Takekida's log

千里の道も一歩から

保育崩壊の衝撃

2015-05-23 22:48:33 | Books
セントレアトライアスロンまで2週間です。レース距離の練習すらままならないのが現状ですがやれるだけのことはやって臨みます。
ルポ 保育崩壊 (岩波新書)
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岩波書店


 待機児童の問題もあって保育は買い手市場の状態です。統計的に見た目に出てくるのは待機児童数なのでその数字がすべてのように見られてしまうのですがその陰で犠牲になっているのは数字では測りにくい保育士のものの質と保育士の労働条件という問題です。特に2000年からの株式会社の参入と2006年からの幼保一元化、こども園の開始で大きく保育そのものが変わってきているようです。子供が放置されていたり散歩にすら連れて行ってもらえない施設、子供の口に食事を詰め込む日常、親とイベントへの対応でバーンアウトする保育士など取り上げられている実情は衝撃的でした。
 保活という言葉があるように保育園はがんばっても入れるか入れないかわからないという状態というのがほとんどでそもそも選べるような状況にはありませんし、飲食店のように評判で淘汰されるというのはよほどのことが無い限りは無いはずです。 そもそも質自体も比較は難しいところでしょうし、何より直接のサービス享受者である子供本人から声を上げにくいというのもあるでしょう。
 また保育園では新規参入する株式会社のようなところでは経験が浅い若い先生が多い傾向があるようです。都心ではビジネスチャンスとばかりに保育園の建設ラッシュが起こっておりなおさらその傾向は加速されそう。 実際働いている保育士は37万人(2013年)それに対して資格がありながら働いていない保育士は60万人以上とも言われており、勤務体系からも時短やパートでの働き方が難しく出産後家庭と両立しながら続けていくのがきつい仕事だというのが一つの背景にありそうです。子育てと両立するために働いているひと自らが両立できないというのは何とも皮肉な話。あとは現実的に責任の重さと拘束時間の割には報酬そのものが低いということもありそうでベテランを雇おうとすれば人件費も増えてくるというのもあるでしょう。
 もちろん民間でも公立だろうが公立という概念にとらわれずに志を以て保育、指導している施設はいっぱいあるのでこれがすべてではないというのは言えますがこういったひずみが起きつつあるというのは現実として受け止めておく必要があるのかと思います。
 個人的には教育や保育という現場には普通の仕事で求められるような効率という概念からは少し距離を置いて考えなくてはいけないのだと思います。時間はかかってもいかに子供と辛抱強く向き合ってもらえて大人との信頼関係を築けるかということがその後の人生で自尊心を育てられるかというポイントになるのかなと思います。保育という過程で言えば2-3歳は自意識が出来始めてイヤイヤ期の盛りですがたとえ子供の言うとおりにしなかったとしてもこの時期にどれだけいやという気持ちを受け止めてあげられるかというのは大きいのかと感じます。こういった子供の接し方というのは親はプロではないですし保育士の方も教育を受けているといってもマニュアル通りになるものではないので先輩の話を聞いたり、真似たり、アドバイスを受けたりして育っていくものということを考えればやっぱ労働環境の改善というのも必須だと思ってしまいます。保育の話はやや介護の現場とも似たようなところはあります。
 保育費用は2004年から一般財源化され、100%地方自治体の負担となりました。これでは自治体の負担を減らす方向にしか進んでいきません。そもそも利益や効率だけが追及されるべきでないところには国が介在すべきと思うのですが。人口が減ることの問題を少しでも食い止めようと思ったら働き手を増やすのも一手で夫婦共に働いうてもらって子供も産んで育てることのできる環境が必要なのだと思います。働きつつ子育てをサポートできる環境をそろえることが出来ればなによりの少子化対策になるでしょうが…


 
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