学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

青木正美編『夢二ヨーロッパ素描集』

2010-02-06 07:30:23 | 読書感想
昨夜は、また頭痛に悩まされました。どうも今年は頻繁に頭痛が起きて困ります(泣)

竹久夢二(1884~1934)の素描集を読んでいます。素描、すなわちスケッチですね。夢二は晩年にアメリカ、ヨーロッパへと渡航していますが、『夢二ヨーロッパ素描集』は、その際に素描されたものを紹介しています。

夢二の描く女性は、どことなくかげりがあって、憂鬱な表情をしています。夢二は浮世絵から構図などを吸収したそうですが、浮世絵にはない「暗さ」というものを持っています。女性たちの憂鬱な表情はどこから来るものなのか、どうも私にはわからないのですが、近代という時代への不安ではないか…とわかったようなわからないような言葉で自分を納得させています(苦笑)そう、夢二の描く女性にはそんな特徴がありますが、実際のところ、私はあまり好きではないのです。どうも見ていると儚すぎて…。

といっても、私は夢二の描く女性がみな苦手なわけではなく、ほんのときどき見られる女性の笑顔を描いた作品が好きなのです。たとえば《九連環》、とても楽しそうに踊る女性の横顔。すごく素敵だと思います。明るい表情をした女性の表情はとても魅力的です。話は最初に戻って、このヨーロッパの素描集には、そうした明るい女性の表情が多く見られます。人生を謳歌しているというのでしょうか。とても見ていて気持ちが良くなります。

素描を見ると、作家の意図していることが読み取れる場合があります。夢二の素描、なかなか興味深いものがありますね!いつもと違う夢二の表情が見られるようで、面白い本だと思います。

●青木正美氏編『夢二ヨーロッパ素描集』 東京堂出版 1996年
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岩手で見たもの

2010-02-04 19:59:21 | 展覧会感想
私は年に1、2回、岩手県は盛岡の街を訪れて、北国の空気を楽しみます。街の真ん中をゆらりと流れる北上川、雫石川の両川、遥かなる岩手山、苔むす盛岡の古城、そのどれもが私にとって魅力的です。

けれども、盛岡に来たことを強く実感させてくれるのは、岩手県立美術館で所蔵している舟越保武の彫刻です。あの世にも美しい女性たちのほほえみが、まるで私の再訪を歓迎してくれているかのように感ぜられるのです。と書くと、私に妄想癖があるように思われそうですが、こういう作品との付き合い方があっても悪くないかなと(笑)

付き合い方、という点でもう1つ。岩手県立美術館の常設は充実していて、特に舟越、松本竣介、萬鉄五郎は別室でもって紹介されています。私は萬鉄五郎室へ入り、何点かの自画像を見てゆく。代表作《赤い目の自画像》、これを長く見ていると眼が痛くなる。とにかく赤が強い。何といっても自画像の目の中まで赤いですから、これはおだやかでない。以前見たとき、私の精神状態は非常に疲れていました。そのせいか、萬のこの絵と自分が重なり合って、この自画像は萬でもあり、私でもある、と感じたのです。ところが、今になって絵の前に立って眺めてみると、どうも笑ってしまいたくなる。絶望感がありすぎて、逆に滑稽に見えてしまったのです。絵を見るときの心境によって、ものの見方が大きく変わることを久しぶりに実感しました。ただ…これは萬の新しい切り口になるかもしれないという、不確かな感覚も同時に持ちながら…。

岩手で見たもの、舟越と萬。次に来たときにも、舟越の彫刻は歓迎してくれるでしょうか、萬にユーモアを感じるのでしょうか、怖くもあり、楽しみでもあります。
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鬼頭宏氏『文明としての江戸システム』

2010-02-02 21:06:38 | その他
眠い目をこすりながらカーテンを開けると、外はまさに銀世界でした。私が住む地域は、ほとんど雪が降らないため、銀世界になるのは珍しいこと。今日は徒歩で出勤しましたが、いつもとは違う景色に見とれてしまいました。雪もあまり積もらなければいいものですね(笑)

講談社学術文庫から出版されている「日本の歴史シリーズ」、これは最新版の日本史研究書なのでとても面白く読めます。自分が学生時代に習ったことが旧説になっていたり、当時は関心の全く無かったところが今は興味深く読めたりと、研究が進み、歴史が動いていることを改めて感じました。

今日ご紹介するのは『文明としての江戸システム』、シリーズ第19巻目です。近頃、「エコ」という視点で江戸時代が見直されていますね。江戸には何百万人と住んでいたのに、街はとても綺麗だった。いわゆる「もったいない」の精神を持っていた人々の意識は高く、ほとんどのものをリサイクルして活用し、それをまわすだけの職業もあった。よく同時代のパリやロンドンと比較され、いかに江戸が素晴らしかったのかが語られることがあります。しかし、それが行き過ぎて、江戸時代をあまりに理想化しすぎているんじゃないか、という話しも出てきています。本当のところはどうなんだろうか?と知りたくて、読み進めてみました。

結論から言うと、江戸時代にも環境問題があったということがわかりました。たとえば江戸の何百万人の生活に必要な木炭を確保するために森林伐採は行われましたし、中国地方の山陰ではタタラ製鉄のために森林伐採はもちろん、水質汚染なども確認され、農民が不満を訴えるエピソードなども紹介されています。江戸時代にも環境破壊があった、何となくあの頃の人々は自然と上手く共存していて…というイメージを抱きますが、少なくともそうした事例はいくつかあったいうことなのです。もちろん、今の環境破壊の問題から比べれば、微々たるものなのでしょうが…。

このシリーズ、日本の歴史をもう一度学びたい方にぜひオススメです。かなり専門的なところまで触れられていますが、大人になってから歴史を学ぼうとすると、学生時代とはまた違った切り口で読めると思います!

●鬼頭宏氏『文明としての江戸システム』 講談社学術文庫 2010年
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2月の始まり

2010-02-01 18:07:19 | その他
今朝起きると、どうも手首が痛くてしょうがないのです。どうも昨日の力仕事で筋肉痛になったらしく、いちいち動かすたびに痛みが走るというのはやっかいなことですね(泣)今日は休日。家事をこなしたあとに書店へ出かけ、午後はずっと読書をして過ごしました。夕方頃から雨が降り始め、ちょっとさびしげな冬の夜です。

さて、近頃私がよく食べているものは、柚子の砂糖漬けです。凝り性の私は、美味しいと思ったら、そればかり食べようになるので、今は例によって毎日のように柚子を食しています。甘さと苦味の微妙なバランスがいいのですよね(笑)紅茶にも合いますし。

今日から2月がスタートです。1月の反省を踏まえながら、明日からまた頑張ります!
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