性や経済性を考えると、DVDに長期保存する方法がいまのところベスト」と話す。
05年に「e―文書法」が施行され、民間企業は、法律で保管が義務づけられた財務や税務関係の文書を電子データで保存してもよくなった。これを受けてDVDでデータを長期保存する方法自体が日本工業規格(JIS)で標準化された。
規格では、ディスクは2枚つくる ▽3年に一度、エラーが基準以下かどうかをチェック ▽オフィス内で保管する場合は温度5~30度、湿度15~80% ▽暗い場所に置く――などと定めている。
世間では東芝が新世代DVD規格「HD―DVD」から撤退を決めたことで大騒ぎになっているようですが、こちらはディスクの側の問題。
う~ん。一部のDVDディスクには質が劣るものもあるとは聞いていましたが、たった数年でデーターが読み出せなくなるというのでは、もはや長期保存媒体とは到底呼べませんし、『極端に安いものさえ使わなければ大丈夫』と思っていただけにショッキングな報告が入ってきました。
しかも、恐ろしいことにDVDの場合は、名の知れたメーカー製だからといって、必ずしも高性能とは限らないようで、しかも途中までは補正機能でカバーするため、ビデオテープのように徐々に画像が劣化するわけではなく、ある日突然画像そのものが見れなくなる可能性があるだけに、非常に怖い話だと思いますし、これでは数カ月おきに作り直すパソコンのバックアップならばまだしも、一生モノとして保存したつもりの結婚式や子供のイベントを収録した大切な内容の収録物の場合、複数枚コピーをとり、片方は定期的にコピーを取り差し替えていくなど、個人としても何らかの対策は必要そうですね。
とはいえ、DVDの場合、ビデオと異なり、簡単にダビングできるダブルビデオデッキのような存在などありませんし、いずれはこういった長期保存を必要とするDVDを定期的に作り直す民間業者も必要とされてくるのではないでしょうか。
マスターマインドの機械なんて、個人が手を出せるほどお手軽な値段でもないでしょうし、例えば、周囲にあるカメラ屋さんが、一定品質以上のDVDのみを使用して、10年保証サービスを引き受けるなど、貴重な映像を確実に残し続けることができるシステムが当たり前のように受け入れられる世の中になってくれると良いんですけどね…。
http://www.asahi.com/business/update/0209/TKY200802090125.html
子どもの幼い頃のデジタル画像が、成人式を迎える頃には見られなくなっているかもしれない――。デジタルカメラで撮った画像を保存するDVDディスクは、製品によっては数年で劣化してデータを読み出せなくなる可能性がある。経済産業省所管のデジタルコンテンツ協会(東京)の実験で浮かび上がった。注意してディスクを選び、かつ定期的な点検も欠かせないようだ。
■出荷段階で不良品も
旅先の風景や家族の写真を撮るのが趣味の横浜市の男性(36)は、デジタルカメラの画像をDVDディスクに保存している。量販店で「20枚で1500円程度」でまとめ買いすることが多い。「ディスクをみても高価なものとの違いはよくわからない」
デジタルコンテンツ協会は、DVDディスクの寿命を推定する方法を確立する目的で、03年から4年かけて国内市販の18ブランドについて実験した。ブランドの優劣を評価するためではないので、実験結果でブランド名は明確にしていない。
DVDの規格は、ディスク内で書き込み・読み出しができないエラー部分が一定の基準を下回るように求めている。協会は、劣化が早い高温の下にディスクを置き、何年すればその基準を超えるのかを推計した。
基準を上回れば、読み出せないリスクは高まる。品質保持の観点から、実験では「寿命」と厳しく位置づけた。
実験結果はかなりのばらつきが出た。実験前からエラーが基準値以上だったものは、出荷段階から規格を満たしていなかったとみられる。同じブランド名の製品でも品質に差が出るケースもあった。
逆に品質の良さが実験の想定を超えたため、寿命を「永遠に劣化しない」としたのもあった。
外観が同じように見えても、素材や製造工程で差が出る。悪い素材だと腐食が進みやすかったり、水分がディスク内部に入り込みやすかったりするという。
実験をまとめた渡部篤美・元日立マクセル技術顧問は「早く劣化するものがこんなにあるとは驚いた。品質に差があることを認識してほしい」。
ただ、厳しい結果が目立った台湾ブランドの製品も急速に品質を高めているようだ。国内外のDVDディスクを扱うある卸会社は「10年前までは台湾製品が劣っていることもあったが、今は日本メーカーから生産委託される台湾メーカーもあり、素材も技術も差がなくなっている」。
■補正機能、劣化気づかず
国内メーカーの中には、独自の劣化実験の結果をカタログなどに示して、品質の高さをアピールしているところもある。しかし、DVDは普及してからそう長くたっていないだけに、劣化に関するユーザーの関心はまだ高くない。
家電量販店ヨドバシカメラの佐々木秀樹さんは「ブランドで選ぶ人は多いが、寿命まで意識している客は少ない。ディスクが劣化して読み出せないという被害はまだ少ないようだ」という。
理由は、ディスク自体や再生機器のデータ補正機能のためだ。エラーによる不明情報がわずかなら、周辺の情報を基に復元できる。だが、劣化が進めばその機能で補いきれなくなり、読み出せなくなることもある。渡部さんは「今は画像が鮮明でも補正機能のおかげ。ディスク内部では劣化が少しずつ進んでいることに注意してほしい」。
長期保存に不安の声もあるDVDだが、「プロ」の世界では、「現時点では最善」として、電子データの保存方法として主流になりつつある。
電子文書管理のシステム開発を手がけるマスターマインド(本社・長野県塩尻市)は重要データのDVDへの保存・管理を支援する機械を06年に発売した。名付けて「30年保存システム」。「ディスクを入れると劣化の度合いをチェックし、進んでいれば警告してくれる」というものだ。
顧客には使用ディスクを指定する。デジタルコンテンツ協会の実験で推定寿命が100年以上と出たものだ。おおまかに見て、その3分の1ぐらいの期間の保存が可能とアピールする。現在は主に民間企業に納めているが、官公庁も採用を検討しているという。
宮内正・営業技術部長は「30年を保証したわけでなく、お客様がディスク選びと定期的な点検を行って管理した場合のこと」と断りつつ、「現時点での信頼性や経済性を考えると、DVDに長期保存する方法がいまのところベスト」と話す。
05年に「e―文書法」が施行され、民間企業は、法律で保管が義務づけられた財務や税務関係の文書を電子データで保存してもよくなった。これを受けてDVDでデータを長期保存する方法自体が日本工業規格(JIS)で標準化された。
規格では、ディスクは2枚つくる ▽3年に一度、エラーが基準以下かどうかをチェック ▽オフィス内で保管する場合は温度5~30度、湿度15~80% ▽暗い場所に置く――などと定めている。
世間では東芝が新世代DVD規格「HD―DVD」から撤退を決めたことで大騒ぎになっているようですが、こちらはディスクの側の問題。
う~ん。一部のDVDディスクには質が劣るものもあるとは聞いていましたが、たった数年でデーターが読み出せなくなるというのでは、もはや長期保存媒体とは到底呼べませんし、『極端に安いものさえ使わなければ大丈夫』と思っていただけにショッキングな報告が入ってきました。
しかも、恐ろしいことにDVDの場合は、名の知れたメーカー製だからといって、必ずしも高性能とは限らないようで、しかも途中までは補正機能でカバーするため、ビデオテープのように徐々に画像が劣化するわけではなく、ある日突然画像そのものが見れなくなる可能性があるだけに、非常に怖い話だと思いますし、これでは数カ月おきに作り直すパソコンのバックアップならばまだしも、一生モノとして保存したつもりの結婚式や子供のイベントを収録した大切な内容の収録物の場合、複数枚コピーをとり、片方は定期的にコピーを取り差し替えていくなど、個人としても何らかの対策は必要そうですね。
とはいえ、DVDの場合、ビデオと異なり、簡単にダビングできるダブルビデオデッキのような存在などありませんし、いずれはこういった長期保存を必要とするDVDを定期的に作り直す民間業者も必要とされてくるのではないでしょうか。
マスターマインドの機械なんて、個人が手を出せるほどお手軽な値段でもないでしょうし、例えば、周囲にあるカメラ屋さんが、一定品質以上のDVDのみを使用して、10年保証サービスを引き受けるなど、貴重な映像を確実に残し続けることができるシステムが当たり前のように受け入れられる世の中になってくれると良いんですけどね…。