業務日誌

許せないヤツがいる 許せないことがある
だから倒れても倒れても立ち上がる立ち上がる
あいつの名はケアマネージャー

高瀬舟

2009年08月28日 | 業務日誌
※ 『仏』って『ホトケ』?『フランス』?


ガキんちょの夏休みの読書感想文用の本を買いに行き、オビに
『中学生はこれを読め』
と書いてある短編名作集をチョイス。
「檸檬」とか「蜜柑」にまじって、森鴎外の『高瀬舟』がありました。

○年ぶりにナナメ読み。
○歳の頃には全然感じることのなかった感情がフツフツとわいてきます。


私の担当する利用者:トラさん(仮名)要介護5。
御年なんと97歳、全利用者中堂々の最高齢。
もとはキリリとしたカッコいいばあちゃんだったそうだけど、私が担当になった頃にはすでに認知症で、好きだった手芸も写経もほとんどできなくなってた。
保険業自営の長男夫婦と同居。
長男もすでに70歳を超えています。
1番やっかいなのは、この家族が、ウチの法人と古くからのつきあいがあり、いわばVIPであるところ。
つか、なんで私ってこんなケースばっかなの。

トラさんは94歳のとき大腿骨を骨折。
接骨院をやってる次男のすすめで、なんと手術とリハビリをし、歩行できるようになりました。
94歳で大腿骨骨折をopeなんて、あまりしませんよね。
96歳の去年、何度目かの誤嚥性肺炎の末、胃ろう造設。
私が探した老健にスライドして、そのまま特養入所待ちになるだろうと思ったら、どうしても経口摂取の訓練をしたい長男と老健とでトラブルになり、1ヶ月後に在宅復帰。
以来デイケアと特養ショートを月の半分ペースで交互に利用していました。
排痰も出来なくて肺炎⇒入院をくり返すにもかかわらず、抗生剤投与で何度も立ち上がる不死身のカラダ。
懲りない長男は経口からの摂取にこだわり続けていたためデイケアではナースの悩みのタネでした。
私はなかばムリヤリ訪看を入れて吸引の指導や胃ろうケアをしてもらうことにしましたが、その矢先、先月、尿路感染から熱発、残尿が原因であることがわかり、再び数日の入院後尿カテ留置に。
以来訪看の仕事内容に膀胱洗浄が加わりました。
これも最初長男がやるといって聞かなかったのですが、その手技の衛生状態の悪さに震え上がった嫁、ウロ科のドクター、訪看Nsの執拗な説得にてなんとかその仕事は取り上げました。

本人はもう朦朧としています。
なのに長男、熱がなければデイケアによこすんです。
体調がよければショートを組むんです。
主治医はあきらめて「(家族の)好きなようにさせてやれ」としか言わない。
自宅で安静に過ごさせてあげればいいものを、誰がなんと言おうと長男は
「家で寝ていると寝たきりになってしまう」
と聞き入れなしです。
まだ歩けるようになる、クチからものが食べられるようになる、と信じているんです。
97歳だよ、オイ。気持ちはわかるけどムリだってば。

そしておととい。
デイケアからの帰宅後訪看訪問、家族から
「よく眠っています」
と聞かされてNsがトラさんの顔を覗き込み、眠っているトラさんのクチ、鼻からの気流が、ときどき20秒近くも停止しているのを確認。
なんと無呼吸状態です。
酸素量も悪い。意識もほとんどない。
今度は鼻にカテーテルか、一体何本管(くだ)を通せばいいんだ、と一瞬、いや、それよりなにより『こりゃこのまま息しなくなるんじゃねーの』とナースは思ったそうです。
はっ、こりゃいかん、検死になってしまう。
慌てて主治医に往診を依頼したところ、ホームドクターが10分で到着。
なんとトラさんは主治医をみるなりにっこりし、
「ああ、せんせい」
と息を吹き返し(てしまい)ました。
何度復活すれば気が済むというのか。もしや不死身妖怪か、このヒト

うーん、もう高齢ですからねー、こういうこともそりゃありますよ、と主治医。
訪看ナースは主治医に、必死に“安静にしなさいと言ってもらいたい光線”を送り続けましたが、主治医はその熱視線に気付かず、

このごろはどうやって過ごしてるの?え?デイケアに行ってるの?
うーん、寝かせてもらうだけなら行ってよし。

と余計なことを言いました。
寝かすだけのデイケアってなによ、と訪看ナースは思いましたが、そこは看護師、主治医の御言葉にクチを差し挟むことなど出来ません。

その話を聞いて驚いたのはデイケアナース。
安静に、と静養室に寝かせたとしても、5分10分は目を離すことがある。
その間にもし呼吸が停止していたら------------------!!
お願いハリケンさん、もうデイケアには行くなと家族に言ってよ。
--------------そう言われても困ります。
受け入れの可否はデイケア側から家族に言って下さい。
もしものときの話も家族と直接して下さい。
私はもう何度も、家族と話をしました。
それでもどうすることも出来ないんです。

翌日はさすがに家族もデイケアを休ませましたが、明日はデイケアによこすそうです。
本気か、この長男。
あなたの母親はもう自宅⇔デイケアの移動ですら衰弱していくんですよ。

仏壇にろうそくを点していて、5分間目を離したうちにいつの間にか火が消えていた。
家族はただ、自分の家でそんな状況になるのがイヤなのでトラさんをデイケアによこしているだけのような気もします。
私、これでも、利用者本人よりのケアマネでありたいと思って常日頃やってますが、これホントに難しい問題です。

トラさん、お願いですから、私に教えて下さい。
ゆっくり休みたいですか。
それともあなたの大事な長男が、必死であなたの介護をしているところをもっと見ていたいですか。